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帰還

お父様がイケずです。

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    私がレイフレッドのパートナーになった事。
     事前に手紙で知らせてはいたけれど、詳しく話すとお父様は複雑そうな顔をした。

    「……でもアンリ、それでもしも失敗して――私達だけならまだしも、従業員にもしもの事があったらどうするんだい?」
    「――そうならないよう細心の注意と最大限の努力を惜しむ気はありません」
    「君はそのつもりでも、それは絶対ではないよね?」
    「……いざとなったら、何を差し出しても魔族の皇帝を頼ってでも何とかします」
    「アンリ、ここはシレイド、人間の国だよ。……例え助かったとしても、それが魔族の皇帝の力に依るものと知れば嫌な思いをする者が居るかもしれない」

    ……何だろう、お父様がいつになく意地悪だ。

    「――旦那様。お嬢様のパートナー契約は、私が死ねば解消されます。どうかいざとなったら、迷わず私の身をお使いください。全ては私の責として下さって結構です。……私の命を質に、どうかお嬢様に猶予の時を許して差上げては下さいませんか?」
    お父様のイケずに、レイフレッドがとんでもない提案をした。
    「はあ!?    ナシよナシ!    無しに決まってるでしょ!」
    なのに。

    「……君は生きるために私の娘をそのパートナーとやらにしたのではなかったのか?」
    「――はい。私は既にお嬢様の血無くしては生きられない身体です。……でも、それが無くとも私はお嬢様と生きたい。お嬢様が望まぬ運命を退ける、その助力がしたい。その為に必要とあればこの命を惜しむつもりはありません」
    「あらあら、随分と頼もしい騎士ナイトじゃありませんか。少なくともあのお坊ちゃんより遥かに良い男よ。実際、去年はアンリを身体を張って助けてくれたわ」
    それまで黙って聞いていたお母様が口を挟んだ。
    「そうね、期限は切りましょう。学校へ行って、卒業するまで。それまでに何とかなさいな。――ただし、それを過ぎたらあなた方が何を言おうと聞きません」

    そして、私が口を挟む隙もなくとんとんと話が進み決まっていく。

    「とにかく、その話はまた後になさいな。まだ先の話より、今は明後日に迫った鑑定式のお話が先です」
    ピシャリと会話をぶった切って、お母様はほほほと微笑んだ。

    「明日は明後日のパーティーにいらっしゃるお客様についてやパーティーの式次第について一日で覚えて貰うわよ。ああ、あのお坊ちゃんは今年のパーティーにはいらっしゃらないそうだから、その点については安心なさいな」
    ああ、今年もやるのか、アレ。
    これまで数日かけた準備を明日一日で済ませる!?
    「…………」

    「さあ、明日に備えて子供はもう寝なさい」
    有無を言わせぬお母様の指示で食事を済ませた私達は早々に私室へ追いやられた。
    けど……。アイツ、来ないのか。
    ルクスドまで押し掛けてきたくせに……?
    まさかもう、あの用意周到な付け届けついでに皇帝様が手を回した……とか?
    さっきはつい啖呵をきってしまったけれど。
    できるだけかの方に借りは作りたくない。
    それに、レイフレッドにだってあんな事考えてほしくないから。
    私はもっと頑張らなくちゃいけない。
    誰も、何も心配しなくて済むくらいに――。
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