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第一章
12話 足りなかったもの
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□□
自分の主張を否定する都合の悪いもの、全部相手の自作自演と考えるようになったら、思考が停止してるのと変わらねえ。言い分が通らないとなったらグルだのなんだと騒ぎ出す。
そんな奴と話すのは時間の無駄だ。
少し前の自分が似たようなものだったことを棚に上げて、エリヤはカミルの評価をそう結論付けた。
エメラルド色の精霊、ジルがここにいたら。
キミ、性格大丈夫?!と言って笑ったのかもしれない。
(魔力は消費させられたが、無駄じゃなかった)
生まれて1日しか経たないエリヤに圧倒的に足りなかった魔力を取り扱う経験が、カミルの術を防ぐ行為によって急速に埋められていた。
「炎の矢」
『な?』
エリヤの呟くような囁きにまるで呼応するがごとく、周囲の魔力とエリヤの魔力が流れるように何本もの炎の矢を作り出した。
『なんや脅かしよって、炎の術なんてそんな程度オレかて出来るんや……で?!』
【火矢円舞】
そんな程度だったはずの魔術、炎の矢が円を描くように集まって強大な炎の魔術になった。
「さんざんやってくれたよな」
エリヤが容赦なくカミルに向かって術をぶつけた。
狭い通路で完全には避けきれず、カミルが悲鳴を上げて、後退する。
『自分、力隠しとったな!卑怯もんが!』
「それはこっちの台詞だ!俺がまだ術を使えねーと踏んでやってやがったな!自分より弱そうな相手に容赦無しのお前に言われたくねえー!」
似た者同士はとかく衝突しやすい。
ここに来るまでにさんざんカミルの攻撃を受けては魔力でそれを防いだ。
その成果が、この術の完成だ。
『アホ抜かすなや!天界人は魔力低ぅてもオレら魔界生まれにとったら存在自体が武器みたいなもんやろ!魔界生まれの自分なんか、めちゃくちゃ魔力持ってるやないか!何が弱いねん』
カミルが騒ぐ。
続いていた震動が、止まったかと思った刹那、ガクン!と周囲が揺れて唐突に崩れ落ちる天井がエリヤとカミルの目に映った。
ガラガラと音を立てて崩れ落ちる瓦礫と化した天井から光が射し込み、土ぼこりが舞う。
エリヤはここ、天界都市サルティエラを創った創造神イルミナの拘りに、迫る危機感と同時に妙に感心させられた。
(どこまで現界に似せてるんだ)
そう思った瞬間、エリヤとカミルの間に、地下通路の天井をさらに踏み抜いて巨大な何かが現れる。
『足や!』
驚いたカミルが慌てて後ろへ後退しながら叫んだ。
(ちぃっ!ヤカン魔神の野郎。地面を踏みつけて崩壊させたのか)
地下があるせいで強度が足りなかったのかもしれない。
巨大化を解かずに上で未だに暴れる魔神が、地下通路の天井を踏み抜いたことに気付いたらしい。
今度は巨大な手が現れた。
ヤカン魔神らしき声も聞こえる。
『アカン!どっから来よるかわからへん!』
言った途端にヤカン魔神に襲われ通路の壁に打ち付けられた。
『魔界生まれ』は実体を持たない余所者だ。実体が無いから、『影』を持たない。
単純に『世界』がそのように分けられている。
影という予告の無い魔神の手足の登場は、エリヤたちにとって予測不能の事態を招いていた。
(不味い、まだ武器も何も手に入れてない。魔術で戦うにしてもカミルを相手しながらとなると厄介だ。仮に共闘出来たとしても、その後猜疑心の塊であるヤツの取り扱いが面倒過ぎる!)
エリヤがヤカン魔神に気付かれないよう、少しでも離れようと試みた時、エリヤにとって思わぬ幸運が起きた。
通路を確かめようと魔神が屈んだ視線の先で、ヤカン魔神とカミルの視線が合ったのだ。
(カミルの奴、見つかったな)
よほど驚いたか、怖いのか。
カミルが上を見上げて口を半開きにしている。
ヤカン魔神の魔力は魔界王に劣りはするが、カミルの魔力はそれ以上に低い。
ヤカン魔神は魔界王に取って代わるため力を求めている。
奴を含む俺たち魔界の住人の力の得かたは至ってシンプルだ。
魔力を持った獲物を食らえば良い。
俺はそっと支援魔術の要領でカミルに魔力を少し分けてやった。
『なあ?!なんちゅう性悪や!』
ヤカン魔神には魔力で強化されたカミルがさぞかし旨そうな獲物に見えているに違いない。
俺は声を出して返事をしない代わりに、精一杯の笑顔を作って返してやった。
我ながら良い笑顔をしてやれたと思ってる。
その時には既にカミルはヤカンに追われて、もう俺の表情なんか見えなかったかも知れなかったが。
離れた場所から、俺の名を叫びながら悪態をつき、悲鳴を上げるカミルの声が聞こえた気がした。
(俺たちは魔界生まれの悪魔なんだ。折角ヤカンがカミルに的を絞ったのに、わざわざ声を出して俺を思い出す可能性を上げる必要はないもんな)
その隙に俺は宝物庫の前まで行き、天界の住人から預かった鍵で扉を開けた。
自分の主張を否定する都合の悪いもの、全部相手の自作自演と考えるようになったら、思考が停止してるのと変わらねえ。言い分が通らないとなったらグルだのなんだと騒ぎ出す。
そんな奴と話すのは時間の無駄だ。
少し前の自分が似たようなものだったことを棚に上げて、エリヤはカミルの評価をそう結論付けた。
エメラルド色の精霊、ジルがここにいたら。
キミ、性格大丈夫?!と言って笑ったのかもしれない。
(魔力は消費させられたが、無駄じゃなかった)
生まれて1日しか経たないエリヤに圧倒的に足りなかった魔力を取り扱う経験が、カミルの術を防ぐ行為によって急速に埋められていた。
「炎の矢」
『な?』
エリヤの呟くような囁きにまるで呼応するがごとく、周囲の魔力とエリヤの魔力が流れるように何本もの炎の矢を作り出した。
『なんや脅かしよって、炎の術なんてそんな程度オレかて出来るんや……で?!』
【火矢円舞】
そんな程度だったはずの魔術、炎の矢が円を描くように集まって強大な炎の魔術になった。
「さんざんやってくれたよな」
エリヤが容赦なくカミルに向かって術をぶつけた。
狭い通路で完全には避けきれず、カミルが悲鳴を上げて、後退する。
『自分、力隠しとったな!卑怯もんが!』
「それはこっちの台詞だ!俺がまだ術を使えねーと踏んでやってやがったな!自分より弱そうな相手に容赦無しのお前に言われたくねえー!」
似た者同士はとかく衝突しやすい。
ここに来るまでにさんざんカミルの攻撃を受けては魔力でそれを防いだ。
その成果が、この術の完成だ。
『アホ抜かすなや!天界人は魔力低ぅてもオレら魔界生まれにとったら存在自体が武器みたいなもんやろ!魔界生まれの自分なんか、めちゃくちゃ魔力持ってるやないか!何が弱いねん』
カミルが騒ぐ。
続いていた震動が、止まったかと思った刹那、ガクン!と周囲が揺れて唐突に崩れ落ちる天井がエリヤとカミルの目に映った。
ガラガラと音を立てて崩れ落ちる瓦礫と化した天井から光が射し込み、土ぼこりが舞う。
エリヤはここ、天界都市サルティエラを創った創造神イルミナの拘りに、迫る危機感と同時に妙に感心させられた。
(どこまで現界に似せてるんだ)
そう思った瞬間、エリヤとカミルの間に、地下通路の天井をさらに踏み抜いて巨大な何かが現れる。
『足や!』
驚いたカミルが慌てて後ろへ後退しながら叫んだ。
(ちぃっ!ヤカン魔神の野郎。地面を踏みつけて崩壊させたのか)
地下があるせいで強度が足りなかったのかもしれない。
巨大化を解かずに上で未だに暴れる魔神が、地下通路の天井を踏み抜いたことに気付いたらしい。
今度は巨大な手が現れた。
ヤカン魔神らしき声も聞こえる。
『アカン!どっから来よるかわからへん!』
言った途端にヤカン魔神に襲われ通路の壁に打ち付けられた。
『魔界生まれ』は実体を持たない余所者だ。実体が無いから、『影』を持たない。
単純に『世界』がそのように分けられている。
影という予告の無い魔神の手足の登場は、エリヤたちにとって予測不能の事態を招いていた。
(不味い、まだ武器も何も手に入れてない。魔術で戦うにしてもカミルを相手しながらとなると厄介だ。仮に共闘出来たとしても、その後猜疑心の塊であるヤツの取り扱いが面倒過ぎる!)
エリヤがヤカン魔神に気付かれないよう、少しでも離れようと試みた時、エリヤにとって思わぬ幸運が起きた。
通路を確かめようと魔神が屈んだ視線の先で、ヤカン魔神とカミルの視線が合ったのだ。
(カミルの奴、見つかったな)
よほど驚いたか、怖いのか。
カミルが上を見上げて口を半開きにしている。
ヤカン魔神の魔力は魔界王に劣りはするが、カミルの魔力はそれ以上に低い。
ヤカン魔神は魔界王に取って代わるため力を求めている。
奴を含む俺たち魔界の住人の力の得かたは至ってシンプルだ。
魔力を持った獲物を食らえば良い。
俺はそっと支援魔術の要領でカミルに魔力を少し分けてやった。
『なあ?!なんちゅう性悪や!』
ヤカン魔神には魔力で強化されたカミルがさぞかし旨そうな獲物に見えているに違いない。
俺は声を出して返事をしない代わりに、精一杯の笑顔を作って返してやった。
我ながら良い笑顔をしてやれたと思ってる。
その時には既にカミルはヤカンに追われて、もう俺の表情なんか見えなかったかも知れなかったが。
離れた場所から、俺の名を叫びながら悪態をつき、悲鳴を上げるカミルの声が聞こえた気がした。
(俺たちは魔界生まれの悪魔なんだ。折角ヤカンがカミルに的を絞ったのに、わざわざ声を出して俺を思い出す可能性を上げる必要はないもんな)
その隙に俺は宝物庫の前まで行き、天界の住人から預かった鍵で扉を開けた。
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