天界送りのサルティエラ

いわみね

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第一章

6話 毒

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 □□
 巨大化したヤカン魔神がエリヤの力を奪うため魂を食らおうと追いかけながら問う。
『なぜ逃げるんだい。わたしがキミの力を有効利用してあげようと言っているだけじゃないか!相手がわたしじゃ不服かい』
 一方の俺は問いながら拳で殴り付けてくるのを避けながら、俺は天界都市サルティエラの街の中心へ向かって走っている最中だ。
「テメーがどうとかそういう問題じゃねー!」
 ヤカン魔神の攻撃をかわして蹴りをいれる。
 ヤカン魔神の攻撃がエリヤに当たっても簡単には致命傷にならないように、エリヤの攻撃もヤカン魔神に大きな損傷を与えることが出来ないでいる。
 同じ魔界出身同士、互いの攻撃に一定の耐性があるせいだ。

『光栄だとは思わないかい?もう少しで魔界の王をも越える力を手に入れるわたしの糧になれるんだよー!ウキウキするでしょ』

「誘うんならもっと魅惑的に誘ってもらわねえと、唆られないな!」
『たとえばー?』
 そう言いながら、ヤカン魔神が足で踏みつけてきやがった!
 大きさで対抗するのも馬鹿馬鹿しいので、俺は街へ誘導しつつそのまま闘う。
 銃器はおろか、剣も盾も無い。
 ここが現界なら、材料となる物質がそこらじゅうにあるから、魔力でどうにでもなったかの知れないが、ここは天界で、あるのは俺にとって毒となる魔力が多分に含まれた空気だ。

 (そのせいで分が悪いと言いたいところだが、奴にとっても天界の空気は毒のはずだからな。ただサルティエラはその毒性がイルミナの力で弱まっている)
 想像していたより楽に動けるものの、エリヤの内心に来るか来ないかわからないイルミナを待つ余裕は無い。
 ヤカン魔神は先ほどよりも大胆に動き回っている。
 (くそ!ヤツもイルミナが来るとは思っていない可能性が高い)
 神にとって、ここでの出来事はあまりに些末で、そもそもここが創られたことが奇跡なのかもしれない。

 このサルティエラは天界送りになった者のために創られた特区だ。
 創造神イルミナの慈悲で存在している。
 ヤカン魔神ハテナは13人もいる魔界の王のどれかは知らないが、身のほど知らずにも挑んでここに跳ばされた。
 理由が何であれ、行き場を失ったヤツを、『天界都市サルティエラ』は慈悲で迎え入れた。

 ズシーン!
 ヤカン魔神が足で地面を踏むと土が抉れて石が飛んできたり、そこらじゅうに地震さながら震動が伝わってくる。
 (現界に似せて創られているとは言っていたからな)

 そこに勝機はあるとエリヤは確信している。
 ヤカン魔神自身が自覚しているように、まだ魔界王を越える力を身にはつけていない。

 (生まれたばかりの俺だが、魔界の王たるナダが存在に気がついたくらいには魔力があるんだぜ!!)
 見たことは当然無いが、天界には12人の天使長というのがいて、さらにその上に神々が大勢いるって話だからな。

 魔界の王は13人もいるうちの一人で、格は天界での天使長くらい。そう考えればナダなんてちっぽけな存在に思えた。
 さらにヤカン野郎はその下。

 (つまり、立場的にこのヤカンと俺に大差なんて無いってことだ!)

 こいつが今までそこそこ大人しい皮を被っていたのはまだ力が足りないと考えていたからだ。
 だが生まれて間もない魔力だけはそこそこある『俺』という獲物が現れた。

『キミの魔力は生まれたばかりにしては大きすぎるよ。わたしの方がうまく使ってやれる。魔界の王に一泡ふかせてやりたいのだろう?わたしに願えばそれを叶えてやろう。キミが自分で叶えるよりもずっと実現性が高い』
「は!テメーの力なんて誰が借りるか!俺の魂の価値はそんな程度の願いで消費されるほど安くねーんだよ!」

『どうせキミは天界から出られないんだから、諦めれば良いのに』
「それはテメーだって同じだろ」
『わたしがお前と同じだと……?』
 ヤカン魔神からこれまで以上の殺気が漲る。
 俺とと言われたのが相当気に障ったらしい。
『生まれたばかりの頭ばかりで経験の伴わないお前とわたしがおなじのわけがないだろうが!ふざけるなぁあ!』
 ヤカン魔神が激昂する。

「は!長生きしてりゃあ経験豊富ってわけじゃないだろ!」
 とはいえ、実際生まれて一日しか経ってない俺が持つ知識は全部経験を伴わない空っぽの知識だっていうのは認めるしかない。

 実のところさっきからエリヤは知りえる高火力の魔術を何度も発動させようと試みているが、全てが失敗に終わっている。
 魔力が足りていないんじゃない。
 足りないのは魔力を操作するのに必要な圧倒的経験だ。

 (だからって諦めてたまるかよ!)

 ここが現界に似せて創ってある理由は人間の魂を現界に還すための予行演習みたいなもんのはずだ。

 だったらおそらく。

 全ては創造神イルミナの掌の上の出来事なのか。
 気に障る!
 ああ!気に入らねぇ!気には入らねえが!
 今はそれに賭けてみる。
 俺は集めたエメラルド色の欠片を隠した場所は振り返らない。
 吐き気がする。
 サルティエラの毒性は天界のどの場所よりも低いと、エメラルド色の精霊ジルに教えられたが。
 それでもやはり
 天界の空気は毒なんだ。
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