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第四章 海の恵みを求めて
壱話 副作用
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「草治、怪我の具合はどうだ?」
「血は止まった。傷も一応塞がったらしい。ちょっと動きすぎたらまた開きそうだが、このくらいなら優菜の薬で何とかなる」
「よ、よかった……!」
草治の言葉に優菜がすすり泣く。
私はと言えば……正直まだまだ余裕はある。
「あの、必要ならもう少しくらいなら血を提供できますよ?」
せめてもう少し傷を治して簡単には開かないくらいにまではして欲しい。……あんなスプラッタな光景は、魔物相手なら問題なくとも人、それも仲間のものでなんて見たいはずがなかったから。
「止めておけ。それ以上血を俺に吸われればあまり良くない影響が出かねない。……というか、加減が出来た気がしなかったからな、既に体験したんじゃないか?」
「……俺が声をかけるまで正気じゃなかっただろ。今回は非常事態だったから、ギリギリまで止めなかったが、普段の吸血であんな事になったなら、俺は草治を殴り倒してるぜ」
彼らが言うには、吸血鬼という種族は吸血によって人を催眠状態にしてしまえるらしい。……そういえば何か夢見心地になっていた覚えがある。
「それも、俺達みたいな魔族の別種族なら耐性があるからまず効かないが、人間はそれがないからな、良く効くんだよ」
そしてそれは多く血を吸われれば吸われる程深く侵されていくのだという。
「こいつは吸血鬼だ。人間のお前さんより遥かに頑丈で傷の治りも早い。当面の出血が治まればもう命の危険はないから安心しろ」
「はい、その通りです。この程度の傷、私の薬があれば二、三日で治ります。陽彰が血をくれたお陰です。妹としても、パーティーメンバーとしても、陽彰には感謝していますわ」
そうか、この傷が彼らの感覚だと「この程度」になってしまうのか。
本人含めて全員から拒否されてしまえばそれ以上強くも言えず、私は静かに優菜の手当てを見守った。
「だが、あの男は完全に草治を殺したと思ってるだろうからな。あてが外れて良い気味だぜ」
「はは、大方陽彰に怖がられて逃げられて、助けを得られずあえない最期を……って台本だったんだろうがね。脚本家は陽彰を見誤っていたようだね」
「だが、このまま都を出れば遅かれ早かれまた緋川が煩かろう。さっさと都を出よう」
「そうだな。またしばらく優菜の亜空間で世話になるとするか」
手当てを終えた兄妹がゆっくり立ち上がる。
「歩くくらいなら問題なさそうだ。さっさと都を出よう」
「……その前に草治は着替えろ。流石に血染めの着物じゃ門を潜る前に警らの兵に質問攻めにされるぞ」
そして、私達は今度こそ都を後にしたのだった。
「血は止まった。傷も一応塞がったらしい。ちょっと動きすぎたらまた開きそうだが、このくらいなら優菜の薬で何とかなる」
「よ、よかった……!」
草治の言葉に優菜がすすり泣く。
私はと言えば……正直まだまだ余裕はある。
「あの、必要ならもう少しくらいなら血を提供できますよ?」
せめてもう少し傷を治して簡単には開かないくらいにまではして欲しい。……あんなスプラッタな光景は、魔物相手なら問題なくとも人、それも仲間のものでなんて見たいはずがなかったから。
「止めておけ。それ以上血を俺に吸われればあまり良くない影響が出かねない。……というか、加減が出来た気がしなかったからな、既に体験したんじゃないか?」
「……俺が声をかけるまで正気じゃなかっただろ。今回は非常事態だったから、ギリギリまで止めなかったが、普段の吸血であんな事になったなら、俺は草治を殴り倒してるぜ」
彼らが言うには、吸血鬼という種族は吸血によって人を催眠状態にしてしまえるらしい。……そういえば何か夢見心地になっていた覚えがある。
「それも、俺達みたいな魔族の別種族なら耐性があるからまず効かないが、人間はそれがないからな、良く効くんだよ」
そしてそれは多く血を吸われれば吸われる程深く侵されていくのだという。
「こいつは吸血鬼だ。人間のお前さんより遥かに頑丈で傷の治りも早い。当面の出血が治まればもう命の危険はないから安心しろ」
「はい、その通りです。この程度の傷、私の薬があれば二、三日で治ります。陽彰が血をくれたお陰です。妹としても、パーティーメンバーとしても、陽彰には感謝していますわ」
そうか、この傷が彼らの感覚だと「この程度」になってしまうのか。
本人含めて全員から拒否されてしまえばそれ以上強くも言えず、私は静かに優菜の手当てを見守った。
「だが、あの男は完全に草治を殺したと思ってるだろうからな。あてが外れて良い気味だぜ」
「はは、大方陽彰に怖がられて逃げられて、助けを得られずあえない最期を……って台本だったんだろうがね。脚本家は陽彰を見誤っていたようだね」
「だが、このまま都を出れば遅かれ早かれまた緋川が煩かろう。さっさと都を出よう」
「そうだな。またしばらく優菜の亜空間で世話になるとするか」
手当てを終えた兄妹がゆっくり立ち上がる。
「歩くくらいなら問題なさそうだ。さっさと都を出よう」
「……その前に草治は着替えろ。流石に血染めの着物じゃ門を潜る前に警らの兵に質問攻めにされるぞ」
そして、私達は今度こそ都を後にしたのだった。
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