唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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念願の旅路で

究極の肉体美

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    第一回戦、初戦の選手はどうやらチーターと熊の獣人のようだ。
    ――この世界の純血の獣人というのは基本、骨格は人間と大差ない仕様になっているらしく、無理なく自然に二足歩行をしているけれど、顔は完全にその獣の顔をしていて、頭蓋骨の形だけはその種族によって異なる。ああ、勿論尻尾を持つ種族の尾てい骨の具合も種族によって違う。
    だけど、こうして見ると種族ごとにそれ以上の特徴が見てとれる。
    熊は見るからにガチムチマッチョなのに対し、チーターのほうはしっかり筋肉は付いているのにしなやかで美しい痩身。
    ……ボディービルダーと男性バレエダンサーを見比べているようだ。
    両選手が登場するや否や大歓声があがった会場が、審判が手を挙げ実況アナウンスが試合開始を告げようとする瞬間、嘘みたいにシンと静まり返り――
   「GO!」
     その瞬間、歓声が爆発し会場を揺るがし、選手が動く。
     先に仕掛けたのはチーター。……歓声の中から聞き取るに、どうやら彼の名はブレイズと言うらしいが。
    ブレイズはチーターらしい高速の先制攻撃を繰り出そうと熊に蹴りを繰り出す。
    熊の体格に比べて随分と細い腕はこうして見ると頼りなく見えるが、あれだけの速度で駆ける脚力を持つ足での攻撃はかなりの威力があるはずだ。
    しかし熊――こちらの名はグレイトと言うらしい彼は、避けることなく正面から受け止めた上で、その丸太のように太い腕を大きく振り抜くパンチを繰り出す。
    ブレイズはそれを素早く避けてグレイトの背後を取り、その無防備な背に蹴りを叩き込む。
    これにたたらを踏みながらも振り返り拳を繰り出すグレイト。
    これもかわすかに見えたブレイズだが、完全には避けきれずに横腹を掠めたその攻撃で地面に叩きつけられる。
    ゴシャッと凄い音がしたけど……。
    彼は大丈夫なのかと私が青くなるより速く、ブレイズは即座に転がり回避でグレイトの追撃から逃れ、そこからヒット&アウェイで早さを武器に、とにかく攻撃回数を稼ごうとまるでダンスでも踊るようにステップを踏んで舞うごとに、その肉体のしなやかな筋肉の躍動感が、見る者の心も踊らせる。
    その攻撃を受けるグレイトは、一見一方的にやられているようだけど、彼の攻撃も回数こそ少ないけれど確実に入っている。そしてその一撃の重さの差は歴然としている。
    ブレイズの攻撃を受けるグレイトはせいぜいたたらを踏むかその場でコケるかなのに、その逆はと言えば、ブレイズは攻撃を受ける度に吹っ飛ばされるか地面に叩きつけられている。
    素早さ重視らしいブレイズの装備は軽い皮鎧だけなのに、よくあの一撃を何度も受けて起き上がれるものだと感心してしまう。
    私だったら一発で即死してるよ。
   「……お嬢様。私は例え剣を装備していたとしても、彼らとは戦いたくありません。――無論お嬢様の敵として向かってきたならば命を賭してお守り致しますが、必要もないのに戦って無駄な怪我とかしたくありません」
    ……うん。私も同感だ。
    あの熊さん――もといグレイトと魔法ありなら勝てるかもしれないけど、チーターのブレイズはダメだ。魔法ありでも勝てそうにない。魔法を発動する前に蹴り飛ばされてジ・エンド。――そんなオチしか見えないよ……。
    でも、こうして安全な場所から観戦する分にはとても見応えのある良い試合だ。
    どちらが粘り勝つのか――。
    初戦からこのレベルなら、決勝戦はどんな試合になるのか楽しみだ。
    「試合終了!」
    実況がそう叫んだのはそれからしばらくの後。ブレイズの勝利で初戦は終了した。
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