80 / 192
ダンジョン村で
8-8 足りないもの
しおりを挟む
三階層はジャングルで毒持ち爬虫類含む中型の魔物が出た。エリアボスはビッグボア、ボスはキングボアとミニボアの群れ。四階層は逆に寒冷地の常緑樹の針葉樹林で鹿や狼など比較的体格の大きい魔物が出た。
罠はまだ分かりやすいけれど、階を降りるごとに厄介な新しい罠が増える。
――フロアボスのアイアンベアを倒して五階層へと降りた瞬間に甘い香りが満ちた空間に、色とりどりの花や果実を付けた木々が集まる森を見た瞬間、レンが押し戻し私達をボス部屋まで退避させた。
「……今日はここまでだ。今日の装備じゃこの階は抜けられねぇ」
そう言って今日、五日目の攻略を取り止め引き上げるべきとそう言った。
「さっきのあの甘ったるい匂い。気を付けた方が良い。多分何か良くない作用を俺達にもたらす何かが含まれてると思う」
「うーん、噂じゃ特に話題にもなってなかったけど……。こんな低層じゃもっと下層に潜ってるパーティーなんか沢山居るんだから、ここまで情報がないのは変だよね?」
「ああ、だがおそらくすぐに気付けるような分かりやすいのじゃなく、デバフレベルのちょっとしたペナルティで、気にも留めない話なんだと思う」
「ならなんで止めた?」
「そりゃまだダンジョン慣れしてねぇ初心者だらけだからだ」
この階で受けた効果がいつまで続くのか分からない。どんな効果が付くのかも分からない。そんな状況で奥まで進んで、不味いと思ってから引き返すのでは帰り道でトラブルが起こる可能性が高く、無事に生還出来る確率は下がる。
「まだ上層だからと油断して、けど問題なく済んだとしてだな。そういう経験を積んじまうと下層の本当にヤバいヤツに当たった時も危機感が持てずに油断して――なんて事例もよくある話なんだよ」
冒険者稼業で油断は大敵。ダンジョン攻略中は特に。
「装備をきっちり整え直してから再挑戦するぞ」
ダンジョン経験者にそうきっぱり言われたら、私達も無理を通そうとは思わない。
「でも、サンプルだけ採取しても良いかしら? 対策装備って、売ってるかもしれないけど場合によったら私が作る方が良いかもしれないし、ちゃんと効果は検証しておきたいし」
「……分かった、俺が取ってくる」
そう言ってレンが離れ、旧メンバーだけが四階層の寒い森に残る。
「――駄目ですわね、斥候役もそうですけど、やはり情報も経験もまだまだ足りてませんわ」
「悔しいけど、何でも最初はそんなもんじゃない?」
「そうだよ。これまではイマルが先回りして対策して教えてくれてたけど、それでだって私なんか最初は本当に何も出来なかったんだから」
そんな会話をしていた、その時。
ズン、と。日本で暮らしていた私にとってはある意味馴染みの感覚が私達を襲った。
罠はまだ分かりやすいけれど、階を降りるごとに厄介な新しい罠が増える。
――フロアボスのアイアンベアを倒して五階層へと降りた瞬間に甘い香りが満ちた空間に、色とりどりの花や果実を付けた木々が集まる森を見た瞬間、レンが押し戻し私達をボス部屋まで退避させた。
「……今日はここまでだ。今日の装備じゃこの階は抜けられねぇ」
そう言って今日、五日目の攻略を取り止め引き上げるべきとそう言った。
「さっきのあの甘ったるい匂い。気を付けた方が良い。多分何か良くない作用を俺達にもたらす何かが含まれてると思う」
「うーん、噂じゃ特に話題にもなってなかったけど……。こんな低層じゃもっと下層に潜ってるパーティーなんか沢山居るんだから、ここまで情報がないのは変だよね?」
「ああ、だがおそらくすぐに気付けるような分かりやすいのじゃなく、デバフレベルのちょっとしたペナルティで、気にも留めない話なんだと思う」
「ならなんで止めた?」
「そりゃまだダンジョン慣れしてねぇ初心者だらけだからだ」
この階で受けた効果がいつまで続くのか分からない。どんな効果が付くのかも分からない。そんな状況で奥まで進んで、不味いと思ってから引き返すのでは帰り道でトラブルが起こる可能性が高く、無事に生還出来る確率は下がる。
「まだ上層だからと油断して、けど問題なく済んだとしてだな。そういう経験を積んじまうと下層の本当にヤバいヤツに当たった時も危機感が持てずに油断して――なんて事例もよくある話なんだよ」
冒険者稼業で油断は大敵。ダンジョン攻略中は特に。
「装備をきっちり整え直してから再挑戦するぞ」
ダンジョン経験者にそうきっぱり言われたら、私達も無理を通そうとは思わない。
「でも、サンプルだけ採取しても良いかしら? 対策装備って、売ってるかもしれないけど場合によったら私が作る方が良いかもしれないし、ちゃんと効果は検証しておきたいし」
「……分かった、俺が取ってくる」
そう言ってレンが離れ、旧メンバーだけが四階層の寒い森に残る。
「――駄目ですわね、斥候役もそうですけど、やはり情報も経験もまだまだ足りてませんわ」
「悔しいけど、何でも最初はそんなもんじゃない?」
「そうだよ。これまではイマルが先回りして対策して教えてくれてたけど、それでだって私なんか最初は本当に何も出来なかったんだから」
そんな会話をしていた、その時。
ズン、と。日本で暮らしていた私にとってはある意味馴染みの感覚が私達を襲った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
3,158
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる