天界送りのサルティエラ

いわみね

文字の大きさ
8 / 43
第一章

7話 サルティエラの宝物庫

しおりを挟む
 □□

『ちょこまかと逃げ隠れおって!何処だぁあ!』
 エリヤを見失ってヤカン魔神が足で滅茶苦茶に地面を踏みつける。手当たり次第に攻撃することでダメージを与えてやろうという腹積もりらしい。
「ちっ、隠れてるわけじゃねぇ。好きなこと言いやがって」
 それをかわしながら、少しずつエリヤは街の中心部まで移動していた。逃げ回っている実態が腹立たしかったが、つまらない自尊心で敗けるわけにはいかないという思いが強い。
 おかげでサルティエラの街の家や建物がどんどん壊されていく。
『なにしやがるこのヤカン!』
『きゃーーー!』
『うわーー!』
 事情がまだ良くわかっていない住人がパニックになって逃げ回っているが、俺は身を守っているだけで、知ったことではない。

 ヤカン魔神にとっても俺にとっても、天界生まれの住人は毒にしかならないから食ったりはしない。
 (ハッキリ魔界生まれの俺に的を絞ってやがるからな)
 読みが正しければ、街の何処かにあるはずのものを俺は探す。

 ─俺が最初に食うつもりだった人間。
 アイツは剣で俺を魔界へ送り返しやがった。
 (何処だ、絶対にあるはずだ。ここが現界へ還るための演習みたいな場所ならあるんじゃないのか。そうでなくても魔界生まれを受け入れるからには、こうした事態を想定した手立てくらい用意するだろう!)
 まさか上まで能天気なお人好しってことはないと信じたい。
 俺は目に留まった住人を一人、取っ捕まえて聞いた。
 ろくに逃げずに避難なんかを呼び掛けてる、お人好しのジルたちと同じ匂いがする、ちょっと気持ちが悪い奴だが仕方ない。
「武器だ!あのヤカン魔神をぶっ倒せる武器とかがあるんじゃないのか!何でも良い!」
『あ、あんた、あのヤカンの化け物と戦うつもりかい?!わ、われわれのために!』
 数人がエリヤたちのやり取りに気がついた。
『何だって?!危険だよ!』
「危険だろうと関係ない。武器があるなら何処にあるか教えてくれ」
 どうも話がこんがらがってるかもしれないが、とりあえず奴と戦える武器が欲しい。
 すると別の住人が、魔神と戦う武器を探していると聞き付けて混乱の中駆けつけてきた。
『こっちへ来てくれ!万が一住人が暴走したときのため、天使長から我々が戦えるようにと授かった武器と防具を納めた宝物庫がある!』
 エリヤは思わず、なら戦えよと言いそうになったが止めた。
 どう見ても戦い向きじゃなく、良く今まで魔界の住人と暮らして平気だったなと思うくらい弱そうだったからだ。
「いや、そういう特殊そうな武器じゃなくて良い」
 武器が欲しいとは言ったが。
 (天使長が授けるような、もろ天界製品なんか俺が使って大丈夫なのか?)
 とはいえ巨大化しすぎてヤカン魔神ハテナが俺を見失っている間の今のうちに武器が欲しい。
 俺にとって諸刃の剣なら、奴にとっても大ダメージは間違いない。これは絶好の機会をえたと考えることも出来る。
 (一か八かやってやる!)
 意を決して、武器のありかを教えるという住人に付いていくことに決めた。
 エリヤにとってヤカン魔神が巨大化を解いて魔導術を使ってくるほうが厄介だったが、魔界の王に成り代わろうとするだけあって、魔神は巨大化して周辺を蹂躙するほうが好みらしいのが好都合だった。

 (あの巨体で魔力を操作して魔導術を使われるのも困るが、おそらく巨大化を維持するせいで、繊細な魔力操作をする余裕が奴にはない)

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

あべこべな世界

廣瀬純七
ファンタジー
男女の立場が入れ替わったあべこべな世界で想像を越える不思議な日常を体験した健太の話

シシルナ島物語 少年薬師ノルド/ 荷運び人ノルド 蠱惑の魔剣

織部
ファンタジー
 ノルドは、古き風の島、正式名称シシルナ・アエリア・エルダで育った。母セラと二人きりで暮らし。  背は低く猫背で、隻眼で、両手は動くものの、左腕は上がらず、左足もほとんど動かない、生まれつき障害を抱えていた。  母セラもまた、頭に毒薬を浴びたような痣がある。彼女はスカーフで頭を覆い、人目を避けてひっそりと暮らしていた。  セラ親子がシシルナ島に渡ってきたのは、ノルドがわずか2歳の時だった。  彼の中で最も古い記憶。船のデッキで、母セラに抱かれながら、この新たな島がゆっくりと近づいてくるのを見つめた瞬間だ。  セラの腕の中で、ぽつりと一言、彼がつぶやく。 「セラ、ウミ」 「ええ、そうよ。海」 ノルドの成長譚と冒険譚の物語が開幕します! カクヨム様 小説家になろう様でも掲載しております。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...