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第二章
35話 不協和
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「こ、この邪悪なる偽善者どもめ!」
俺が外から自室に戻ると、天使長室の方からパルガムのやつが騒ぐ声が聞こえてきた。
扉を開けるとあちこちに物が散乱している。
パルガムは髪を振り乱して壁際で背を隠し、筒のような物を剣に見立てるように構えている。
俺は舌打ちしそうになるのを抑えて、そこらを飛んでいる精霊にわけを話させた。
“ジルとレミーが、悪魔に霊薬を飲ませたのー”
“バタバタって嫌がったから、クラリスが魔力で動きを止めて、ジルとレミーが飲ませた”
「……」
(どっちが悪いと言いにくい状況だな)
ジルとレミーは悪魔であるパルガムが、天界で少しでも生き永らえるのようにと、回復と耐性の両方を補う霊薬を飲ませたわけだが。
やり方が強引すぎる。
精霊から見てもそうらしく、意見が割れて騒々しい。
「ジル、レミー、クラリス! お前らもうパルガムのことはそっとしておいてやれ! 弱ってきたらそのうち気がついて飲む! 今までの悪魔の大半がそうやって生き永らえているんだよな?」
さすがに罰の悪そうな顔をしたジルが、俺のもとにやってきた。
『そうなんだけど』
「なんでパルガムのことは、水を飲まないまま、すぐ“消える枠”に入れてるんだ? 仮にそうだとしてもほっといてやれよ」
俺がそう言うと、ジルが言った。
『だからだよ。相手の気持ちを尊重していたらすぐに消えちゃうんだ』
“ゼリュース、ジルは間違ってない”
「クラリス、お前はジルを依怙贔屓しすぎるから黙れ」
“ム”
トパーズ色の精霊クラリスがムッとした顔で、ひとまず黙った。
パルガムはよほど嫌な思いをしたらしく、今度は警戒を一切緩めず、真っ直ぐに視線を保った状態で筒を構えて立ったままだ。
一方的に思えるが、愛情をもって接してきた上司に崖から突き落とされ、本人から見て地獄に連れてこられた挙げ句、気を許したところに『美味しいよ』と騙され薬で昏倒させられ、さらに嫌がることを力で強要されたわけだからな……。
実際には落ち着かせようと飲ませただけなんだが。
ピンピンしているのがその証拠だ。
だがパルガムから見るとそうは思えない。
さすがに同情心が芽生えた。
「ボクは可哀想じゃない!」
鬼の形相でパルガムに怒鳴られた。
知らず知らず憐れむ表情が出ていたらしい。
「いずれミミルさまが助けに来て、お前らなんか蹴散らしてくれる」
思ったより幸せそうなパルガムの発言に、一同が内心でほっとした。
たぶんコイツは簡単に消えない。
俺が外から自室に戻ると、天使長室の方からパルガムのやつが騒ぐ声が聞こえてきた。
扉を開けるとあちこちに物が散乱している。
パルガムは髪を振り乱して壁際で背を隠し、筒のような物を剣に見立てるように構えている。
俺は舌打ちしそうになるのを抑えて、そこらを飛んでいる精霊にわけを話させた。
“ジルとレミーが、悪魔に霊薬を飲ませたのー”
“バタバタって嫌がったから、クラリスが魔力で動きを止めて、ジルとレミーが飲ませた”
「……」
(どっちが悪いと言いにくい状況だな)
ジルとレミーは悪魔であるパルガムが、天界で少しでも生き永らえるのようにと、回復と耐性の両方を補う霊薬を飲ませたわけだが。
やり方が強引すぎる。
精霊から見てもそうらしく、意見が割れて騒々しい。
「ジル、レミー、クラリス! お前らもうパルガムのことはそっとしておいてやれ! 弱ってきたらそのうち気がついて飲む! 今までの悪魔の大半がそうやって生き永らえているんだよな?」
さすがに罰の悪そうな顔をしたジルが、俺のもとにやってきた。
『そうなんだけど』
「なんでパルガムのことは、水を飲まないまま、すぐ“消える枠”に入れてるんだ? 仮にそうだとしてもほっといてやれよ」
俺がそう言うと、ジルが言った。
『だからだよ。相手の気持ちを尊重していたらすぐに消えちゃうんだ』
“ゼリュース、ジルは間違ってない”
「クラリス、お前はジルを依怙贔屓しすぎるから黙れ」
“ム”
トパーズ色の精霊クラリスがムッとした顔で、ひとまず黙った。
パルガムはよほど嫌な思いをしたらしく、今度は警戒を一切緩めず、真っ直ぐに視線を保った状態で筒を構えて立ったままだ。
一方的に思えるが、愛情をもって接してきた上司に崖から突き落とされ、本人から見て地獄に連れてこられた挙げ句、気を許したところに『美味しいよ』と騙され薬で昏倒させられ、さらに嫌がることを力で強要されたわけだからな……。
実際には落ち着かせようと飲ませただけなんだが。
ピンピンしているのがその証拠だ。
だがパルガムから見るとそうは思えない。
さすがに同情心が芽生えた。
「ボクは可哀想じゃない!」
鬼の形相でパルガムに怒鳴られた。
知らず知らず憐れむ表情が出ていたらしい。
「いずれミミルさまが助けに来て、お前らなんか蹴散らしてくれる」
思ったより幸せそうなパルガムの発言に、一同が内心でほっとした。
たぶんコイツは簡単に消えない。
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