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第一章

あれ、意外とイケメン……?

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    「――お前を、見せ物にする気は無ぇよ」

   けれど、ブラームスは私の決死の願いを私の頭を撫でながら否定した。

    「言っただろう。契約を交わした以上はお前を庇護する義務があるんだと。――まぁ、ドンピシャでこの状況を予測してた訳じゃないが、似たようなろくでもねぇ状況はごまんと想定していたからな。……何の対策もせずにこの場に臨んだとでも思ったか?」

    そうニヤリと笑ったブラームスが、何でか凄く格好良く見えた。

    「おら、テメーでやらかした事の言い訳はテメーでやりやがれよ、クソ親父」

    どこからか取り出したタブレット端末を掲げると、その画面にはあのクソ神の姿があった。

   「なっ……!    アルゼン様……!」

    へー。あのクソ神、アルゼンて名前なのか。付き合いはそれなりに長いのに初めて知ったよ。
    ……ん、薄情だって?     けど、異世界に送り込まれる時にちらっと会うだけの迷惑野郎の名前なんか別に知りたくもなかったんだよ、神という肩書きだけあれば呼ぶのに不便も無かったしさ。

    しかし今の今まで偉そうにしていた奴が、急にペコペコへりくだり始める様は滑稽というか哀れというか……。

    「この世界は、こういう世界なんだよ。こんな奴は珍しくねぇ。特にまだ己の世界を持たない修行中の奴なんかこんなんばっかさ。……まあ、能力無しと判断されれば即処分っつー世界だから分からないでもないが」
    それは。神の世界と言いながら、一人前になるまではまるで成績が全ての家畜の世界の様だった。

   それでもスタートラインや与えられるチャンスが平等であるならまだしも、生まれで変わる待遇の差。確かに世界に絶望を覚えても仕方ない事なのかもしれなかった。

    「お前のお陰で死ぬわけにもいかなくなったとなれば、本気で俺の世界を手に入れてやる。……今回は仕方ないとは言え、やっぱ親父頼みなのは格好悪いしな」

    アルゼンに言い負かされた男がすごすご逃げ帰り。

   「おおっ、ようやくやる気になってくれたかい、ブラームス!」
    アルゼンは画面の向こうで大喜びでニコニコ謎のダンスを踊りまくっていた。
   「……アンタの手のひらの上で踊らされる様で気に食わないが、な。まあ一応礼は言っとこう」
   「うんうん。楽しみにしてるよ♪」

   ――そして、その翌日。
   男が居なくなった後、たっぷり私の血を吸ったブラームスが、星全体に行き渡るエリアを展開した。
    その後も順調に下僕を量産し。

    箱庭の様な惑星国家が誕生するまで、それから半年もかからなかった。
    こいつ、やれば出来る子だったのか!
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