もう誰も愛さない

ルー

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出発

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「アメリア、起きろ。そろそろ行くぞ。」

早朝、ルイに起こされたアメリアは目をこすりながら体を起こした。

「もう?」

のろのろとベッドから降りたアメリアは洗面所に行き顔を洗った。

「さっぱりしたー。」

顔を洗って目が覚めたらしいアメリアは元気よく荷物を持った。

「行こう。」

「ああ、窓から行くぞ。」

運よく部屋は1階で2人は危なげなく窓から地面へと降り立った。

「静かに行くぞ。」

2人は足音を忍ばせて宿屋から去っていった。早朝と言うこともありムルティーの街を歩いている人の姿はない。

「この時間って馬車走ってるのかな?」

十分に宿屋から離れたところでアメリアが尋ねた。

「馬車は走っていないが馬なら買える。」

ルイの言葉にアメリアはへー、と言った。

「この時間でも馬、買えるんだ。」

時刻は午前3時。まだ寝静まっている街を馬屋に向けた2人は歩いた。

「あ、明かりがついてる。本当に開いてるんだ。」

先の方に馬屋が見えて、アメリアが驚く。ルイの言うことを全く信じていなかった。

「店主、今いいか?」

ルイが扉を叩くと、すぐに1人の男が出てきた。

「ああ、客か。馬が欲しいんだな。何頭だ?1?2か?」

「2で。アメリア、乗れるだろう?」

「うん、昔お父さんと一緒によく乗ってたよね。」

アメリアが懐かしそうに言う。

「昔・・・か。わかったよ。気性の荒くない優しめの馬から選べ。」

男は裏にある厩舎に連れて行った。厩舎にはたくさんの馬がいて、男はその中から白い馬と黒、茶色の馬をそれぞれ2頭ずつ連れてきた。

「この6頭の中から選べ。こいつらの中でも初心者に優しい馬だ。」

「怖がりだったり特定の物などに恐怖心を向け、暴れたりはしないか?」

ルイの問いに男は目を丸くして、一拍後爆笑する。

「あんた、通だね。どこかの馬好きのお坊ちゃまかと思ってたが。ちゃんと知識あるんだな。」

男はひとしきり笑った後言った。

「あんた、気に入ったぜ。6頭のうちのほとんどが何かしらに恐怖心を持ってるんだ。まぁ、普通にしてる分には何ともないんだがな。戦場とかは別だぜ?軍馬じゃないんだ。神経が図太く、何があっても暴れないのは白のリフェアと茶色のリゲルの2頭だけだ。」

「じゃあ、その2頭を買おう。」

ルイの言葉に男は二かッと笑った。

「1頭分にまけてやるからまた来いよ。何も買わなくていい。遊びに来いよ。そこのお嬢ちゃんも。」

「あ、はい。」

アメリアは戸惑い気味にうなづいた。

「感謝する。いくらだ?」

「金貨2枚だ。ああ、俺の名前はヴィオン。あんたたちの名前は?」

ルイは男、ヴィオンにお金を払った後言った。

「俺がルイ。こっちは娘のアメリアだ。」

「ふーん。アメリアちゃん可愛いね。良かったらうちの息子の嫁にならないか?」

唐突な提案に一瞬呆気にとられたアメリアだったが慌てて首を振った。

「ご、ごめんなさい。もう恋愛とか結婚とかはしないって決めたので。」

ヴィオンはちらっとルイの表情を見て納得したようにうなづいた。

「ああ、そうか。悪かったな変な提案して。また恋できるようになるといいな。過去を忘れられる日が来れば、そも
そも過去すら気にしなくなるからな。」

ヴィオンの言葉に2人は苦笑いした。そんな簡単に忘れられることではない。

「それじゃあ、また来るから。」

ルイとアメリアは馬に乗ってアルカンレティアに向けて馬を走らせた。





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