唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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吸血鬼と一緒に。

真犯人は……?

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    「とにかく、これでレイフレッドが暴れた原因が私以外の血を口にしたからである事は分かっていただけましたでしょう?    ――では、後は誰が、どうしてそんな事をしたのか。彼の事情はどこまで確実に伝わっていたのか。単なる不手際による事故なのか、悪意ある故意の事件なのか。既に私に喋れる事は全てお話ししました。――後はあの時あの部屋に居た当事者に尋ねるしかありません」
    「ああ、部屋に居た使用人には既に私が聴取してある」
    シリカさんは縄を打たれた者達を虫けらでも見るような目で見下ろした。

    「まずはレイフレッドにつけていた従僕フットマンから、先程吐いたを王にお聞かせしろ」
    「は、はい……」
    顔を真っ青にして震える男は、声まで震わせながら立ち上がる。

    「わ、私は彼がをしたいと申されるので、こちらで用意する旨をお伝え致しました。……その、私は知らなかったのです。彼が既にパートナーを定めているなど、あの歳では他に余り例もありませんし……」
    「確かに、先例が少なく前情報が無いなら城に常備されている子供用の保存血液を仕度するのが正しい。――が、その時彼は何と言った?」
     「か、彼女の――もう一人のお子様の血でなければ飲めない、と」
    「それを聞いて、お前はどう対応した?」
    「……私の他に、風呂の支度をしていた者が居まして……その……彼が『彼女も今は着替え中のはずで、女性の支度には時間がかかるから、我が儘を言わずに保存血液で我慢すべきだ』と指摘を……」

    ……着替え中に来られたら確かに少し困っただろうから前半のセリフはまぁ良いとして。

    「すると、入浴後に訪ねるから、その旨だけ伝えてくると彼が言いまして、……それを我が儘と判断した者が……その、無理矢理――」
    ちらちらと隣で縛られてる男を横目に見ながら男はそう証言した。
    つまり、アイツが実行犯なのか。
    「お前はそれを止めなかったのか?」
    「その、私はまだ経験が浅く……先輩が正しいと思ってしまい……」
    ……この人、無罪って訳じゃないけどとばっちり受けた立場なのは確かみたいだ。――情状酌量の余地はあるかな。
    「では、次はレイフレッドに無理矢理血を飲ませたお前に証言して貰おうか」
    「…………。」
    男はむすっとしたまま不機嫌な様子で立ち上がった。
    「お前は、パートナーの件の情報を得ていたか?」
    「――その答えは、はい、でもあり、いいえ、でもあります。私はパートナーと伺っておりましたので、所謂パートナーの誓約状態と理解しておりましたもので」

    ……ん?    なんか初耳の言葉が出てきたぞ? 

    「あー、アンリの為に説明するとだな、パートナーにしたい者を見つけた時に、その時点では片方又は双方に契約を結べない理由があった場合に、将来的にパートナーになることを誓うものだ。いわば婚約みたいなもんだな」
    それをすると、対外的にはパートナーとして認識されるけど、吸血鬼側は正式な契約を結ぶまでは他の人の血も飲まないといけない。
    ……つまり、本当にそう誤解をしていたとしたら。もしもその誤解が誤解でなかったら。レイフレッドの言動は確かに我が儘で、この人の対応は少々乱暴が過ぎる気もするけど間違ってはいなかった、と。

    でも現実にはそれは誤解で……。

    「何より、王からほぼパートナーの様なもの、とお伺いした後に改めて詳しく説明に来て下さった文官様から誓約のお話を伺いましたから間違いないと」

    ……つまり、意図的に情報をねじ曲げた誰かが居る。わざわざ二人居るうちの口より先に手が出るタイプの男を選んで間違った情報を与えた者が。
    「その文官がそやつだな?」
    縛られてるもう一人を指してシリカさんが問う。
    「はい」
    「王よ、私は確かに契約はまだだとあなた様にお伝えした。合わせて、それがいわゆる誓約状態を言うのではなく、真実パートナーとして機能してしまっている事もお伝えした。この情報を誰にどこまで話されたか証言をお願いしたい」
    「余はそなたに聞かされたことをそのまま伝えたぞ?」
    「どなたに、でしょうか?」
    「無論、あの子供につけたそこの二人の上役にだ」
    「……ですが、片や聞いていない、片や余計な情報を与えられている。――では、つまらない画策をしたのはその上役ですか?」
    「わ、私は!    王より命令を承った後、二人を選定しましたが、その時点で片方しか捕まらず……ユーリにのみ説明し、後でサムに伝えろと確かに命じて……!」
    「その点については私の落ち度です。サムに情報を伝え損ねたのは確かに私です」

    「つまり不手際があったことは認めると?    ――ではアーサーよ。そなたはなんの目的でユーリに偽りの情報を与えた?」
    「わ、私は――」
    「うん?」
    「私は……誤った情報を与えてしまったから訂正して来るよう王に命じられたと……伺いまして」
    「ん、余はそのような指示はしておらんぞ?」
    「お前にその命令とやらを伝えたのは誰だ?」
    「――」

    シリカさんの問いに、彼は口を引き結んでだんまりを決め込んだ。顔を伏せて床を睨み付ける。
    「申し、上げられません」
    「ここは、王の御前ぞ。隠ぺいもまた虚偽を申す事とほぼ同意。――さあ、答えよ」
     「――申し上げられません」

    「そうか。……衛兵!    そやつを審問牢に連れていけ!」

     王は衛兵に命じて文官だけを下がらせた。

    「あれはこちらで改めて厳しく問いただすとして。一先ずここに居る者についての審判を申し述べ、此度の審議を終わらせたい」

    その王の言葉に改めてこの場に居る者達が姿勢を正した。

     「では、判決を申し渡す」
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