唯一平民の悪役令嬢は吸血鬼な従者がお気に入りなのである。

彩世幻夜

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目指せ勝ち組!~君と歩む花道~

その頃問題児達は…… - ビル視点 -

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    ……何なんだ、ここは。
    チッ、クソッ!    さっき草の葉で切った傷が地味に痛んでイライラする。
    けど、彼女がすぐ隣に居るこの状況で、この程度の怪我で騒ぎ立てるのは男としてのプライドが許さない。
    ……最初はほんの少しだけ二人きりになりたいと思っただけなのに。
    貴族である――それも将来家を出される次男以下の子ではなく当主になる予定の嫡男である私が、何故この様な山道を自からの足で歩かねばならんのか。
    この行事が学校の伝統で、参加せねば単位が貰えないばかりかここの卒業生の先輩からの評価も悪くなると父上が言うから嫌々参加したのだ。
    しかも、あの私の婚約者を狙う卑しい平民とその使用人の化け物がこの行事を取り仕切る側の生徒会に居るのは何故だ。……私や彼女――アリスも選挙には参加したのだが、何故かあのいけすかない女に敗北を喫してしまった。絶対にあの女が何か裏工作したに違いないのに、どうしてか殿下方はあの女を贔屓にしているらしい。
    ……ああ。アリスはこんなにも聡明で美しいのに。私や父の有能さを認めようとしない王の子らしいと言えばらしいのか。
    あんなのでも子爵の身分でたてつけばこちらが危うくなる王族だ。
    それを、私と同様に見下しながらも表だって非難することのない弱腰なクラスの連中にもほとほと愛想を尽かした。
    この学校の卒業というステータスさえ必要でないならとっくに辞めている。
    そんな連中と少しの間だけでも離れて休みたいと、そう思ってアリスを連れて一つ二つ藪を隔てた向こうの広場で休んで――。
   で、ちょっとだけ辺りを散策していて……いつの間にか道が分からなくなっていた。
    途中、休憩によさそうな洞窟を見つけて入れば、アリスがここはダンジョンだと言う。
    しかも、入ってすぐの落とし穴の罠に落ちて数階飛ばして下の階に来てしまい、すぐに出る事が出来なくなった。
   「ビル様、だ、大丈夫です!    わ、私、お父様に引き取られる前は冒険者だったんですよ!」
    ああ、アリスは健気だな。震えながらも私を励ましてくれるなんて。あの冷血女とは違う、可愛い女だ。やはり嫁にするならこういう女が良い。
   「とにかく、早くこの様な所から出よう」
    私はアリスを支えて立ち上がる。
    殆ど真っ暗闇に近い視界。気味の悪い魔物の鳴き声が反響した騒音と、すえた嫌な臭い。
    私にとって経験したことのない不快が満ちた場所。
    ダンジョン、とその言葉は知っていても、私はその意味をまだ理解出来ていなかった。
    そうして立ち上がって歩き始めてどれだけ経ったか。
    私の繊細な足腰が限界を訴える頃になっても、一向に出口には辿り着けず、何度も魔物から命からがら逃げて走り回らされ無駄に体力を削った気がする。
    もう、動きたくない。たが……
    「ひぃ、た、助けてくれ!」
    私達の目の前には、獲物を前に目をギラつかせた魔物が――十はいるだろうか。
    私だって必死に剣で応戦したし、アリスも頑張ってくれたが、奴等は強く、数も多かった。
    倒しても倒してもまた新手が湧いてくる。
    それがダンジョンというものだと。
    しかも逃げながらいくつも罠を踏んだ。
     ……その一つに痺れ毒の罠があったらしい。もう、体が動かない。
    私は情けなくも、その恐怖に気を失った。
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