唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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吸血鬼と一緒に。

なんだか大事の予感……?

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    「あー、ごほん。……そろそろいいか?」
    「はい……」
    レイフレッドは勿論、私の顔色も悪いからと、私達はそのまま即座に空間の外へと連れ出され、二人一緒に同じベッドに放り込まれた。
    ……例の、大人が三人余裕で横になれるサイズのベッドなら子供二人で大の字に寝ても間に合う広さはあるんだけどね?
    私はともかくレイフレッドが……もう顔が真っ赤過ぎて……。
    レイフレッドを愛でたい衝動を堪えるのに私も必死なんだよこれでも。
    「ああもう、パートナーだろうがつがいだろうが好きにして良いからとにかく話を聞け!」
    「う……、はい……」
    「診たところ、レイフレッドの方もアンリもその消耗さえ回復すれば健康上の問題は無さそうだが……」
    「健康以外の問題があると?」
    「ああ。言葉は悪いが、健康だからこそ大変な騒ぎになるぞ。この手の事故――今回については事件だが――があれば討伐以外の方法はほぼ無かったんだ」
    それでも、解決法がパートナーの心臓の血を飲ませる事だと知れているのは――研究の成果と言えば聞こえは良いが、実際は血生臭い実験の末に判明した事で。
    しかも結局現実的には結果の先送りにしかならず、討伐は免れないとされたのだから救い様がない。
    ずっと、そう思われてきた。
    「その術を王の前で見せ、ここに実際に回復した者が居る」
    扱える者がひどく限られる難易度の高い術だ。
    「馬車だの何だのより遥かに需要は高い。お前を取り込みたい貴族これから湧いて出るぞ?」
    「でも、私は……」
    「王が詫びをすると言っていただろう?    今なら我が王家の権力を用いてその子爵家に圧力をかけることも、我が王家が有する隠密を使って密かに葬る事も可能だぞ?」

    ……それは正に悪魔の囁き。
   悲願である婚約破棄が出来るかもしれないという甘い誘惑。
    でも――

    「……例え婚約破棄はできても、子爵様の機嫌を損ねた場合の結果まで縛るのは困難でしょう?」
    機嫌を損ねた子爵がお父様や従業員に報復しないとも限らないのだから。
    「どうせ願うなら、この国の通行手形をねだりますよ」

    冒険者ギルドか商業ギルドの登録証があれば町の門も国境の門も通れるけど、もれなく検問は受けなければならない。けど通行手形があれば町の門は素通りできるし、国境での検問も簡単なものになる。
    今後行商をするにも冒険者をするにもあったら便利なアイテムだ。

    「なあ、アンリ。天狗に絡まれた町で会った貴族を覚えているだろう?    あれはな、この帝国の皇帝の子息なんだよ」
    が、シリカさんは唐突に話題を変えた。
    「……え?」
    「今頃はもうお前の情報は皇帝の耳に届いているだろう」
    は、皇帝て。
    「遅かれ速かれ確実に皇帝からお声がかかるだろうな」
    「お嬢様の規格外は皇帝すら動かすレベルなのですね……」
    「流石に皇帝に望まれたら、一介の子爵風情ではどうぞと差し出す他あるまい?」
    「……逃げます」
    シリカさんに答えたのは、私――ではなく。
    「俺が、お嬢様を連れて逃げます」
    レイフレッドが何か覚悟を決めた顔で言った。
    「お嬢様が嫌だと言うなら、俺が全力でお嬢様を逃がします」
    「いや、まあお前達の事情も伝わってるはずだから無理強いはしないと思うぞ。確実に絡め手で来るだろうな、悪魔らしく」
    ……うわはぁ、面倒臭いよぅ。
   私はただ冒険と商売が出来れば満足なのにぃ~。

    「……お嬢様。俺……いえ、私はもうお嬢様無しには生きられません」
    ――うん。何か物凄いセリフだけど……今回の事でやっぱりお互い思い知った。
    「何があっても、死なない限りはお嬢様のお側に居ますから」
    布団の中でレイフレッドの手が私の手と重なる。
    「人間の国でも魔族の国でも獣人の国でも、どこへだって行きますから」
   きゅっと、痛くはないけど強く握り込まれる。
    「お嬢様は、お嬢様がしたいように。お嬢様の望みのままになされるのが一番です」
    「なら。私は皇帝と真っ向勝負してみるよ」
    まあ十中八九どころか十中十全持ってかれるだろう対戦カードなのは承知の上で。
    「永住さえ拒否できれば勝ち。ついでに通行手形がゲットできたら御の字で、伝を得られる機会は逃したくない」
    平民の人間の小娘が魔族の皇帝に会う。
   キリスト教徒でもない一般庶民な日本人がローマ法王と謁見する位あり得ない事なんだよ、本来なら。
   そんな伝を持つ者はシレイドの貴族にだって何人居るか……。皆無でもおかしくない。
   そんな伝を得られる機会を棒に降るのはもったいない。 
    「……お前達じゃとって食われておしまいだよ。もし通達が来たら私も連れていけ」
    シリカさんはため息を吐くと立ち上がり。
   「もういいや。とりあえずしばらく寝とけ」
   部屋を出る。
   「え……まさかこのまま放置……」
    レイフレッドはその背を呆然と見送り。
    まだ眠り足りなかった私はいそと布団に潜り込んでさっさと眠りについたのだった。
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