唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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念願の旅路で

世界有数の鉱山へ

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    お伽噺の絵本の様な緑の国を離れると、次は亜人族の国ライアンに入る。
    ――亜人族、と言うのは妖精のそれとは異なる仮の呼称。
    例えば先の竜人や人魚等、獣人族との種族差が曖昧な種族がより集まって国家の体をなしている。
    その風土は、ここまでバラエティーに富んだ地形を持つ国もなかなか無いだろう、海も山も川も湖も、草原も荒野も湿地帯もある国だ。
    山から流れる川が注ぐ海は突きだした半島に。
    その川のうちの一本は途中に沼を形成し湿地帯に。
    もう一本は草原に湖を作る。
    が、大陸部分の平地の大半が荒野と言うある種極端な土地。
    海には人魚(♀)、山にはドワーフやコボルト、湿地帯には半魚人(♂)、荒野には竜人――という具合に住み分けている。
    この国はこの世界では珍しく民主主義の国で、各種族ごとに選挙を行い、選ばれた議員が首都の議会に集い、彼らが推薦し選挙で選んだ代表を大統領とし、王国の「王」と同格の存在と扱う国。
    故に、種族により町の雰囲気は全く別の国に見える程に異なる。
    人魚は生活の大半を海中で過ごすから、陸には客人用の屋敷があるくらいでそもそも「町」と称せるものがない。
     ドワーフやコボルトは洞窟に穴を堀り――ルクスドの洞窟下宿みたいな家を作って町にしている。
    半魚人は沼の畔に半分は水上に突きだした木造小屋を建て、各々を橋で繋ぐ半水上生活。
    統一感?    ナニソレ美味しいの?    ……な国だから、他の王政国家に比べると、やっぱり国家元首の発言力も弱い。
    各種族との交流はともかく、国全体に浸透する商売なんてこの国じゃかなり難しい。
    でもね?
    「少なくとも山には行きたいわ」
    ルクスドの鉱山はヒューリア帝国では有数の鉱山とされているけど、採掘量も種類もここのはこの大陸ではダントツ一位なんだ。
    だからここは、売るのではなく買い付け専門の店を作るため、彼らと商談に望むのだ。
    ふふふふふ、いつだったかに空間の肥やしにしてしまったつるはしを、グレード調整したものと、鑑定用の片眼鏡やトロッコの動力等、交渉カードは豊富に取り揃えてあるし、こちとら彼らの仕事を軽んじて買い叩くつもりもない。
    良質な素材を定期的に安定して得られるのはありがたいし。
    ――と、思っていたんだけどね?
    「……は?」
    「竜が出た?」
    「それは……どんな?    また走竜の群れとか?」
    「いいや、亜竜の類いじゃねえ。正真正銘の竜。ドラゴンだ」
    ドワーフのおじさん達が揃って頭を抱えている。
    「しかも、最悪の火竜が山のてっぺんに居着きやがった。山ん中掘ってると上でうるせぇとばかりに暴れてな、こないだ坑道の一つが崩落して埋まっちまったんだよ、俺らの仲間を十人ぱかしも一緒に飲み込んで――!」
    そんな訳でここ数日は開店休業状態が続いているとの事。
    「……お嬢様、ドラゴンなんか倒したら、問答無用で黄金級に格上げされますよ?    黄金級っていったらもれなく二つ名がついて英雄扱いされますよ?」
    ……って、レイフレッドは言うけどさ。
    このままだとドラゴンが厭きて他所に行ってくれるまで作業出来ないって言うんだよ。
    「……お嬢ちゃんがドラゴン退治だぁ?」
    「やめとけ!    無理に決まっとる!    ああ?    賭けるかって?    いいぜ、お前さんが買ったらここのモンは全部特価で売ってやらぁ」
    「ふふふ、漢に二言はないわね?」
    「おうよ!」
     てー訳で!
    「んじゃ、行こうか」
    「……結局こうなるんですね」
    いざ、竜退治だ!
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