星の迷宮と英雄たちのノスタルジア

いわみね

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第24話 『宿場町カマル』

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 シナップくんが屋敷の依頼を達成した翌日の昼下がり。
「んあ」
 シナップくんとバッシュくん、ノアくんの3人が冒険者ギルド西門地区支部の一角で『ガレディア新知情報板』を身を寄せて読んでいる。
 『ガレディア新知情報板』は名前の通り板状の魔導具で、ガレディア王国領内で起きた事件などをまとめて掲載して住民に報せるものだ。他にも地域を限定した地方版もある。
 私が上からこっそり見てみると、板には
『城郭都市ワルゴ近辺で多数の魔物が出没。ワルゴ自警団が制圧』『迷宮都市カルディナ、グルメエリアに新たなる珍味』『迷宮都市カルディナ、〈ウェスカ〉ダンジョン遂に解禁か』
 などという見出しが付いた記事が載っている。
 住民向けの情報伝達網には、こんな風に魔導具の板に情報を時間毎に更新するものと『新知情報紙』という日毎に紙で発行されるものがあって、ギルドに置かれているのは大体魔導具の方だ。
 ギルド建物内であれば無償で借りて読めるようになっている。
 私も借りようと貸し出し用の台を見てみたけれど、生憎全部貸し出されていた。台数に限りがあるので、紙で発行されるものと使い分けたり併用している人も多い。
 情報紙は配達してもらうほか、馬車乗り場でも買うことが出来る。
「シーバ隊の情報は見当たらないのだ」
 シナップくんたち3人が顔を上げて、テーブルの上に『新知情報板』を置いた。
『水の都ヴェルニカの湖で新種の魚発見か』という見出しの記事の他、いくつかの記事が板に記されている。
「『ヤマルの森』の調査依頼もまだ無いようだし、しばらくのんびりしよう」ということになったのが昨日のこと。

 エレイナさんは西門地区にある魔導ギルド支部に顔を出していて、ジャックくんは「すぐに戻る」と言って出掛けている。
 ロデリックくんはエレイナさんを追いかけるように出ていった。ギルド職員のヒトが話しかけようとしていたのだけど目に入らなかったようで、彼を見送ったギルド職員のヒトが、じぃっと私たちを見てきた。
 そばにいた私とガイアスくんが、パーティメンバーであると調べて知っていたのかも知れない。
 たしかギルドにもパーティ加入を報告しているので、登録者名簿を見れば知ることが出来る。
「……」「……」「……」
 しばらく間が空いたあと、職員のヒトはギルドの奥へ帰っていった。
「可哀想な気はするが、エレイナが帰ってくる頃に、ロデリックもついてくるだろう」
 これが今朝の話だ。
 そして今、残された5人で本や魔導情報板を見に2階に設けられたギルドの図書室に来ている。
 シナップくんたちが『新知情報板』をテーブルに置いたのを見てガイアスくんが言った。
「お前たち腹が減らないか?俺は腹がへったぞ」

 ◇

 ゆっくりめの昼食を終えて、食後の甘味に舌鼓を打つ食堂。
「美味しいのだー」「美味しいね」「うまい!」
「ロデリック君の手料理も中々のものだけど、この食堂の甘食も美味しいのだ」
 そう言うとシナップくんは、お皿に並んだお菓子を取った。
 それから手に取った丸いお菓子をパリッと音をさせて半分に割ると、中に詰まったクリームが溢れて零れないよう、急いで口に放り込んだ。
『うまくて濃厚ウッシー生クリィム包み焼き』
 私はそれを丸ごと口に入れて頬張る。パリッと焼き上げられた薄い生地の中から甘くて濃厚なクリィムがトロリと口の中に広がって。
 美味しい。
 5人で頼んだお菓子はすぐに食べ終わってなくなった。
「ご馳走さまでした」「美味しかったね」
 私たちが食べ終わったお皿を片付け専用の指定台へ持っていこうとすると「あー、ぃいねぇ。いいねぇ。羨ましいよ、貧乏人の貧乏な舌は、この程度の料理や菓子で満足出来るなんてね」
 不意に食堂の中ほどからせせらわらうような声が聞こえてきた。
 声のする方を見ると一人の男が少女に向かって嫌みを繰り返し言っている。
 何だろう、あの失礼で嫌みなヒトは。
 周囲もそれに気がついて目を向けている。
 男は少女にだけ言っているつもりなのだけれど、この食堂で食事を楽しむ人全員に当てはまっていることに気づけていない。
 そして何よりも。中年の厳つい男が、自分よりも明らかに歳が若い少女を相手に嫌みを言っている光景は不快だった。
 他のヒトたちにとってもそうだったのだろう。
「あんた、俺たちにもケンカ売ってんのか?そこら辺にしとけやみっともないみっともねぇ
 一人の冒険者らしき大柄の男のヒトが2人に近づいて言った。
 そんな風に咎められるとは思わなかった様子の中年の男は、明らかに動揺した様子なのだけど、強気な態度は保ったままで
「は?」
 と聞き返した。その態度にカチンと来たのだろう、男性が
「俺もあんたのいう、この程度の料理や菓子がウメェと思う貧乏人だよ。悪かったな、貧乏な舌で!表出ろ!糞が」
「いや、おれはそんなつもりじゃ…おれはただこの生意気な小娘に!」
 男が慌てて言い訳しようとしているところへギルドの職員さんが近づいた。
「ああ、助かった!たすけてくれ!」
「お客様……ではないようですね?あなた様のようなな方がこの程度の食堂のお客様であるはずがございません。こちら建物内での荒事は禁じられておりますし、お客様でないなら早々にお引きとり願いたいのですが」
「きゃ、客だ!注文する!金なら払う!助けてくれ」
「ご冗談を!あなた様に御出しできるような料理など、恐れ多くてとてもとても……」
「助けてくれ」
「当ギルドでは個人間のいさかいには干渉しない方針となっておりまして……。出入りを制限などは致しません。ご自由にお出になられることにも当方では干渉など致しませんのでご安心下さい」
「何だと!この冒険者崩れが生意気な態度とってんじゃ……」
「冒険者……崩れ……」
 冒険者が集まる『冒険者ギルド』で勇気ある言が飛び出した。
 食堂全体にひんやりとした空気が流れる。
 この冷気は……場にいるヒトたちの魔力のせいかもしれない。
 魔力操作が感情に左右される人は珍しくない。
 当然危険なので、そうしたことの無いよう、訓練をするのだけど。“人”はそうそう完全になれるものじゃない。
「いや、おれは。その」
 中年の男に辛うじて残っていた威勢が消え失せる。
「マクスさん、巻き込まれるかもしれん。出よう」
 ガイアスくんはそう言って、バッシュくんたちを抱え、素早く肩と頭に乗せると「おっちゃん!」と中年の男に声をかけた。
 ガイアスくんに助けてもらえると思ったのだろうか。男の表情が少し和らいだところに、ガイアスくんが懐から小さな小瓶を取り出してポーン、と投げた。回復ポーションだ。
娘と何があったか知らないが、この場をこんな風にしたのはあんた自身だ。けど健闘は祈る」
「ガイアスくんが慈悲深いのだ」
 食堂を出る間際、私が食堂を振り返るといつの間にか渦中の少女の姿は見当たらなくなっていた。

 ◇

「私たちが出掛けている間にそんなことがあったのね」
 夕刻近く、冒険者ギルドへ戻ったエレイナさんとロデリックくんに昼間の出来事を話す。
「大して関わり合わずに場から出たのは正解だったな。私にいわせれば回復薬ポーションをくれてやったのは余計だが」
 ロデリックくんが長椅子に腰を掛けて寛ぎながら言った。
 椅子は大きめのゆったりした物だけれどロデリックくんは大柄なのであまりそうは見えない。

「そうだ、魔導ギルドに私宛でイシュタルさまから言伝てが届いていて、『森』の調査を冒険者ギルドを通して出し直すから準備していて欲しいって。今日の日付で今のところ向こうから参加日時の指定は無いみたい」
「依頼を出す前に連絡してきたということは、こちらの準備が整い次第というところか?」
「ふん……かまわないが、手荒い冒険者こちらの参加を嫌っている魔導考古学組合が我々の参加を許可したとなると『百犬隊シーバ隊』が『ヤマルの森』周辺の警護に駆り出されているのが引っ掛かる」
 ロデリックくんが少し神妙な面持ちになった。
「森の近くで何か起きる予兆があるのか、すでに起きているか」
「考えすぎじゃないのか?調査依頼の予定そのものは以前からあったんだ」

 ガイアスくんが不吉なものを追い払うように言った時、部屋の扉がノックされて「西門地区支部の冒険者ギルド職員タイラと申します。ロデリックさんはこちらへおられますか」という声が聞こえてきた。

 ロデリックくんが長椅子に寛いだ姿勢のまま「ああ、戻っている。用があるなら中へはいりたまえ。鍵は開いている」と返事をする。
「いえ、それは」
 職員のヒトが言いよどむと、ロデリックくんがゆっくり椅子から立ち上がり、そのまま扉の前まで移動して職員のヒトと一言二言話した。
 それから扉を開け、私たちに向かって「所用が出来た、夕飯は君たちだけで済ませてくれ。今日のうちに戻る」

 そう言い残して出掛けて行った。
 ロデリックくんのような高ランクの冒険者には公には募集をかけない指名の依頼が多くなる。
 どうやらその類いの申し入れのようだ。
 今日中に帰れるということは、王都城壁の外へは出ないで済む用件なのだろう。

 入れ替わるようにジャックくんが袋を持って帰ってきた。
「おかえりー」「おかえり」「おかえりなのだー」
「帰りに露店で買ってきた」
 そう言うと袋から包みを取り出した。
 包みの中はタレをつけて焼かれた大きめのお肉だ。
「食べるか?」「うん!」「ありがとうなのだ!」「悪いな」「いただきます」
 わらわらと包みに群がってお肉が行き渡る。残念ながらロデリックくんの分は残らなかった。
 まあ、ロデリックくんは甘いものの方が好きだから、それほど気にしないだろう。
「すぐに戻ると行った割に遅かったな。なにしてたんだ?」
「城壁外側の農場辺りに草原ウサギが増えすぎてるというんで狩って納品してきた。そのあとウッシーの乳絞りを手伝っていた」
「働き者か!」笑いながら言うガイアスくんに
「なにもしないと暇だろ」
 そう言うとジャックくんが最後のお肉にかぶりついた。
「ウッシーの乳絞り、今度ボクも連れてって欲しいのだ!」「ボクも!」「僕もやってみたい」
 シナップくんたちがそう言うとジャックくんがお肉を食べながらうなずいた。

 冒険者ギルドへ発注される依頼には魔物の討伐の他にも、住民の食糧調達なども含まれる。肉の調達を兼ねた『狩』の依頼は主に増えすぎて害を及ぼすようになった動物が対象になることが多い。
 草原ウサギは年に3回程の繁殖期があり、1度に子が産まれる数も比較的多く増えすぎることがよくあるので、今回依頼が出されたのだろう。名前に『ウサギ』とついているけれど、このウサギは大きくてなかなか強いことで名が知られていて『草原ウサギ大砲ウサキャノン』と呼ばれる必殺技を使う。
 穴堀も得意な大食漢である。

 夜には食堂で食事を終え、部屋に戻る途中の私たちの前を昼間見た少女が通りかかった。
 ギルドの出入り口が閉じられる時間帯にまだここにいるということは、彼女も冒険者としてギルド登録しているらしい。
 華奢にみえるけれど、“単独活動ソロ”なのだろうか。
 ギルド3階に借りた部屋に戻って程なくすると、ロデリックくんも戻ってきた。

 ◇

「ギルド職員から礼にとこんなものを貰った」
 部屋に戻ったロデリックくんがそう言いながら、私たちに数枚の『入場券』を見せてくれた。券自体が記念品になりそうな、見た目に美しい『入場券チケット』だ。
「それは?」
「『迷宮都市カルディナ』の入場許可証ダンジョン切符じゃないか」
 ガイアスくんとジャックくんが声を揃えるように言った。

 『迷宮都市カルディナ』

 ガレディア王都からかなり離れた北東にある都市で、1,000年ほど前までは独立した国だった、ガイアスくんたちが住むアルファルト大陸のなかでも、古い歴史を持つ自治権を維持した大都市だ。
 王国時代からある城壁内側に『天然』の『ダンジョン』を抱えているほか、都市そのものの構造も入り組んだ『迷宮』のようになっており、古代に仕掛けられたさまざまな対侵入者の仕掛けと、地元の住民が道に迷うなどの逸話も相まって、付いた渾名が『迷宮都市』だ。
 王都から離れたカルディナへの道中は、魔物の数も多く危険だが、それでも、むしろそうだからなのか、腕に覚えのある人たちの間でちょっとした『観光地』になっている。
 今では都市に入る入場許可証に付随したダンジョン入場許可証を有料で発行して収入源に変えることが出来るくらい人の集まる街で、広さに対して人口も多く、人口密度が高い。
 さらに結界の進歩や警戒網の強化により、以前より安全な幹線道が整備された近年、一般の観光客も増加、有する複数の『天然ダンジョン』にも入場料金をかけ、一般観光客や初級者用に手を加えた『人工ダンジョン』まで設けたりしている。
 シナップくんの『塔型迷宮メイズ』や3,000年前にダンジョンが娯楽として流行っていたなどと聞いてしまった後だと『天然』のダンジョンというのがどのくらいあるのか疑わしくは思えるけれど、好奇心を擽る古い時代の不思議なものが存在する事実に変わりはない。
 私なんかから見るとずいぶんと命懸けだけど。

 ──確かガレディア王都内やすぐ周辺にも、いくつか地下へ続くダンジョンの入り口は発見されている。けれど、王都よりも遥に面積が小さいにも関わらず、『カルディナ』には都市内に大規模なダンジョンだけで入り口が3つもあって、そのうちの一つは未だに最下層へたどり着いたもののいない難攻不落とも言われるダンジョンだ。
 湖や比較的豊かな自然を中心に国を成し、発展の過程でダンジョンの入り口が発見されているガレディアと違い、『カルディナ』はダンジョンを中心として国が成されたとされている。
 小規模なダンジョンまで含めれば、その数は広さで劣る王都よりもずっと多く、魔物の脅威があるものの、鉱物資源も多く発見されると聞いたことがある。
 多くの場合、魔物の巣窟と化したようなダンジョンから人は遠ざかって街を形成するのだけれど、資源の豊富さからダンジョンを受け入れて栄えることもある。カルディナがその最たる例だ。
 さらに都市の北には海があり、多くの幸がもたらされる。
 東側には大河も有し、今日では無条件に豊かにみえる『カルディナ』だが、海を越えて北にある大陸の大国から度々侵略を受け、一時は非常に苦しんだとされている。
 ガレディアとはガレディア建国初期の2,000年前に国交を結んだとされ、おおよそで1500年前に『カルディナ』側からガレディアに戦争を仕掛けた事実が『カルディナ』自身に伝わる古い歴史文書に残されており、現在に至るまでにガレディア領土の都市の一つとなっている。
 カルディナ王家とガレディア王国との間でどういった経緯があったのかまで、多くは記されていないこともあり、解明されていないが、海の外からの侵攻と魔物の脅威に苦しめられていた『カルディナ』が、新天地として『ガレディア』を欲したことに端を発したと推測され、長い時を経てガレディアやワルゴなど周辺の大国と手を結び、侵略と魔物に対抗する道に帰結したのではないかという説が有力だ。
 カルディナだけでなく、鉱物等資源の集まる場所は魔物の巣窟にもなりやすく、折角苦労して魔鉱山を堀当てても、いつの間にか魔物に占拠されてしまうというのは、現在でも良くある話で荒事に対応する職業は今もなお失くならないのである。
 ダンジョンとは、それが今よりも苛烈であった時代に産まれた古代遺物なのだといわれている。

「せっかくだ。今度我々で行ってみるか」
「いいのか?これは結構貴重な方の『入場券』じゃないか」
「大したことはない。しばらくの間『カルディナ』のダンジョンを自由に探索出来るというだけだ。衛兵もそのつもりで用意したのだろうし」
 ロデリックくんが貰った『入場許可証』はその『ダンジョン』全てに入場出来る『券』が8枚。
 確かに私たちの人数分、ピッタリだ。
 ただ、1枚でも高額な方の『入場券』
 先払いとなる値段の代わりに都市公営の宿泊施設が予約限定で無料、制限付きではあるけれど飲食店でも利用が無料になる。

「滞在可能な有効期間が180日になってるゴールド券は1枚で500万ゴッズを超えるんじゃ」「エレイナさん、今の相場だと700万を超えます」ノアくんに教えられエレイナさんが驚く。
 ヒトにもよるけれど、住居にかかる費用を除けば、少ない人だと日に褐色大銅貨5枚500ゴッズくらいで生活する。
「8枚全部合わせてとはいえ、大金貨350枚の値打ちだ。家が建つぞ」
 贅沢を求めず古くてかまわないのなら大金貨20枚程度でも2階建て以上の家が1つ買える。
 物価の低い街や貨幣価値の低い国でなら、大きな家でも買えるだろう。
 残念ながら、当の『迷宮都市カルディナ』はガレディア王都より物価が高いため、そこまでの値打ちにはならないだろうけど、それでも取引価格はそれなりの額面の『入場券』のはずだ。
 こんな物をお礼にとくれた相手も中々のものだ。
 わずかな時間でロデリックくんは一体どんな依頼をこなしたんだろう。
「それ以上にダンジョンで稼げるだろう。悪いと思うならそれで返せばいい。ギルド内で昇級すればこのくらいの物、依頼をこなしていけばいつでも手に入る」
「それはそうだが」
「ふん、理由が必要か。ならカルディナの初級とされるダンジョン以外、中級、上級とされるダンジョンは地元『カルディナ調査団』ですら未だ最下層にたどり着けず、39階層で永く足踏みしているのは知っているだろう。私の記録はその上級の地下26階。だがこれは『単独ソロ』で挑んだ記録だ。言っている意味はわかるか」
「私たちが一緒に参加すればもっと深くまで潜れるの?」
 エレイナさんが聞くと、ロデリックくんは直接には答えず
「ガイアス、ジャック、今の君たちなら少なくとも足手まといになるとは思わない。希望をいえば後衛のエレイナたちにはもう少し耐久と魔術を強化してもらいたいが、羊君は今くらいの耐久と術だけでも役には立ちそうだ。羊君の地縛術は効きさえすれば攻撃も凌げる」
 気のせいか私だけ耐久目当ての囮か何かに選ばれている気がするけれど、ここは素直に誉められたと思うことにしよう。
 意外なのはロデリックくんがエレイナさんへの評価をあまり高くしなかったことだけど、命に関わることだから当たり前かと気がついた。
 ロデリックくんがエレイナさんに向き直る。
「エレイナ、君はもっと上に行ける。今すぐでなくていい、私と来い。私を最下層まで導いてくれ」
 ロデリックくんがエレイナさんを真っ直ぐに見て言った。

 ◇

 ─翌日の早朝

『ガレディア新知情報板』を持ったままのシナップくんが、バッシュくんとノアくんと慌てた様子でギルドの図書室から帰って来た。

『各地に魔物の群れ出現』『魔物の相次ぐ襲撃!城郭都市ワルゴ孤立か』『西の砂漠、魔物の襲撃により村が半壊』
 穏やかではない内容の記事が踊る。
「更新されたのは今朝だね」
「依頼が来てないか見に行くついでに、この件についても情報がないか聞いてくる」
 ガイアスくんがジャックくんと連れ立って部屋を出た。
 魔物が群れているのは珍しいことではない。わざわざそう書くほどの数で魔物が現れたと思うのは考えすぎだろうか?
 私たちの脳裏に『何者か』が思い浮かぶ。
 魔物のヒルデブラントくんに崇拝されていた謎の人物。
「私たちも出よう」
 そう言うとロデリックくんがいつもの鎧を身に付け始めた。
 バッシュくんたちが図書室へ『情報板』を返しに行く。
 それからガイアスくんたちに遅れて1階に着くと、冒険者ギルドの玄関口のロビーが騒がしくなっていた。
『ワルゴ』の件が他の魔物の襲撃事件と関連を想起させて影響しているようだ。
 私たちはガイアスくんたちと行き違わないよう通過地点となる階段の近くで待機することにし、なるべく通行の邪魔になりにくいよう壁際に寄る。

 しばらくすると話を聞いてきたガイアスくんたちが戻って来た。
「王都の周辺でもいつもより多く魔物が現れているらしい」
「騎士団と兵師団が一部対応に向かっているそうだが俺たち冒険者ギルドの他にも傭兵ギルドや探索ギルド、ハンターギルドにも通達が行っている。今は数だけで特別目立つ魔物はいないという話だ」
「なら今のところ私たちの出番は無いということか」
「それがそうでもない。城郭都市のワルゴがちょっと前に似たような状況から今は魔物に孤立させられている」
「『ヤマルの森』の北では少し前から『城郭都市ワルゴ』へ物資を運ぶ荷馬車が魔物に襲われるということが多発していたらしい」
 ワルゴへの荷馬車が通るのは舗装された幹線道で、幹線道には要所ごと宿場や衛兵の駐留場を設け周辺を見回るため、通常馬車が魔物に遭遇すること自体少ない。魔物避けの工夫は当然、全てを網羅しているとはいえないものの、ガレディア領内には人の集まる街や主要な幹線道には結界が施されている。
 にも拘らず馬車が襲われることが多発していたという事実は、私の想像以上に場にいる多くの人に重く受け止められているに違いない。

「今王都の騎士団とシーバ隊が急ぎで北西のワルゴへ向かっているそうだ。百犬隊の方は『森』の近くを警戒していたから、そう時間もかからずワルゴへ到着する見通しだ」
「そういうことか」ロデリックくんが小さく呟いた。
『城郭都市ワルゴ』の南に位置している『ヤマルの森』は万一の備えで『百犬隊シーバ隊』が待機するのにちょうど良い位置だったのだろう。しかしその間を挟んで魔物が現れたため、一時的に物資の供給が断たれて孤立しかけている。その解消に向かっているようだ。
「ガイアスのパーティ名義でオレたちに依頼が入っている。依頼の内容は『森』の調査ではなく『宿場町カマル』を拠点とした周辺地域への警戒と待機だ。他にも何組かに打診しているらしい」
「依頼は国から各ギルドへの要請で発生している。俺たちの依頼主は領主のホレスさんと連名で魔導ギルド長イシュタルさんだ。統括は冒険者ギルド。どうする。引き受けるか」
 魔物のせいで『森』の調査が急遽変更になったようだ。
「詳しい情報と状況が知りたい。職員にわかるものはいるのか」
「今はいない。情報収集に駆け回ってる最中だ」
「今辛うじてわかるのは、砂漠の村も他もワルゴと同じだということ。砂漠の村は侵入されて建物を壊されている分『ワルゴ』より状況が悪いが、少数だが兵師団と冒険者がいて軽傷者だけですんだらしい。対峙した兵士や冒険者の証言に共通していることは『いつの間にか魔物の群れに囲まれている』だ」
「戦っているうちに集まった魔物に囲まれている、という意味では無いな。もしそうなら、証言として採用しない」
「ああ。探知に優れた者も中にはいるらしいにも関わらずだ。俺たちにも同じことが起きる可能性がある」
 探知に優れた犬族の精鋭『百犬隊』の警戒網をすり抜けて、魔物が『ワルゴ』を孤立させかけている。
「たまたま探知を掻い潜って気配を消す能力を持っている魔物に襲われただけとも取れるが。報告が多すぎるな」

「魔物が一斉に探知を逃れる能力に目覚めたみたいだ」

 ◇

 昼が過ぎてようやくギルド内の様子が落ち着いてきている。
 各地での魔物の群れ出現や砂漠の村の半壊、『城郭都市ワルゴ』孤立の報せに衝撃は受けたが、城壁内への侵入はされていないこと、既に援軍が送られていること、何より死者の報告がなく、自分達のいるガレディア王都周辺の魔物の群れ制圧に成功したことが冷静さを取り戻させた。
 王都の護りはもとより、主要な農場、牧場や施設の護りも強化されている。南にある犬族の街の無事も確認が取れた。

 食堂では多くの席で『城郭都市ワルゴ』について話されていることがうかがえた。

 ─『迷宮都市カルディナ』と同様、ガレディア王都よりも古い歴史を持つ『城郭都市ワルゴ』─
 その堅牢な城壁は八重にもなり、かつて王族と巨大な城を中心に栄えた城下町だ。都市住民は主に火属性の魔力と高い身体能力を持つ民族で構成されており、現在はガレディア領土にある有数の都市の一つとして名を連ねる。
 迷宮都市カルディナの持つ歴史とは異なり、ガレディアと戦争となった記録は残されておらず、長く友好を続けているこの都市の城壁が、何を想定して築かれた物なのかを知るためには、神話の時代へ遡らなくてはいけない。

「そろそろ行こう」

 私たちは次の行き先を依頼通り『ヤマルの森』の北にある『宿場町カマル』に決めて冒険者ギルドを出た。
 西門の馬車乗り場から北西へ向かう道程で移動する。
 昼までの間には魔物について情報がまとまって来ていた。
 まず砂漠の村の家などの建築物を半壊させたというのは、イビルキャットという魔物だった。砂漠に適応した砂猫に見た目は似ているけれど、大きさも魔力も全然違う小型魔物の中では大きめの魔物だ。鋭い爪と牙を持ち、素早い身のこなしで石造りの小さな建物や大型テントの住居ぐらいなら簡単に壊してしまう。
 それが300人程の小さな村に、10体以上の群れで現れたそうだ。
「駐留している衛兵のほかに、たまたま遊牧民と連れ立った冒険者のパーティが村の祭りを見に来ていて、軽い怪我人をした程度で済んだらしい。今回の件が起きる前からちょくちょく村の近くで見かけるようになって多少は警戒していたようだが、群れて村を襲うとまでは思わなかったみたいだ」
 各地に現れた魔物というのも、その地域に生息する動物に見た目だけ似た魔物で、普段なら単独で現れるありふれた魔物ばかりだったという。
「ワルゴの方も似た経緯があって、城壁の外側で自警団が魔物討伐を行ったりすることが増えていたという情報だ」
 バッシュくんたちが心当たりにうなずいた。

 普段よく見かける単独で行動する魔物ばかり……。
「普段単独で行動する魔物がこんな風に群れて、人の村や街を狙うことは良くあるのかい?」
 私が聞くとガイアスくんたちが首をふって
「家畜を狙ったり農園なんかに入り込むことはあるし、街の外で人や馬車が襲われることはあるが、人の集まる村や街をわざわざ狙うのはそれ自体珍しい」
「知恵があればあるほど、魔物の方に人の多い街を襲うだけの益が無いのだよ」
 珍しいことが短期間でこんなに起きたら、何か関連して事が起きてるんじゃないかと思うのはおかしく無いよね。船での荷の配送も滞ったばかりで、やむなく空からの配送を頼んでいる。
 私は心の中の不安を隠しながらうなずいた。

 ◇

『宿場町カマル』に到着すると、宿に向かい部屋を確保したその足で、依頼を受けて来た報告をしに冒険者ギルドの出張所へ向かった。
「何か情報が上がっているかもしれない」
 それほど大きくない2階建ての建物に到着すると、ガイアスくんが言った。
 建物の前には看板があって『冒険者ギルド、カマル出張所』と書いてある。
 出入り口にヒトは立っていない。
 扉を開けて中へ入ると、玄関口直ぐそばが受付台になっていて、奥へ続く扉の無い出入り口と、横に扉と階段がある。
「依頼を受けて来た者だが、誰かいませんか」
 ガイアスくんが奥に向かって声をかけても応答がない。
 横の扉には力強く“関係者以外立ち入るべからず!”と張り紙されている。書類関係が保管されていそうだ。
 私たちも声を出して呼んでみるけれど、2階に向けて呼んでもやはり返事は返ってこなかった。
 どうも留守で人気ひとけが無い。
「仕方ない、依頼を受けたことは届けられているだろうから、宿泊先と来たことだけメモして一度出よう」

 出張所を出ると外は薄暗くなって来ていた。
「お腹が減ってきたのだ?」
 シナップくんがガイアスくんを見上げて言うとガイアスくんもうなずいた。
「そうだな、飯にしようか」
 そう言うと私たちにも見えるようにして宿でもらった宿場町の地図を広げた。
「宿でも食事は出来るが、外の店で食べるか?」
 地図を覗くと、近くに飲食店があるようだ。
 食料の買い出しの出来るお店もある。
 するとロデリックくんが
「今日は宿で食事にしよう。この街の宿で出されるケーキの味はそれなりのものだ」
 そう言って歩き出した。どうやら何度か食べて知っているらしい。
「それは楽しみだ」「楽しみなのだ!」

 宿に戻って食堂に入ると、ちょうど2つのテーブルを1つにして広くした席が空いている。
 他の泊まり客の予約も無いようで宿のヒトに案内してもらえた。料理名の書かれた品書を見て注文を決めていく。
 西の地域の砂漠から運ばれた食材が使われた料理や甘食があった。
「この『巨大ウルカマル』というのは?」
 私が宿のヒトに尋ねると、係の女性が「『ウルカマル』というのは西に自生する砂漠植物で葉がとても肉厚で果実のように甘いので甘味としてもこの辺りの遊牧民に好んで食されているものです」
 女性がそこまで説明すると、ロデリックくんが
「羊君、巨大ウルカマルは、その『ウルカマル』が巨大化したものだ。1人で食べるつもりかい?」
 すると係の女性の表情が綻んで「お二人様以上でお召し上がりになりやすいよう、カットしてお出しさせていただいております!」と説明を締めくくった。
 なるほど、ちょっとお高めに値がついているのはそのせいか。
 輸送にかかる費用のせいだけでは無かったんだね。
「頼むかい?ケーキもおすすめだが、その果肉植物もなかなかいい」そう言うとロデリックくんが1つ先に注文した。

 食事のほかにケーキも何個も注文していっている。あとはこの『巨大ウルカマル』という果肉植物を何個注文するかのようだ。
 係の女性も待ってくれていて「非常に甘いので、先にケーキの方を召し上がりますか?お茶もお持ちします」と言ってくれている。
「バッシュくんたちも一緒に食べようか」
 私が聞くと、バッシュくんたちが嬉しそうにうなずいて、ガイアスくんとジャックくん、エレイナさんも注文することに決めた。「ありがとうございます『巨大ウルカマル』6個のご注文承りました!」
 注文を終えて料理が来るまでの時間、私たちは軽くこれからの予定を確認し合う。

「ギルドへの要請は各都市を結ぶ物資補給の流通経路の周辺警護だ。俺たちは『百犬隊シーバ隊』が『ワルゴ』の援護と警戒のために移動したのと入れ替わるかたちで『宿場町カマル』を拠点にしてしばらく警戒に当たる。百犬隊あのヒトたちの抜けた穴埋めには全く足りないが……」
 冒険者ギルドの中で短時間でこの任務につけた数はあまり多くないらしく、『ワルゴ』と『王都』を結ぶ幹線道路の警戒に当たれるのは60名ほど。私たちを含めても70人に足りない。
 護らなければならない流通経路は他にも無数にある。この先の詳細は『宿場町カマル』の『冒険者ギルド出張所』で聞ける予定だ。
 運ばれてきた料理がテーブルの上に並び始めた頃にロデリックくんが言った。
「幹線道には普段から駐留している衛兵たちもいる。商人はともかく、旅をして街の外を出歩くのは、一般人より我々のような危険を任にするものの方が多い。彼らのほとんどが一晩休めば快復するような連中ばかりだ。気負うことはない」
 それに応じるようにガイアスくんたちが言った。
「そうでなくても昔と違って今は癒術も薬術も発達しているからな」「そうね、回復薬もいいものが出回っているし」
「魔導具も便利なものがたくさんあるから、足りない人手も補えるよ」
 バッシュくんとノアくんが魔力を感知する魔導具を私に見せてくれた。あまり遠く離れた魔物や人はわからないそうだけど、魔物スライムより魔力量の低いヒトのことも探せるくらいの性能があるそうだ。
「生命力探知の魔導具と併用すると精度があげられます」
 敵を発見するためというより、本来は行方不明者を探すのに適した魔導具なのだろう。2人とも自分でも所持している。
「今回はそれに近い性能の魔導具が俺たちにも支給された。マクスさんも持っていてくれ。気を張っている時間が抑えられるはずだ。魔力も消費しない」
 逆に気になってしまう可能性もあるけれど、私はそれを言わずに受け取った。持っていた方が役に立てる。
 魔石を使う仕様で、私の場合術者の魔力量や術の練度が影響しないのはありがたい。
「街中で作動させると音がしたり光るから気をつけて」
「魔力探知と生命力探知の魔導具は仕組みはどちらも似たものです。ヒトや動物に無闇に反応しないように調節するため、どちらにも魔力探知と生命力探知の機能が付随しているのですが、ヒトが多いところでは作動しやすいです」
 使い方を教えてもらって準備万端な気持ちになってきた。
 テーブルには美味しそうな料理がたくさん並んでいる。
「飯にしよう」
 ガイアスくんが言って食事が始まった。
「いただきます!」「いただきますなのだ!」
 野菜料理と肉料理の中には乾燥地帯特有の植物や動物を使ったものもある。ロデリックくんが頼んでくれた料理で、王都ではあまり見かけることのない食材が使用されている。
 ここからさらに西に住む遊牧民が雨季になると訪れるので、その時に彼らの工芸品と合わせて食べ頃になった食材がたどり着くそうだ。
「魔術を使えば王都まで保つらしいが、それでは流通までに味が落ちると聞いている」「保存技術が高くなれば、もっと遠くまで運べるようになるのだ?」「そういうことだ。収穫が多い時期に起きる食材の無駄も減るだろうな」

 食事が進むとお皿が下げられ、代わりにケーキ、続けてカットされた『巨大ウルカマル』がお皿と一緒にテーブルに置かれた。
 丸ごとのケーキよりも一段と大きい。
「大きいのだ」「わぁ」
 舟形のような肉厚の葉の表皮を削いで、お皿のようにしたうえに、四角くカットされたオレンジ色の艶やかな果肉が綺麗に並んでいる。
 ロデリックくんが優雅にケーキと紅茶を味わいながら、ゆるやかに口角をあげた。丸ごと2個、一人で食べる気でいるに違いない。
 私がそう思っていると、ロデリックくんが向かい側に座ったエレイナさんに向かって声をかけようとして止めた。
 1個はエレイナさんと食べるようだったかもしれない、けれど。
 エレイナさんは並んで座っているシナップくん、ノアくん3人で一緒にもう『巨大ウルカマル』を食べ始めている。
 私はノアくんの隣に座るバッシュくんと食べるつもりでお茶を飲んでいると、ジャックくんがロデリックくんに
「一緒に食べてやろうか?」と声をかけた。
 私のほぼ正面に座っているガイアスくんが、笑いを堪えている。

 ◇

 宿の食堂で夕飯を済ませ、冒険者ギルドから連絡がないのを確かめる。
「書き置きはしてあるから、明日の早いうちにもう一度顔を出そう。次も誰もいないようなら探す必要があるな」
 街は塀と結界が張られていて、魔物の侵入自体には対策がされているけれど、今は街の外に予想以上の魔物が集まっている場合に備えなければいけない。

「結界と警戒の強化で済めばいいが」

 もともと魔物や野性動物魔獣がいるため、一般住民でわざわざ外の街まで出掛けるヒトは多くない。
 物資の輸送経路を護るだけで足りれば、今後も一般住民の生活に影響はほとんど出ないだろう。

 長命な種族のヒトの記録や話では、大昔は今なんかより魔物が多く、日に何度も兵が駆り出されていたそうだ。
 街から街へ物を運ぶのも大掛かりに武装した隊を組むのが普通だった。
 各地の要所要所に見張りが立てられているのは、その時代から続く慣習と護身の知恵だ。
 当時あまりに魔物の被害が多いのを逆手にとって、魔物に罪を着せたり、魔物の仕業に見せて悪行を重ねる人も数多くいたため、不必要に魔物の印象が悪くなっている歴史もある。
 今では信じられないけれど、ヒトでさえ魔物と関わりを持ったというだけで、親戚縁者まで迫害され殺されるような時代もあったことが史実に残っている。それも人の歴史の一部だ。
 あの『何者か』はこうした魔物とヒトの軋轢の中に上手く入り込んで魔物を操れるのかもしれない。
 そうした歴史が今に影響しているなら、それはある種の因果応報なのだろうか。
 イビルキャットがヒトの言うことを理解して、従うのかどうかはわからないけれど。
 魔物のヒルデブラントくんは力を与えられ、従っていた。
 彼の知性は与えられたものだったろうか。それとも

創世記テラ聖書』や神話や伝承で魔物と思しき登場人物が、ヒトと交流したり取引したりするものがあるけれど、あれは史実を織り交ぜて創った良くできたおとぎ話のようなものだ。

「今はわからないことが多い。あとは明日考えよう」
 ガイアスくんはそう言って就寝の準備を始めた。
「ボクは少しの時間だけ、塔型迷宮メイズに帰るのだ。すぐに戻るのだ」
 シナップくんはそう言うと、光のようになって部屋から消えてしまった。
 私たちは追いかけずに待っていると程なくしてシナップくんが帰ってきた。
「塔に変なことされてないか心配になったけど、問題なかったのだ。『創造の間』と結界の警戒体制も強化してきたのだ。それと
「それは?」
『塔型迷宮』から帰ってきたシナップくんが何か持ってきている。
「さっき食べた『ウルカマル』に似ている植物なのだよ。あんなに甘くて美味しくはないけど、これも甘いのだよ。思い出して持ってきたのだ」
 そういって見せてくれたのは、楕円の形をした黄緑色の肉厚の葉っぱだ。小さいけれど、確かに似ている。
 ロデリックくんがシナップくんから1つ受け取ってパキッと割ると、明るいオレンジ色の果肉だ。
「近縁種かもしれないな」
「丈夫で、本体から離れても葉だけで成長出来るのだ。本の少し魔力や体力も回復させるのだ」
「食べていいか?」
「もちろんなのだ」
 シナップくんの許可を得て、果肉を食べてみると
「これも甘くて美味しい!」
 スッキリとした甘さで食べやすい。甘さが抑えられた分酸味が強い感じだけれど、気になるほどではない絶妙さだ。
「昔、今の王都辺りで採集出来た植物なのだ」
「今の王都では見かけないが、西に行けばまだ同じ種が残っているかもしれないな」
 ロデリックくんがそう言うと、シナップくんは少し嬉しそうに笑った。



 ────────
 ────────

 □共有アイテム□

 ◇主な食料の在庫
 内訳(長期保存食料186食分)
 ◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物5日分

 ◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
 ◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他

 □各自アイテムバッグ
 ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本

 ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)

 エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)

 シナップ 『塔にあるもの全部』
 ロデリック『私物とお菓子』

 □背負袋

 ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』

 ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』

 エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』

 マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』

 バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』

 ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』

 シナップ 『塔にあるもの全部』
 ロデリック『私物とお菓子』
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