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第26話 契約の魔物
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「はー、聞けば聞くほどめちゃくちゃヤベェ集団だな『百犬隊』ってのは」
宿場町カマルでの警戒任務1日目を終え、報告のために訪れた冒険者ギルド出張所で、所長さんから城郭都市ワルゴの城壁外側に新たな魔物の群れ出現と、シーバ隊長が率いる『百犬隊』の消息不明の情報に一時は衝撃を受けた私たちだったけれど。
バッシュくんたちから百犬隊について話を聞いていたカマル出張所の所長さんが、そのすごさに呆れ返って言った。
バッシュくんとノアくんは先程までとうって変わって明るさを取り戻している。話した内容は話して良い部分だけでこれだというから所長さんの驚きもひとしおだ。
「隊員の数が多いほど上がる魔力連携効果で全員揃ってる間は能力がはね上がるわ、魔導術でも身体能力の底上げはするわ、全員が瀕死の重症でもその場で超回復ってなんだよ!想像しただけで怖いよ」
瀕死の重症がその場で回復する『超回復』は生命の危機時に保有魔力が身体に作用して起こす超自然的生理現象なのだけど、この『超回復』が発動したあとはその発動前よりも体力が少し上がる、という特性がある。
ガイアスくんとジャックくん、白金級のロデリックくんの3人は別として、当然なんだけど、そんなにホイホイ誰にでも起きる現象じゃない。
「シーバ隊長は単独で大型竜を倒した逸話も持つ強者だ。そのヒトが率いる隊って言うんで、うちの自警団の団員も手合わせしてもらったからよ、強いことは知っちゃいたんだが。そりゃ単独の強さに過ぎねぇよ。全員が揃ってるとそんなに違うのかよ!って話だ。聞きしに勝るとはこの事だ。深刻に考えちまったのが阿呆らしい」
それから
「何度も言うようだが、新しく現れたという魔物の種類はまだ特定して報告されていないが、ワルゴの戦力で急速に戦況を変えてしまうような魔物でないことは確かだ。聞いてる限り、支援で能力値がはね上がってる百犬隊を短時間でどうこう出来る魔物だとは考えられん。連絡が途絶えて姿を消しているのを楽観視するわけじゃねぇが、自力でどうにかする可能性が高い」
所長さんはそう言うと「今日のところはご苦労さん。もう宿に帰っていいぞ、散った散った!うちは都会のギルドと違って狭いんだ」と私たちを追い払うような仕草をしたのだった。
◇
ガイアスくんたちと宿の部屋に戻ると私たちは魔物について話し合う。
ガイアスくんたちは出来ることなら直ぐにでも『ワルゴ』ヘ向かいたいかもしれないけれど、口には出さない。
任務中というだけでなく、ワルゴヘの主要な道は魔物騒ぎで許可が無いと通過できなくなっている。
行くなら迂回道だけど、状況がわからない現状で策もなく向かっても却って迷惑がかかる恐れがある。
今は彼らの強さと連携を信じて待つのが最善なのだ。
「数の減らない魔物か。分裂したりして増える魔物の類いにしても妙だ。それにマグナスレイブや熱蛇は勿論だが毒ウサギが分裂して増えるなんて聞いたことがない」
「西の砂漠のイビルキャットや、他の地域に現れた魔物はちゃんと討伐されてるんだよね」
「ああ。ラスターとパットと一緒にいた遊牧民のヒトたちで」
バッシュくんたちと就寝の準備をしながらエレイナさんがガイアスくんたちに言った。
「ワルゴの魔物だけどうして減らせないのかしら」
そうだよね。どうしてワルゴだけ減らせないのだろう。
分裂したりして減らないとかじゃないなら、転送術で魔物が送り込まれてるんじゃないかって思ったりするけど、何千もの魔物を一度に転送なんて、あの『何者か』に出来たりするんだろうか?
『何者か』は強かったけれど、転送術を自在に出来る感じには思えなかった。
すると、湯浴みの後で丁寧に布で体をふき終わったシナップくんが、備え付けの温風器でエレイナさんに全身を乾かしてブラッシングをしてもらいながら「見ていないから確実じゃないけど、塔型迷宮や他の人工ダンジョンでも使われてた契約の魔術を使ってるかも知れないのだよ」
「前にも言っていた死なない契約魔術のことか。シナップ、どんな魔術か教えてもらえるか?」
「教える代わりに、甘食食べていいのだ?」
「晩飯で足りなかったのか?ちょっとだけだぞ」
「交渉成立なのだ!」
シナップくんはそう言うと部屋に用意された物と別に魔術でテーブルと椅子をパッと出して人数分のカップを用意してくれた。
どうやら自分の分だけでなく、私たちの分まで交渉の中に入っていたらしい。
「シナップちゃん、ビスケットと飲み物は紅茶で良い?」
「上出来なのだよ、エレイナ君。あ、ボクの紅茶は牛乳とお砂糖たっぷりめでお願いするのだ」
そう言ってシナップくんはテーブルの席につくと
「説明の前に先に結論だけ言っておくと、契約の魔術への対応策は契約の無効化。術者か魔物本人を倒せば即時解決なのだ」
と、事も無げに言った。
◇
◇
◇
「つまり、『分身』を作る契約は『魔物本体』が不死性を持つ契約とは違うのか」
「今回の魔物の一件が契約魔術絡みなら『本体』は不死じゃないのだ」
「どうしてそう思う?」
「他の場所に現れた群れは討伐されてるのだ。それに、こういう契約では魔物本人に『魔石』の役割を押し付ける方が、術者にとって危険も手間もかからない契約なのだ」
シナップくんはそう言うと、白銅貨4枚で買える大きさの瑪瑙の魔石をテーブルの上にコトっと置いて、ミルクとお砂糖たっぷりの紅茶を美味しそうに飲んで一息つくと言った。
「契約が成立すると魔石、或いは術者本人の魔力が魔物に移動して、魔物本人が〈分身〉たちの魔力源の役目を担う存在になるのだよ。だから本人は自分が倒されると復活出来ないのだ。術者の方はいつでも魔力を奪い返せるから、生殺与奪の権を握ったまま特別な管理をしなくてもいいのだ」
「?倒されていないなら、本体は魔力を奪い返されても平気なんじゃないのか。不死じゃないのはわかったが」
「分身が一度も倒されていないなら平気かもしれないのだ。でもそうじゃないなら、復活の代償として消費された分の魔力は魔物本人が自分の魔力で支払わないといけないのだよ。分割払いは多分させないのだ。術者が死んでも自動的に魔力が奪い返される。必要以上に取り上げるのは、契約の見返りと魔物に自分を殺させない“備え”だね。その代わり、契約中は与えられた魔力で魔物本人は強くなってるのだ」
分身は魔物本人の魔力体の一部を核にして作られ、数は魔石や術者の魔力量で増やせる数を上限に『術者』か『契約した魔物の本体』が倒されない限り『分身の魔物』をいくら倒しても、時間が経てば復活してしまう。
というのが先程私たちが受けた説明だ。
「塔型迷宮でキミたちに最初戦ってもらった魔物、あれは実験も兼ねた契約だから大分違いはするけど、契約内容の趣旨や仕組みは似たようなものなのだよ」
シナップくんはそこまで言うと、ビスケットをバッシュくんたちと一緒に頬張ってサクサクと音をさせてゴクンと飲み込んだ。
実験。
バッシュくんとノアくんがそんなようなことを、確かに突き止めて言っていた。
私たちがシナップくんの塔型迷宮で対峙した『魔物の部屋』の魔物たち。
彼らは契約のもと魔物〈本人〉から〈独立〉し、塔と魔宝石から供給される魔力を源にしてずっと生きながらえて来た、ゴブリンと同系統であるだけの古代の魔物だ。
契約した魔物『本体』は契約で得た魔力で最早別の魔物と言っていいほど変化しているそうなんだよね。
見てみたい気もするけど、私なんかはちょっと恐い。
それを踏まえてなのだろう。
ガイアスくんがシナップくんに尋ねた。
「西の砂漠の村を襲ったイビルキャットが喋ったみたいな変化は契約のせいなのか?」
「もっと別のことが原因だと思うのだよ。分身を作る契約で魔物が人語を喋るようになるというのは、ボクは知らないのだ」
ガイアスくんの質問にそう答えると、シナップくんが付け加えて言った。
「さっきの話の続きなのだよ。魔力循環のために分身の魔力の再利用をしているなら、分身の魔力の方が本人から供給される魔力量を上回って、分身は倒された場所で復活する可能性が高いのだよ」
「塔型迷宮の魔物と同じに『本体』から独立して影響を受けなくなっている可能性は?」
「考え難いのだ。塔型迷宮でそれが出来るのは『魔宝石』と『塔』の循環機構が機能して〈本体〉の代わりを出来ているからなのだ」
「なら、魔物本体を見つけ出して倒せば分身は消滅する?」
「その通りなのだよガイアス君。魔力供給が断たれて再生できなくなるだけでなく、契約者本人の死亡で魔力が術者に還るから分身は消えるのだ」
シナップくんの推測と解決案にロデリックくんが
「ワルゴに現れた魔物が増えもせず、減りもせず、というのに符合するな」と納得した様子を見せた。
「いつの間にか魔物に囲まれているというのも、倒した魔物が分身だったのならシナップちゃんの説明で納得できる」
「そうだな。倒した分身の魔物が時間が経って復活する。気がつくとそいつらに囲まれているということなら、そうとは知らないヒト側がいつの間にか新しく現れた魔物に囲まれた、と錯覚しても不思議じゃないのか。気づく機会があっても分裂する魔物じゃないからな。だがワルゴに現れた魔物の数は千を超えるんだ。そんな魔力を持つ術者や魔石?」
やはりあの『何者か』の仕業なのだろうか。
こういう城攻めのようなことのために力のある魔宝石を求めているのだろうか。
するとシナップくんがテーブルに置いた魔石を指しながら
「例えばこの魔石1個で契約した魔物の分身を1体作れると仮定して、分身の魔物の数が千欲しいっていうなら、この魔石が数千個、或いはそれに相当する魔力が術者に必要なのだ。難しそうに思えるけど『本体』になる魔物も術者の数も、1対1である必要はないから、双方に協力者がいれば実現は難しくないのだよ」
「そうは言っても強い魔物や分身の数が多いと、魔石も術者もそれに合わせて物凄く魔力が高くないといけなくなるだろう?」
「確かに『塔』の助けがある塔型迷宮に比べれば術者にとって分身を作るのは魔力消費が激しいけど、術を発動させてしまえばさっきも言った魔力の再利用で、あとはそれほど魔力を消費しないのだ。魔物本人に必要な魔力を移してしまえば術者がそれ以上魔力を要求されることもないのだよ」
「その理屈で本体と術者が複数いるのだとしても、これまでの戦いの中でワルゴでだけ本体をろくに倒せていないことになる。なぜだ?」
「そうだな。本体の魔物の数が極端に少ないのか、群れの中にいない可能性もあるのか。シナップ、本体の見分け方とかはあるか?」
「今回のイビルキャットを例にとると、見た目だけだと難しいのだよ。9体や10体程度分身を作るくらいの契約じゃ、大した変化に繋がらないのかもしれないのだ。けど契約した術者や魔石の魔力で産まれた分身は、魔物本人とは違う『臭い』の魔力になってるのだ。それと他と違って魔力量は多いのに極端に動かなかったり、逃げ回るばかりの魔物は怪しいのだ。他に対策がなければこの線で当たってみるのも1つの案なのだ」
「強くなって攻撃的になる魔物もいるだろうが、再生出来ない『本体』なら身を隠したり逃げ回る方が普通かもしれないな」
「魔力の『臭い』を追って術者を探すことも出来るかも知れないね」ガイアスくんの後にバッシュくんとノアくんが言うと、シナップくんが「いい案なのだ!」と賛同した。
「だけどこの本体討伐作戦には1つ重大な欠陥があるのだ」
「欠陥?」
「本体を討伐して契約を破棄させて還される魔力が、魔石分も含めて全部術者のものになるのだよ」
「術者が強化されるのか!」
「双方に利益のある契約なのだ」
シナップくんの話を聞き終えると私たちはお互いに顔を見合わせた。
悪魔との契約だと契約したヒトは願いが成就すると魂を奪われるというけれど、この件では魔物の方が奪われる側だ。
「明日所長に知らせよう。何もわかっていない今よりずっと役に立つはずだ」
ガイアスくんに私たちも同意する。
推測が間違いだとしても、試してみる価値はある。
「役に立ったのだ?」
「もちろんだシナップ。良い情報だった、ありがとうな」
「どういたしまして、なのだ!」
「バッシュとノアも今日はもう遅い。3人ともゆっくり休んでくれ」
◇
◇
翌朝
昨晩話した推測と、本体討伐で対応する場合の重大な欠陥をなるべく短くギルド出張所の所長さんに伝えた。
「そんな契約魔術があるのか?!そもそも、魔物が取引なんてわかるのか?」
と、まず驚かれてしまった。
魔物や動物との主従契約や群の一員としての同意を得た契約は存在するものの、それらは書面や形式も存在しない、何かを成すための契約とはかなり違うものなので、所長さんが驚くのも無理はない。
「古い一族の従魔契約なら知っているが……」
一般的に契約魔術とはヒト同士が行うものなのだ。
中でも互いの魔力の移動を行い交わす縛りと強制力の強い契約魔術は、双方の意思確認と同意がなければ成立しない。
おとぎ話の中でヒトとも魔物ともつかない悪魔や魔神が、契約して人の魂と引き換えに願いを叶えるような話なら、多くの人が知っているけれど。
私だってシナップくんの塔型迷宮を知らなければ簡単に信じないだろう。
「契約云々を信じる必要はない。だが、魔導術でこれまで分裂しなかった魔物が自分の分身を作れるようになった可能性があることを頭に入れてもらえないか。対処法はさっき説明した通りだが」
ガイアスくんがそう伝えると所長さんがうなずいた。
「襲われて討伐しないわけにはいかないが……要は背後に魔物を動かしている連中がいるかもしれないということだな?可能な限りソイツらを先にどうにかする」
「ああ、その線で上にも伝えて欲しい」
「わかった。そういうことなら手がかりを掴むためにこちらも動きやすい。百犬隊の新しい情報はまだ無いが、ひょっとすると何か掴んで追っている可能性も出てきたな。連絡を断って追うというのは妙だが」
所長さんの言葉にバッシュくんとノアくんが顔を見合わせた。
◇
ギルド出張所を出ると街の外の警戒のため持ち場へ向かう。
今日は街の西側を警戒することになっている。
『宿場町カマル』は徒歩でも街中を一周するのに大して時間のかからない面積だけど、東西南北で見える景色はまるで違う、少し特殊な土地柄だ。
北に見える景色は季節によって大量の雪が降るのを確認出来、東には切り立った山、南には森林と緑豊かな平地、西は街から離れるほど、荒れた土地も含む乾燥地帯になっている。
「今日はこの辺りに防御の陣を張ろう」
街の見張り台から少し距離を置いて、平たい地面のある場所に移動する。
今日も昨日と同じようにガイアスくんたちと交代で警戒を行うことになっている。
陣を張るための下準備が整うと、バッシュくんとノアくんが手際よく魔石と予め設計の描かれた魔力紙を四隅に置いた。
「西側は街の見張り台、俺たちは北西と南西に注意を払って警戒を行う。これで問題ないか?」
ガイアスくんの確認にロデリックくんが
「エレイナと私、残りというのは何故即却下されるのか聞いても良いか」
「お前とエレイナだけだとバランスが悪いだろう?」
「私とジャックだけでもバランスは悪いだろう!ジャックなど攻撃しか出来ん!その点エレイナは攻撃魔術に回復も支援も出来て弓まで扱える!万能ではないか!」
「心配するな、ロデリック。回復薬は多めに持っている、EXだ」
「よし、解決したな」
基本的に魔物に囲まれたときに備えてジャックくんとロデリックくんが前衛になる配置だけれど、都合よくジャックくんたちの方を前方にして魔物が現れるとは限らないため、この組み合わせに話し合って決めている。
しかもジャックくんは投擲武器も用意している。
昨日はロデリックくんも納得していたんだけど、2日目も、となると嫌になってきたんだね。
「貴方には貴方自身の回復力や、強力な装備もあるじゃないロデリック。それに回復魔術はこの杖で少し離れている場所からでも使えるようになったの!」
とエレイナさんが嬉々として言った。
魔導研究ギルドと商人ギルドの共同開発品の杖はそのままエレイナさんが貰うことになったもので、秘かに練習して最初より随分と使いこなせるようになっているらしい。
ただ、魔術を無効化してしまう装備品である鎧を身につけたロデリックくんに遠隔の回復魔術は効くのだろうか。回復薬は効果があるようだし、直接触れて回復させる魔術なら効果はあるみたいだけど。そもそもロデリックくんの鎧は回復効果もあって、回復薬はもちろん、回復魔術もあまり意味はなさそうな。
おそらくロデリックくんを除いた場にいる全員が、私と似たようなことを考えているに違いなかったけれど、誰一人それを言葉にはしなかった。
「ふたりとも対応しきれない数の魔物が現れたらバッシュたちの防御結界まで下がってくれ。それが無理そうでもこちらからも駆けつけることの出来る距離だ。交代まで悪いが我慢してくれ」
ガイアスくんがそう言うと、ロデリックくんは渋々ではあったけれどジャックくんと一緒に持ち場へ向かった。
しばらくして
「用意出来たのだー」
というシナップくんの声が聞こえてきた。
『防御の陣』が完成したようだ。
エレイナさんが「はーい」と返事をして3人のいる場所へ歩いていって、私とガイアスくんもその後について持ち場へ戻った。
◇
「そろそろ交代の時間だ」
時刻魔導具が朝10刻を報せるころ、ジャックくんたちとの交代時間になってエレイナさんと私とガイアスくんの3人がふたりと入れ換わる。
バッシュくんたちに見送られ、ジャックくんとロデリックと互いに異常が無いことを報告し合って持ち場についた。
街の南にはヤマルの森があるけど、景色は遠く霞んで確認することはできない。
私たちが警戒を担当する南西の方には背の低い草木が多い乾燥気味の地が広がっているけれど、砂漠のある西に比べるといくらか草木が多く、森が近いおかげもあるのか動植物が多様に確認されている。魔物はいるけれど動植物も負けてはいない。
「魔物地図の魔物の分布と今のところ変わりはなさそうだ」
ガイアスくんが遠眼鏡でも確認しながら言った。
ここから大陸の西端までには広い砂漠といくつものダンジョンの入り口が発見されている他、今から2000年以上昔にはすでに古代の人が交易のために商隊を組んで長い旅をしたという歴史の記録も見つかっていて、今でもその痕跡が大陸西の各地に残され、それらは現在知るヒトぞ知る名所だ。
ただ、交易先となった国々や都市についての記録は曖昧で、今も多くのなぞとなっており、それがまた一部のヒトたちの浪漫を掻き立てる。
その他にもここ数百年程の間に古くからある岩塩の採掘場のほかに新たな岩塩採掘場の発見と沿岸沿い地域の人工の塩田、良質な魔石油田、魔鉱山などさまざまな資源が見つかっているため、いくつかの町や村が急激に大きな都市へと発展して注目を集めているのである。
「北西の光の柱についてはなにもまだわからないのかしら」
不意にエレイナさんが言った。
この魔物騒ぎと時期を同じにして起きる出来事は何か関係があるんじゃないかと気になってしまう。
「どうだろうな。わかったとしても魔物と関係なければ俺たちに情報が回ってくるまでに時間がかかるかも知れない」
「そうね」
そういえば光の柱は南にも現れたんだよね。北西の海と大陸の南の地域。今は消えてしまって確認は出来ないけれど。
海の様子が変だということとも関係があるのだろうか。
船が出せないうちは空経由でない限り、『島』には帰れない。
まあ、荷はもう手配済みなので誰も困りはしない。
時々連絡とお土産でも送ってけばいい。
お昼を過ぎる頃になって、再びジャックくんたちと持ち場を交代し、待機場所へ戻ると、バッシュくんたちが私たちのお昼ごはんの準備をしながら出迎えてくれた。
「僕たちも今からお昼ごはんなんだ」
バッシュくんがそう言いながら、お茶の入った湯呑茶碗を用意してくれる。
大人に混ざって活動してきているせいか、バッシュくんとノアくんの気配りはすごいなと感心していると
「待機場所と言っても、魔力探知や見張りは同じようにやってるんだ。もっと楽にして良いんだぞ」
ガイアスくんがバッシュくんたちに言って椅子に座った。
頑張りすぎていないか少々心配になったのだろう。
エレイナさんも魔力切れを起こしていないか3人の様子を見ている。するとノアくんが
「魔力探知はボクたち魔導具も使ってるし、見張りも交代だから。殆どの時間座ってるだけなので大丈夫です」
そう言って優しく微笑んだ。
魔物が近づいていると音や光を出して教えてくれる魔導具はバッシュくんたちの魔力節約の役にも立っているようだ。
ピコ、ピコ、ピコ……
「あ、こちらに向かって来ている魔物がいるみたい。魔力反応は大きくないね。どこだろう」バッシュくんと一緒に辺りを見回すと、南西を見張っていたシナップくんが見張り用の椅子から降りて
「魔物じゃない、草原ウサギなのだ!」
と報告に来た。
「えっ」「けどこの反応は」
「こっちにスライムもいるぞ」
西側を遠眼鏡で確認してガイアスくんが言った。
ちょっと慌ただしくなってきたね。
ピコピコピコ、ピコピコピコ、ピコピコピコ
魔導具の音が速く、大きくなってきた。
はっきりこちらに向かっている。
遠眼鏡を使わなくても見える距離にもういる。
ガイアスくんがそれぞれ数を確認すると
「草原ウサギは俺とマクスさんでなんとかなる、エレイナ、バッシュ、ノア、シナップは数の多いスライムの方をまず頼む。分身の魔物じゃないか注意してくれ」
「了解」
スライムは強くはないけれど、形を変えて分裂したり合体する魔物で、人間も食糧にする。森に好んで棲息するビッグスライムやジュエルスライムと区別される『魔物』だ。
あちらは実態もあってガレディアでは動物として認識されている。
「スライムの方はジャックとロデリックの警戒範囲だ。街の見張り台もあるから万一は考え難い」
ピピピピピピ ピー!ピー!
魔導具が警戒音を発したところで、ガイアスくんも私も魔力探知の魔導具を止めた。
目の前と言って良い距離に5匹の草原ウサギがいる。
「これ以上街に近づかれるのは困る。うまく追い払われてくれよ!」
ガイアスくんが威嚇のために、音で衝撃を与えるだけの印が刻まれた小さな黒魔石を5匹の近くに投げつけた。
本来草原ウサギは草食動物なので、特に保護もしないけれど、増えすぎない限りはなるべくそっとしておく、というのがガレディア領内の方針。
これで怯んで引き返してくれれば良かったけれど。
黒魔石が威嚇として効果があったのは2匹。
警戒すべきは『草原ウサギ大砲』
死者を出すこともある草原ウサギの必殺技だ。
大人の羊くらいはある大きさ。
魔物に敗けずに生き抜いて来ただけあって、弱くもない。
野生で鍛えられた肉体は同じ大きさの魔物と比較して重い。
突進して体当たりでもされるだけでもそこそこ痛い目に合ってしまう。
先手必勝 地属性魔術
『地縛り!』
草原ウサギの背上にエネルギーが溜まるまえに動きを止めることができれば後は……
「流石だマクスさん!」
どうやら止めれたみたい。
良かった、相変わらず10数えるくらいで解けてしまうんだけど!
その間に素早くガイアスくんが草原ウサギをポイポイポイッと3匹ともあっという間に遠くへ放り投げた。
放り投げられた草原ウサギのうちの1匹が地面落下直前に草原ウサギ大砲を発動。エネルギー波が放出されて消えた。
遠目にわかるくらい地面が一直線に抉れているじゃないか。
なんて恐ろしいウサギなんだろう。
『島』と違って大陸の生き物は競争が激しいから……。
3匹とも投げ飛ばされて混乱したのか、そのまま街とは反対方向へ逃げていった。
駆けつけた3人の衛兵さんたちが
「いやぁ、草原ウサギ相手でこんなに早く片が付くとは思いませんでした。助かりました」
とお礼を言ってくれた。
ガイアスくんなら盾技能や剣でも普通に倒せただろうけど。
「あっちのスライムのほうも片が付いています。子供たちは魔導系だと聞いていましたが、なかなか頼もしい動きでしたよ!」
衛兵さんの一人がニコニコしながら言って教えてくれた。
あっという間で、衛兵さんたちもロデリックくんたちの出番もなかったそうだ。魔力探知の魔導具ももう鳴らない。
問題なく終わったようで良かった。
バッシュくんたちは順調に文武両道を実現してきているんだなぁ。
「では我々は持ち場に戻ります、引き続きよろしくお願いします」衛兵さんたちはそう言って戻っていった。
「マクスさん、俺たちも戻ろうか」
◇
待機場所に戻ると、エレイナさんたちが待っていて早速「スライムの方も変わった様子のない何時ものスライムだったわ」と様子を報告してくれた。
「一匹が一度分裂したけど、どれも再生するような様子はなかったし、喋ったりもしなかったよ」
事前の打ち合わせで、契約魔術絡みの魔物本体がわかったら討伐ではなくなるべく捕獲する手筈だ。
「こっちの草原ウサギの反応も異常は気づかなかった。マクスさんが3匹まとめて動きを止めてくれたんで草原ウサギ大砲の被害もなく楽に撃退出来た」
「流石です!ボクらの術だと草原ウサギ大砲を止めるにはバッシュの凍結魔術しかないから。草原ウサギだとおそらく死なせてしまいます」
「役に立ったなら良かった」
ノアくんに言われて思わず顔がほころんだ。
ひょっとしたら、攻撃手段も大した術式も持たない私が今後パーティのなかで役に立って行くための方向性というのは、これなのかもしれない。
幸い私は耐久がそこそこあるのがわかってきたし。
途中になっていた食事を再開してお茶で一服すると、ほっと一息ついた。
─今度、使えそうな『魔導石』や『魔導具』が売ってないか、探してみよう。今度と言わず今日にでも──
そんなことを考えているうちに、ジャックくんたちとの持ち場交代の時間がやってきた。
「それじゃあ、そろそろ行きましょう」
「そうだな」
私たちが立ち上がって『防御の陣』から出ると、後ろからシナップくんたち3人が「いってらっしゃいなのだー」「いってらっしゃい」「いってらっしゃい」と声をかけてくれた。
エレイナさんがそれに振り返って笑顔で手をふった。
◇
宿場町カマルの北西の遠くに、いくつか連なって低い山がある。そのさらに向こう側から空に向かって光の柱は現れたと聞いている。
ジャックくんたちと持ち場を交代して北西側のを見ていた私とエレイナさんに、ガイアスくんが遠眼鏡で確認しながら言った。
「ジャックたちの報告ではワルゴ方面に魔物の数が多いという話だが、ワルゴへ向かうでもなく、こちらへ向かってくるような様子でもないんだよな」
「衛兵のヒトたちからの報告でも、そうなっているね」
「たまたま多いだけなのかしら」
「もっとハッキリわかるぐらい多ければ遠くても討伐依頼が出されるだろうが、微妙だな」
現在ワルゴ方面へ向かう主要な幹線道には要所要所に検問と結界が敷かれている。
完全に立ち入りが禁止して封鎖されているわけではないけれど、許可を得ずに迂回してまで立ち入ることは自治権をもつワルゴに警戒される原因になる。
気になるからといって勝手に出向いていって討伐するわけにいかないので、ずっと監視対象のままになっているそうだ。
「衛兵さんたちの話では『ワルゴ』へは通達済みなのよね?」
「ああ。だが周辺の魔物への対応で忙しいのか、まだ対応が求められていないらしい。この様子だと俺たち以外のパーティも指示が出されていないんだろう」
遠眼鏡で確認すると、熱蛇と毒ウサギ、マグナスレイブと魔物スライムがそれぞれ10ほどずつ、近い距離で特別に争う風もなくうろうろしている。
「下手に倒してもおなじだけ増える経験がワルゴにはあるからな」
都市近隣に関してはすでに契約魔術に関係なく、そっとしておくのが無難だと行き着いて対応しているようだしね。
スライム以外はワルゴ周辺に現れた魔物の報告にある群れと同じ種類、集まっているというにはまばらだ。
北西から西に目を向けると、街から離れるほど乾燥地帯の景色が広がっている。
その先はここから見えないけれど、広い砂漠地帯になっていて、幹線道も途切れ途切れにしか敷かれておらず、砂漠に入ると数ヶ所小規模な緑地があるものの、道はおろか方角の目印すら見当たらなくなるため、たどり着くことも困難だ。
東側の景色とは違い、植物は殆ど自生せず、雨が滅多に降らない気候だけれど、砂漠を越えて大陸西の端のほうまで行けば、山を源流とするいくつかの川があり、そのうちのひとつは海まで流れ込む比較的大きな川で、周辺に緑地が形成された比較的大きな街が古くからある。
少し離れた沿岸部には港町と海から汲み上げた海水を精製する人工の塩田の他に岩塩も採掘できる広い土地がある。
海から別れて出来た湖が干上がって出来た塩湖が、さらに干上がった場所だ。長い年月の間に一部は魔力と結び付いた、とても美しい塩の結晶となっている。
さらに近年、岩塩が採掘される古い地層が新たに発見されたほか、砂漠では良質な魔石油田の発見と精製技術の向上のお陰で飛躍的に村や街が発展してきている。
砂漠の南側では魔鉱石の採掘が可能な魔鉱山も見つかって、都市化と共に定住するヒトが急増しているのだ。
遠くに砂の景色を眺めて遠い昔砂漠を旅したという商隊に思いを馳せた。現在も西から物資を輸送する際に商隊は組まれるのだけど、2,000年以上昔に存在したという商隊の痕跡は、現在まで続いている商隊とは別の地から訪れた人たちのものだと判明している。
──ここからでは見えないけれど、西の海の向こうにも大陸があると噂されている。
通常の航海ではたどり着くことも見ることもできない海域と大陸。商隊の人たちはそこから訪れた可能性だってあるのではないか。
西の砂漠では砂に埋もれてダンジョン化した遺跡以外にも不思議な建造物がいくつも見つかっていて、一説には古代の転送装置だなんて噂もある。
これらの痕跡が現在の文明とは違う文明が過去に在ったことを証明している。
商隊の人たちはとても高度な知性も持ち合わせたというし、航海術だって持っていたかもしれない。
私たちが知らないような魔導術や技術で空だって自在に飛んだかも。
ああ、空を飛ぶなら地上を行く商隊は組まないのかな??
私は自分の想像の限界に行き着いて、任務中であることをようやく思い出した。
いけない、北西をしっかり見なくては。
私が集中を与えられた持ち場へ戻そうとしたとき、視線のなかにスライムが入った。
小さなスライムが遠眼鏡を使わなくてもスライムだとわかる距離。魔力探知の魔導具は鳴らない。作動させるのを忘れているわけじゃない。
あの距離なら魔導具の範疇だけど、魔力が低すぎて探知から漏れているのだろうか。
1匹だけど念のためガイアスくんたちにも報せておこう。
そう思って私が声をかけたのと殆ど同時に、なんとスライムの姿が消えてしまった。
小さくて見失ってしまったのだろうか。
背の低い草木に素早く紛れた可能性はある。
「あ?」
私の報告が間に合って、ガイアスくんとエレイナさんも少し驚いた表情をしている。2人にも消えたように見えたのだ。
「こういうことはたまにあるのかい?」
「弱っていて消えてしまうということは、あるにはあるんだが」
「スライムの場合珍しいかも」
エレイナさんが言うと、ガイアスくんが続けて説明してくれた。
「スライムのように魔力が低い魔物の場合、消滅寸前まで損傷を受けたら、大抵その場で消えてしまう。逃げ延びたなら広い場所やヒトの近くには来ない」
「でも実際に近づいていて消えてしまった。きっと探知魔導具も鳴らないくらい弱っていたんだわ」
「魔術で姿を眩ましたかも知れない」
「スライムよ?聞いたことがないわ」
「喋るイビルキャットが現れたんだ。『何者か』の手引きの可能性もあるんじゃないか。魔力探知の反応がなかったことから弱っていたというのが妥当だとは思うが、念のため報告はしておこう」
「報告するのを止めたりしないわ」
『何者か』から力を得たとしても、スライムが魔術を行使するというのをエレイナさんは信じ難い様子だ。
そのくらい一般的にスライムの魔力は少ないのだろう。
魔力が少なくてもビッグスライムやジュエルスライムが魔術を使えるのは、彼らの肉体が魔力で出来ているのとは違う分、少ない魔力でも術に変換できるからだ。
◇
日が傾きはじめて、街の門が閉じられる時間が近づいてくる頃合い、駆け込むように荷馬車や荷を運ぶヒトたちが南の門へ到着している。
西からヒトが来る気配はなく、近くに魔物がいないのも確認して私たちも街へ報告に戻る準備を始めた。バッシュくんたちも片付けを始めている。
スライムは半透明だから見失ってしまっただけかもしれない。
この時間にはそう思うようになっていた。
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□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料175食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物5日分
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
宿場町カマルでの警戒任務1日目を終え、報告のために訪れた冒険者ギルド出張所で、所長さんから城郭都市ワルゴの城壁外側に新たな魔物の群れ出現と、シーバ隊長が率いる『百犬隊』の消息不明の情報に一時は衝撃を受けた私たちだったけれど。
バッシュくんたちから百犬隊について話を聞いていたカマル出張所の所長さんが、そのすごさに呆れ返って言った。
バッシュくんとノアくんは先程までとうって変わって明るさを取り戻している。話した内容は話して良い部分だけでこれだというから所長さんの驚きもひとしおだ。
「隊員の数が多いほど上がる魔力連携効果で全員揃ってる間は能力がはね上がるわ、魔導術でも身体能力の底上げはするわ、全員が瀕死の重症でもその場で超回復ってなんだよ!想像しただけで怖いよ」
瀕死の重症がその場で回復する『超回復』は生命の危機時に保有魔力が身体に作用して起こす超自然的生理現象なのだけど、この『超回復』が発動したあとはその発動前よりも体力が少し上がる、という特性がある。
ガイアスくんとジャックくん、白金級のロデリックくんの3人は別として、当然なんだけど、そんなにホイホイ誰にでも起きる現象じゃない。
「シーバ隊長は単独で大型竜を倒した逸話も持つ強者だ。そのヒトが率いる隊って言うんで、うちの自警団の団員も手合わせしてもらったからよ、強いことは知っちゃいたんだが。そりゃ単独の強さに過ぎねぇよ。全員が揃ってるとそんなに違うのかよ!って話だ。聞きしに勝るとはこの事だ。深刻に考えちまったのが阿呆らしい」
それから
「何度も言うようだが、新しく現れたという魔物の種類はまだ特定して報告されていないが、ワルゴの戦力で急速に戦況を変えてしまうような魔物でないことは確かだ。聞いてる限り、支援で能力値がはね上がってる百犬隊を短時間でどうこう出来る魔物だとは考えられん。連絡が途絶えて姿を消しているのを楽観視するわけじゃねぇが、自力でどうにかする可能性が高い」
所長さんはそう言うと「今日のところはご苦労さん。もう宿に帰っていいぞ、散った散った!うちは都会のギルドと違って狭いんだ」と私たちを追い払うような仕草をしたのだった。
◇
ガイアスくんたちと宿の部屋に戻ると私たちは魔物について話し合う。
ガイアスくんたちは出来ることなら直ぐにでも『ワルゴ』ヘ向かいたいかもしれないけれど、口には出さない。
任務中というだけでなく、ワルゴヘの主要な道は魔物騒ぎで許可が無いと通過できなくなっている。
行くなら迂回道だけど、状況がわからない現状で策もなく向かっても却って迷惑がかかる恐れがある。
今は彼らの強さと連携を信じて待つのが最善なのだ。
「数の減らない魔物か。分裂したりして増える魔物の類いにしても妙だ。それにマグナスレイブや熱蛇は勿論だが毒ウサギが分裂して増えるなんて聞いたことがない」
「西の砂漠のイビルキャットや、他の地域に現れた魔物はちゃんと討伐されてるんだよね」
「ああ。ラスターとパットと一緒にいた遊牧民のヒトたちで」
バッシュくんたちと就寝の準備をしながらエレイナさんがガイアスくんたちに言った。
「ワルゴの魔物だけどうして減らせないのかしら」
そうだよね。どうしてワルゴだけ減らせないのだろう。
分裂したりして減らないとかじゃないなら、転送術で魔物が送り込まれてるんじゃないかって思ったりするけど、何千もの魔物を一度に転送なんて、あの『何者か』に出来たりするんだろうか?
『何者か』は強かったけれど、転送術を自在に出来る感じには思えなかった。
すると、湯浴みの後で丁寧に布で体をふき終わったシナップくんが、備え付けの温風器でエレイナさんに全身を乾かしてブラッシングをしてもらいながら「見ていないから確実じゃないけど、塔型迷宮や他の人工ダンジョンでも使われてた契約の魔術を使ってるかも知れないのだよ」
「前にも言っていた死なない契約魔術のことか。シナップ、どんな魔術か教えてもらえるか?」
「教える代わりに、甘食食べていいのだ?」
「晩飯で足りなかったのか?ちょっとだけだぞ」
「交渉成立なのだ!」
シナップくんはそう言うと部屋に用意された物と別に魔術でテーブルと椅子をパッと出して人数分のカップを用意してくれた。
どうやら自分の分だけでなく、私たちの分まで交渉の中に入っていたらしい。
「シナップちゃん、ビスケットと飲み物は紅茶で良い?」
「上出来なのだよ、エレイナ君。あ、ボクの紅茶は牛乳とお砂糖たっぷりめでお願いするのだ」
そう言ってシナップくんはテーブルの席につくと
「説明の前に先に結論だけ言っておくと、契約の魔術への対応策は契約の無効化。術者か魔物本人を倒せば即時解決なのだ」
と、事も無げに言った。
◇
◇
◇
「つまり、『分身』を作る契約は『魔物本体』が不死性を持つ契約とは違うのか」
「今回の魔物の一件が契約魔術絡みなら『本体』は不死じゃないのだ」
「どうしてそう思う?」
「他の場所に現れた群れは討伐されてるのだ。それに、こういう契約では魔物本人に『魔石』の役割を押し付ける方が、術者にとって危険も手間もかからない契約なのだ」
シナップくんはそう言うと、白銅貨4枚で買える大きさの瑪瑙の魔石をテーブルの上にコトっと置いて、ミルクとお砂糖たっぷりの紅茶を美味しそうに飲んで一息つくと言った。
「契約が成立すると魔石、或いは術者本人の魔力が魔物に移動して、魔物本人が〈分身〉たちの魔力源の役目を担う存在になるのだよ。だから本人は自分が倒されると復活出来ないのだ。術者の方はいつでも魔力を奪い返せるから、生殺与奪の権を握ったまま特別な管理をしなくてもいいのだ」
「?倒されていないなら、本体は魔力を奪い返されても平気なんじゃないのか。不死じゃないのはわかったが」
「分身が一度も倒されていないなら平気かもしれないのだ。でもそうじゃないなら、復活の代償として消費された分の魔力は魔物本人が自分の魔力で支払わないといけないのだよ。分割払いは多分させないのだ。術者が死んでも自動的に魔力が奪い返される。必要以上に取り上げるのは、契約の見返りと魔物に自分を殺させない“備え”だね。その代わり、契約中は与えられた魔力で魔物本人は強くなってるのだ」
分身は魔物本人の魔力体の一部を核にして作られ、数は魔石や術者の魔力量で増やせる数を上限に『術者』か『契約した魔物の本体』が倒されない限り『分身の魔物』をいくら倒しても、時間が経てば復活してしまう。
というのが先程私たちが受けた説明だ。
「塔型迷宮でキミたちに最初戦ってもらった魔物、あれは実験も兼ねた契約だから大分違いはするけど、契約内容の趣旨や仕組みは似たようなものなのだよ」
シナップくんはそこまで言うと、ビスケットをバッシュくんたちと一緒に頬張ってサクサクと音をさせてゴクンと飲み込んだ。
実験。
バッシュくんとノアくんがそんなようなことを、確かに突き止めて言っていた。
私たちがシナップくんの塔型迷宮で対峙した『魔物の部屋』の魔物たち。
彼らは契約のもと魔物〈本人〉から〈独立〉し、塔と魔宝石から供給される魔力を源にしてずっと生きながらえて来た、ゴブリンと同系統であるだけの古代の魔物だ。
契約した魔物『本体』は契約で得た魔力で最早別の魔物と言っていいほど変化しているそうなんだよね。
見てみたい気もするけど、私なんかはちょっと恐い。
それを踏まえてなのだろう。
ガイアスくんがシナップくんに尋ねた。
「西の砂漠の村を襲ったイビルキャットが喋ったみたいな変化は契約のせいなのか?」
「もっと別のことが原因だと思うのだよ。分身を作る契約で魔物が人語を喋るようになるというのは、ボクは知らないのだ」
ガイアスくんの質問にそう答えると、シナップくんが付け加えて言った。
「さっきの話の続きなのだよ。魔力循環のために分身の魔力の再利用をしているなら、分身の魔力の方が本人から供給される魔力量を上回って、分身は倒された場所で復活する可能性が高いのだよ」
「塔型迷宮の魔物と同じに『本体』から独立して影響を受けなくなっている可能性は?」
「考え難いのだ。塔型迷宮でそれが出来るのは『魔宝石』と『塔』の循環機構が機能して〈本体〉の代わりを出来ているからなのだ」
「なら、魔物本体を見つけ出して倒せば分身は消滅する?」
「その通りなのだよガイアス君。魔力供給が断たれて再生できなくなるだけでなく、契約者本人の死亡で魔力が術者に還るから分身は消えるのだ」
シナップくんの推測と解決案にロデリックくんが
「ワルゴに現れた魔物が増えもせず、減りもせず、というのに符合するな」と納得した様子を見せた。
「いつの間にか魔物に囲まれているというのも、倒した魔物が分身だったのならシナップちゃんの説明で納得できる」
「そうだな。倒した分身の魔物が時間が経って復活する。気がつくとそいつらに囲まれているということなら、そうとは知らないヒト側がいつの間にか新しく現れた魔物に囲まれた、と錯覚しても不思議じゃないのか。気づく機会があっても分裂する魔物じゃないからな。だがワルゴに現れた魔物の数は千を超えるんだ。そんな魔力を持つ術者や魔石?」
やはりあの『何者か』の仕業なのだろうか。
こういう城攻めのようなことのために力のある魔宝石を求めているのだろうか。
するとシナップくんがテーブルに置いた魔石を指しながら
「例えばこの魔石1個で契約した魔物の分身を1体作れると仮定して、分身の魔物の数が千欲しいっていうなら、この魔石が数千個、或いはそれに相当する魔力が術者に必要なのだ。難しそうに思えるけど『本体』になる魔物も術者の数も、1対1である必要はないから、双方に協力者がいれば実現は難しくないのだよ」
「そうは言っても強い魔物や分身の数が多いと、魔石も術者もそれに合わせて物凄く魔力が高くないといけなくなるだろう?」
「確かに『塔』の助けがある塔型迷宮に比べれば術者にとって分身を作るのは魔力消費が激しいけど、術を発動させてしまえばさっきも言った魔力の再利用で、あとはそれほど魔力を消費しないのだ。魔物本人に必要な魔力を移してしまえば術者がそれ以上魔力を要求されることもないのだよ」
「その理屈で本体と術者が複数いるのだとしても、これまでの戦いの中でワルゴでだけ本体をろくに倒せていないことになる。なぜだ?」
「そうだな。本体の魔物の数が極端に少ないのか、群れの中にいない可能性もあるのか。シナップ、本体の見分け方とかはあるか?」
「今回のイビルキャットを例にとると、見た目だけだと難しいのだよ。9体や10体程度分身を作るくらいの契約じゃ、大した変化に繋がらないのかもしれないのだ。けど契約した術者や魔石の魔力で産まれた分身は、魔物本人とは違う『臭い』の魔力になってるのだ。それと他と違って魔力量は多いのに極端に動かなかったり、逃げ回るばかりの魔物は怪しいのだ。他に対策がなければこの線で当たってみるのも1つの案なのだ」
「強くなって攻撃的になる魔物もいるだろうが、再生出来ない『本体』なら身を隠したり逃げ回る方が普通かもしれないな」
「魔力の『臭い』を追って術者を探すことも出来るかも知れないね」ガイアスくんの後にバッシュくんとノアくんが言うと、シナップくんが「いい案なのだ!」と賛同した。
「だけどこの本体討伐作戦には1つ重大な欠陥があるのだ」
「欠陥?」
「本体を討伐して契約を破棄させて還される魔力が、魔石分も含めて全部術者のものになるのだよ」
「術者が強化されるのか!」
「双方に利益のある契約なのだ」
シナップくんの話を聞き終えると私たちはお互いに顔を見合わせた。
悪魔との契約だと契約したヒトは願いが成就すると魂を奪われるというけれど、この件では魔物の方が奪われる側だ。
「明日所長に知らせよう。何もわかっていない今よりずっと役に立つはずだ」
ガイアスくんに私たちも同意する。
推測が間違いだとしても、試してみる価値はある。
「役に立ったのだ?」
「もちろんだシナップ。良い情報だった、ありがとうな」
「どういたしまして、なのだ!」
「バッシュとノアも今日はもう遅い。3人ともゆっくり休んでくれ」
◇
◇
翌朝
昨晩話した推測と、本体討伐で対応する場合の重大な欠陥をなるべく短くギルド出張所の所長さんに伝えた。
「そんな契約魔術があるのか?!そもそも、魔物が取引なんてわかるのか?」
と、まず驚かれてしまった。
魔物や動物との主従契約や群の一員としての同意を得た契約は存在するものの、それらは書面や形式も存在しない、何かを成すための契約とはかなり違うものなので、所長さんが驚くのも無理はない。
「古い一族の従魔契約なら知っているが……」
一般的に契約魔術とはヒト同士が行うものなのだ。
中でも互いの魔力の移動を行い交わす縛りと強制力の強い契約魔術は、双方の意思確認と同意がなければ成立しない。
おとぎ話の中でヒトとも魔物ともつかない悪魔や魔神が、契約して人の魂と引き換えに願いを叶えるような話なら、多くの人が知っているけれど。
私だってシナップくんの塔型迷宮を知らなければ簡単に信じないだろう。
「契約云々を信じる必要はない。だが、魔導術でこれまで分裂しなかった魔物が自分の分身を作れるようになった可能性があることを頭に入れてもらえないか。対処法はさっき説明した通りだが」
ガイアスくんがそう伝えると所長さんがうなずいた。
「襲われて討伐しないわけにはいかないが……要は背後に魔物を動かしている連中がいるかもしれないということだな?可能な限りソイツらを先にどうにかする」
「ああ、その線で上にも伝えて欲しい」
「わかった。そういうことなら手がかりを掴むためにこちらも動きやすい。百犬隊の新しい情報はまだ無いが、ひょっとすると何か掴んで追っている可能性も出てきたな。連絡を断って追うというのは妙だが」
所長さんの言葉にバッシュくんとノアくんが顔を見合わせた。
◇
ギルド出張所を出ると街の外の警戒のため持ち場へ向かう。
今日は街の西側を警戒することになっている。
『宿場町カマル』は徒歩でも街中を一周するのに大して時間のかからない面積だけど、東西南北で見える景色はまるで違う、少し特殊な土地柄だ。
北に見える景色は季節によって大量の雪が降るのを確認出来、東には切り立った山、南には森林と緑豊かな平地、西は街から離れるほど、荒れた土地も含む乾燥地帯になっている。
「今日はこの辺りに防御の陣を張ろう」
街の見張り台から少し距離を置いて、平たい地面のある場所に移動する。
今日も昨日と同じようにガイアスくんたちと交代で警戒を行うことになっている。
陣を張るための下準備が整うと、バッシュくんとノアくんが手際よく魔石と予め設計の描かれた魔力紙を四隅に置いた。
「西側は街の見張り台、俺たちは北西と南西に注意を払って警戒を行う。これで問題ないか?」
ガイアスくんの確認にロデリックくんが
「エレイナと私、残りというのは何故即却下されるのか聞いても良いか」
「お前とエレイナだけだとバランスが悪いだろう?」
「私とジャックだけでもバランスは悪いだろう!ジャックなど攻撃しか出来ん!その点エレイナは攻撃魔術に回復も支援も出来て弓まで扱える!万能ではないか!」
「心配するな、ロデリック。回復薬は多めに持っている、EXだ」
「よし、解決したな」
基本的に魔物に囲まれたときに備えてジャックくんとロデリックくんが前衛になる配置だけれど、都合よくジャックくんたちの方を前方にして魔物が現れるとは限らないため、この組み合わせに話し合って決めている。
しかもジャックくんは投擲武器も用意している。
昨日はロデリックくんも納得していたんだけど、2日目も、となると嫌になってきたんだね。
「貴方には貴方自身の回復力や、強力な装備もあるじゃないロデリック。それに回復魔術はこの杖で少し離れている場所からでも使えるようになったの!」
とエレイナさんが嬉々として言った。
魔導研究ギルドと商人ギルドの共同開発品の杖はそのままエレイナさんが貰うことになったもので、秘かに練習して最初より随分と使いこなせるようになっているらしい。
ただ、魔術を無効化してしまう装備品である鎧を身につけたロデリックくんに遠隔の回復魔術は効くのだろうか。回復薬は効果があるようだし、直接触れて回復させる魔術なら効果はあるみたいだけど。そもそもロデリックくんの鎧は回復効果もあって、回復薬はもちろん、回復魔術もあまり意味はなさそうな。
おそらくロデリックくんを除いた場にいる全員が、私と似たようなことを考えているに違いなかったけれど、誰一人それを言葉にはしなかった。
「ふたりとも対応しきれない数の魔物が現れたらバッシュたちの防御結界まで下がってくれ。それが無理そうでもこちらからも駆けつけることの出来る距離だ。交代まで悪いが我慢してくれ」
ガイアスくんがそう言うと、ロデリックくんは渋々ではあったけれどジャックくんと一緒に持ち場へ向かった。
しばらくして
「用意出来たのだー」
というシナップくんの声が聞こえてきた。
『防御の陣』が完成したようだ。
エレイナさんが「はーい」と返事をして3人のいる場所へ歩いていって、私とガイアスくんもその後について持ち場へ戻った。
◇
「そろそろ交代の時間だ」
時刻魔導具が朝10刻を報せるころ、ジャックくんたちとの交代時間になってエレイナさんと私とガイアスくんの3人がふたりと入れ換わる。
バッシュくんたちに見送られ、ジャックくんとロデリックと互いに異常が無いことを報告し合って持ち場についた。
街の南にはヤマルの森があるけど、景色は遠く霞んで確認することはできない。
私たちが警戒を担当する南西の方には背の低い草木が多い乾燥気味の地が広がっているけれど、砂漠のある西に比べるといくらか草木が多く、森が近いおかげもあるのか動植物が多様に確認されている。魔物はいるけれど動植物も負けてはいない。
「魔物地図の魔物の分布と今のところ変わりはなさそうだ」
ガイアスくんが遠眼鏡でも確認しながら言った。
ここから大陸の西端までには広い砂漠といくつものダンジョンの入り口が発見されている他、今から2000年以上昔にはすでに古代の人が交易のために商隊を組んで長い旅をしたという歴史の記録も見つかっていて、今でもその痕跡が大陸西の各地に残され、それらは現在知るヒトぞ知る名所だ。
ただ、交易先となった国々や都市についての記録は曖昧で、今も多くのなぞとなっており、それがまた一部のヒトたちの浪漫を掻き立てる。
その他にもここ数百年程の間に古くからある岩塩の採掘場のほかに新たな岩塩採掘場の発見と沿岸沿い地域の人工の塩田、良質な魔石油田、魔鉱山などさまざまな資源が見つかっているため、いくつかの町や村が急激に大きな都市へと発展して注目を集めているのである。
「北西の光の柱についてはなにもまだわからないのかしら」
不意にエレイナさんが言った。
この魔物騒ぎと時期を同じにして起きる出来事は何か関係があるんじゃないかと気になってしまう。
「どうだろうな。わかったとしても魔物と関係なければ俺たちに情報が回ってくるまでに時間がかかるかも知れない」
「そうね」
そういえば光の柱は南にも現れたんだよね。北西の海と大陸の南の地域。今は消えてしまって確認は出来ないけれど。
海の様子が変だということとも関係があるのだろうか。
船が出せないうちは空経由でない限り、『島』には帰れない。
まあ、荷はもう手配済みなので誰も困りはしない。
時々連絡とお土産でも送ってけばいい。
お昼を過ぎる頃になって、再びジャックくんたちと持ち場を交代し、待機場所へ戻ると、バッシュくんたちが私たちのお昼ごはんの準備をしながら出迎えてくれた。
「僕たちも今からお昼ごはんなんだ」
バッシュくんがそう言いながら、お茶の入った湯呑茶碗を用意してくれる。
大人に混ざって活動してきているせいか、バッシュくんとノアくんの気配りはすごいなと感心していると
「待機場所と言っても、魔力探知や見張りは同じようにやってるんだ。もっと楽にして良いんだぞ」
ガイアスくんがバッシュくんたちに言って椅子に座った。
頑張りすぎていないか少々心配になったのだろう。
エレイナさんも魔力切れを起こしていないか3人の様子を見ている。するとノアくんが
「魔力探知はボクたち魔導具も使ってるし、見張りも交代だから。殆どの時間座ってるだけなので大丈夫です」
そう言って優しく微笑んだ。
魔物が近づいていると音や光を出して教えてくれる魔導具はバッシュくんたちの魔力節約の役にも立っているようだ。
ピコ、ピコ、ピコ……
「あ、こちらに向かって来ている魔物がいるみたい。魔力反応は大きくないね。どこだろう」バッシュくんと一緒に辺りを見回すと、南西を見張っていたシナップくんが見張り用の椅子から降りて
「魔物じゃない、草原ウサギなのだ!」
と報告に来た。
「えっ」「けどこの反応は」
「こっちにスライムもいるぞ」
西側を遠眼鏡で確認してガイアスくんが言った。
ちょっと慌ただしくなってきたね。
ピコピコピコ、ピコピコピコ、ピコピコピコ
魔導具の音が速く、大きくなってきた。
はっきりこちらに向かっている。
遠眼鏡を使わなくても見える距離にもういる。
ガイアスくんがそれぞれ数を確認すると
「草原ウサギは俺とマクスさんでなんとかなる、エレイナ、バッシュ、ノア、シナップは数の多いスライムの方をまず頼む。分身の魔物じゃないか注意してくれ」
「了解」
スライムは強くはないけれど、形を変えて分裂したり合体する魔物で、人間も食糧にする。森に好んで棲息するビッグスライムやジュエルスライムと区別される『魔物』だ。
あちらは実態もあってガレディアでは動物として認識されている。
「スライムの方はジャックとロデリックの警戒範囲だ。街の見張り台もあるから万一は考え難い」
ピピピピピピ ピー!ピー!
魔導具が警戒音を発したところで、ガイアスくんも私も魔力探知の魔導具を止めた。
目の前と言って良い距離に5匹の草原ウサギがいる。
「これ以上街に近づかれるのは困る。うまく追い払われてくれよ!」
ガイアスくんが威嚇のために、音で衝撃を与えるだけの印が刻まれた小さな黒魔石を5匹の近くに投げつけた。
本来草原ウサギは草食動物なので、特に保護もしないけれど、増えすぎない限りはなるべくそっとしておく、というのがガレディア領内の方針。
これで怯んで引き返してくれれば良かったけれど。
黒魔石が威嚇として効果があったのは2匹。
警戒すべきは『草原ウサギ大砲』
死者を出すこともある草原ウサギの必殺技だ。
大人の羊くらいはある大きさ。
魔物に敗けずに生き抜いて来ただけあって、弱くもない。
野生で鍛えられた肉体は同じ大きさの魔物と比較して重い。
突進して体当たりでもされるだけでもそこそこ痛い目に合ってしまう。
先手必勝 地属性魔術
『地縛り!』
草原ウサギの背上にエネルギーが溜まるまえに動きを止めることができれば後は……
「流石だマクスさん!」
どうやら止めれたみたい。
良かった、相変わらず10数えるくらいで解けてしまうんだけど!
その間に素早くガイアスくんが草原ウサギをポイポイポイッと3匹ともあっという間に遠くへ放り投げた。
放り投げられた草原ウサギのうちの1匹が地面落下直前に草原ウサギ大砲を発動。エネルギー波が放出されて消えた。
遠目にわかるくらい地面が一直線に抉れているじゃないか。
なんて恐ろしいウサギなんだろう。
『島』と違って大陸の生き物は競争が激しいから……。
3匹とも投げ飛ばされて混乱したのか、そのまま街とは反対方向へ逃げていった。
駆けつけた3人の衛兵さんたちが
「いやぁ、草原ウサギ相手でこんなに早く片が付くとは思いませんでした。助かりました」
とお礼を言ってくれた。
ガイアスくんなら盾技能や剣でも普通に倒せただろうけど。
「あっちのスライムのほうも片が付いています。子供たちは魔導系だと聞いていましたが、なかなか頼もしい動きでしたよ!」
衛兵さんの一人がニコニコしながら言って教えてくれた。
あっという間で、衛兵さんたちもロデリックくんたちの出番もなかったそうだ。魔力探知の魔導具ももう鳴らない。
問題なく終わったようで良かった。
バッシュくんたちは順調に文武両道を実現してきているんだなぁ。
「では我々は持ち場に戻ります、引き続きよろしくお願いします」衛兵さんたちはそう言って戻っていった。
「マクスさん、俺たちも戻ろうか」
◇
待機場所に戻ると、エレイナさんたちが待っていて早速「スライムの方も変わった様子のない何時ものスライムだったわ」と様子を報告してくれた。
「一匹が一度分裂したけど、どれも再生するような様子はなかったし、喋ったりもしなかったよ」
事前の打ち合わせで、契約魔術絡みの魔物本体がわかったら討伐ではなくなるべく捕獲する手筈だ。
「こっちの草原ウサギの反応も異常は気づかなかった。マクスさんが3匹まとめて動きを止めてくれたんで草原ウサギ大砲の被害もなく楽に撃退出来た」
「流石です!ボクらの術だと草原ウサギ大砲を止めるにはバッシュの凍結魔術しかないから。草原ウサギだとおそらく死なせてしまいます」
「役に立ったなら良かった」
ノアくんに言われて思わず顔がほころんだ。
ひょっとしたら、攻撃手段も大した術式も持たない私が今後パーティのなかで役に立って行くための方向性というのは、これなのかもしれない。
幸い私は耐久がそこそこあるのがわかってきたし。
途中になっていた食事を再開してお茶で一服すると、ほっと一息ついた。
─今度、使えそうな『魔導石』や『魔導具』が売ってないか、探してみよう。今度と言わず今日にでも──
そんなことを考えているうちに、ジャックくんたちとの持ち場交代の時間がやってきた。
「それじゃあ、そろそろ行きましょう」
「そうだな」
私たちが立ち上がって『防御の陣』から出ると、後ろからシナップくんたち3人が「いってらっしゃいなのだー」「いってらっしゃい」「いってらっしゃい」と声をかけてくれた。
エレイナさんがそれに振り返って笑顔で手をふった。
◇
宿場町カマルの北西の遠くに、いくつか連なって低い山がある。そのさらに向こう側から空に向かって光の柱は現れたと聞いている。
ジャックくんたちと持ち場を交代して北西側のを見ていた私とエレイナさんに、ガイアスくんが遠眼鏡で確認しながら言った。
「ジャックたちの報告ではワルゴ方面に魔物の数が多いという話だが、ワルゴへ向かうでもなく、こちらへ向かってくるような様子でもないんだよな」
「衛兵のヒトたちからの報告でも、そうなっているね」
「たまたま多いだけなのかしら」
「もっとハッキリわかるぐらい多ければ遠くても討伐依頼が出されるだろうが、微妙だな」
現在ワルゴ方面へ向かう主要な幹線道には要所要所に検問と結界が敷かれている。
完全に立ち入りが禁止して封鎖されているわけではないけれど、許可を得ずに迂回してまで立ち入ることは自治権をもつワルゴに警戒される原因になる。
気になるからといって勝手に出向いていって討伐するわけにいかないので、ずっと監視対象のままになっているそうだ。
「衛兵さんたちの話では『ワルゴ』へは通達済みなのよね?」
「ああ。だが周辺の魔物への対応で忙しいのか、まだ対応が求められていないらしい。この様子だと俺たち以外のパーティも指示が出されていないんだろう」
遠眼鏡で確認すると、熱蛇と毒ウサギ、マグナスレイブと魔物スライムがそれぞれ10ほどずつ、近い距離で特別に争う風もなくうろうろしている。
「下手に倒してもおなじだけ増える経験がワルゴにはあるからな」
都市近隣に関してはすでに契約魔術に関係なく、そっとしておくのが無難だと行き着いて対応しているようだしね。
スライム以外はワルゴ周辺に現れた魔物の報告にある群れと同じ種類、集まっているというにはまばらだ。
北西から西に目を向けると、街から離れるほど乾燥地帯の景色が広がっている。
その先はここから見えないけれど、広い砂漠地帯になっていて、幹線道も途切れ途切れにしか敷かれておらず、砂漠に入ると数ヶ所小規模な緑地があるものの、道はおろか方角の目印すら見当たらなくなるため、たどり着くことも困難だ。
東側の景色とは違い、植物は殆ど自生せず、雨が滅多に降らない気候だけれど、砂漠を越えて大陸西の端のほうまで行けば、山を源流とするいくつかの川があり、そのうちのひとつは海まで流れ込む比較的大きな川で、周辺に緑地が形成された比較的大きな街が古くからある。
少し離れた沿岸部には港町と海から汲み上げた海水を精製する人工の塩田の他に岩塩も採掘できる広い土地がある。
海から別れて出来た湖が干上がって出来た塩湖が、さらに干上がった場所だ。長い年月の間に一部は魔力と結び付いた、とても美しい塩の結晶となっている。
さらに近年、岩塩が採掘される古い地層が新たに発見されたほか、砂漠では良質な魔石油田の発見と精製技術の向上のお陰で飛躍的に村や街が発展してきている。
砂漠の南側では魔鉱石の採掘が可能な魔鉱山も見つかって、都市化と共に定住するヒトが急増しているのだ。
遠くに砂の景色を眺めて遠い昔砂漠を旅したという商隊に思いを馳せた。現在も西から物資を輸送する際に商隊は組まれるのだけど、2,000年以上昔に存在したという商隊の痕跡は、現在まで続いている商隊とは別の地から訪れた人たちのものだと判明している。
──ここからでは見えないけれど、西の海の向こうにも大陸があると噂されている。
通常の航海ではたどり着くことも見ることもできない海域と大陸。商隊の人たちはそこから訪れた可能性だってあるのではないか。
西の砂漠では砂に埋もれてダンジョン化した遺跡以外にも不思議な建造物がいくつも見つかっていて、一説には古代の転送装置だなんて噂もある。
これらの痕跡が現在の文明とは違う文明が過去に在ったことを証明している。
商隊の人たちはとても高度な知性も持ち合わせたというし、航海術だって持っていたかもしれない。
私たちが知らないような魔導術や技術で空だって自在に飛んだかも。
ああ、空を飛ぶなら地上を行く商隊は組まないのかな??
私は自分の想像の限界に行き着いて、任務中であることをようやく思い出した。
いけない、北西をしっかり見なくては。
私が集中を与えられた持ち場へ戻そうとしたとき、視線のなかにスライムが入った。
小さなスライムが遠眼鏡を使わなくてもスライムだとわかる距離。魔力探知の魔導具は鳴らない。作動させるのを忘れているわけじゃない。
あの距離なら魔導具の範疇だけど、魔力が低すぎて探知から漏れているのだろうか。
1匹だけど念のためガイアスくんたちにも報せておこう。
そう思って私が声をかけたのと殆ど同時に、なんとスライムの姿が消えてしまった。
小さくて見失ってしまったのだろうか。
背の低い草木に素早く紛れた可能性はある。
「あ?」
私の報告が間に合って、ガイアスくんとエレイナさんも少し驚いた表情をしている。2人にも消えたように見えたのだ。
「こういうことはたまにあるのかい?」
「弱っていて消えてしまうということは、あるにはあるんだが」
「スライムの場合珍しいかも」
エレイナさんが言うと、ガイアスくんが続けて説明してくれた。
「スライムのように魔力が低い魔物の場合、消滅寸前まで損傷を受けたら、大抵その場で消えてしまう。逃げ延びたなら広い場所やヒトの近くには来ない」
「でも実際に近づいていて消えてしまった。きっと探知魔導具も鳴らないくらい弱っていたんだわ」
「魔術で姿を眩ましたかも知れない」
「スライムよ?聞いたことがないわ」
「喋るイビルキャットが現れたんだ。『何者か』の手引きの可能性もあるんじゃないか。魔力探知の反応がなかったことから弱っていたというのが妥当だとは思うが、念のため報告はしておこう」
「報告するのを止めたりしないわ」
『何者か』から力を得たとしても、スライムが魔術を行使するというのをエレイナさんは信じ難い様子だ。
そのくらい一般的にスライムの魔力は少ないのだろう。
魔力が少なくてもビッグスライムやジュエルスライムが魔術を使えるのは、彼らの肉体が魔力で出来ているのとは違う分、少ない魔力でも術に変換できるからだ。
◇
日が傾きはじめて、街の門が閉じられる時間が近づいてくる頃合い、駆け込むように荷馬車や荷を運ぶヒトたちが南の門へ到着している。
西からヒトが来る気配はなく、近くに魔物がいないのも確認して私たちも街へ報告に戻る準備を始めた。バッシュくんたちも片付けを始めている。
スライムは半透明だから見失ってしまっただけかもしれない。
この時間にはそう思うようになっていた。
────────
────────
□共有アイテム□
◇主な食料の在庫
内訳(長期保存食料175食分)
◇嗜好品お菓子(魔導系回復あり)、各種調味料、未調理穀物5日分
◇魔力回復ポーション(EX102本、超回復74本、大153本、中647本、小970本)
◇治癒ポーション(治癒薬EX107本、超回復69本、大885本、中2,072本、小4,588本)、薬草(治癒1,059袋)1,059袋、他
□各自アイテムバッグ
ガイアス (魔力回復薬小3本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本
ジャック (魔力回復薬小4本)(治癒薬EX2本、超回復4本、大10本)薬草(治癒5袋、解毒5袋)麻痺解除薬1本)
エレイナ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大6本、中1本、小3本)(治癒薬EX3本、超回復3本、小10本)薬草(治癒5袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
マクス (魔力回復薬EX3本、超回復5本、大5本、中5本、小10本)(治癒薬超回復5本、大5本、中10本、小20本)薬草(治癒18袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
バッシュ (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
ノア (魔力回復薬EX1本、超回復1本、大2本)(治癒薬EX1本、超回復1本)薬草(治癒1袋、解毒10袋)麻痺解除薬1本)
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
□背負袋
ガイアス 『共有アイテム』『バッシュとノアの本』『エレイナ、バッシュ、ノア、シナップの荷物』『食糧』
ジャック (魔力回復薬EX11本、超回復10本、大50本、中210本、小140本)(治癒薬EX1本、超回復85本、大35本、中80本、小120本)薬草(治癒10袋、解毒10袋)麻痺解除薬2本)『もしもの時の燻製肉』
エレイナ (魔力回復薬EX3本、超回復10本、大20本、中50本、小100本)(治癒薬EX5本、超回復25本、大30本、中50本、小50本)薬草(治癒60袋、解毒20袋)麻痺解除薬2本、万能薬3つ)『お菓子』
マクス (魔力回復薬大10本、中100本、小100本)(治癒薬超回復50本、大100本、中200本、小200本)薬草(治癒1,000袋、解毒30袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬4つ、万能薬4つ)『草』
バッシュ (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬5本、石化解除薬1つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
ノア (魔力回復薬EX5本、超回復5本)(治癒薬EX5本、超回復5本)薬草(治癒25袋、解毒5袋)麻痺解除薬4本、石化解除薬2つ、万能薬5つ)『カリカリフード』
シナップ 『塔にあるもの全部』
ロデリック『私物とお菓子』
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