Connect Story No.2-愛物語

モア神

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愛の失望

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「ん、あれ!?」

 今まで止まっていた時の歯車が再び動き出したようだ。

 あれは、美希の母親と不倫をしていた紀じゃないか。許せない!!

 ん?隣で紀とキスをしている女の人は、誰だ?どこかで見た事があるような…。

 

 俺は、美希とのキスをやめて紀の方に向かった。

 そして、「こっちへ来い!」と紀に言って美希に話す内容がバレない所に連れ込んだ。

「なんで、美希の母親と不倫してたんだよ。俺ショックだよ!」

「違う!俺は、美希のお母さんだったっていう事も美希のお母さんと不倫をしていた事も知らなかったんだよ。あの人に僕は騙されたんだ!」

 それを、聞いて俺は誤解だという事に気づけた。

「やっぱり、紀がそんな事する訳ないと思ったよ」

 そして、紀と抱き合って、美希のもとに戻った。そしたら、美希は居なくなっていた。

 そして、さっきそこで紀とキスをしていた女性が立っていた。

「ん、もしかして理乃か?」

 近くで見ると顔がはっきりして理乃の事が分かった。

 理乃とは、小さい時から同級生でよく1人で寂しそうにしていたなぁ。あの頃の思い出が蘇ってきて懐かしく感じた。

 いや、そんな事より、「美希はどこ行ったんだ?」理乃に聞いた。

 そしたら、理乃が「そんな事より私を捕まえてくれない。輝魅くんって警察になったんだよね。私が美希を交通事故にあわせたんだ!」

「「え!理乃が!?」」

 俺ら2人とも同じ反応だった。
 
 ~時はさかのぼる事10年前~

 21歳だった俺は警察官を目指した。しかし、オーストラリアの警察官になるには日本国籍を捨てる必要があった。

 でも、俺は一生美希を守る事を心に決めて、オーストラリアで警察官になる事を決意した。

 そして、24歳になり警察官なる事が出来た。しかし、オーストラリアは日本に比べて事件が少なくとても暇だった。

 そんな暇な時に思いついたのが美希が本当に交通事故であるかどうかという事だ。車通りの少ないあの場所に事故が起きる可能性としては、自分の意思で飛び込むか、誰か突き飛ばされるかしかないだろう。

 しかし、美希は自殺をしようなんて考えない人間だった。いつも、近くにいた俺だから分かる事だ。

 その証拠に中学生の卒業式に俺に約束をしたのだ。

「絶対に大人になったら結婚しようね」と。

 美希は約束だけは絶対に守る女だった。そんな、美希がその直後に車に飛び込むなんてあり得ない。

 そう、あれは計画的に行われた殺人未遂だったと俺は考えた。

 でも、美希は誰かに恨まれていた?そんな想像がつかなかったが、この暇な時間に調べてみようと思い、一度日本に帰り防犯カメラを確認した。

 でも、そんな古い映像はもうなくなっており、証拠は全てなくなっていた。しかし、その近くにあった警察署に話しを聞いてみると、誰かが自首をしに来ていたらしい。まだ、その子達は中学生だったからただのイタズラだと思っていたらしい。

 だけど、これだけの情報だと誰が犯人だなんて分からない。ただ、犯人がもし分かったならどんな人だとしても許さないと心に誓った。それから、時が過ぎて今に至る訳だ。

「それは、本当なのか?」

「当たり前じゃない!その証拠として美希は私が怖くて今、逃げているでしょ」

「そうだったのか、お前が美希を突き飛ばしたのか!お前を俺は絶対に許さない!…ただ、美希に何の恨みがあったんだ?」

「私は、あいつにいじめられてたんだよ!」

 その瞬間、あたりが静寂に包ませた。俺は感情の整理が出来なかった。

「美希が、理乃の事をいじめていた…」

 ”そんな事があるはずがない”

「美希はそんな人じゃない!!」
 と俺が叫んだ。

 しかし、それに対抗するように理乃が言った。

「あいつは、そういうやつだ。表向きは天使の顔をして、裏向きは悪魔だ。しかも、私の他に美結も久美もいじめられていたんだよ!あいつのいじめの証拠の音声も聞く?」

 そうして、美希が理乃達に怒鳴っている音声がかかった。

 こういう仕事している都合で確実に合成の音声ではないという事は分かった。

 俺は、一体どうすればいいんだ!分からなかった。

 本当に悪かったのは美希の方だったのか。こんなに感情が変化したのは、人生で初めてだった。

 もし、俺が理乃の立場だったなら、俺も同じ事をしていると思った。

 だから、理乃の事を殺人未遂で逮捕するのを、やめようとしたが理乃が逮捕をしてくれと頼み続けたのでしょうがなく、1年半だけ逮捕をする事になった。 

「紀は、この後どうするの?」

「もちろん、理乃の事を待っているよ。僕も同じ立場なら同じ事をすると思うからね。それこそ、輝魅はどうするの?」

「そうか、どうしようかなぁ?」

 そんな悩んでいた時に美希から連絡がきた。

「大事な話があるから、私の病院に来て」

 俺は、みきとも話しがしたかったので、みきの病院に向かった。

 そしたら、みきが病院で待っていて結婚しないかという話をされた。俺は考えた、本当にみきと結婚していいのか。いや、だめだ。危ないところだった。過去の思い出が蘇ってきて危うくオッケーをするところだった。

 だからまず、みきに「なんで、理乃の事をいじめたんだ?」と聞いた。

 そしたら、みきは冷静に「あいつが悪いんじゃない!あんなに汚くて、うちのお母さんと同じ名前なんてバカにしてるみたいだわ。私は、当たり前の事をしただけよ。私は悪くない!だから、一緒に結婚しよ。約束したよね!」と言ってきた。

 俺は、今まで騙されていたのが許せなかった。

「そんな、人だったのか。俺はガッカリだ」

 そう言って、あいつのもとを去った。その後、俺はある事に気がついた。

 5年間もキスをしていて、ちょっと記憶が曖昧あいまいになっていたけど、そういえば、あいつは記憶喪失だったはずだ。

 俺は間違えて、あいつに[理乃の事をなんでいじめたんだ?]って聞いたけど、あいつが理乃をいじめていた事なんて、覚えているはずがない!なのに、反論をしてきた。そして、理乃からも逃げた。

 一体どうしてだ?

 理乃から逃げるという事は理乃に殺された記憶がよみがえり、怖くなって逃げ出したとしか考えられない。

 しかも、俺とした結婚の約束まで覚えている。

 ということは、もしかして、記憶喪失だったというのは嘘だったのか?

 ということは、俺にそんな嘘までついていたのか?

 俺はもともと信用してなかったんだ!

 もう俺はますますあいつの事が嫌いになった。というか、軽蔑けいべつしたよ。

 なのに、なのに、どうしてなんだ!?俺はあいつとの思い出をどうしても忘れる事が出来なかった。

 今まであいつの事を愛すぎていたのかもしれない。

 愛していた人に突然裏切れるなんて、紀と一緒だな。紀もあいつの母親に裏切られたらしい。

 あの親子はバケモノだ!

「本当に俺らって付いてないなぁ」

 そう言って、笑いあった。それから結局、日本に帰り、今では、日本で警察をしている。やっぱり、正義というのは、かっこいいからな。

 そんなある日、ある日記のような物が届いた。誰から送られた物なのかは、分からなかったがその日記には”『君との接吻』”と書かれていた。
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