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第31話 シナップくんの昇格試験
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ロデリックくんに勧められてガイアスくんが魚料理を、私が肉と野菜の特製スープを堪能していると、抽選をのくじを引きを終えたバッシュくんたちが、揃って戻ってきた。
バッシュくんとノアくんがそれぞれ1つ、小さめの紙袋を抱えている。
調味液を手にいれたようだ。
シナップくんは紙の包みを3個持っているけれど元気がない。
エレイナさんはエドくんと一緒に3人の後ろを大きな紙の包みを胸に抱えて歩いて来た。
テーブルの席まで戻るとシナップくんが言った。
「ジャックくん。すまないのだ。ボクはエドの分と合わせて4回も引かせてもらったのに、『調味液』を1つも引き当てることが出来なかったのだ」
「け、けど安心するのだ!『調味液』は買わなくても見事バッシュとノアが手に入れたのだ。ボクはダメだったけど。不甲斐ないのだよ」
なるほど。それで元気がないのか。
「そういうことは良くあることだよ」
「そうだぞ!ハズレても気にすることはない」
「それはオレの運の問題だ。シナップのせいじゃない」
するとエレイナさんとバッシュくんとノアくん3人が揃って慌てたように言った。
エドくんも何か言いたそうにピョン!と跳ねた。
「違うの!シナップちゃんはハズレたわけじゃないの」
「うん、シナップはハズしたわけじゃないんだ」
「はい、当たりなんです!」
そういえばハズレたにしては、袋や包みが大きい。
他のヒトがくじでもらったらしい砂糖菓子の包みは、もっと小さいようだし。あと包みになる景品は……。
「んんん??」
どういうことかと聞いてみた。
最初にくじを2回ずつ引いたのはバッシュくんとノアくん。
箱に入れられた中に番号と景品名が書かれたくじを取り出し、その場で開いて確かめる形式。
それぞれ調味液と砂糖菓子を1つずつ引いたそうだ。
説明しながらバッシュくんとノアくんが砂糖菓子の小さな包みを紙袋から出して見せてくれた。
2人の後でシナップくんがエドくんの代わりに合わせて4回くじに挑戦することになったらしい。
エドくんはジュエルスライムだから手がないしね。
ほんとうは魔力でどうにかできそうだけど。
怪しまれてもいけないと考えたのだろう。
「ボクも調味液を持ち帰るのだ。小さなぬいぐるみと砂糖菓子はだいぶなくなっていて、調味液はまだ当てているヒトが少ない。いけるのだ」
ーーーーーーー
1等 2名様宿泊券 ✕1
2等 2名様食事券 ×3
3等 食堂のでかいぬいぐるみ(大) ×5
4等 2人前飛竜の肉(保存袋入) ×10
5等 食堂のぬいぐるみ(中) ×15
6等 調味液2個セット ×25
7等 食堂のぬいぐるみ(小) ×30
8等 砂糖菓子1袋 ×111
ーーーーーーー
リンリン、リンリン
「おめでとうございます、2人前飛竜の肉(保存袋入り)4等です」
「まだ3回引けるのだ」
カランコロン、カランコロン
「おめでとうございます、食堂ぬいぐるみ(中)5等です」
「………」
カランカラン!ポン!ポン!
「2等のお食事券!おめでとうございます!」
「2等だよシナップ!」
「……3回も調味液じゃないのだ。なぜなのだ。この1回に賭けるのだ。出るのだ、調味液!!」
その最後の1回でシナップくんは1等の宿泊券を引き当てたらしい。
「大丈夫、それは全部当たりだよ」
「大当たりだな」
「さっきの1等の当たりはお前だったのか」
「すごいではないか」
「そうよね!」
「はい」
「すごいよ」
『のだ!』
口々に祝われたところでシナップくんが言った。
「宿泊券もお食事券も飛竜の肉も、どれも2人分なのだ。ぬいぐるみはどうあつかえばいいのかわからないのだ。何に使うのだ」
◇
昼の15刻を回ってくると食堂からヒトも減ってきた。
まだいるお客の邪魔にならないように、気を付けながらも片付け始めている店員さんもいるようだ。
「そろそろ催しも終わる」
「飯も食い終わって腹も満たされた。そろそろ出ようか」
「そうだな」
「もうお腹一杯なのだ!」
元気を取り戻したシナップくんが言った。
「美味しかったね」
ノアくんとバッシュくんが満足そうに目を細めた。
忘れ物がないか確認して、それから頃合いを見て私たちも席を立つ。
会計を済ませるため、出入り口側にあるカウンターの列に並ぶ。
「エレイナ、先にシナップたちと店の外で待っててくれ」
ガイアスくんがエレイナさんに声をかけた。
するとロデリックくんが
「ガイアス、何を言っている。お前たちも外で待っていれば良い。羊君もだ。ここの支払いは私がするに決まっているだろう」
「いいのか?かなりの量を食べてるぞ?」
「私もかなり食べてるよ。それも『特製』のを。さすがに全部払わせるわけには」
私とガイアスくんが支払おうとすると、ロデリックくんが言った。
「お前たちが遠慮するとバッシュたちも遠慮する。ここは私に支払わせると良い」
ロデリックくんの金色の髪が食堂の照明でキラキラ輝いている。着ている服も白いシャツなので全体的に光って見える。
「わかった。シナップちゃん、バッシュちゃん、ノアちゃん、エドちゃん、ここは遠慮なくロデリックに任せて外で待ちましょう。ありがとうロデリック」
「悪いな!ロデリック」
「世話になるな。ご馳走さんロデリック」
「ありがとうロデリック君」
「ありがとうございます。ロデリックさん」
「ごちそうさま、ありがとうロデリックくん」
「ごちそうさまなのだ!」
『のだ!』
みんなでロデリックくんにお礼を言って、店の外に出るとすぐにガイアスくんとエレイナさんが言った。
「ロデリックが輝いて見えた」
「ええ」
ロデリックくんへの好感度が上がった。
◇
「じゃあ俺たちは西地区のギルド支部に戻る。合否に関係なく合流は6日後、出発は7日目の朝。何かあったらギルドに伝言を送る」
「了解。私たちは明日か遅くても明後日中には本部に到着するわ。あなたたちの試験終了の明明後日には中央を出て、その翌日に東門地区に移動している予定よ。6日後に東門支部で合流出来るわ」
「了解、試験が終わったらなるべく早く追う」
催しも終わり、充分な食事で一息ついた私たちは、合流までの段取りを確認して、冒険者ギルドの王都西門支部へ向かうガイアスくんとジャックくんを見送った。
「それじゃあ私たちも行きましょうか」
私たちの方はこれから1刻ほど歩いた先にある第六城壁内の宿に向かう。予約はしていないけれど空きがあれば宿泊が可能だ。
予定では今日1泊して明日の朝、中央のギルド本部へ向かうために宿を出る。
時刻魔導具で夜17刻を過ぎ、王都の地図を確かめながら、途中何事もなく無事に目的の宿に到着して部屋を食事付きで取ることが出来た。
宿は5階建築で、階段だけでなく昇降機が設けられている。
「お客様と飼い魔獣のご宿泊は、追加で3シルバーいただいて、6名様合計33,000ゴッズの先払いになります」
「承知した」
ロデリックくんはそういうと、受付で部屋代と人数分の料金を小金貨で支払ってお釣りの白銅貨7枚を受け取った。
そのまま私たちは係のヒトに部屋に案内してもらう。
部屋に着いてからエレイナさんと私で22,000ゴッズを黄銅貨2枚と白銅貨2枚でロデリックくんに手渡した。
ロデリックくんは食堂に続いて、また自分が支払うつもりだったようだけど、エレイナさんも私もそういうわけにはいかないからね。
パーティ代表のガイアスくんが相手なら多少事情は変わるけれど、それでも基本的に支払いは自分で行うものだ。
バッシュくんたちにも奢られっぱなしが当たり前の大人になって欲しくない。
案内された部屋は8人まで宿泊が可能な広めの部屋で、壁側に寝台が6つと作業机、小型の魔冷庫、部屋の中央よりに低めの長椅子とテーブルが備え付けられている。
窓には薄透布と厚手の窓掛け。
外は少し薄暗くなってきているけれど、上からの照明のおかげで室内は明るい。飾り気が少なくて過ごしやすそうだ。
部屋の備品は新式のものが多い。
そう言えば通路には魔導販売機が設置されていて、飲み物がいつでも買えるようになっていた。『島』で設置されているのは観光に訪れたヒト向けの商業施設1か所だけだ。
「新しそうなものが多いね」
「ほんとだね」
荷物を置いて部屋のなかをバッシュくんたちと確認していると
「シナップちゃん、甘食はご飯をちゃんと食べてからよ」
と、エレイナさんがシナップくんに声をかけた。
カマルで貰った自分用の焼き菓子の箱を、シナップくんが取り出して開けようとしたので、気がついたエレイナさんが注意したようだ。
「エレイナくんがガイアスくんみたいなのだ」
そう言いつつもシナップくんは素直に焼き菓子の箱を仕舞った。
日持ちするお菓子なので、焦らなくてもいつでも食べられるからね。
◇
「シナップ、君は準備を整えて“特殊技能”に昇格したまえ」
宿の部屋で落ち着くとロデリックくんが言った。“特殊技能”はバッシュくんとノアくんの冒険者ギルドと同じ級だ。
魔導ギルドが冒険者ギルドに登録可能な“特殊技能”のカードを発行する。
高度な魔導の知識と魔導技術が要求される取得が難しい級なので、銀級並みかそれ以上と見なされることもある。
「必要なのだ?」
シナップくんが尋ねると
「羊君は冒険者としてのランクは低いが商人ギルドでは銀級だ。私たちが一緒であれば行動制限は受けないだろう。だがシナップ、君は違う」
「今のカードのままだと立ち入りの制限を受けちゃうのかね?!」
「アルファルト大陸なら魔導ギルドの長であるイシュタルの口添えがあれば、基礎級のままでも問題無いかもしれないが。場所や依頼によってはそういうことが起きる。特に東の大陸では君の実力を証明するものがないのでな。法も規則も全て同じではない分その可能性が高くなる」
「メルンでも君たちと一緒に行動するためには、必要というわけなのだね」
「そういうことだ。特殊技能なら実績が足りなくても実力を示せれば昇格出来る。バッシュたちと魔導関連で普通に話せている君なら対策すれば問題無いだろう」
「本当なのだ?試験は難しいのではないのかね?術を行使するだけなのとはわけが違うのではないのかね?」
シナップくんが少し心配そうにしはじめた。
ガイアスくんが学科で不安を抱えているのと似た感じかもしれないね。
「シナップなら大丈夫だよ!」
「うん!僕たちと対策すれば昇格は確実」
「そうね。シナップちゃんなら対策すれば間違いなく大丈夫よ」
「試験で昇格するには古代魔術文字は禁止!」
「わ、わかったのだ!よろしく頼むのだよ」
こうしてガイアスくんとジャックくんに続いて、シナップくんも試験に挑戦することになった。
私も支援魔術の習得に挑戦する。
エレイナさんとバッシュくんとノアくんの3人は、塔型迷宮の攻略で貰った魔導書の魔術習得を念頭に、地道で見えにくい努力を重ねている。
いつからなのか、私が投げ出してしまったものがそこにある。
◇
「王都の城門が閉まる頃合いね。そろそろ食堂に行く?もう少し休んでからにする?」
エレイナさんが窓の方を見てから、私たちに振り返って言った。薄い透布越しに外を見ると、だいぶ薄暗くなっている。
宿の食堂は夜20刻までの営業で、夜19刻頃に注文を締め切ると部屋に案内してくれたヒトが教えてくれていた。
急ぐほどではないけれど、食堂で食べるなら行った方が、ゆっくり食事が出来そうだ。
シナップくんたちが4人で相談して言った。
「晩ごはんなのだ」「行きます」「行く」『のだ!』
昼16刻近くまで食事をしたのでさほど空腹ではないけれど。
シナップくんは焼き菓子を食べようと思ったくらいだから、そこそこお腹が空いてきているのかもしれない。
4人とも小さな体で1刻以上歩いたからね。
彼らの返答にロデリックくんと私もうなずいた。
「それじゃあ食堂に行きましょう」
エレイナさんに促され、バッシュくんたちが椅子から降りた。
私とロデリックくんも立ち上がり、全員で食堂に向かうと、宿の食堂は他のお客さんで賑わっている。
案内されたテーブルの席につき、献立表の品目を楽しげに見ながら、シナップくんがロデリックくんに言った。
「ところでロデリックくん。特殊技能の試験のことで気がついたのだけど。こんなに急に決めて試験を受けさせてもらえるのかね?」
シナップくんの言葉にハッとなったのはロデリックくんよりも私たちだった。
「そう言えば、そうだね」「そうだった、申し込みは10日前までなんだ。明日申し込めても合流する日に間に合わないから、ガイアス君たちに日をまた延ばしてもらう?」
「ボクはバッシュたちが良ければかまわないのだ」
シナップくんがそう言うと、落ち着き払ったロデリックくんが言った。
「心配ない。仮申し込みならずいぶん前に済ませてある。後は王都魔導ギルド本部までシナップ本人が訪れ、ギルドマスターのイシュタルを指名すれば話が通じるようになっている」
イシュタルさんはシナップくんと話したがっていたからね。
「シナップがやって来るのを楽しみにして待っていると言っていた」
「…………ボクを売ったのかね。ロデリックくん」
◇
「どうせエレイナくんと懇意なイシュタルくんに取り入って、良い感じに取り計らってもらおうとかそういうのなのだ。汚れた大人なのだ……」
料理が運ばれてくるまでの間、特殊技能の件で少々衝撃を受けてしまったシナップくんは、こんな風にちょっとだけやさぐれた感じのことを言っていたけれど。
結果的に頑張れば資格が上がるのと、イシュタルさんには甘食を貰った恩、ロデリックくんがいう行動制限の心配がある話は本当なので、深く考えるのを止めたようだ。
食事を終えて部屋に戻る頃にはすっかりいつものシナップくんだ。
本人に黙って話を進めるのは感心しないけれど、感謝すべき有り難い話だからね。
私はシナップくんの様子にほっと胸を撫で下ろした。
「中央に行ったら魔導ギルドへすぐに向かうのだ」
ロデリックくんから受験札を受け取って、早速バッシュくんたちとテーブルで勉強を始めている。魔導ギルドで受験札とシナップくんを魔力で紐付けすれば試験準備は完了だ。
「ガイアスさんに預けていた本を持ってきていて良かったね」
「うん。復習のためと鍛練の重しのためだったけど」
「2人ともありがたいのだ」
鍛練の重しというのは、筋力向上のためだろうか。
私も支援魔術を覚えなくては。
購入した初心者向けの魔導書を荷物から取り出し、習得する魔術を決めるために開いた。
本には魔力操作についてと、いくつかの系統に分けた14種類の魔導術が図解付きで載っている。
ただ、身体能力を向上させるような魔術は初心者向けには少ない。
この『俊足』は良さげだけれど。
持続時間は数5ほど 指定可能距離は自身を含む前方1ノーツ範囲内 効果は1人
効果が5つ数えるほどでは短すぎるし、相手への連続の使用も推奨されていない。さらに使用から4刻以上の時間を空けるよう注意書きがある。
『走者』
持続時間は1刻 指定可能距離は『俊足』と同じで自身を含む前方1ノーツ範囲内、効果も1人だけだ。
※1ノーツはメートル換算2メートル
魔力で身体的な補助をして足腰にかかる負担を軽減し、持久力を向上させる術式だ。効果は低いけれどこれは悪くないかもしれない。図を見ると腰の辺りを支えるように魔術が展開するようだ。
これは1日3回以上は推奨されていない。
身体能力を向上させる魔術でこの本に載っているのは2つだけだ。
それがわかっても私はパラパラと魔導書のページを繰り返しめくっていった。
◇
ヒトの身体に直に作用する魔術は繊細で、初心者向けであっても難しい。
相手の身体にも魔力は流れているから、拒否反応があれば魔力は乱れて術として発動しない。
相手に流す魔力量が多い術であるほど魔力の操作は複雑になって難易度が高くなる。
本を見ながら習得する魔術をどれにするか迷っている私の様子を見てノアくんが言ってくれた。
「はじめは必要な魔力が少ない術を選ぶというのは正解です。相性の問題もありますから、発動がうまく行かなくても術が失敗だとは限りません」
バッシュくんたちによると、それだけではなく術をかけたい相手の魔力が術者より強力だと、相手に術を拒否されたり、発動しても魔力そのもので抵抗され、希に弾かれることはあるそうだ。
私がヒルデブラントくんに“地縛り”を発動させても、ひどい抵抗を感じていたのはそのせいだったのか。
私の力量からすると、効果があっただけでも幸運だったのかもしれない。
自分よりも魔力が多くて強い相手に“地縛り”が効果があるのも、相性と『魔力の強さ』が関係しているということになる。
それにしても、その理屈で行くと“二重奏”が全く効かないというガイアスくんとジャックくんは、バッシュくんたちより魔力自体は強力だということになる。
「僕らの支援魔術は受け入れて効いてるけど、攻撃されるのは本能的に拒否してるんだよね」
「普通、魔力が身体強化に大きく振れているヒトは魔術に対する耐性が低いのですが。謎です」
バッシュくんとノアくんはそう言うと、ロデリックくんの方をチラッと見た。魔術を無効化する白鎧を身につけないロデリックくんで、“二重奏”をちょっと試してみたいと思ったのかもしれない。
するとシナップくんが言った。
「推測なのだけど、ガイアスくんたちの魔力の源である元素は安定して結晶のようにかなり強力に結び付いている可能性があるのだよ」
それを聞いたノアくんとバッシュくんが顔を見合わせた。
「ああ、そうか。だから強化する方は受け付けて、魔力や体力を奪う僕とノアの“二重奏”を受けつけないんだ!」
◇
改めて魔力というのは奥が深いなと思いながら魔導書のページをめくる。いま必要なのは2つしか無いのだから決めるのは簡単なはずだけど決められない。
それを勉強しているのだと解釈してくれたノアくんたちが、一緒に付き合ってくれている。
「術式が正しく発動すれば多少の力量差は埋めることが出来ると言われていますから、改めて基礎から学ぶのは良いことです」
初心者向けの魔導書を、私と一緒に見ながらノアくんが言った。
私でも覚えられそうで、なおかつ必要な魔力が少なくて、それでいて役に立つ、という都合の良い支援魔術習得のために購入した本だ。改めて考えると少々恥ずかしいが仕方ない。
「マクスさんならもう少し違うのが使えると思うよ」
バッシュくんが円らな瞳のまま言ったけれど、私はとんでもないと首を振った。
術式が折角優れていても、魔力操作がうまくない私ではきちんと効果を得られる術にならないかもしれない。
実際にシナップくんから貰った魔導書の魔術はいくつか試したけれど、うんともすんともさせられなかった。
しかも魔力消費すらしなかった。
つまり、私が操作できてる魔力が少なすぎて、そもそも術式にならなかったのだと思う。
書いた術式や詠唱が合っていても、魔力が載っていなければ、それはただの文字と声だ。
おかげで実践が難しいことを再認識したし、自分の使える魔力が少ないことを思い知ったのである。
バッシュくんたちに相談にのってもらった私は、最終的に『俊足』と『走者』両方挑戦ことに決めた。
相手の魔力により干渉する術は『俊足』のようだからだ。
魔力の操作の練習には『俊足』の方が向いている。
移動では『走者』を試そう。
習得出来たら次だ。
風属性の魔術で荷物の重さを本の少し軽減させる魔術もあるのに気がついたのけれど、これはロデリックくんに却下された。
移動を止めずに楽になるという点で良い案だと思ったけれど、鍛錬によって疲労した場合には、荷を下ろして負荷を取り除き、休息を取って回復を図ったうえで、再び移動を再開する方がよいということだ。
「覚えるにしても後にするのが得策だ」
なるほど。
他にも、移動しながらでも術を行使出来るようになった方が良いなど、ロデリックくんから提案された私への課題は結構ある。
そう言えばエレイナさんもバッシュくんたちも、大掛かりな魔導術以外は動き回りながらでも術を発動させている。
ロデリックくんが出発を遅らせてでも、やりたかったことの意味が少しずつわかってきた。
エレイナさんやバッシュくんたちは基礎魔力と基礎体力の向上が課題だ。彼らは自主的に魔術習得も行っている。
「一度休憩にしない?」
エレイナさんがそう言ったのは勉強を開始して1刻ほど経った頃だった。
◇
王都に限らず多くの街や都市では、事故防止のため馬車などの乗り物の高速移動は専用の道でない限り、禁止されている。
当然ヒトであっても速すぎる移動は推奨されない。
馬車を利用しながら、私が覚えて使えるくらいの支援魔術で移動するのが、王都では鍛練との兼ね合いでちょうど良いというのがロデリックくんの提案なのだろう。
バッシュくんたちが勉強を一段落させて湯浴みをしている間、私は試しに『俊足』の術を自分に使ってみることにした。
本を読んでわかった気になっても、実際にやってみると出来ないことは多い。
この術は、特に手をかざすなどの動作は必要ない。
一番簡単なのは、魔力紙に術式を書き、その上から魔力を流す方法だ。
魔力紙は、書かれた術式に反応して魔力の流れを集める性質を持っている。
魔術文字は、魔力で書くと反応するように、長い時間をかけて研究・開発された特別な文字だ。
この方法なら、魔力紙は消耗するものの、あまり深く考えなくても必要な魔力が文字に乗って術式が発動する。
何度か繰り返せば、術式自体も覚えられるだろう。
術式が発動しない場合は、書いた術式が間違っていて術として成立していないか、術者が流す魔力の量が術に必要な量より少なすぎるか、多すぎる場合だ。
一部の魔導書の中にはこの魔力紙の性質を利用し、魔力を操作出来さえすれば使うだけで術が発動するものもある。
開いて魔力を流すだけ。
シナップくんの塔型迷宮で貰えた本や魔導書は、魔力で作られた複製なので、一部には同じような性質の魔導書があるのだけれど、実際にやってみると難しかったという話だ。
エレイナさんやバッシュくんたちは使えるようになっていたから、完全に私と彼らとの力量に圧倒的な差があるのは明白である。
私は手持ちの魔力紙に筆記具で自分自身を対象にした術式を書き込み魔力を流した。
『俊足』
反応が感じられない。魔力も消費した感じはない。
初心者向けの魔術本に載っている術式は、必要な魔力の量があらかじめ決められているものが多い。しかし、魔術文字を使うことによって多少魔力の量が正確でなくても発動するように工夫されている。
使用する魔力に属性の記載はなく、書き間違えたというわけでもない。
流した魔力が少なすぎたにちがいない。もう一度。
これは故郷の『島』の学舎で習った術よりも難しい。さすが都会だ。
魔獣たちだけでなく、魔術も島のものと難易度が違うのだ。
私はまたしても戦慄した。
◇
湯浴みをすませた後もバッシュくんたちは本を広げて勉強をしている。
エレイナさんが、備え付けの魔石ポットのお湯で淹れた、温かい飲み物の入った湯呑茶碗をテーブルにそっと置いた。カマル特産はちみつ入りの紅茶だ。
「ありがとう」「いただきます」「ありがとうなのだよ」
飲み物に気がついたバッシュくんたちが揃ってお礼を言うと、エレイナさんが言った。
「おつかれさま。きりのいいところで、今日はもう休んで寝た方がいいわ」
時刻魔導具を見ると夜23刻を過ぎ、明るい室内でも小さな12個の魔石が盤で微かに青い光を放っている。
明日は2刻ほどを体力強化のために徒歩での移動に費やす予定だ。体格差のあるバッシュくんたちには早足が求められる。
「エレイナくん、眠る前に甘食を食べちゃダメなのだ?」
シナップくんはそう言うと、アイテムバッグからカマルの焼き菓子の箱を取り出した。
シナップくんのアイテムバッグは空間魔術で塔の倉庫と繋がっている。
「そうね、勉強もしたし、少しなら食べた方が良く眠れそうね。甘食の時間にしましょうか。シナップちゃん、焼き菓子は2つまで」
エレイナさんはそう言うと、自分の荷物からも焼き菓子の箱を取り出した。
「わかったのだ。エド、お前にも1つわけてやるのだ」
『2つくれないのだ?!』
「1箱に7個しか詰められていないのだ。2つもあげると残り3つになってしまうのだ」
『買えばいいのだ。所長くんは他にも売ってると言ったのだ』
「他所にも出荷しているから、探せば買えるようなことは言っていたのだよ。でもどこでもとは違うのだ。買えるのがわかるまではボクは大事に食べる」
『シナップのケチ……』
「ケチじゃないのだ!1つはあげるのだ」
「エドちゃんが食べても平気なら、私のをあげる」「そんなに食べたいなら僕のもあげるよ」
ふたりの会話を聞いていたエレイナさんたちが笑いながら言った。
◇
翌日(ガイアスくんたちと別行動の2日目)
宿の食堂で朝食をすませたあと、冒険者ギルド本部へ向かうため、私たちは宿を後にする。
予定では歩きで1刻ほどかかる場所にある馬車乗り場に行き、すぐ近くにある第六城壁テルガノ通り2番街の商店街で食料を購入する。
「行ったことはないが、馬車乗り場から見えるほど近い商店街だ」
ロデリックくんが言うには、その商店街のアッカ商店に入荷される果物に集中力を高める効能があるそうだ。
見た目は紅くて丸に近い楕円形、皮の外からでも芳醇な香りがするのが特徴らしい。
「確かな筋の情報だが、まだ公の実験で実証されたものとは違うようだ。本当に効果があるかどうかは食べてみてからでないと判断出来ない。それでも行ってみるか?」
「その果実は美味しいのだ?」
「美味いと言っていた」
「他にも昼食に出来そうな物は売ってる?」
「アッカ商店に無くても、近くの商店をみれば買えるものがあるだろう」
「マクスさん、行ってみますか?」
エレイナさんたちが私にも聞いてくれた。
「そうだね、美味しくて昼食の準備にもなる。行ってみようか」
「では行こう。羊君、バッシュたちに支援魔術を」
私は昨夜成功させたばかりの支援魔術『走者』をバッシュくんたちに施す。
効果がわかりにくいので少し不安だけど、どうやら無事に発動しているっぽい。
術が気休め程度の効果しかないのは、バッシュくんたちが良くわかっている。無理はしないはずだ。
私がそう思った直後、バッシュくんとシナップくんとエドくん、ノアくんまでが、トコトコトコトコッと早足で歩きだした。
エドくんがそれを追いかける。
走ってはいないけれど、かなりの速さだ。
3人ともいつもより背負袋が重そう。重しに本とかを入れてる?
この調子のまま1刻以上歩ける?
「まずまずの効果のようだ。さすがだな羊君」
「流石です、マクスさん!」
エレイナさんとロデリックくんが、そう言ってバッシュくんたちを追うように歩き始めた。
料理の効能や魔術の効きというよりは本人たちのヤル気が高い。
大丈夫なんだろうか。
◇
「バッシュ、シナップ、見えてきたよ。テルガノ商店街」「うん、アッカ商店はどこだろう」
馬車乗り場近くのテルガノ2番街まで来た私たちはテルガノ商店街に到着していた。
宿を出てから1刻もかからずに2番街までこれた。
思いの外早足で歩くバッシュくんたちが、バテないか心配したけど今のところ大丈夫のようだ。
ただ、このあとも馬車に乗っての移動がまだある。
「アッカ商店は商店街入口を入ってすぐにある。見落としやすい見た目かもしれないな」
朝のうち、まだ開けていないお店もある。
「ひとつひとつ店の名前を見ていくのだ」
「あった。ねぇ、アッカ商店ってここじゃない?」
新鮮野菜という大きな4文字の下に、なぜか小さく“アッカド商店”と書かれている看板のお店をエレイナさんが発見した。
「たしかに。アッカ商店と書いてあるな」
「随分と小さく……」
「もっと奥にある店だったら、探すのを諦める小ささなのだよ」
店の入口の前に置かれた背の低い棚に、清浄剤など日用品等が少量置かれている。野菜や果物は店内で取り扱っているようだ。
扉を開けて店内に入ってみると、奥から少し冷えた空気が流れてきた。店内は思ったより明るい。
「いらっしゃい」
出入り口すぐに会計の台があって、店主さんらしきヒトが1人座っている。奥に向かって広い店内の入口付近には店内用のカゴ等が置かれていて、量は多くないけれど小さめの棚に保存の効きそうな食料や穀類などが袋詰めで売られている。
野菜や果物はその奥のようだ。
「最近入荷した果物で、集中力向上に効果があるものが入っていないか?あれば欲しい」ロデリックくんがお店のヒトに直接聞いた。すると「ああ、あれのことかな」とすぐに反応があって、お店のヒトは台から立ち上がると店内に出てきて、奥の店員さんに声をかけた。
「ちょっと、あれ、あれを取ってきて」「店長、あれってどれですか」「こないだ入荷したあれ」「ああ、あれですね。わかりました」
しばらく待つと奥から店員さんが現れて、紅い果物を入れたカゴを運んできてくれた。
「探してる果物はこれかな」
店長さんがカゴを指しながら聞いた。
「ロデリックさんが言った特徴そのものです」
「紅くて楕円なのだ」
「良い香りがしてる」
ロデリックくんもカゴの果物を確認して言った。
「これで間違いない。店主、いくらだ。買おう」
「えっ、買うの?高いよ?仕入値が上がって、売値がたった1個で3シルバー超えてるのが相場になってる」
「効能が判明したせい?」
「そうらしいね。どこかの研究者が大枚をはたいて、大勢で検証したらしいよ。もうすぐ大々的に他の施設やらなんやらも分析を開始するんだとか。本当ならスゴいけど、昔からある果物だよ」
「へぇー」
「買うの止めないけど。あんまり期待しない方がいいよ」そう言うと店長さんが笑った。
するとカゴを持ってきてくれた店員さんが
「私はその研究結果、信じられますよ。だって、この果物、店長の娘さんの好物じゃないですか。店長の娘さんって弓がすごくてハンターギルドで金級なんですよ」と言った。
「たまたまだ。儂や他の娘だって食べてるが同じにはなってない」
「店長、弓に挑戦したことは?」「ない」
◇
アッカ商店で目的の果物ウルカチアを購入した後は馬車乗り場から馬車に揺られて移動する。
「高速馬車を選んだのは正解だったろう」
座席にくつろいだ姿勢のロデリックくんが誇らしげに言った。
手に買ったばかりの果物を1つ持っている。
長距離での移動がメインの快速馬車は、通常運転の馬車より割高な代わりに移動が速く、内装も工夫がされていて馬車内でもゆったり快適な食事が可能なものが多い。
条件にあった馬車を探していると、ロデリックくんが第三城壁正門地区までの空きのある高速馬車を見つけた。
「快速より速いがどうする」
高速馬車は行き先や走れる幹線道が少ないものの、快速馬車より速く目的地へ到着する。
幸いなことに私たちは金銭面で余裕がある。子供であるバッシュくんたちに払わせる気は無いけれど。
「早く移動出来れば、その分余裕をもって勉強や鍛練が可能かもしれないね」
牽引する馬にもよるが、快速馬車だと第5城壁まで4刻、本部のある第三城壁まで直で行くなら8刻はかかる。そこからさらに馬車を乗り継いでギルド本部までおよそで2刻。
高速馬車なら2刻もあれば第五城壁、第三城壁まで4刻ほどだ。乗り継いで8刻はかからない。閉門時刻の前に到着するだろう。
快速も高速も揺れや事故の防止のため専用道にはさまざまな対策がされている。
私たちが乗った高速馬車の車内には、他に数組のお客さんが乗っていて、乗り場で購入した情報紙を読んだり、飲み物を飲んだりして目的地までの時間を過ごしていた。
座席の座具は、背もたれまで程よい厚みと弾力のある硬さで、楽な姿勢を維持しやすい。快速よりも頑丈に設えられた荷台は全体にメルンの魔導工業技術が利用されている。
4頭立ての馬車はすでに魔導車の侵入も禁止された高速馬車の専用道に入った。
視界の開けた、特別に大きく幅広い幹線道だ。
「こんなに速い馬車もあったのだ。中もなかなか快適なのだよ」
窓の外を流れる景色を見てから、私たちをふり返ってシナップくんが言った。
「重い荷よりヒトを乗せることに特化して、荷台の強度をあげながらの素材軽量化で馬の負担を減らしている。駿馬や競争車ほどではないが、それなりに速い」
「その中でもこの馬車は新型ですね」
ノアくんにロデリックくんがうなずいて続けた。
「これまで以上に内装も乗客の快適さが重視されている。座ったままの状態が長時間続いても疲労は少ない」
高めにされた荷台客室内の天井部分は、夜の明かりのため照明魔導具がはめ込まれ、空調のために風の魔石があちこちに取り付けられている。
「このまま降りずに第三城壁南門地区まで行こう。羊君の魔力操作の上達具合も良いようだからな」
「すぐに食べられる食料も買って準備万端だしね」
「足りなければガイアスから渡された保存食がある。食い物など乗り場でもどこでも買えると言ってもヤツは聞かん」
「そういえば私も渡されたよ」「私も」「ボクも」「僕も」「ボクもなのだ」
どうやらエドくん以外の全員に配ったようだ。
リリン、と小さく鈴の音のようなものが聞こえてエドくんがシナップくんの横で跳ねるような動きをした。
「エドのご飯はボクが持っているのだ。試供品のメルルクはエド、おまえが自分で持ってる。ガイアスくんも渡しようがないのだ」
どうやら鈴のような音はエドくんの魔獣語のようで、自分はもらってないと言ったのかもしれない。
「昼13刻くらいには西区『第三城壁西門』辺りみたい」
エレイナさんが馬車備え付けの運行予定が書かれた時刻板を見て言った。
「そうですね。第五城壁西門が11刻、第四城壁西門が昼12刻、昼13刻に西第三城壁西門『祝馬竜街乗り場』に到着予定になっています」
「そこで南門方面にお客を荷台ごと切り替えるんだね」
時刻板を一緒に覗き込んでバッシュくんとノアくんが言った。
板は魔導具らしく、日付入りの案内にもなっている。
時々文字が光る場所が現在の馬車のだいたいの位置のようだ。
第五城壁西門『レイリー街乗り場』が点灯している。
馬の休憩と交代のため停まっていた馬車が再び走り始めた。
歩きと馬車の移動で、今日はこの辺りで過ごすことになると思っていたけれど。
「今日中に冒険者ギルド本部まで行けそうね」
「はい、予定で昼16刻に正門地区の乗り場到着。残りの距離も速い馬車を使えば第三城壁正門跡に夜18刻より前に到着です」
乗り換えの時間を考えても余裕そうだ。
「遅れても城壁跡の中まで入れれば、ギルドはまだ開いてるから余裕だね」
バッシュくんのお墨付きも付いた。
「明日魔導ギルドに行って、試験の正式な手続きをしてもらうのだ」
「今日も対策だね」
「よろしく頼むのだ」
しばらくすると天井に設置された拡声器を通して次の乗り場で休憩を促す案内がされた。
「まだ朝11刻を過ぎたばかりだから時間があるね」
バッシュくんたちがそう言いながら、本を取り出し開いた。
◇
「この果物、甘くて美味しいのだ」
昼食後の甘味に早速購入した集中力を向上させる紅い果物、ウルカチアを食べている。
皮ごと食べたほうが良いと言うので、休憩時間に水で少し洗ったものだ。ロデリックくんは布で拭いて食べている。
「ホント、すごく甘くて美味しい」
「種がありませんね」
「割ってみると小さい粒はあるのだよ。おそらく種なのだ」
紅い実の内側は、ルビーのように紅く透き通って、艶やかな果肉がめいっぱい詰まっている。その果肉の中にとても小さな黒っぽい粒が数個。
「ほんとだ」
店主さんは珍しくもない果物のように言ってたけれど、バッシュくんやエレイナさんがはじめて食べる様子から、それほど知名度のある果物ではないようだ。
あまり出回っていないのだと思う。
エレイナさんたちだけでなく、私もはじめて見る果物だ。
見た目も効能も、味も香りも良いのに埋もれていたんだね。
もったいない。
果物を食べ終わると、再びバッシュくんたちが勉強を再開した。
私も彼らを見習い、魔導書を開こうとすると、ロデリックくんがおもむろに魔導書を差し出してきた。
「初心者向けが悪いものでもないが、君が選んだ魔導書は日常生活を便利にするもので、魔物との対峙や迷宮には適していない。魔力操作の上達の役に立つことは否定はしないが、どうせならこっちを使いたまえ」
そう言われて、差し出された本を受け取り開いてみた。
書いてある内容はわかるものの、明らかに習得難易度は高い。
「明日シナップたちが魔導ギルドで用を済ます間、ギルド本部の訓練所を使って実践を兼ねた特訓だ」
こうして私の明日の日程が決定したのだった。
◇
シナップくんたちが素晴らしい集中力で勉強を進める間も、馬車は順調に移動距離を伸ばしている。
昼14刻には西第三城壁南『カラハルド街馬車乗り場』に到着。
バッシュくんたちは馬車が完全に停まっても、少しの間気が付かないくらい熱心に勉強していた。
あと2刻もせず第三城壁正門跡近くにある乗り場へ到着する。
窓の外を流れていく遠くの景色を見ながら、私は容器に入った緑茶を飲んで一服した。
膝の上にはロデリックくんから手渡された魔導書がある。
小さいけれど薄くない本だ。
中には大きくない字で数多くの魔導術が紹介されている。
図解がない。
ざっと目を通すだけで、今までかかってしまったんだけど……。
驚くほどの疲労感に、今の私は目をぱちくりさせているに違いなかった。
昼16刻、第三城壁正門跡『グレゴリアス百花実馬車乗り場』に到着。
御者さんに最初の乗車札を見せ、追加の高速馬車の料金を支払ったあと、快速馬車に乗り換えて第三城壁正門の馬車乗り場を目指す。
そこまで行けばあとは本部まで1刻かからずに到着出来る。
「正門跡まで6人と飼い魔獣1匹で頼む」
「3,000ゴッズ、小型飼い魔獣1匹無料だよ」
待機していた中央区第二城壁行き快速馬車を見つけて、御者さんに料金を支払い乗り込んだ。
ちょうど出発の時間だったらしく、すぐに馬車は動き出した。
20人ほどが乗れる乗り合い馬車で、私たち以外のお客は奥の座席に2人しかいない。
「また船便が使えなかった。航空便は早いけど高いのに」
「仕方ないよ、天候や海流だけじゃなく魔物も襲ってくるらしいんだから」「魔物は前からいるでしょ」「そうだけど」
買い物帰りの親子連れらしき2人の会話が聞こえてきた。
魔物の異変にはまだ気がついていないようすだ。
流通も維持されているし、一般職のヒトの場合、王都の中だけで過ごしている限りそういったことは耳にも入りにくいのだろう。
ワルゴ方面からの制限もまだ日は浅い。
冒険者ギルドやハンターギルド、魔物の件で要請の行った組織系統も、混乱するような不確実なことを無意味に言いふらさない。
それでも船便が使えないことで変だと思い始めているようだ。
◇
快速馬車に半刻ほど揺られて正門跡に近い馬車乗り場まで到着した。休憩施設のある乗り場は、小さいながらも塀で囲われ、柵で仕切って一般の馬車とが雑ざらないようわけられている。
冒険者ギルド本部へは、乗り換えれば馬車が出ているけれど歩く予定だ。
馬車から降りたエレイナさんが、両腕をあげて少し伸びをする動作をすると、つられたようにバッシュくんたちも腕をあげて伸びをした。
「もう一息ね」
日はかげりはじめているけれど、まだ十分に明るい。
乗り場の中を移動して出口へ向かう。
支援魔術の『走者』は使わない。
ブルウェリアベリーや飛竜の肉、カマルのはちみつの効能がもう現れているのだろうか。
バッシュくんたちが元気良くトコトコトコッと歩きだした。
ガイアスくんが言った通り、順調に力を付けてきているというのが大きい。
こうして日が落ちはじめて辺りが薄暗さを増してくる夜18刻前、私たちは王都冒険者ギルド本部に帰還した。
報告を済ませ、空きのある部屋も確保出来た。
「特別に大きな情報も上がっていないな」
ワルゴの方も、良い意味でも悪い意味にも特に変化が無いようすだ。
百犬隊の行方、海の異変、光の柱についても原因も不明のまま。
多くのヒトが聞いたと言う謎の声に関しては、情報の存在自体が曖昧になってきている。
「ボクかエド、どちらかでも直に聞けていれば何か言えるけど、聞いていないからなんとも言えないのだ」
そう言ったシナップくんだったけれど、少し考えてから「気になると言えば、誰かが、誰かと再会することを宣言するような言葉を選んでいる節があることなのだよ」と付け加えた。
するとロデリックくんが言った。
「見つけ出してやるから首を洗って待っていろ、と言う意味合いか」
「えっ!」「再会ってそんな感じなの?!」
驚く私たちにシナップくんが言った。
「そんな感じに受け取れるのだよ」
『声の主は執念深いのだ』
◇
部屋に荷物を置き、食堂で食事を取ったあとは一休みすることになった。
朝から歩いて買い物もしているし、シナップくんたちは馬車の中でも勉強をしていたからね。
疲労したら食事以外でもちゃんと休まなくてはいけない。
時刻魔導具を見ると夜21刻を過ぎている。
湯浴みを済ませたバッシュくんたちにエレイナさんが言った。
「少し横になったほうが良いわ」
「エレイナ、君も同じだ。横になって休むと良い。1刻ほどしたら起こすと約束する」
エレイナさんも勉強と魔導石に魔力を籠める作業を行っていたからね。
シナップくんは明日、仮受験札を持って手続きすればそのまま試験を受けることになる可能性がある。
しっかり対策しないと反ってよく眠れないかも知れないから、勉強を無理に止める気はない。
部屋に備え付けられた寝台に上ると、シナップくんたちは言われた通り、休むために布にくるまり横になった。
それじゃあ私も横になろうかと思ったとき、背後から肩を掴まれた。
「では羊君、始めるとしようか」
魔導書を手に持ってロデリックくんが言った。
「君はまず習得する支援魔術をいくつか決めたまえ。そうしないことには特訓も何もはじまらん」
ロデリックくんが用意してくれた魔導書に載っている魔術の数は152種類。そのうち支援魔術はだいたいで50種。
2種類の魔術でどちらか選べなかった私に、50ある魔術の中から数種類まで絞るのはなかなか大変な作業だと言えた。
「どうしてもかい?」
「どうしてもだ」
物言いは静かで表情も穏やかだが、有無を言わせない揺るがなさが声にある。
私は観念して椅子に座り、ロデリックくんから魔導書を再び受け取った。
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□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料143食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物5日分
『カマルの特産品はちみつ7個と焼き菓子セット2箱』『特製調味液4本』『2人前飛竜の肉(保存袋入)』
『食堂のぬいぐるみ(中)』『2名食事券』『2名宿泊券』
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』『魔導石』『入門!魔術』『魔術図鑑(魔力紙付)』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』『魔導石』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』『カマル特産はちみつ1個』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』『加工魔石(中)』『加工魔石(高)』『魔導石』『長期保存食料2食分』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』『魔導石』『図で解る魔導書』『焼き菓子セット1箱(7個入り)残り5つ』『長期保存食料2食分』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』『長期保存食料2食分』『本』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り5つ)』『長期保存食料2食分』『本』
シナップ 『塔にあるもの全部』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』
ロデリック『私物とお菓子』『魔導書』『入門魔術』『魔導石』『長期保存食料12食分』
バッシュくんとノアくんがそれぞれ1つ、小さめの紙袋を抱えている。
調味液を手にいれたようだ。
シナップくんは紙の包みを3個持っているけれど元気がない。
エレイナさんはエドくんと一緒に3人の後ろを大きな紙の包みを胸に抱えて歩いて来た。
テーブルの席まで戻るとシナップくんが言った。
「ジャックくん。すまないのだ。ボクはエドの分と合わせて4回も引かせてもらったのに、『調味液』を1つも引き当てることが出来なかったのだ」
「け、けど安心するのだ!『調味液』は買わなくても見事バッシュとノアが手に入れたのだ。ボクはダメだったけど。不甲斐ないのだよ」
なるほど。それで元気がないのか。
「そういうことは良くあることだよ」
「そうだぞ!ハズレても気にすることはない」
「それはオレの運の問題だ。シナップのせいじゃない」
するとエレイナさんとバッシュくんとノアくん3人が揃って慌てたように言った。
エドくんも何か言いたそうにピョン!と跳ねた。
「違うの!シナップちゃんはハズレたわけじゃないの」
「うん、シナップはハズしたわけじゃないんだ」
「はい、当たりなんです!」
そういえばハズレたにしては、袋や包みが大きい。
他のヒトがくじでもらったらしい砂糖菓子の包みは、もっと小さいようだし。あと包みになる景品は……。
「んんん??」
どういうことかと聞いてみた。
最初にくじを2回ずつ引いたのはバッシュくんとノアくん。
箱に入れられた中に番号と景品名が書かれたくじを取り出し、その場で開いて確かめる形式。
それぞれ調味液と砂糖菓子を1つずつ引いたそうだ。
説明しながらバッシュくんとノアくんが砂糖菓子の小さな包みを紙袋から出して見せてくれた。
2人の後でシナップくんがエドくんの代わりに合わせて4回くじに挑戦することになったらしい。
エドくんはジュエルスライムだから手がないしね。
ほんとうは魔力でどうにかできそうだけど。
怪しまれてもいけないと考えたのだろう。
「ボクも調味液を持ち帰るのだ。小さなぬいぐるみと砂糖菓子はだいぶなくなっていて、調味液はまだ当てているヒトが少ない。いけるのだ」
ーーーーーーー
1等 2名様宿泊券 ✕1
2等 2名様食事券 ×3
3等 食堂のでかいぬいぐるみ(大) ×5
4等 2人前飛竜の肉(保存袋入) ×10
5等 食堂のぬいぐるみ(中) ×15
6等 調味液2個セット ×25
7等 食堂のぬいぐるみ(小) ×30
8等 砂糖菓子1袋 ×111
ーーーーーーー
リンリン、リンリン
「おめでとうございます、2人前飛竜の肉(保存袋入り)4等です」
「まだ3回引けるのだ」
カランコロン、カランコロン
「おめでとうございます、食堂ぬいぐるみ(中)5等です」
「………」
カランカラン!ポン!ポン!
「2等のお食事券!おめでとうございます!」
「2等だよシナップ!」
「……3回も調味液じゃないのだ。なぜなのだ。この1回に賭けるのだ。出るのだ、調味液!!」
その最後の1回でシナップくんは1等の宿泊券を引き当てたらしい。
「大丈夫、それは全部当たりだよ」
「大当たりだな」
「さっきの1等の当たりはお前だったのか」
「すごいではないか」
「そうよね!」
「はい」
「すごいよ」
『のだ!』
口々に祝われたところでシナップくんが言った。
「宿泊券もお食事券も飛竜の肉も、どれも2人分なのだ。ぬいぐるみはどうあつかえばいいのかわからないのだ。何に使うのだ」
◇
昼の15刻を回ってくると食堂からヒトも減ってきた。
まだいるお客の邪魔にならないように、気を付けながらも片付け始めている店員さんもいるようだ。
「そろそろ催しも終わる」
「飯も食い終わって腹も満たされた。そろそろ出ようか」
「そうだな」
「もうお腹一杯なのだ!」
元気を取り戻したシナップくんが言った。
「美味しかったね」
ノアくんとバッシュくんが満足そうに目を細めた。
忘れ物がないか確認して、それから頃合いを見て私たちも席を立つ。
会計を済ませるため、出入り口側にあるカウンターの列に並ぶ。
「エレイナ、先にシナップたちと店の外で待っててくれ」
ガイアスくんがエレイナさんに声をかけた。
するとロデリックくんが
「ガイアス、何を言っている。お前たちも外で待っていれば良い。羊君もだ。ここの支払いは私がするに決まっているだろう」
「いいのか?かなりの量を食べてるぞ?」
「私もかなり食べてるよ。それも『特製』のを。さすがに全部払わせるわけには」
私とガイアスくんが支払おうとすると、ロデリックくんが言った。
「お前たちが遠慮するとバッシュたちも遠慮する。ここは私に支払わせると良い」
ロデリックくんの金色の髪が食堂の照明でキラキラ輝いている。着ている服も白いシャツなので全体的に光って見える。
「わかった。シナップちゃん、バッシュちゃん、ノアちゃん、エドちゃん、ここは遠慮なくロデリックに任せて外で待ちましょう。ありがとうロデリック」
「悪いな!ロデリック」
「世話になるな。ご馳走さんロデリック」
「ありがとうロデリック君」
「ありがとうございます。ロデリックさん」
「ごちそうさま、ありがとうロデリックくん」
「ごちそうさまなのだ!」
『のだ!』
みんなでロデリックくんにお礼を言って、店の外に出るとすぐにガイアスくんとエレイナさんが言った。
「ロデリックが輝いて見えた」
「ええ」
ロデリックくんへの好感度が上がった。
◇
「じゃあ俺たちは西地区のギルド支部に戻る。合否に関係なく合流は6日後、出発は7日目の朝。何かあったらギルドに伝言を送る」
「了解。私たちは明日か遅くても明後日中には本部に到着するわ。あなたたちの試験終了の明明後日には中央を出て、その翌日に東門地区に移動している予定よ。6日後に東門支部で合流出来るわ」
「了解、試験が終わったらなるべく早く追う」
催しも終わり、充分な食事で一息ついた私たちは、合流までの段取りを確認して、冒険者ギルドの王都西門支部へ向かうガイアスくんとジャックくんを見送った。
「それじゃあ私たちも行きましょうか」
私たちの方はこれから1刻ほど歩いた先にある第六城壁内の宿に向かう。予約はしていないけれど空きがあれば宿泊が可能だ。
予定では今日1泊して明日の朝、中央のギルド本部へ向かうために宿を出る。
時刻魔導具で夜17刻を過ぎ、王都の地図を確かめながら、途中何事もなく無事に目的の宿に到着して部屋を食事付きで取ることが出来た。
宿は5階建築で、階段だけでなく昇降機が設けられている。
「お客様と飼い魔獣のご宿泊は、追加で3シルバーいただいて、6名様合計33,000ゴッズの先払いになります」
「承知した」
ロデリックくんはそういうと、受付で部屋代と人数分の料金を小金貨で支払ってお釣りの白銅貨7枚を受け取った。
そのまま私たちは係のヒトに部屋に案内してもらう。
部屋に着いてからエレイナさんと私で22,000ゴッズを黄銅貨2枚と白銅貨2枚でロデリックくんに手渡した。
ロデリックくんは食堂に続いて、また自分が支払うつもりだったようだけど、エレイナさんも私もそういうわけにはいかないからね。
パーティ代表のガイアスくんが相手なら多少事情は変わるけれど、それでも基本的に支払いは自分で行うものだ。
バッシュくんたちにも奢られっぱなしが当たり前の大人になって欲しくない。
案内された部屋は8人まで宿泊が可能な広めの部屋で、壁側に寝台が6つと作業机、小型の魔冷庫、部屋の中央よりに低めの長椅子とテーブルが備え付けられている。
窓には薄透布と厚手の窓掛け。
外は少し薄暗くなってきているけれど、上からの照明のおかげで室内は明るい。飾り気が少なくて過ごしやすそうだ。
部屋の備品は新式のものが多い。
そう言えば通路には魔導販売機が設置されていて、飲み物がいつでも買えるようになっていた。『島』で設置されているのは観光に訪れたヒト向けの商業施設1か所だけだ。
「新しそうなものが多いね」
「ほんとだね」
荷物を置いて部屋のなかをバッシュくんたちと確認していると
「シナップちゃん、甘食はご飯をちゃんと食べてからよ」
と、エレイナさんがシナップくんに声をかけた。
カマルで貰った自分用の焼き菓子の箱を、シナップくんが取り出して開けようとしたので、気がついたエレイナさんが注意したようだ。
「エレイナくんがガイアスくんみたいなのだ」
そう言いつつもシナップくんは素直に焼き菓子の箱を仕舞った。
日持ちするお菓子なので、焦らなくてもいつでも食べられるからね。
◇
「シナップ、君は準備を整えて“特殊技能”に昇格したまえ」
宿の部屋で落ち着くとロデリックくんが言った。“特殊技能”はバッシュくんとノアくんの冒険者ギルドと同じ級だ。
魔導ギルドが冒険者ギルドに登録可能な“特殊技能”のカードを発行する。
高度な魔導の知識と魔導技術が要求される取得が難しい級なので、銀級並みかそれ以上と見なされることもある。
「必要なのだ?」
シナップくんが尋ねると
「羊君は冒険者としてのランクは低いが商人ギルドでは銀級だ。私たちが一緒であれば行動制限は受けないだろう。だがシナップ、君は違う」
「今のカードのままだと立ち入りの制限を受けちゃうのかね?!」
「アルファルト大陸なら魔導ギルドの長であるイシュタルの口添えがあれば、基礎級のままでも問題無いかもしれないが。場所や依頼によってはそういうことが起きる。特に東の大陸では君の実力を証明するものがないのでな。法も規則も全て同じではない分その可能性が高くなる」
「メルンでも君たちと一緒に行動するためには、必要というわけなのだね」
「そういうことだ。特殊技能なら実績が足りなくても実力を示せれば昇格出来る。バッシュたちと魔導関連で普通に話せている君なら対策すれば問題無いだろう」
「本当なのだ?試験は難しいのではないのかね?術を行使するだけなのとはわけが違うのではないのかね?」
シナップくんが少し心配そうにしはじめた。
ガイアスくんが学科で不安を抱えているのと似た感じかもしれないね。
「シナップなら大丈夫だよ!」
「うん!僕たちと対策すれば昇格は確実」
「そうね。シナップちゃんなら対策すれば間違いなく大丈夫よ」
「試験で昇格するには古代魔術文字は禁止!」
「わ、わかったのだ!よろしく頼むのだよ」
こうしてガイアスくんとジャックくんに続いて、シナップくんも試験に挑戦することになった。
私も支援魔術の習得に挑戦する。
エレイナさんとバッシュくんとノアくんの3人は、塔型迷宮の攻略で貰った魔導書の魔術習得を念頭に、地道で見えにくい努力を重ねている。
いつからなのか、私が投げ出してしまったものがそこにある。
◇
「王都の城門が閉まる頃合いね。そろそろ食堂に行く?もう少し休んでからにする?」
エレイナさんが窓の方を見てから、私たちに振り返って言った。薄い透布越しに外を見ると、だいぶ薄暗くなっている。
宿の食堂は夜20刻までの営業で、夜19刻頃に注文を締め切ると部屋に案内してくれたヒトが教えてくれていた。
急ぐほどではないけれど、食堂で食べるなら行った方が、ゆっくり食事が出来そうだ。
シナップくんたちが4人で相談して言った。
「晩ごはんなのだ」「行きます」「行く」『のだ!』
昼16刻近くまで食事をしたのでさほど空腹ではないけれど。
シナップくんは焼き菓子を食べようと思ったくらいだから、そこそこお腹が空いてきているのかもしれない。
4人とも小さな体で1刻以上歩いたからね。
彼らの返答にロデリックくんと私もうなずいた。
「それじゃあ食堂に行きましょう」
エレイナさんに促され、バッシュくんたちが椅子から降りた。
私とロデリックくんも立ち上がり、全員で食堂に向かうと、宿の食堂は他のお客さんで賑わっている。
案内されたテーブルの席につき、献立表の品目を楽しげに見ながら、シナップくんがロデリックくんに言った。
「ところでロデリックくん。特殊技能の試験のことで気がついたのだけど。こんなに急に決めて試験を受けさせてもらえるのかね?」
シナップくんの言葉にハッとなったのはロデリックくんよりも私たちだった。
「そう言えば、そうだね」「そうだった、申し込みは10日前までなんだ。明日申し込めても合流する日に間に合わないから、ガイアス君たちに日をまた延ばしてもらう?」
「ボクはバッシュたちが良ければかまわないのだ」
シナップくんがそう言うと、落ち着き払ったロデリックくんが言った。
「心配ない。仮申し込みならずいぶん前に済ませてある。後は王都魔導ギルド本部までシナップ本人が訪れ、ギルドマスターのイシュタルを指名すれば話が通じるようになっている」
イシュタルさんはシナップくんと話したがっていたからね。
「シナップがやって来るのを楽しみにして待っていると言っていた」
「…………ボクを売ったのかね。ロデリックくん」
◇
「どうせエレイナくんと懇意なイシュタルくんに取り入って、良い感じに取り計らってもらおうとかそういうのなのだ。汚れた大人なのだ……」
料理が運ばれてくるまでの間、特殊技能の件で少々衝撃を受けてしまったシナップくんは、こんな風にちょっとだけやさぐれた感じのことを言っていたけれど。
結果的に頑張れば資格が上がるのと、イシュタルさんには甘食を貰った恩、ロデリックくんがいう行動制限の心配がある話は本当なので、深く考えるのを止めたようだ。
食事を終えて部屋に戻る頃にはすっかりいつものシナップくんだ。
本人に黙って話を進めるのは感心しないけれど、感謝すべき有り難い話だからね。
私はシナップくんの様子にほっと胸を撫で下ろした。
「中央に行ったら魔導ギルドへすぐに向かうのだ」
ロデリックくんから受験札を受け取って、早速バッシュくんたちとテーブルで勉強を始めている。魔導ギルドで受験札とシナップくんを魔力で紐付けすれば試験準備は完了だ。
「ガイアスさんに預けていた本を持ってきていて良かったね」
「うん。復習のためと鍛練の重しのためだったけど」
「2人ともありがたいのだ」
鍛練の重しというのは、筋力向上のためだろうか。
私も支援魔術を覚えなくては。
購入した初心者向けの魔導書を荷物から取り出し、習得する魔術を決めるために開いた。
本には魔力操作についてと、いくつかの系統に分けた14種類の魔導術が図解付きで載っている。
ただ、身体能力を向上させるような魔術は初心者向けには少ない。
この『俊足』は良さげだけれど。
持続時間は数5ほど 指定可能距離は自身を含む前方1ノーツ範囲内 効果は1人
効果が5つ数えるほどでは短すぎるし、相手への連続の使用も推奨されていない。さらに使用から4刻以上の時間を空けるよう注意書きがある。
『走者』
持続時間は1刻 指定可能距離は『俊足』と同じで自身を含む前方1ノーツ範囲内、効果も1人だけだ。
※1ノーツはメートル換算2メートル
魔力で身体的な補助をして足腰にかかる負担を軽減し、持久力を向上させる術式だ。効果は低いけれどこれは悪くないかもしれない。図を見ると腰の辺りを支えるように魔術が展開するようだ。
これは1日3回以上は推奨されていない。
身体能力を向上させる魔術でこの本に載っているのは2つだけだ。
それがわかっても私はパラパラと魔導書のページを繰り返しめくっていった。
◇
ヒトの身体に直に作用する魔術は繊細で、初心者向けであっても難しい。
相手の身体にも魔力は流れているから、拒否反応があれば魔力は乱れて術として発動しない。
相手に流す魔力量が多い術であるほど魔力の操作は複雑になって難易度が高くなる。
本を見ながら習得する魔術をどれにするか迷っている私の様子を見てノアくんが言ってくれた。
「はじめは必要な魔力が少ない術を選ぶというのは正解です。相性の問題もありますから、発動がうまく行かなくても術が失敗だとは限りません」
バッシュくんたちによると、それだけではなく術をかけたい相手の魔力が術者より強力だと、相手に術を拒否されたり、発動しても魔力そのもので抵抗され、希に弾かれることはあるそうだ。
私がヒルデブラントくんに“地縛り”を発動させても、ひどい抵抗を感じていたのはそのせいだったのか。
私の力量からすると、効果があっただけでも幸運だったのかもしれない。
自分よりも魔力が多くて強い相手に“地縛り”が効果があるのも、相性と『魔力の強さ』が関係しているということになる。
それにしても、その理屈で行くと“二重奏”が全く効かないというガイアスくんとジャックくんは、バッシュくんたちより魔力自体は強力だということになる。
「僕らの支援魔術は受け入れて効いてるけど、攻撃されるのは本能的に拒否してるんだよね」
「普通、魔力が身体強化に大きく振れているヒトは魔術に対する耐性が低いのですが。謎です」
バッシュくんとノアくんはそう言うと、ロデリックくんの方をチラッと見た。魔術を無効化する白鎧を身につけないロデリックくんで、“二重奏”をちょっと試してみたいと思ったのかもしれない。
するとシナップくんが言った。
「推測なのだけど、ガイアスくんたちの魔力の源である元素は安定して結晶のようにかなり強力に結び付いている可能性があるのだよ」
それを聞いたノアくんとバッシュくんが顔を見合わせた。
「ああ、そうか。だから強化する方は受け付けて、魔力や体力を奪う僕とノアの“二重奏”を受けつけないんだ!」
◇
改めて魔力というのは奥が深いなと思いながら魔導書のページをめくる。いま必要なのは2つしか無いのだから決めるのは簡単なはずだけど決められない。
それを勉強しているのだと解釈してくれたノアくんたちが、一緒に付き合ってくれている。
「術式が正しく発動すれば多少の力量差は埋めることが出来ると言われていますから、改めて基礎から学ぶのは良いことです」
初心者向けの魔導書を、私と一緒に見ながらノアくんが言った。
私でも覚えられそうで、なおかつ必要な魔力が少なくて、それでいて役に立つ、という都合の良い支援魔術習得のために購入した本だ。改めて考えると少々恥ずかしいが仕方ない。
「マクスさんならもう少し違うのが使えると思うよ」
バッシュくんが円らな瞳のまま言ったけれど、私はとんでもないと首を振った。
術式が折角優れていても、魔力操作がうまくない私ではきちんと効果を得られる術にならないかもしれない。
実際にシナップくんから貰った魔導書の魔術はいくつか試したけれど、うんともすんともさせられなかった。
しかも魔力消費すらしなかった。
つまり、私が操作できてる魔力が少なすぎて、そもそも術式にならなかったのだと思う。
書いた術式や詠唱が合っていても、魔力が載っていなければ、それはただの文字と声だ。
おかげで実践が難しいことを再認識したし、自分の使える魔力が少ないことを思い知ったのである。
バッシュくんたちに相談にのってもらった私は、最終的に『俊足』と『走者』両方挑戦ことに決めた。
相手の魔力により干渉する術は『俊足』のようだからだ。
魔力の操作の練習には『俊足』の方が向いている。
移動では『走者』を試そう。
習得出来たら次だ。
風属性の魔術で荷物の重さを本の少し軽減させる魔術もあるのに気がついたのけれど、これはロデリックくんに却下された。
移動を止めずに楽になるという点で良い案だと思ったけれど、鍛錬によって疲労した場合には、荷を下ろして負荷を取り除き、休息を取って回復を図ったうえで、再び移動を再開する方がよいということだ。
「覚えるにしても後にするのが得策だ」
なるほど。
他にも、移動しながらでも術を行使出来るようになった方が良いなど、ロデリックくんから提案された私への課題は結構ある。
そう言えばエレイナさんもバッシュくんたちも、大掛かりな魔導術以外は動き回りながらでも術を発動させている。
ロデリックくんが出発を遅らせてでも、やりたかったことの意味が少しずつわかってきた。
エレイナさんやバッシュくんたちは基礎魔力と基礎体力の向上が課題だ。彼らは自主的に魔術習得も行っている。
「一度休憩にしない?」
エレイナさんがそう言ったのは勉強を開始して1刻ほど経った頃だった。
◇
王都に限らず多くの街や都市では、事故防止のため馬車などの乗り物の高速移動は専用の道でない限り、禁止されている。
当然ヒトであっても速すぎる移動は推奨されない。
馬車を利用しながら、私が覚えて使えるくらいの支援魔術で移動するのが、王都では鍛練との兼ね合いでちょうど良いというのがロデリックくんの提案なのだろう。
バッシュくんたちが勉強を一段落させて湯浴みをしている間、私は試しに『俊足』の術を自分に使ってみることにした。
本を読んでわかった気になっても、実際にやってみると出来ないことは多い。
この術は、特に手をかざすなどの動作は必要ない。
一番簡単なのは、魔力紙に術式を書き、その上から魔力を流す方法だ。
魔力紙は、書かれた術式に反応して魔力の流れを集める性質を持っている。
魔術文字は、魔力で書くと反応するように、長い時間をかけて研究・開発された特別な文字だ。
この方法なら、魔力紙は消耗するものの、あまり深く考えなくても必要な魔力が文字に乗って術式が発動する。
何度か繰り返せば、術式自体も覚えられるだろう。
術式が発動しない場合は、書いた術式が間違っていて術として成立していないか、術者が流す魔力の量が術に必要な量より少なすぎるか、多すぎる場合だ。
一部の魔導書の中にはこの魔力紙の性質を利用し、魔力を操作出来さえすれば使うだけで術が発動するものもある。
開いて魔力を流すだけ。
シナップくんの塔型迷宮で貰えた本や魔導書は、魔力で作られた複製なので、一部には同じような性質の魔導書があるのだけれど、実際にやってみると難しかったという話だ。
エレイナさんやバッシュくんたちは使えるようになっていたから、完全に私と彼らとの力量に圧倒的な差があるのは明白である。
私は手持ちの魔力紙に筆記具で自分自身を対象にした術式を書き込み魔力を流した。
『俊足』
反応が感じられない。魔力も消費した感じはない。
初心者向けの魔術本に載っている術式は、必要な魔力の量があらかじめ決められているものが多い。しかし、魔術文字を使うことによって多少魔力の量が正確でなくても発動するように工夫されている。
使用する魔力に属性の記載はなく、書き間違えたというわけでもない。
流した魔力が少なすぎたにちがいない。もう一度。
これは故郷の『島』の学舎で習った術よりも難しい。さすが都会だ。
魔獣たちだけでなく、魔術も島のものと難易度が違うのだ。
私はまたしても戦慄した。
◇
湯浴みをすませた後もバッシュくんたちは本を広げて勉強をしている。
エレイナさんが、備え付けの魔石ポットのお湯で淹れた、温かい飲み物の入った湯呑茶碗をテーブルにそっと置いた。カマル特産はちみつ入りの紅茶だ。
「ありがとう」「いただきます」「ありがとうなのだよ」
飲み物に気がついたバッシュくんたちが揃ってお礼を言うと、エレイナさんが言った。
「おつかれさま。きりのいいところで、今日はもう休んで寝た方がいいわ」
時刻魔導具を見ると夜23刻を過ぎ、明るい室内でも小さな12個の魔石が盤で微かに青い光を放っている。
明日は2刻ほどを体力強化のために徒歩での移動に費やす予定だ。体格差のあるバッシュくんたちには早足が求められる。
「エレイナくん、眠る前に甘食を食べちゃダメなのだ?」
シナップくんはそう言うと、アイテムバッグからカマルの焼き菓子の箱を取り出した。
シナップくんのアイテムバッグは空間魔術で塔の倉庫と繋がっている。
「そうね、勉強もしたし、少しなら食べた方が良く眠れそうね。甘食の時間にしましょうか。シナップちゃん、焼き菓子は2つまで」
エレイナさんはそう言うと、自分の荷物からも焼き菓子の箱を取り出した。
「わかったのだ。エド、お前にも1つわけてやるのだ」
『2つくれないのだ?!』
「1箱に7個しか詰められていないのだ。2つもあげると残り3つになってしまうのだ」
『買えばいいのだ。所長くんは他にも売ってると言ったのだ』
「他所にも出荷しているから、探せば買えるようなことは言っていたのだよ。でもどこでもとは違うのだ。買えるのがわかるまではボクは大事に食べる」
『シナップのケチ……』
「ケチじゃないのだ!1つはあげるのだ」
「エドちゃんが食べても平気なら、私のをあげる」「そんなに食べたいなら僕のもあげるよ」
ふたりの会話を聞いていたエレイナさんたちが笑いながら言った。
◇
翌日(ガイアスくんたちと別行動の2日目)
宿の食堂で朝食をすませたあと、冒険者ギルド本部へ向かうため、私たちは宿を後にする。
予定では歩きで1刻ほどかかる場所にある馬車乗り場に行き、すぐ近くにある第六城壁テルガノ通り2番街の商店街で食料を購入する。
「行ったことはないが、馬車乗り場から見えるほど近い商店街だ」
ロデリックくんが言うには、その商店街のアッカ商店に入荷される果物に集中力を高める効能があるそうだ。
見た目は紅くて丸に近い楕円形、皮の外からでも芳醇な香りがするのが特徴らしい。
「確かな筋の情報だが、まだ公の実験で実証されたものとは違うようだ。本当に効果があるかどうかは食べてみてからでないと判断出来ない。それでも行ってみるか?」
「その果実は美味しいのだ?」
「美味いと言っていた」
「他にも昼食に出来そうな物は売ってる?」
「アッカ商店に無くても、近くの商店をみれば買えるものがあるだろう」
「マクスさん、行ってみますか?」
エレイナさんたちが私にも聞いてくれた。
「そうだね、美味しくて昼食の準備にもなる。行ってみようか」
「では行こう。羊君、バッシュたちに支援魔術を」
私は昨夜成功させたばかりの支援魔術『走者』をバッシュくんたちに施す。
効果がわかりにくいので少し不安だけど、どうやら無事に発動しているっぽい。
術が気休め程度の効果しかないのは、バッシュくんたちが良くわかっている。無理はしないはずだ。
私がそう思った直後、バッシュくんとシナップくんとエドくん、ノアくんまでが、トコトコトコトコッと早足で歩きだした。
エドくんがそれを追いかける。
走ってはいないけれど、かなりの速さだ。
3人ともいつもより背負袋が重そう。重しに本とかを入れてる?
この調子のまま1刻以上歩ける?
「まずまずの効果のようだ。さすがだな羊君」
「流石です、マクスさん!」
エレイナさんとロデリックくんが、そう言ってバッシュくんたちを追うように歩き始めた。
料理の効能や魔術の効きというよりは本人たちのヤル気が高い。
大丈夫なんだろうか。
◇
「バッシュ、シナップ、見えてきたよ。テルガノ商店街」「うん、アッカ商店はどこだろう」
馬車乗り場近くのテルガノ2番街まで来た私たちはテルガノ商店街に到着していた。
宿を出てから1刻もかからずに2番街までこれた。
思いの外早足で歩くバッシュくんたちが、バテないか心配したけど今のところ大丈夫のようだ。
ただ、このあとも馬車に乗っての移動がまだある。
「アッカ商店は商店街入口を入ってすぐにある。見落としやすい見た目かもしれないな」
朝のうち、まだ開けていないお店もある。
「ひとつひとつ店の名前を見ていくのだ」
「あった。ねぇ、アッカ商店ってここじゃない?」
新鮮野菜という大きな4文字の下に、なぜか小さく“アッカド商店”と書かれている看板のお店をエレイナさんが発見した。
「たしかに。アッカ商店と書いてあるな」
「随分と小さく……」
「もっと奥にある店だったら、探すのを諦める小ささなのだよ」
店の入口の前に置かれた背の低い棚に、清浄剤など日用品等が少量置かれている。野菜や果物は店内で取り扱っているようだ。
扉を開けて店内に入ってみると、奥から少し冷えた空気が流れてきた。店内は思ったより明るい。
「いらっしゃい」
出入り口すぐに会計の台があって、店主さんらしきヒトが1人座っている。奥に向かって広い店内の入口付近には店内用のカゴ等が置かれていて、量は多くないけれど小さめの棚に保存の効きそうな食料や穀類などが袋詰めで売られている。
野菜や果物はその奥のようだ。
「最近入荷した果物で、集中力向上に効果があるものが入っていないか?あれば欲しい」ロデリックくんがお店のヒトに直接聞いた。すると「ああ、あれのことかな」とすぐに反応があって、お店のヒトは台から立ち上がると店内に出てきて、奥の店員さんに声をかけた。
「ちょっと、あれ、あれを取ってきて」「店長、あれってどれですか」「こないだ入荷したあれ」「ああ、あれですね。わかりました」
しばらく待つと奥から店員さんが現れて、紅い果物を入れたカゴを運んできてくれた。
「探してる果物はこれかな」
店長さんがカゴを指しながら聞いた。
「ロデリックさんが言った特徴そのものです」
「紅くて楕円なのだ」
「良い香りがしてる」
ロデリックくんもカゴの果物を確認して言った。
「これで間違いない。店主、いくらだ。買おう」
「えっ、買うの?高いよ?仕入値が上がって、売値がたった1個で3シルバー超えてるのが相場になってる」
「効能が判明したせい?」
「そうらしいね。どこかの研究者が大枚をはたいて、大勢で検証したらしいよ。もうすぐ大々的に他の施設やらなんやらも分析を開始するんだとか。本当ならスゴいけど、昔からある果物だよ」
「へぇー」
「買うの止めないけど。あんまり期待しない方がいいよ」そう言うと店長さんが笑った。
するとカゴを持ってきてくれた店員さんが
「私はその研究結果、信じられますよ。だって、この果物、店長の娘さんの好物じゃないですか。店長の娘さんって弓がすごくてハンターギルドで金級なんですよ」と言った。
「たまたまだ。儂や他の娘だって食べてるが同じにはなってない」
「店長、弓に挑戦したことは?」「ない」
◇
アッカ商店で目的の果物ウルカチアを購入した後は馬車乗り場から馬車に揺られて移動する。
「高速馬車を選んだのは正解だったろう」
座席にくつろいだ姿勢のロデリックくんが誇らしげに言った。
手に買ったばかりの果物を1つ持っている。
長距離での移動がメインの快速馬車は、通常運転の馬車より割高な代わりに移動が速く、内装も工夫がされていて馬車内でもゆったり快適な食事が可能なものが多い。
条件にあった馬車を探していると、ロデリックくんが第三城壁正門地区までの空きのある高速馬車を見つけた。
「快速より速いがどうする」
高速馬車は行き先や走れる幹線道が少ないものの、快速馬車より速く目的地へ到着する。
幸いなことに私たちは金銭面で余裕がある。子供であるバッシュくんたちに払わせる気は無いけれど。
「早く移動出来れば、その分余裕をもって勉強や鍛練が可能かもしれないね」
牽引する馬にもよるが、快速馬車だと第5城壁まで4刻、本部のある第三城壁まで直で行くなら8刻はかかる。そこからさらに馬車を乗り継いでギルド本部までおよそで2刻。
高速馬車なら2刻もあれば第五城壁、第三城壁まで4刻ほどだ。乗り継いで8刻はかからない。閉門時刻の前に到着するだろう。
快速も高速も揺れや事故の防止のため専用道にはさまざまな対策がされている。
私たちが乗った高速馬車の車内には、他に数組のお客さんが乗っていて、乗り場で購入した情報紙を読んだり、飲み物を飲んだりして目的地までの時間を過ごしていた。
座席の座具は、背もたれまで程よい厚みと弾力のある硬さで、楽な姿勢を維持しやすい。快速よりも頑丈に設えられた荷台は全体にメルンの魔導工業技術が利用されている。
4頭立ての馬車はすでに魔導車の侵入も禁止された高速馬車の専用道に入った。
視界の開けた、特別に大きく幅広い幹線道だ。
「こんなに速い馬車もあったのだ。中もなかなか快適なのだよ」
窓の外を流れる景色を見てから、私たちをふり返ってシナップくんが言った。
「重い荷よりヒトを乗せることに特化して、荷台の強度をあげながらの素材軽量化で馬の負担を減らしている。駿馬や競争車ほどではないが、それなりに速い」
「その中でもこの馬車は新型ですね」
ノアくんにロデリックくんがうなずいて続けた。
「これまで以上に内装も乗客の快適さが重視されている。座ったままの状態が長時間続いても疲労は少ない」
高めにされた荷台客室内の天井部分は、夜の明かりのため照明魔導具がはめ込まれ、空調のために風の魔石があちこちに取り付けられている。
「このまま降りずに第三城壁南門地区まで行こう。羊君の魔力操作の上達具合も良いようだからな」
「すぐに食べられる食料も買って準備万端だしね」
「足りなければガイアスから渡された保存食がある。食い物など乗り場でもどこでも買えると言ってもヤツは聞かん」
「そういえば私も渡されたよ」「私も」「ボクも」「僕も」「ボクもなのだ」
どうやらエドくん以外の全員に配ったようだ。
リリン、と小さく鈴の音のようなものが聞こえてエドくんがシナップくんの横で跳ねるような動きをした。
「エドのご飯はボクが持っているのだ。試供品のメルルクはエド、おまえが自分で持ってる。ガイアスくんも渡しようがないのだ」
どうやら鈴のような音はエドくんの魔獣語のようで、自分はもらってないと言ったのかもしれない。
「昼13刻くらいには西区『第三城壁西門』辺りみたい」
エレイナさんが馬車備え付けの運行予定が書かれた時刻板を見て言った。
「そうですね。第五城壁西門が11刻、第四城壁西門が昼12刻、昼13刻に西第三城壁西門『祝馬竜街乗り場』に到着予定になっています」
「そこで南門方面にお客を荷台ごと切り替えるんだね」
時刻板を一緒に覗き込んでバッシュくんとノアくんが言った。
板は魔導具らしく、日付入りの案内にもなっている。
時々文字が光る場所が現在の馬車のだいたいの位置のようだ。
第五城壁西門『レイリー街乗り場』が点灯している。
馬の休憩と交代のため停まっていた馬車が再び走り始めた。
歩きと馬車の移動で、今日はこの辺りで過ごすことになると思っていたけれど。
「今日中に冒険者ギルド本部まで行けそうね」
「はい、予定で昼16刻に正門地区の乗り場到着。残りの距離も速い馬車を使えば第三城壁正門跡に夜18刻より前に到着です」
乗り換えの時間を考えても余裕そうだ。
「遅れても城壁跡の中まで入れれば、ギルドはまだ開いてるから余裕だね」
バッシュくんのお墨付きも付いた。
「明日魔導ギルドに行って、試験の正式な手続きをしてもらうのだ」
「今日も対策だね」
「よろしく頼むのだ」
しばらくすると天井に設置された拡声器を通して次の乗り場で休憩を促す案内がされた。
「まだ朝11刻を過ぎたばかりだから時間があるね」
バッシュくんたちがそう言いながら、本を取り出し開いた。
◇
「この果物、甘くて美味しいのだ」
昼食後の甘味に早速購入した集中力を向上させる紅い果物、ウルカチアを食べている。
皮ごと食べたほうが良いと言うので、休憩時間に水で少し洗ったものだ。ロデリックくんは布で拭いて食べている。
「ホント、すごく甘くて美味しい」
「種がありませんね」
「割ってみると小さい粒はあるのだよ。おそらく種なのだ」
紅い実の内側は、ルビーのように紅く透き通って、艶やかな果肉がめいっぱい詰まっている。その果肉の中にとても小さな黒っぽい粒が数個。
「ほんとだ」
店主さんは珍しくもない果物のように言ってたけれど、バッシュくんやエレイナさんがはじめて食べる様子から、それほど知名度のある果物ではないようだ。
あまり出回っていないのだと思う。
エレイナさんたちだけでなく、私もはじめて見る果物だ。
見た目も効能も、味も香りも良いのに埋もれていたんだね。
もったいない。
果物を食べ終わると、再びバッシュくんたちが勉強を再開した。
私も彼らを見習い、魔導書を開こうとすると、ロデリックくんがおもむろに魔導書を差し出してきた。
「初心者向けが悪いものでもないが、君が選んだ魔導書は日常生活を便利にするもので、魔物との対峙や迷宮には適していない。魔力操作の上達の役に立つことは否定はしないが、どうせならこっちを使いたまえ」
そう言われて、差し出された本を受け取り開いてみた。
書いてある内容はわかるものの、明らかに習得難易度は高い。
「明日シナップたちが魔導ギルドで用を済ます間、ギルド本部の訓練所を使って実践を兼ねた特訓だ」
こうして私の明日の日程が決定したのだった。
◇
シナップくんたちが素晴らしい集中力で勉強を進める間も、馬車は順調に移動距離を伸ばしている。
昼14刻には西第三城壁南『カラハルド街馬車乗り場』に到着。
バッシュくんたちは馬車が完全に停まっても、少しの間気が付かないくらい熱心に勉強していた。
あと2刻もせず第三城壁正門跡近くにある乗り場へ到着する。
窓の外を流れていく遠くの景色を見ながら、私は容器に入った緑茶を飲んで一服した。
膝の上にはロデリックくんから手渡された魔導書がある。
小さいけれど薄くない本だ。
中には大きくない字で数多くの魔導術が紹介されている。
図解がない。
ざっと目を通すだけで、今までかかってしまったんだけど……。
驚くほどの疲労感に、今の私は目をぱちくりさせているに違いなかった。
昼16刻、第三城壁正門跡『グレゴリアス百花実馬車乗り場』に到着。
御者さんに最初の乗車札を見せ、追加の高速馬車の料金を支払ったあと、快速馬車に乗り換えて第三城壁正門の馬車乗り場を目指す。
そこまで行けばあとは本部まで1刻かからずに到着出来る。
「正門跡まで6人と飼い魔獣1匹で頼む」
「3,000ゴッズ、小型飼い魔獣1匹無料だよ」
待機していた中央区第二城壁行き快速馬車を見つけて、御者さんに料金を支払い乗り込んだ。
ちょうど出発の時間だったらしく、すぐに馬車は動き出した。
20人ほどが乗れる乗り合い馬車で、私たち以外のお客は奥の座席に2人しかいない。
「また船便が使えなかった。航空便は早いけど高いのに」
「仕方ないよ、天候や海流だけじゃなく魔物も襲ってくるらしいんだから」「魔物は前からいるでしょ」「そうだけど」
買い物帰りの親子連れらしき2人の会話が聞こえてきた。
魔物の異変にはまだ気がついていないようすだ。
流通も維持されているし、一般職のヒトの場合、王都の中だけで過ごしている限りそういったことは耳にも入りにくいのだろう。
ワルゴ方面からの制限もまだ日は浅い。
冒険者ギルドやハンターギルド、魔物の件で要請の行った組織系統も、混乱するような不確実なことを無意味に言いふらさない。
それでも船便が使えないことで変だと思い始めているようだ。
◇
快速馬車に半刻ほど揺られて正門跡に近い馬車乗り場まで到着した。休憩施設のある乗り場は、小さいながらも塀で囲われ、柵で仕切って一般の馬車とが雑ざらないようわけられている。
冒険者ギルド本部へは、乗り換えれば馬車が出ているけれど歩く予定だ。
馬車から降りたエレイナさんが、両腕をあげて少し伸びをする動作をすると、つられたようにバッシュくんたちも腕をあげて伸びをした。
「もう一息ね」
日はかげりはじめているけれど、まだ十分に明るい。
乗り場の中を移動して出口へ向かう。
支援魔術の『走者』は使わない。
ブルウェリアベリーや飛竜の肉、カマルのはちみつの効能がもう現れているのだろうか。
バッシュくんたちが元気良くトコトコトコッと歩きだした。
ガイアスくんが言った通り、順調に力を付けてきているというのが大きい。
こうして日が落ちはじめて辺りが薄暗さを増してくる夜18刻前、私たちは王都冒険者ギルド本部に帰還した。
報告を済ませ、空きのある部屋も確保出来た。
「特別に大きな情報も上がっていないな」
ワルゴの方も、良い意味でも悪い意味にも特に変化が無いようすだ。
百犬隊の行方、海の異変、光の柱についても原因も不明のまま。
多くのヒトが聞いたと言う謎の声に関しては、情報の存在自体が曖昧になってきている。
「ボクかエド、どちらかでも直に聞けていれば何か言えるけど、聞いていないからなんとも言えないのだ」
そう言ったシナップくんだったけれど、少し考えてから「気になると言えば、誰かが、誰かと再会することを宣言するような言葉を選んでいる節があることなのだよ」と付け加えた。
するとロデリックくんが言った。
「見つけ出してやるから首を洗って待っていろ、と言う意味合いか」
「えっ!」「再会ってそんな感じなの?!」
驚く私たちにシナップくんが言った。
「そんな感じに受け取れるのだよ」
『声の主は執念深いのだ』
◇
部屋に荷物を置き、食堂で食事を取ったあとは一休みすることになった。
朝から歩いて買い物もしているし、シナップくんたちは馬車の中でも勉強をしていたからね。
疲労したら食事以外でもちゃんと休まなくてはいけない。
時刻魔導具を見ると夜21刻を過ぎている。
湯浴みを済ませたバッシュくんたちにエレイナさんが言った。
「少し横になったほうが良いわ」
「エレイナ、君も同じだ。横になって休むと良い。1刻ほどしたら起こすと約束する」
エレイナさんも勉強と魔導石に魔力を籠める作業を行っていたからね。
シナップくんは明日、仮受験札を持って手続きすればそのまま試験を受けることになる可能性がある。
しっかり対策しないと反ってよく眠れないかも知れないから、勉強を無理に止める気はない。
部屋に備え付けられた寝台に上ると、シナップくんたちは言われた通り、休むために布にくるまり横になった。
それじゃあ私も横になろうかと思ったとき、背後から肩を掴まれた。
「では羊君、始めるとしようか」
魔導書を手に持ってロデリックくんが言った。
「君はまず習得する支援魔術をいくつか決めたまえ。そうしないことには特訓も何もはじまらん」
ロデリックくんが用意してくれた魔導書に載っている魔術の数は152種類。そのうち支援魔術はだいたいで50種。
2種類の魔術でどちらか選べなかった私に、50ある魔術の中から数種類まで絞るのはなかなか大変な作業だと言えた。
「どうしてもかい?」
「どうしてもだ」
物言いは静かで表情も穏やかだが、有無を言わせない揺るがなさが声にある。
私は観念して椅子に座り、ロデリックくんから魔導書を再び受け取った。
────────
────────
□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料143食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物5日分
『カマルの特産品はちみつ7個と焼き菓子セット2箱』『特製調味液4本』『2人前飛竜の肉(保存袋入)』
『食堂のぬいぐるみ(中)』『2名食事券』『2名宿泊券』
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』『魔導石』『入門!魔術』『魔術図鑑(魔力紙付)』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』『魔導石』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』『カマル特産はちみつ1個』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』『加工魔石(中)』『加工魔石(高)』『魔導石』『長期保存食料2食分』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』『魔導石』『図で解る魔導書』『焼き菓子セット1箱(7個入り)残り5つ』『長期保存食料2食分』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』『長期保存食料2食分』『本』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』『魔導石』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り5つ)』『長期保存食料2食分』『本』
シナップ 『塔にあるもの全部』『焼き菓子セット1箱(7個入り残り4つ)』
ロデリック『私物とお菓子』『魔導書』『入門魔術』『魔導石』『長期保存食料12食分』
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