天界送りのサルティエラ

いわみね

文字の大きさ
33 / 43
第二章

32話 合っているようで違ってる

しおりを挟む
 トンカン、トンカン
 ガガガガガッ

 天界都市サルティエラ
 その一角で行われている工事の現場に俺はやって来ている。
 銀色の子犬、ハッサクとエメラルド色の精霊ジル、トパーズ色の精霊クラリスが一緒だ。
『ヤン!』
『おお、ハッサク』
『ハッサクは今日も元気そうだな』
 住民たちに撫でられて、ハッサクが嬉しそうに尾を振りながら座ると、地面を掃いているかのように、まだ小さな尻尾がわさわさと揺れた。
 住民たちによると、ハッサクは『現界』、つまり人間が住む地上の魔獣の幼体の可能性が高いという。
 どこかから紛れ込んだようだ。
 毛並みが銀色なのは魔力が高い証らしい。

 (つまりコイツが紛れ込めるような場所が、この街にあるってことだ)
 天界都市サルティエラは、魔界から追放された住人や悪魔たちが天界の空気で消滅しないよう、結界が張られている。
 逆を言えば、保護の名のもとに出入りが制限されているというわけだ。
 ──そう。制限があるだけで。

 過去の俺。


 天使長をやっていた頃の“ゼリュース”は度々現界に降りていた。

 (どこかに俺を自由にする出入り口がある)


 □

『ところでゼリュースさま、この建物の出来映えはいかがですか。現界に似ていますか』
 住人の一人が俺の方を向いて話しかけてきたが、無視を決め込む。
 俺は今、エリヤを名乗っている。
 現界で俺を返り討ちにした忌々しい人間の名前だが、仕返しを忘れないためにちょうど良い。
 住人の質問に俺が答えないのでジルが同じ質問をしてきた。

『エリヤ、どうだい?現界に似てるかい?』
 俺はため息を吐いた。
 これに返事をしてもしなくても、俺の方が子供みたいだ。

「前に比べれば似てるよ」
 以前のこの街の建物は、現界とは似ても似つかない奇抜な造形物で溢れ返っていた。
 派手な桃色の雲の形をした建物群に赤や青黄色のアクセントがついた一角をみた時は、この街に跳ばされてきた連中の、現界に対する知識と感性を疑った。

 それに比べれば、四角く出来ているだけでも似ているように見える。

 ガーッ
 ザラザラザラッ
 工事現場らしく音なんかさせているが、実際は魔力由来の粘土や液体で固められて創られている。
 つまり……ただの演出だ。

『もっとこうした方が良いとか、希望があれば教えてください。クラリスさまと一緒に、我々もがんばります!』
『みんな、エリヤにとって居心地の良い場所にしようって張りきっているんだ』
 ジルがエメラルド色の光を少し強くして言った。
『ヤン!』
 ハッサクが甲高い鳴き声を上げて、住人の一人にじゃれつき遊びはじめた。
 住人も手をヒラヒラさせたり物を投げてやったりしている。

 コイツらもしかして、俺が現界の雰囲気を気に入って、天界から出たがっていると思っているのか?

 奇妙な疲労感を感じて、そこら辺に転がっていた四角い椅子のような造形物の上に座った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

【完結】うさぎ転生 〜女子高生の私、交通事故で死んだと思ったら、気づけば現代ダンジョンの最弱モンスターに!?最強目指して生き延びる〜

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
 女子高生の篠崎カレンは、交通事故に遭って命を落とした……はずが、目覚めるとそこはモンスターあふれる現代ダンジョン。しかも身体はウサギになっていた!  HPはわずか5、攻撃力もゼロに等しい「最弱モンスター」扱いの白うさぎ。それでもスライムやコボルトにおびえながら、なんとか生き延びる日々。唯一の救いは、ダンジョン特有の“スキル”を磨けば強くなれるということ。  跳躍蹴りでスライムを倒し、小動物の悲鳴でコボルトを怯ませ、少しずつ経験値を積んでいくうちに、カレンは手応えを感じ始める。 「このままじゃ終わらない。私、もっと強くなっていつか……」  最弱からの“首刈りウサギ”進化を目指して、ウサギの身体で奮闘するカレン。彼女はこの危険だらけのダンジョンで、生き延びるだけでなく“人間へ戻る術(すべ)”を探し当てられるのか? それとも新たなモンスターとしての道を歩むのか?最弱うさぎの成り上がりサバイバルが、いま幕を開ける!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...