唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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雌伏の時

掃討戦と言う名の蹂躙戦

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    「あれか……」
    「……あれですね。話には聞いてましたが、実際目にすると……背筋が寒くなるようです」

    厄介な奴ではあるが、見た目はそんなキモくも怖くもない魔物なんだけど……あそこまで群れてると確かに……キモいとか怖いとか通り越して最早不気味の域に達している。

    だって岩山一つ丸々、所狭しとばかりに走竜がすし詰め状態なんだよ?
    あれがカワイイウサギや猫やヒヨコとかなら天国だけど、爬虫類顔の群れじゃ……よっぽどの爬虫類好きじゃなきゃ恐怖の光景だ。
    しかもあれは人を襲って喰う。
    ――戦う力のない一般的なら十分悪夢の光景。

    「んじゃ、とっとと蹴散らすわよ」

    ここは、その岩場の隣の岩山の頂。その岩の一つの影に隠れながら弓を構える――が。
    矢はつがえない。
    代わりに大幅に略した詠唱を唱える。
    「ポイズンレイン!」
    紫色に光る矢が弓に番われ、それを引いて狙いを定め、射る。
    狙うは件の岩山、その上空。
    放たれた矢は奴らの頭上で弾け、毒の雨を降らす。

    「続けて行くよ!    サンダーストーム!」
    毒を浴び、動きが鈍くなった上、しっとり濡れた身体に雷。うん、効果抜群!

    「そしてとどめのロックレイン!」
    頭上から岩の塊を無数に降らせてやれば。
     「んじゃ、最後に後片付けね。氷結!」
    山の表層のみカッチンコッチンに凍らせて。
    「ぜろ、アローボム!」
    無数に降らせた矢を、奴らの凍った身体ごと吹き飛ばす。
    「浄化の聖光!」
    散った邪気を浄化して。

     「ハイ、終了ー!」
    キレイさっぱり片付いた、ただの岩山となった隣の山。

    「お嬢様、私は……何をしにここへ来たんでしょう?」
    「そりゃ私の護衛よ。奴らとの戦闘中に邪魔が入らないよう見張りと、万が一敵が来たら排除する為の近接戦闘要員」
    「……戦闘、ですか。私にはあまりに一方的な蹂躙の図にしか見えませんでしたし、私はただの役立たずでしたよね?」
    「まさか。いざという時の備えは重要よ。確かに終わってみれば今回は何も来なかったけど、もしもがあって私一人なら、あっちの戦闘を中断して相手をしなきゃならなくなるわ。そしたら奴らの脚力だもの、あの大群であっという間に迫られたら一たまりもない。間違いなくレイフレッドが必要な作戦だったのよ」

    「それにしても、本当に一瞬で片付きましたね。移動の方が遥かに時間を喰うとか……」
    「帰りは空間伝いで一瞬だけどね。空間移動での瞬間移動はあくまで私が目視で認識できる範囲に限られてしまうから……」
     「お嬢様、それで既に十分規格外です」
    「……。とにかく、報告に帰るわよ!」

    こうして派手に魔法をぶっぱなして無双して、日頃のうっぷんを晴らして気分良く報告に向かった冒険者ギルドで。
    「あの……アンリさん、ギルマスがお呼びです」

    ……ん?
    冒険者ギルドでもギルマスのお呼びがかかる?
    ……何かしたっけかな?
    「はあ、また厄介事の予感がします」
    何か悟りでも開いたような笑顔のレイフレッド。
    「お嬢様と居ると退屈なんて言葉を言う暇がありませんね」
    ……うん、まだ何だか分かんないけど。ごめん、一応先に謝っとこう。      
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