60 / 65
第三章 想いのありか
参話 再びの悲劇
しおりを挟む
付き合う事になった、と聞かされて。
上機嫌で笑う蒼月と、普段と全く変わらない華乃を見比べて。
「え、いつから……? というかどちらから? てかこないだそんな話してなかったですよね?」
思わず尋ねた。
「……話だけは前々から貰ってたんだけどねぇ。私はその気じゃなかったから断ってたのさ」
なら、蒼月さんからのアプローチだったのか……。
「ああ、だが付き合ったからってこのパーティーを放り出すつもりはねぇからな。そこんとこ誤解してくれんなよ?」
――と。そんな話を聞かされた朝。
驚きながらも支度をして皆で門へと向かう。
都での用事は全て済んだし、さっさと海の街へ行って美味しい海鮮料理を食べるんだ!
……と、張り切っていたつもりだったんだけど。
「お待ち下さい」
街を出るのにも身分証明書が必要と言われて見せたらこの反応。……私達別に何も悪い事はしてませんよ?
だけど。
「――何か不備があったか?」
「いえ。しかし通達にあったお名前でしたのでお呼び止め致しました」
「……通達だと?」
「はい、お屋敷にいらっしゃるようお伝えせよと仰せつかっております」
お屋敷、と、草治に言うからには緋川の――彼が捨てたと言い、関わりたくないからこそ早々に都を出ることにした実家の事なんだろう。
「……そうか」
草治は目を伏せ一旦引き下がり、街中へと戻った。
「――お兄様……」
「しっ、……門は何もここだけではない。別の門へ行くぞ。通達の事を出されたら、既に他の門で聞いて用事は済ませたと言えば良い」
草治はすたすたと歩き始め――
「……貴方の事だ。そう言うだろうと思ってましたよ」
その直後、不意に背後に低い声が降って来た。
「草治!」
とっさに蒼月が優菜を庇い、彼女を腹の下に隠して道に伏せた。だけど、少し前を歩いていた草治には届かない。私の隣を歩いていた華乃は私を自分の背後に隠し――
直後、パッと血飛沫が噴水のように道に撒き散らかされた。
「キャァァァァ!」
他に一般人も多数いる街の往来だ。
目抜通りからは外れているとはいえ、人通りはそれなりにある。
注目を集めた凶手はすぐに姿をくらました。
「草治!」
……私の時もこんな感じだったんだろうか?
人目はパーティーメンバー以外皆無だったし、草治という医者がいた。だけど……
「お兄様!」
優菜が急いで背負っていた薬篭を下ろして中身を探り始めるけれど、この状況で薬師に出来る事は気休め程度だろう。これは外科手術が必要な怪我だ。
だけど、蒼月や華乃は冷静だった。
「草治、飲め!」
上機嫌で笑う蒼月と、普段と全く変わらない華乃を見比べて。
「え、いつから……? というかどちらから? てかこないだそんな話してなかったですよね?」
思わず尋ねた。
「……話だけは前々から貰ってたんだけどねぇ。私はその気じゃなかったから断ってたのさ」
なら、蒼月さんからのアプローチだったのか……。
「ああ、だが付き合ったからってこのパーティーを放り出すつもりはねぇからな。そこんとこ誤解してくれんなよ?」
――と。そんな話を聞かされた朝。
驚きながらも支度をして皆で門へと向かう。
都での用事は全て済んだし、さっさと海の街へ行って美味しい海鮮料理を食べるんだ!
……と、張り切っていたつもりだったんだけど。
「お待ち下さい」
街を出るのにも身分証明書が必要と言われて見せたらこの反応。……私達別に何も悪い事はしてませんよ?
だけど。
「――何か不備があったか?」
「いえ。しかし通達にあったお名前でしたのでお呼び止め致しました」
「……通達だと?」
「はい、お屋敷にいらっしゃるようお伝えせよと仰せつかっております」
お屋敷、と、草治に言うからには緋川の――彼が捨てたと言い、関わりたくないからこそ早々に都を出ることにした実家の事なんだろう。
「……そうか」
草治は目を伏せ一旦引き下がり、街中へと戻った。
「――お兄様……」
「しっ、……門は何もここだけではない。別の門へ行くぞ。通達の事を出されたら、既に他の門で聞いて用事は済ませたと言えば良い」
草治はすたすたと歩き始め――
「……貴方の事だ。そう言うだろうと思ってましたよ」
その直後、不意に背後に低い声が降って来た。
「草治!」
とっさに蒼月が優菜を庇い、彼女を腹の下に隠して道に伏せた。だけど、少し前を歩いていた草治には届かない。私の隣を歩いていた華乃は私を自分の背後に隠し――
直後、パッと血飛沫が噴水のように道に撒き散らかされた。
「キャァァァァ!」
他に一般人も多数いる街の往来だ。
目抜通りからは外れているとはいえ、人通りはそれなりにある。
注目を集めた凶手はすぐに姿をくらました。
「草治!」
……私の時もこんな感じだったんだろうか?
人目はパーティーメンバー以外皆無だったし、草治という医者がいた。だけど……
「お兄様!」
優菜が急いで背負っていた薬篭を下ろして中身を探り始めるけれど、この状況で薬師に出来る事は気休め程度だろう。これは外科手術が必要な怪我だ。
だけど、蒼月や華乃は冷静だった。
「草治、飲め!」
0
あなたにおすすめの小説
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する
namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。
転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。
しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。
凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。
詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。
それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。
「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」
前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。
痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。
そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。
これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする
初
ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。
リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。
これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる