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雌伏の時
妥協と決意
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――狸と狐――それも愛らしいモフモフではなく狐狸妖怪――の攻防戦は、昼過ぎに始まり夕飯時まで続いた。
結果から言おう。
辛勝だった。
最低限望む結果は得られたけど、それだけ。
甘さなんかどこにもない。
一つ。
勉強はこれまでと同様に続ける事。従者であるレイフレッドの同席は認めない。
一つ。
どうしても私でなければならない作業を除き外注する事。
一つ。
儲けは半分商会に入れる事。
一つ。
納品に出掛けるときはウチの馬車を使い、必ずレイフレッド以外の使用人を連れて行く事。
……流石に作業中にもレイフレッド以外の使用人を立ち会わせろと言うのは断ったけど。
「なあ、カーライルよ。いくらなんでもそりゃ酷くねぇか? 天下のカーライル商会が、未成年の娘に集ってむしり取る様な真似して恥ずかしくねぇのかよ」
「――では、いざと言う時、貴方が全責任を負って下さると? お貴族様の理不尽の盾となって下さると?」
「――むぅ……」
「――出来ないなら黙って下さい。少なくとも私の心はこの一年でひびだらけです。……アンリが可愛いからまだ何とか折れずにいますが、これ以上の火種は困るのです。……私の心が折れたら、私は今すぐこの子を奴らに差し出しますよ。――もうすぐ新しい跡取りが生まれる。この子が居ない方が我が家は安泰なんですから」
「おっ――! ……ッ、くそッ!」
「…………」
最後は重苦しい空気のまま場は解散となった。
ああ。まだ先だと油断しすぎたみたい。
奴らは疫病神か。
……本当に、本当に。空間魔法や吸血鬼の国の拠点の話を黙ってて良かった。
――帰って来るんじゃなかったなんて思わせるなんて。
……婚約破棄だけじゃ足りない。
いつか、奴を思いっきりぶん殴ってざまぁしてやりたい。
本来なら私が悪役令嬢でざまぁされる側だけど。
どう考えたって割りに合わないし。
今は仕方なくても、私は絶対に旅に出る。
その為にも、今は資金を貯め、信用を積み重ね、信頼を得るために我慢するべき時だ。
「レイフレッド」
寝室の明かりを消し、ルフナが退室していった夜。
空間に建てた以前より大きな屋敷のリビングで、彼に声をかける。
「はい、お嬢様」
「二年、待ってくれる?」
「――お嬢様がお望みなら、どこへだって抱えて逃げますよ」
「それはとても魅力的なお誘いだけど……出来れば正攻法で、最後は大団円を飾りたいの。本当にどうしようもなくなったら、もう一度提案してくれる?」
「――勿論、お嬢様のお望みのままに」
「しばらく窮屈な思いをさせてしまうけど……」
「私は、このささやかな時間があれば満足――はしませんが、まあ大丈夫ですよ」
私の為に彼が淹れてくれたお茶が空になると、私の座るソファーの隣にレイフレッドが腰掛け、私の手を取る。
「規格外なお嬢様の事です。私よりキツいのはお嬢様でしょう? ここでなら、愚痴くらいいつでも聞きますよ」
そっと手の甲に口づけを落とされ、続けて手首に牙を埋め込んだ。
結果から言おう。
辛勝だった。
最低限望む結果は得られたけど、それだけ。
甘さなんかどこにもない。
一つ。
勉強はこれまでと同様に続ける事。従者であるレイフレッドの同席は認めない。
一つ。
どうしても私でなければならない作業を除き外注する事。
一つ。
儲けは半分商会に入れる事。
一つ。
納品に出掛けるときはウチの馬車を使い、必ずレイフレッド以外の使用人を連れて行く事。
……流石に作業中にもレイフレッド以外の使用人を立ち会わせろと言うのは断ったけど。
「なあ、カーライルよ。いくらなんでもそりゃ酷くねぇか? 天下のカーライル商会が、未成年の娘に集ってむしり取る様な真似して恥ずかしくねぇのかよ」
「――では、いざと言う時、貴方が全責任を負って下さると? お貴族様の理不尽の盾となって下さると?」
「――むぅ……」
「――出来ないなら黙って下さい。少なくとも私の心はこの一年でひびだらけです。……アンリが可愛いからまだ何とか折れずにいますが、これ以上の火種は困るのです。……私の心が折れたら、私は今すぐこの子を奴らに差し出しますよ。――もうすぐ新しい跡取りが生まれる。この子が居ない方が我が家は安泰なんですから」
「おっ――! ……ッ、くそッ!」
「…………」
最後は重苦しい空気のまま場は解散となった。
ああ。まだ先だと油断しすぎたみたい。
奴らは疫病神か。
……本当に、本当に。空間魔法や吸血鬼の国の拠点の話を黙ってて良かった。
――帰って来るんじゃなかったなんて思わせるなんて。
……婚約破棄だけじゃ足りない。
いつか、奴を思いっきりぶん殴ってざまぁしてやりたい。
本来なら私が悪役令嬢でざまぁされる側だけど。
どう考えたって割りに合わないし。
今は仕方なくても、私は絶対に旅に出る。
その為にも、今は資金を貯め、信用を積み重ね、信頼を得るために我慢するべき時だ。
「レイフレッド」
寝室の明かりを消し、ルフナが退室していった夜。
空間に建てた以前より大きな屋敷のリビングで、彼に声をかける。
「はい、お嬢様」
「二年、待ってくれる?」
「――お嬢様がお望みなら、どこへだって抱えて逃げますよ」
「それはとても魅力的なお誘いだけど……出来れば正攻法で、最後は大団円を飾りたいの。本当にどうしようもなくなったら、もう一度提案してくれる?」
「――勿論、お嬢様のお望みのままに」
「しばらく窮屈な思いをさせてしまうけど……」
「私は、このささやかな時間があれば満足――はしませんが、まあ大丈夫ですよ」
私の為に彼が淹れてくれたお茶が空になると、私の座るソファーの隣にレイフレッドが腰掛け、私の手を取る。
「規格外なお嬢様の事です。私よりキツいのはお嬢様でしょう? ここでなら、愚痴くらいいつでも聞きますよ」
そっと手の甲に口づけを落とされ、続けて手首に牙を埋め込んだ。
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