真実の愛を見つけたから婚約破棄をしたい?どうぞご自由になさってください。ところで公爵様、どうして私にかまうんですか?

ルー

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5 sideサーシャ

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私、サーシャは今は亡きフェデナント王国の第二王女サラサ様に仕えていた。

護衛、兼、侍女としてサラサ様の側近として七歳のころから仕えていた。

私が十歳の時に、サラサ様の婚約が決まった。

サラサ様は十歳で私と同い年だった。

自分の意志とは関係のない所で勝手に結ばれた婚約にサラサ様はひどく怒った。

その相手が良縁の中の良縁と言われるルディスラ帝国の第一皇子シスムだったのが最悪だった。

フェデナント王国側から側妃でいいからと土下座で頼み込んでやっと成立した婚約だった。

それをサラサ様の一存で解消できるはずがない。

そもそも土下座で頼み込んだこちら側から解消の申し込みなんてできるわけがない。

それをサラサ様は理解していた。

理解していたが故に無知ではなかったがために解消したいと我儘をいうことができなかった。

両親、兄、姉たちには笑顔で喜び、私には心底悲しそうな表情で愚痴をこぼしていた。

それだけ私がサラサ様に信頼されているのだと思うととても嬉しかった。

でも、嬉しい反面、いつ両陛下にばれるのかとひやひやしていた。

ばれたのは婚約者であるシスム殿下がいらした時だった。

それもシスム殿下、本人にばれてしまった。

いつも通り私に愚痴を言って、私がそれを聞いていて。

そんないつも通りの時間に割って入ったのがシスム殿下だった。

扉の前を守る騎士を強引に突破して、中に入って来たシスム殿下は無言でサラサ様の腕を掴むと引きづるように連れて行った。

慌ててついて行って、たどり着いた先は国王陛下の執務室だった。

その瞬間、聞かれていたことに気づいた。

ノックをして、許可を得て中に入ったシスム殿下は激高していた。

そちらから土下座でお願いされて結んだ婚約だというのに当の本人がこんなに嫌がっているのはなぜかと。

なぜ嫌がっているのに婚約を結ばせたのか、と。

シスム殿下はサラサ様を責めていなかった。

本人に許可をとらずに勝手に婚約を成立させた国王陛下に怒っていた。

サラサ様はご家族から何よりも愛されて育てられた。

だから両陛下はサラサ様を良い所に嫁がせたかったのかもしれない。

「サラサ第二王女、君は誰と結婚したい?正直に答えてくれ。」

その言葉にサラサ様は泣きながら

「私はシスム殿下のことを愛しております。」

その言葉を聞いた時、私はサラサ様の何も知らなかったのだ、と気づかされた。

何も知らないのに知っている気になっていた。

そんな自分が恥ずかしかった。

その言葉を聞いて、シスム殿下は微笑んだ。

「よかった、私もサラサのことが好きだよ。」

優しく微笑むシスム殿下にサラサ様も心底嬉しそうに微笑んでいた。

でも事態はそう簡単には収まらなかった。

サラサ様は自分のせいでこんな事態を招いたことを詫び、何でも一ついうことを聞くとシスム殿下に言ってしまった。

心臓がドクリとなった。

「じゃあ、そこの侍女を近衛騎士団にスカウトしようかな。」

サラサ様の侍女である私を指名した。

さすがのサラサ様もその頼みには首を縦に振らなかった。

「サーシャは私の友人です。そう簡単には渡しません。」

侍女でも、護衛でもなく友人。

そう言ってくれた。

涙が込み上げてきた。

「そう言われても・・・。」

困ったような表情をしたシスム殿下はいいことを思いついた、というような表情になった。

そこにあらわれたのがシスム殿下の姉君、そして私がリリアナ様に仕える前に仕えていた方。

ルディスラ帝国第一皇女ハル・フィルア・ルディスラ殿下。

ハル殿下は笑顔で後ろからシスム殿下のことを殴った。

悶絶するシスム殿下を無視してシスム殿下の愚行を詫びた。

そして、よかったらハル殿下の部下にならないかと誘ってくれた。

内容的には近衛騎士団に入るか、軍所属の精霊術師ハル殿下の部下になるかの違いだけど内面から見れば全く違う。

男ばかりの騎士団と男女比5:5の精霊術師。

剣で戦う接近戦の騎士よりも遠くから精霊の力を使って戦う精霊術師の方がはっきり言って良いに決まっている。

怪我をする確率、死ぬ確率が極端に低くなる。

でも、私には決められない。

決めるのは私の主サラサ様なのだから。

「私はサーシャと一緒にいたいですわ。だからサーシャと離れ離れになるのは嫌です。」

サラサ様の言葉にハル殿下は微笑んで

「心配は無用よ。貴女は妃教育を受けなければいけないのだから、ルディスラ帝国に滞在しなければならないのよ。」

と言った。

「え・・・?妃教育?」

確か妃教育は正妃にのみ行うものだったはず・・・。

サラサ様が困惑気味に言う。

「ええ、貴女はシスムの正妃になるのだから当然でしょう?」

「私は小国の姫です。そんなルディスラ帝国のような大国の第一皇子殿下の正妃だなんて務まりません。」

サラサ様が勢い良く首を振る。

その声は震えていて、私は聞いていられなかった。

「ルディスラ帝国はね、勘違いされやすいのだけど恋愛結婚主義国なのよね。つまり、相思相愛だった場合、どんなに相手の位が低くても貴族の場合は第一夫人として皇族の場合は正妃として迎えることができるの。」

サラサ様が正妃に・・・。

喜ばしいことだということはわかっていた。

けれど、サラサ様は正妃という重圧に耐えられないかもしれない。

けれどサラサ様は顔をあげて大きくうなづいた。

「わかりました。私でいいのなら正妃になり、シスム殿下を支えていきたいと思います。」

その言葉にシスム殿下が嬉しそうに笑った。

「ありがとう、サラサ。」

「サーシャ、貴女はどうしたい?近衛騎士団に入るかハル殿下の部下になるか、好きな方を選んで。」

サラサ様はいつも最後は私に決定権をくれる。

主なのに・・・。

勝手に決めてくれても構わないのに。

でも、サラサ様は勝手に決められるのが嫌な人だから人のことを勝手に決めるのも嫌のだろうな・・・。

「私は、ハル殿下の部下になります。」

迷うことなくそう言った。









「どうしてハル様は私を部下にしたいと言ったのですか?」

そう聞いたのはハル様に実の妹であるリリアナ様が産まれ、ハル様に所属の変更を告げられた時だった。

「あなたには素晴らしい精霊術師としての素質があったから。」

その一言で、理解した。

はじめて会ったあの瞬間からハル様は私に精霊術師としての才能が眠っていることに気が付いた。

だから私をどうしても自分の部下にしたかった。



「私のかわいい妹をよろしくね。」

そう言われた時、ハル様が何よりもリリアナ様のことを可愛がっていることに気づいた。

そしてリリアナ様に会って、それで成長を見守った。

リリアナ様は本当に愛らしいお方。

成長して、婚約も結んだ。

でも、私はリリアナ様の結婚式に行けないかもしれない。

私は・・・






私は実家に戻らなくてはいけないから。






















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