唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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雌伏の時

大口依頼

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    ――お祖父様達各ギルドのギルマスが我が家に押し掛けてきた日から半年が経った。
    あれからの日々は、表向きには代わり映えのしない退屈な毎日を過ごしていた。
    朝起きて、食事をして。
    勉強をして、食事をして。
    勉強かマナーや魔法の訓練をして食事をして。
    アトリエとして使うようあてがわれた部屋で作業ノルマをこなし、寝室へ戻る。
    ルフナの居る休日には午前中の勉強の時間はギルドへの納品へ出掛ける。
    午後は自由時間だけど――ルフナが常に居間に控えているので、せいぜい露店で売る様の手芸品を作るくらいしか出来ない。
    ルフナの休日と重なる私の休日は一日自由時間。

    ……けど。
    私は空間の中にアトリエを持っている。
    空間で繋がるルクスドにも研究室兼アトリエを持ち、各ギルドのルクスド支部とのコネクションもある。
    吸血鬼の国には店も持っているし、シリカさんとも交流を続けている。
    私もルクスドで、レイフレッドとパーティーを組んでの冒険者活動を始めた。
    ……と言っても長期の依頼は受けられないから、採集や討伐の常時依頼や短期の単発依頼をこなす程度だけどね。
    私のランクを知るギルドの職員からは非常に嘆かれているけど、まあそこはまだ子供だからで何とか見逃してもらってる。
    魔道具も、引き続き冷蔵庫や冷暖房の他、ノルマとは別に空間のアトリエで作った印付の携帯電話を、ルクスドと吸血鬼の国のギルドにも卸すようになった。
    印付は私が最初から最後まで責任持って作った正規品。
    印ナシは私以外の手も入った大量生産の廉価版と説明し、シレイドで卸すものより高額で引き取って貰っている。

    ……旅をして度々別の支部を訪れるなら、その都度知らされる売上報告だけど、定住している場合は一月毎の報告になる。
    その最初の月の入金額を見たお父様は目を剥いていた。
    ……それ、本来の売上のほんの一部なんですけどね。

    ああ、携帯電話については吸血鬼国の王様が、国の主要機関に配備したいと直に大口注文くれたから、ギルドの記録にも残らない大金も手に入った。
     ……商業ギルドの口座に入れてしまうとお父様に不振に思われるから、この様な入金は全て冒険者ギルドの口座に貯めている。

     「――ウチの国の伯爵家クラスの屋敷が建つぞ」
    と、その額を聞いたシリカさんに呆れられたけど、まだ別に商業ギルドにもお金があると言ったら、「お前らもう、慎ましく庶民暮らしするなら一生働かなくて済むんじゃないか?」と棒読みで言われた。

    ……そして、今。
    遂に召喚状が届けられた。
    魔族の帝国、その帝都の商業ギルド支部からシレイドの支部を経由して。
     魔族の帝国の要所全てに配備するだけの個数の超大口注文が。
    ギルマスが自らわざわざウチまで出向いての依頼。

    異例中の異例な事態に、ギルマスはお父様に土下座までして、お父様に嘆願した。
    「この事態、領主様では間に合わぬと判断し、王に直に報告を上げましたところ、我が国にこそ先に納品すべき品ではないかとお叱りを受け、納品を命じられました。――つまり、これは王命なのです!」
    早急に多数の品を用意する必要がある、と。
    「職人ギルドのギルマスにも動いて貰っていますが、到底足りません。ご本人の協力が不可欠です!」

     つまり、私を作業に専念させろと彼はお父様に嘆願している。
    ……というか、ギルマスの嘆願以前に王命じゃあ平民どころかお貴族様だって逆らえないじゃん。
    お父様は渋々折れた。
    私は暫しの時間を手に入れた。
    王さまへの納品期限は一週間、皇帝様への納品期限は3ヶ月。
    ――皇帝様はともかく王様、無茶振りが過ぎるよ!
    魔道具作るのに本来かかる時間を知らないのか?
    王の側に魔術師長とか居ないの? 
    ……まあいい。これで私は一月の自由時間を確保した。
    普通なら無茶振りなこの依頼。
    ああ、早めに「コピー」スキルを取っといて良かった!

    私は全依頼を四日で済ませ、残りの日は食事時のみ屋敷に帰り、初めての長期依頼にチャレンジすべく冒険者ギルドを訪れたのだった。
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