307 / 370
国王のお仕事
レイフレッドの両親
しおりを挟む
「――ほら、これだよ」
国での処刑が済み、各国から招いたお客をもてなし無事送り返し、手続きやらなにやら片付けたらもう入学式で。
ようやく落ち着いたのは五月に入ってからだった。
スケジュールに少し余裕ができたので、私達は以前シリカが言っていた本を閲覧させて貰いに来たのだ。
シリカから手渡されたのは、両手で抱えるような大判で分厚い本だった。
「これの……ああ、あった、これだ」
まるで証明写真ように、胸から上を撮った個人写真が家計図表に名前と共に載っていた。
「これが……俺の両親……」
父親は、あのお祖父さんから険という険を全て取り除いた人畜無害な表情をしているだけの生き写しのような顔をしていた。
正直レイフレッドと似ている部分を探すのは難しい。
「写真で見るとな、まるで似ていないだろう? だが、奴をよく知る者は、なかなか真面目な奴だと言っていた。……何より愛妻家だったとな。家族を道具か何かを見るような爺とはえらい違いだと当時はよくからかいのネタになっていたらしい」
……そう言えば、彼の死因も妻を守っての討ち死にだ。
「その分、外見は母親に似たな」
その彼と二重線で結ばれた先に居るのは、昔のレイフレッドそっくりの女性だった。……今でこそ男らしくなってしまっているから印象が違うけれど、昔のレイフレッドを知っていればそっくりだと誰もが言うだろう。
「後で食堂に来るようにと、かつて彼と付き合いのあった連中を呼びつけてある。飯を食いながら昔話に花を咲かせると良い」
じっと写真を見下ろすレイフレッドを置いて、シリカは書庫を出て行った。
「……何というか、複雑な気持ちです」
レイフレッドは眉間にシワを寄せながらも口角を上げて笑う。
「悲しい、と言う気持ちは……正直ありません。この人達が俺の親なんだ、と理解はしますけど……やっぱり実感はない。だけど……」
レイフレッドは本を押し退けて机に顔を押し付けるように突っ伏した。
「一度で良いから、話してみたかった……。そんな気がして……何となく寂しい気がして……。でも、俺にも両親が居たんだと思うと嬉しい。……喜怒哀楽のどれをどう表現したら良いか分からないんです」
そう言うレイフレッドは肩を震わせ、机に滴の跡をぽつぽつ作る。
「うん……。一度に全部感情を処理する必要なんて無いよ。また、ここへ来たときに何度でも見せて貰えば良いんだもの。私達にはまだまだ、時間はたっぷりとあるんだからさ」
私はレイフレッドに寄り添い、彼が落ち着く時をじっと待ち続け――書庫の中で十二時の鐘の音を聞いた。
国での処刑が済み、各国から招いたお客をもてなし無事送り返し、手続きやらなにやら片付けたらもう入学式で。
ようやく落ち着いたのは五月に入ってからだった。
スケジュールに少し余裕ができたので、私達は以前シリカが言っていた本を閲覧させて貰いに来たのだ。
シリカから手渡されたのは、両手で抱えるような大判で分厚い本だった。
「これの……ああ、あった、これだ」
まるで証明写真ように、胸から上を撮った個人写真が家計図表に名前と共に載っていた。
「これが……俺の両親……」
父親は、あのお祖父さんから険という険を全て取り除いた人畜無害な表情をしているだけの生き写しのような顔をしていた。
正直レイフレッドと似ている部分を探すのは難しい。
「写真で見るとな、まるで似ていないだろう? だが、奴をよく知る者は、なかなか真面目な奴だと言っていた。……何より愛妻家だったとな。家族を道具か何かを見るような爺とはえらい違いだと当時はよくからかいのネタになっていたらしい」
……そう言えば、彼の死因も妻を守っての討ち死にだ。
「その分、外見は母親に似たな」
その彼と二重線で結ばれた先に居るのは、昔のレイフレッドそっくりの女性だった。……今でこそ男らしくなってしまっているから印象が違うけれど、昔のレイフレッドを知っていればそっくりだと誰もが言うだろう。
「後で食堂に来るようにと、かつて彼と付き合いのあった連中を呼びつけてある。飯を食いながら昔話に花を咲かせると良い」
じっと写真を見下ろすレイフレッドを置いて、シリカは書庫を出て行った。
「……何というか、複雑な気持ちです」
レイフレッドは眉間にシワを寄せながらも口角を上げて笑う。
「悲しい、と言う気持ちは……正直ありません。この人達が俺の親なんだ、と理解はしますけど……やっぱり実感はない。だけど……」
レイフレッドは本を押し退けて机に顔を押し付けるように突っ伏した。
「一度で良いから、話してみたかった……。そんな気がして……何となく寂しい気がして……。でも、俺にも両親が居たんだと思うと嬉しい。……喜怒哀楽のどれをどう表現したら良いか分からないんです」
そう言うレイフレッドは肩を震わせ、机に滴の跡をぽつぽつ作る。
「うん……。一度に全部感情を処理する必要なんて無いよ。また、ここへ来たときに何度でも見せて貰えば良いんだもの。私達にはまだまだ、時間はたっぷりとあるんだからさ」
私はレイフレッドに寄り添い、彼が落ち着く時をじっと待ち続け――書庫の中で十二時の鐘の音を聞いた。
0
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
ぽっちゃり令嬢の異世界カフェ巡り~太っているからと婚約破棄されましたが番のモフモフ獣人がいるので貴方のことはどうでもいいです~
翡翠蓮
ファンタジー
幼い頃から王太子殿下の婚約者であることが決められ、厳しい教育を施されていたアイリス。王太子のアルヴィーンに初めて会ったとき、この世界が自分の読んでいた恋愛小説の中で、自分は主人公をいじめる悪役令嬢だということに気づく。自分が追放されないようにアルヴィーンと愛を育もうとするが、殿下のことを好きになれず、さらに自宅の料理長が作る料理が大量で、残さず食べろと両親に言われているうちにぶくぶくと太ってしまう。その上、両親はアルヴィーン以外の情報をアイリスに入れてほしくないがために、アイリスが学園以外の外を歩くことを禁止していた。そして十八歳の冬、小説と同じ時期に婚約破棄される。婚約破棄の理由は、アルヴィーンの『運命の番』である兎獣人、ミリアと出会ったから、そして……豚のように太っているから。「豚のような女と婚約するつもりはない」そう言われ学園を追い出され家も追い出されたが、アイリスは内心大喜びだった。これで……一人で外に出ることができて、異世界のカフェを巡ることができる!?しかも、泣きながらやっていた王太子妃教育もない!?カフェ巡りを繰り返しているうちに、『運命の番』である狼獣人の騎士団副団長に出会って……
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~
深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。
ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。
それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?!
(追記.2018.06.24)
物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。
もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。
(追記2018.07.02)
お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。
どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。
(追記2018.07.24)
お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。
今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。
ちなみに不審者は通り越しました。
(追記2018.07.26)
完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。
お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!
前世ブラックOLの私が転生したら悪役令嬢でした
タマ マコト
ファンタジー
過労で倒れたブラック企業勤めのOLは、目を覚ますと公爵令嬢アーデルハイトとして転生していた。しかも立場は“断罪予定の悪役令嬢”。だが彼女は恋愛や王子の愛を選ばず、社交界を「市場」と見抜く。王家の財政が危ういことを察知し、家の莫大な資産と金融知識を武器に“期限付き融資”という刃を突きつける。理想主義の王太子と衝突しながらも、彼女は決意する――破滅を回避するためではない。国家の金脈を握り、国そのものを立て直すために。悪役令嬢の経済戦争が、静かに幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる