自殺したお飾り皇太子妃は復讐を望む ～二周目の君は変われない～

一周目の時間軸では（６）sideルディリーナ公爵

結局、ハルは皇太子と結婚した。

けれどすぐにハルを離宮に追いやり、愛人を迎えた皇太子を見て、後悔した。

こんなのは私が望んだ娘の幸せではない、と。

娘は、三年の間、ずっと離宮に閉じ込められていた。

けれど、一度だけ、娘は離宮を抜け出し、私たちに助けを求めてきたときがあった。

「お父様、お母様、お兄様。もう、無理です。ずっと離宮から出してもらえず、皇太子妃の仕事に加えて、皇太子殿下の仕事まで押し付けられて。もう我慢の限界です！」

結婚してからもうすぐ三年たつというある日のことだった。

泣きながら訴えてくるハルを助けたかった。

けれどその時、皇帝陛下の権力は絶頂期にあった。

もし離婚を提案したら我が公爵家はお取り潰しにされるだろう。

そうしたら後ろ立てをなくしたハルはどういう目に合うか。

それを考えたら離縁という選択肢は存在しなかった。

その後、エヴィルナと話したハルはどこか諦めたような、悲しそうな表情で、何も言わずに帰って行った。

その時に、何か声をかけていたら、違う言葉をかけていたら何かが変わっていたのかもしれない。

少なくとも自殺、することはなかっただろう。

娘が、ハルが死んだという連絡を受けて、茫然とした。

エヴィルナは泣き崩れ、皇后陛下からの文を見て後悔、していた。

「どうして、私は皇太子殿下の嘘を信じてしまったのでしょう・・・？」

あんなに嫌がっていたのに、どうして私は勘違いをしていたのだろう。

その後、皇宮に行き、皇后陛下からの謝罪を受けたとき、その場には皇太子と皇帝陛下もいた。

皇太子の浮気相手もいた。

私が皇太子の廃太子を進言したときの皇太子の一言は娘を馬鹿にしていた。

娘の死をなんとも思っていなかった。

自分のせいだとは思ってすら、考えてすらいなかった。

これが本当に皇后陛下のお子だとはどうしても思えなかった。

その後、ディオンからなぜハルが皇太子を嫌っていたのか、その詳細を聞き、激しく後悔した。

なぜ、ハルが嫌がったときちゃんと話を聞かなかったのだろうか？

なぜ、決めつけたのだろうか？

皇太子の言った言葉はもし、それがハルではない別の誰かが言われたとしてもそれは深く傷つく言葉だった。

もう、娘には会えない。

ハルのあの笑顔を見ることは、もう一生ない。

そう思っていた。

エヴィルナは泣き暮らしていた。

後日、ラピスラズリ大帝国を訪れたサザランド帝国の皇帝陛下に、私たちは罵倒された。

「ハルは、お前たちのなんだ？駒か？ハルがあんな能無しと結婚して本当に幸せになれると思っていたのか？」

「お前たちは親として、家族として失格だ。」

もう一度やり直せるのならやり直したい。

今度は、間違えない。

絶対にあの子を幸せにする。

あの子を絶対に皇太子には嫁がせない。

だから、どうか時を戻してください。

もう二度と間違えません。

なので、あと一度だけ、私にチャンスをください。