47 / 65
第四章 生還
弐話 九死に一生
しおりを挟む
目を開けると、皆の心配そうな顔が私の顔を覗き込んでいる様がまず目に入った。
「良かった……! 陽彰ちゃんが起きた!」
私の手を取りわんわん泣いている優菜ちゃん。
大きく長いため息を吐きながら両手で顔を覆ってしまった草治さん。
万歳しながら大喜びしている蒼月さんと、それを困った様に眺めながら笑う華乃さん。
私の額の上に乗り、ポカポカ叩いてくる晴明。
状況が把握できると同時に腹の痛みが襲ってきた。
「……まだ動くな、傷は縫ったが完治はしていないんだ」
草治さんに肩を押さえられ、布団に身体を固定される。
「内蔵は無事だったが静脈を縫った。表面的な傷だけなら治癒術て治しても良かったが、中の傷は妙な癒着を起こす可能性があって、ある程度治るまでは手が出せなかった。……お前が目覚めてくれて本当に良かったよ」
……この草治さん、この世界では珍しく外科手術の出来るヒトだったらしい。ついでに優秀な薬師付。
どうやら私は運良く九死に一生を得た様だった。
「助けてくれて、ありがとうございます。――それと。ご迷惑おかけしました」
草治さんに抜糸してもらい、治癒術をかけて貰ってようやく起き上がる事を許された私は深々と頭を下げた。
「それは、むしろこちらの台詞だろう。……あの様な狂人と私達は同じ一族なのだから。今度こそ私達を恐れて、離れたいと願うと思っていたんだがな」
「それは有り得ません!」
私は慌てて意思疏通のできない日本で出会った妖の話を幾つも並べ立てた。
「だからっ、直接――それも訳もなく酷い事とかされない限りは嫌ったりなんかしませんから……!」
あんなのに襲われても、彼らに助けられたから今私はこうして生きていられるんだから。
「それ……本当に……?」
涙で目を真っ赤に腫らした優菜ちゃんが上目使いに尋ねてくる。……可愛い。つい髪の毛撫で撫でしながら頷いた。
「ん。……とは言えもうしばらくは血をあげられないけど」
「あ、当たり前です! 私は薬師ですよ! 怪我していっぱい血が出て貧血気味の人から血を吸うなんて事しませんよ! と言うかお兄様あたりが吸おうとしたら私が止めますから!」
「おいコラ優菜、俺だって医者だ。ンな阿呆な事するかよ」
「……とにかくっ、陽彰ちゃんはしばらく増血剤を毎日飲んで下さいね!」
「ああ、それ、さ……」
「はい?」
「うん、名前。呼び捨てでいいよ。ずっと気になってたんだ」
「あ……じゃ、じゃあ……陽彰……?」
「うん」
「じゃ、じゃあ私も! 私の名前も呼び捨てでお願いします!」
「なら俺も呼び捨てでいいよ、陽彰」
「おう、なら俺も!」
「じゃあアタシもついでに」
そしてやっと皆の顔に笑顔が戻ったのだった。
「良かった……! 陽彰ちゃんが起きた!」
私の手を取りわんわん泣いている優菜ちゃん。
大きく長いため息を吐きながら両手で顔を覆ってしまった草治さん。
万歳しながら大喜びしている蒼月さんと、それを困った様に眺めながら笑う華乃さん。
私の額の上に乗り、ポカポカ叩いてくる晴明。
状況が把握できると同時に腹の痛みが襲ってきた。
「……まだ動くな、傷は縫ったが完治はしていないんだ」
草治さんに肩を押さえられ、布団に身体を固定される。
「内蔵は無事だったが静脈を縫った。表面的な傷だけなら治癒術て治しても良かったが、中の傷は妙な癒着を起こす可能性があって、ある程度治るまでは手が出せなかった。……お前が目覚めてくれて本当に良かったよ」
……この草治さん、この世界では珍しく外科手術の出来るヒトだったらしい。ついでに優秀な薬師付。
どうやら私は運良く九死に一生を得た様だった。
「助けてくれて、ありがとうございます。――それと。ご迷惑おかけしました」
草治さんに抜糸してもらい、治癒術をかけて貰ってようやく起き上がる事を許された私は深々と頭を下げた。
「それは、むしろこちらの台詞だろう。……あの様な狂人と私達は同じ一族なのだから。今度こそ私達を恐れて、離れたいと願うと思っていたんだがな」
「それは有り得ません!」
私は慌てて意思疏通のできない日本で出会った妖の話を幾つも並べ立てた。
「だからっ、直接――それも訳もなく酷い事とかされない限りは嫌ったりなんかしませんから……!」
あんなのに襲われても、彼らに助けられたから今私はこうして生きていられるんだから。
「それ……本当に……?」
涙で目を真っ赤に腫らした優菜ちゃんが上目使いに尋ねてくる。……可愛い。つい髪の毛撫で撫でしながら頷いた。
「ん。……とは言えもうしばらくは血をあげられないけど」
「あ、当たり前です! 私は薬師ですよ! 怪我していっぱい血が出て貧血気味の人から血を吸うなんて事しませんよ! と言うかお兄様あたりが吸おうとしたら私が止めますから!」
「おいコラ優菜、俺だって医者だ。ンな阿呆な事するかよ」
「……とにかくっ、陽彰ちゃんはしばらく増血剤を毎日飲んで下さいね!」
「ああ、それ、さ……」
「はい?」
「うん、名前。呼び捨てでいいよ。ずっと気になってたんだ」
「あ……じゃ、じゃあ……陽彰……?」
「うん」
「じゃ、じゃあ私も! 私の名前も呼び捨てでお願いします!」
「なら俺も呼び捨てでいいよ、陽彰」
「おう、なら俺も!」
「じゃあアタシもついでに」
そしてやっと皆の顔に笑顔が戻ったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる