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第二章 異世界交流と地球人たちと邪神討伐

#27 先代女王と技とヒュドラ

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「遅かったじゃない、ずいぶん待ったわよ」

屋敷に入るとエリーさんが出迎えてくれた。
つーか執事にメイドさんが後ろに控えている。

「そうですか?かなり早かったと思いますよ、それよりエリザベートさんがここの先代女王だったなら言って下さいよ、聞いてなかったからビックリしましたよ」
「あれ?テルから聞いてなかったの?」
「あいつは親友としか言いませんでしたよ」
「そうだったの、それより少し喋り方が固いわよ、どうしたのよ」
「だって先代女王でしょ、多少気を使った方がいいでしょ、他の人の目もあるし」
「何いってるのよ、ここにいるのは私の身内しかいないわよ、それよりタツキに敬語使われるのは気持ち悪いわ」
「ひで~な、じゃあいつも通りでいいか」
「そう、そっちの方が良いわ、それより今日はどうしたの?」
「挨拶に来いって言ってたろ、それに長生きな婆さんに聞きたい事があるんだよ、後は変な武器の実験かな」
「懐かしいわね、私を『婆さん』なんて呼ぶのはタツキくらいね」
「テルも長生きだけどあいつは子供っぽいからな、エリーさんは落ち着いてるから何となくそう思うんだよ」
「まぁ積もる話もあるでしょう、客間に案内するわ」

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「それでどんな話なの?」
「その前にエリーさんは邪神って知ってるか?」
「!!!どこでその名前を聞いたの?」
「その反応は知ってるな、数日前に邪神の眷族らしいのを倒したんだ、これがそいつの魔石だ」

『ゴロッ』

「ダリス帝国で反乱騒ぎが起きてることは知ってる?」
「聞いているわ」
「俺が参加してた夜会にそいつらが来たんだよ、すぐに俺とミネルバとロイで制圧したんだけど、追い詰められた奴等が変な物を床に叩きつけて割ったら、多分召喚系の魔方陣が現れてさ、その眷族とかいうのが出てきた」
「それは小さなガラスのような物かしら?」
「多分ね、音と破片はそんな感じだった」
「その眷族の姿は?」
「ロイが撮ってた写真はこれだ『ピラッ』」

「あらっ素敵なドレスね、似合ってるじゃない!今日の服も可愛いしもう女の子になればいいじゃない」
「ざけんなっ!誰がなるか!つーか見るとこ違うよ、その右側だよ!」
「だって真ん中にあなたが写ってれば当然の反応よ~、それにしても眷族はあまり良く写って無いわね」
「それが一番まともに見えてる写真なんだよ、つーかやっぱり邪神の眷族って奴なのか?」
「これを見る限り間違いないわね、私も昔は散々やりあったもの」
「そういえば邪神って追放?したんじゃ無いの?なんかそんな事聞いたんだけど」
「確かに邪神の本体は遥か彼方に追放したわ、でも邪神の体の一部はこの世界のどこかに封印されているのもあるのよ、眷族が現れたって事はどこかで封印が解けたのかしら?」
「体の一部?生命力つえ~な、つーかその一部ってそんなに強く無いのか?」
「強いわよ、ただ部位によっては嫌らしい能力とかあるのよ、それと戦うなら威圧対策は必須ね」
「威圧対策か~まぁ俺は問題ないな、一応アクセサリーで作っとくか」
「あら?あなたが戦うの?反乱軍なら帝国が鎮圧するでしょ」
「そりゃそうだけど、あの眷族とか出てきたらヤバくないか?召喚された女の子にあったけど魔力操作どころか感知も知らなかったぞ」
「・・・タツキは知らないかも知れないけど普通はそんなものよ、経験を積んでレベルが上がると徐々に分かっていくものなの、ダリス帝国にも強い武人や魔法使いはいるわよ」
「そうなのか?でも武器屋の品揃えも悪かったぞ」
「いい武器が欲しい人はドワーフの王国にいくものなのよ、たまに他の種族でも腕の良い人もいるけど大体設備や素材の揃ったドワーフ王国に行くのよ」
「ふーん、じゃあ心配しなくて良いのかな?」
「余程の事が無い限り大丈夫よ」
「なんか心配になる言い方だなぁ、まぁそれなら俺のやりたい事優先するか」
「そういえば錬金術はちゃんと続けてるの、サボって無いでしょうね」
「そうだよ、錬金術で色々作ったんだけど慧眼鏡で鑑定出来ないのがあるからエリーさんに見てもらいたかったんだよ」
「あらそうなの?どんなものなの?」

マジックバッグを操作して合金のインゴットと不明薬剤を出す。

「あらっ、出来てるじゃない!効果時間もこれなら3時間くらいね、こっちも問題ないけど効果時間は半日くらいよ、それとこの金色の薬はソーマよ!でも紫のは毒薬になってるわね・・・これ絶対使っちゃ駄目よ、解毒するにはソーマくらいしかないわ(汗)」
「じゃあ万が一ヤバイのが出てきても何とかなるか、まぁ使いたくは無いけどな、それより合金は?」
「金属は専門外よ、でも鑑定魔法を使っても分からないわね」
「そいつは錬金術で作った合金なんだ」

そう言いながらレシピを伝える。

「錬金術で合金を作ったの?鑑定で何も出ないから新しい金属だと思うわよ、試しに名前つけてみたら?」
「金属の名前?何だろう赤いから『レッド』で良いんじゃない」
「あいかわらず適当ね、あっ、名前ついたわよ、やっぱり新素材だったのね」
「ほんとだ!通りで刀に変な効果が付与される訳だ」
「ちゃんと錬金術頑張ってるみたいで安心したわ」
「こうやって物を作るのは好きだからね」

『コンコンッ』

「失礼します」
「あらっどうしたの?」
「女王陛下から書状が届きました」
「用件は?まぁ予想はつくわね」
「恐らくその通りかと」
「何かあったのか?」
「最近エルフの行方不明事件が多いのよ」
「あ~それでこの国ピリついてたのか」
「だから今はエルフ以外の行き来には厳戒体制が敷かれてるの、なのに私が無理矢理タツキを通しちゃったから事情を聞きたいんだと思うわ」
「そうなんだ、なんかごめんなさい」
「いいのよ、そもそも国軍が動いてまだ犯人が捕まえられないのも悪いんだから」
「?犯人は奴隷商人とかじゃ無いのか?」
「そもそも奴隷商人なら拐われるのは若いエルフのはずなんだけど老人も結構居るのよ」
「何か変だな?」
「それに国軍も数人被害にあってるわ」
「つーかそれ俺に話していいのかよ?」
「大丈夫よ」
「どうすんの?俺も一緒に行った方がいいのか?」
「ほっときましょう、それよりまずは眷族の魔石の浄化ね、これは簡単だからすぐにやりましょう、後は武器の実験だったわよね、エルニアにも厄介な魔物は居るからついでに討伐もしちゃいましょう」
「それでいいの?」
「いいのよ、最近外に出てなかったから丁度良いわ」

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魔石の浄化は簡単だった。
錬金術で良く使う魔純水(純水に魔力を込めた溶媒)にしばらく浸けとけば良いらしい。
なのでエリーさんの家に浸けて置いてきた。

そしてエリーさんが異なる場所を繋げる『ゲート』の魔法を使ってエルニアの森のどこかの洞窟にやって来た。
この洞窟は特殊な薬草やキノコが採れるらしく地元の人が良く来ていたらしいが、最近になって洞窟の奥に魔物がいつの間にか住み着いたらしく、困っていたらしい。
一度討伐隊も組まれたらしいが返り討ちにあったらしく戻って無いらしい。

「ゲートはまだ使えないの?」
「まだ無理だよ、それに行ったことある場所自体が少ないからまだ先で十分だよ」
「それもそうね」
「それより魔物の情報無いの?」
「確か蛇系統だったと思うわよ」
「まぁ行けば分かるか」

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「エリーさん?」
「何かしら?」
「何か空気がおかしくない?」

奥に進むと明らかに空気の色が違う。
景色が薄紫に見えるし若干臭い。

「そうね、私は解毒剤飲んだけどタツキはまだ大丈夫なの?」
「大丈夫、少し臭いだけ」
「あいかわらずおかしな体ね」

更に先に進むと開けた空間に着いた。

つーか奥にバカデカイ蛇が何匹もいるように見える。
太さがオカシイ、3m位ありそうだ。
なんか蛇の根元が見当たらない。
これ蛇じゃないよな。

「ヒュドラね」
「やっぱりか、エリーさんの魔法でいける?」
「無理ね、全ての首をまとめて倒すのはきつそうだし、洞窟内はなおさら危ないわ」
「だよな、じゃあ新しい刀使ってみるから下がってて、あと崩れそうになったらゲート使って」
「分かったわ」

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俺は刀を打ってから一心不乱に居合い抜きの練習ばかりしていた。
きっと男なら分かってくれるだろう、あのロマンが!
ひたすら練習して納得のいく一閃が出来た時に思った。
これ、一閃と同時に纏わせた魔力を斬撃として飛ばせたら更にカッコイイんじゃないかと!
一度ザウスさんに相談したら妙な顔しながら『飛刃』という飛ぶ斬撃の戦闘スキルの存在を教えてもらった。
やり方は分からなかったがひたすら練習してついに習得したのだ。

でもこれ使いどころが難しい(汗)
まず威力の加減とか範囲の調整とか出来ない。
一度森で試した時は前方10mくらいの木々が根こそぎ斬れた(汗)
危なくて滅多に使えない。
しかも動きながら出来ない。

でも念のため試さないと危ないので『不殺』の付いた『蒼』(ブルーで打った刀)は試してみた。

確かに『不殺』らしく木や魔物は斬らずに済んだが、岩や土などの命の宿って無いものは根こそぎ斬れた。
扇状に前方50m程がだ!

それ以降『全斬』は怖くて試して無かったが、ちょうどいいから今日試そう!

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前置きが長くなった、まずは

「オールシールド、桜」

居合い抜きの効果範囲が分からないのでヒュドラに近づく。
ヒュドラも気づいたようでこちらを向いて威嚇してきた。
こうして見るとやっぱりデカイな。
首も8つあり各々ブレスを吹いてくる。
シールドに結界を張らせて、走って避けながら近づく。
かなり警戒してるのか、間断無くブレスが襲ってきて中々近づけない。
中々近づけない、中々近づけない、中々近づけない。

「もういい!メンドクサイ!」

シールドと服の強度を信じて突っ込む!

炎のブレスや毒のブレス、冷気のブレスなど走って突っ込む。

ヒュドラに後10mの所まで来たのでシールドをしまい、構え、全力で抜刀。

「一閃!」
『キィィン』

叫ばなくても良いのだか、やっぱり言いたくなる。

ヒュドラを見ると全ての首が断ち切れて再生もしないようだ。
シールドと服を見ると破損は無かった。

「終わったわね」
「威力は問題ないな、後はどれくらいの範囲なのか?」

その後洞窟試したら50mくらい遠くても斬れた。
生物も無機物も大体斬れた。
試しにシールドを斬ろうとしたが結界を斬って傷をつけるくらいですんだので何でも斬れる訳でも無さそうだ。

「凄い威力だけど危ないわね」
「そうなんだよ、だから大体使えない」
「それよりあの薬使えば刀も魔銃も要らないでしょ」
「あれは使いたくない、最後の手段だ」
「どうしてよ?」
「一度前に使った時に何かイヤだった!」
「癖になりそうで」
「・・・・多分違うと信じたい(汗)」
「魔銃は新しいのは無いの?」
「新しいというか、手加減用の魔銃と、元々の魔銃をここに来る道中改造した位だぞ」

エリーさんに魔銃を見せる。

「本当に器用よね、あらこれは前と変わってないように見えるけど?」
「威力を更に上げた」
「前のもとんでもない威力だったじゃない」
「それでも眷族の結界に弾かれたからな、それに銃身にブルーとレッドを使ったから強度が段違いなったから更に威力上げたんだよ」
「あなたは最強に興味無いんじゃ無いの?」
「もちろん無いよ、だからクラスは職長にした」
「しょくちょう?どういうものなの?」
「さぁ?でも地球では職人のまとめ役って意味だと思うぞ」
「しょくちょうにしたって言ったわね、他に何があったの?」
「忘れた(汗)」
「・・・・まぁ良いわ、他も回って屋敷に着いたらステータス見せて頂戴」
「な、何でよ?」
「あなたはちょっと常識が無さすぎるわ、それにあなたの体がどうなっているのか確認しないとこの先色々と危険かも知れないわよ」
「・・・・・・・」
「師匠命令です、観念しなさい」
「ずるいぞ」
「何とでも言いなさい、それにテルの回りはかなり非常識だから今の内に確認した方が良いわよ」
「・・・・・分かりました」
「素直でよろしい」
「でも絶対笑うなよ」
「笑わないわよ」

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