唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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帰還

そういえば忘れていました……。

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    私は風呂と着替えを済ませるため、一度レイフレッドと別れて懐かしの自室へ戻った。
    掃除の行き届いた部屋は、一年留守にしていたとは思えない程きちんと整えてあった。
    メイドが支度した風呂で埃と汗を流し、旅の荷物を解きながらそのうちの一着を選び身に付ける。
    久しぶりにお父様やお母様に会うのにルクスドで着ていた普段着はまずかろう。
    かといってドレスは過剰な気がするし……。
    結局シリカさんの宮殿に滞在中に身に着けていたよそ行きのワンピースに着替えた。
    
    ……と、扉がノックされ、レイフレッドが夕食の時間を告げた。
    彼もシャワーを浴びたのだろう
、私の新作の石鹸の香りを纏う彼はカーライル家の使用人の制服に着替えていた。
    「去年は毎日見ていた格好なのに、こう久しぶりに見ると何だか新鮮ね」
    レイフレッドに先導されながら食堂へ向かう。
    「……ええ。――これがこの制服に袖を通す最後の機会になってしまわぬよう気を引きしめます」
    そう言うレイフレッドの表情が少し……堅いような?

    「――ただいま帰りました、お父様、お母様」
    部屋へ一歩入ったところで、カーテシーをして見せる。
    「お帰り、アンリ。――一年顔を会わせない内に随分立派になったね。これは、鑑定式が楽しみだ」
    ――あ。鑑定式!
    そうか、お父様が帰還命令を出した理由! 
    五歳の鑑定式までは、孤児でない限りは確実に保護者と参加する。……孤児ですら余程悪徳な院でない限りは誰かしら大人の付き添いはある。七歳の時のそれはその家庭によりけりで、その後は成人として一人での参加が基本だ。
    ウチは名の知れた商会の主だ。
    それが一人娘の鑑定式に出席しないのは悪目立ちするし、ましてや当の本人が居ないなんて論外だ。
    「それに、アンリに言っておかなければならない事があってね」
    お父様がとても優しい笑顔をお母様に向けた。
    「今、お母様のお腹の中にアンリの弟か妹が居る」
    そして、お父様は私にとって嬉しくも複雑な気分にさせるニュースを告げた。
    「……息子なら、正式に我が家の跡取りに。娘なら……その後息子に恵まれなければ将来婿を取らせ跡取りにする」
    ――私が奴の婚約者である以上は望めない地位だ。
    でも、上手く婚約破棄に漕ぎ着けられたら……と考えた事がなかった――訳もなく。
    だから、何となくこれからいくら頑張ってもこの家に居場所は無いと。
    お父様達にそんなつもりが無い事位分かっているつもりなのに、心は勝手に動揺する。

    ……いや、これで良いんだ。
    レイフレッドのパートナーになった以上はここの人達とは異なる時間を生きることになるんだから、いつかは家を出ていかなきゃならないんだから、その際の後顧の憂いが晴れたと喜ぶべきなんだ。
    実際、弟妹が出来ること自体は嬉しいんだから。

    私はもう、独自の店も研究所も持っているんだから、成人さえ迎えればすぐにも独立して商売で食べていける基盤がある。
    ――だから。

   「お父様、私からもご報告がございます」
     私はレイフレッドのパートナーになった事、そしてそれが意味することをお父様に報告した。
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