16 / 66
▼鏡の国
しおりを挟む
ぶっ壊します!
と息巻いていたが、朝起きて、ドレスを着るために色々なところを縛り上げられたり、結ばれたり、飾られたり、巻かれたり…淑女、というよりお人形さんに仕立てあげられる頃にはグロッキーになっていた。顔には出さなかったが。お陰で大層褒められてしまった。
まだ私と身長が揃わないアレクシスは、同じ仕立て屋のお揃いのデザインの男児服を着せてもらって、仕切りに私の周りで笑い声を漏らして上機嫌になっていた。最近こんを詰めてレッスンやら勉強やらで邸宅に2人で引き篭っていたから、余程外に出るのが嬉しいらしい。
「ありしあたん、いこう!」
馬車の階段ではまだ乗れないから、抱き上げて先に乗せてもらったアレクシスがエスコートするように中から手を伸ばしてきたのに応え、手を取るとタイミングを合わせたように私も抱き上げられそのまま馬車の座席に座らされた。
母もアレクシスも、カーティ家に着いて茶会が始まっても絶好調で、私はいろいろされる質問に「はぁ」とか「さぁ」とか冴えない返事をしながら熱い紅茶を冷ましながら啜っているだけである。その間も母は意見交流に余念なく未来の婿を求めてConversationを続けていたが、アレクシスはアレクシスで、あのたどたどしい口調でなぜというほどのcommunicationスキルを見せて私に話しかけてくる幼児やお子様たちプラス大人を見事に捌ききっていた。
しかし、人見知りを完全にしない訳では無いのか、私のドレスの端をずっと掴んで話さないところが可愛らしい。無理な事だが、いつまでもそのままでいてほしい。
場も馴染んできたところで、はて、下僕がいないなーといなければいないままで構わないのだけどーという気持ちは隠して夫人にルシウスがいない旨を問うと、大変申し訳なさそうな顔をして、今日は剣術の試験があるのでここにはいないのだと応えがあった。
本当に興味がなかったが攻略対象であるので一応近況をと聞いただけなのではあるが、なるほど、大変ですねと神妙に頷いておくと、不意に母が、
「ルシウスくんはどうかしら?」
と声を上げ、場が一気に動いた。
「あら、なんの話し?」
「実はうちのお婿さんを探していて…」
「まぁその話聞きましてよ!」
「ローラン家と釣り合うには相応の身分でなくてはなりませんし、」
「ローランの家を回していくには手腕も必要ですわ」
「それでルシウスくんはどうかしらって思ったんですの!娘とも仲良くさせていただいていますし!」
「それは素敵!」
「美男美女ですわ」
やんややんやと姦しく盛り上がっていき、気付けばほぼルシウスが婚約者になる話で結論づいてしまいそうだった。本人たちを抜きにして。
「こちらこそ、こんな愚息で良ければぜひ!家ではずっとアリシアちゃんのおはなしをしていますのよ。貰っていただけると喜ぶと思うわ。」
相手方からもGOが出てしまった。
詰んだ。下僕と結婚か。復讐ルート待ったナシなのでは。
スっと意識が飛びかけた時に待てよ?と気が付いた。
同じ攻略対象だが、ルシウスは婚約者キャラクターではもともとなかった。ここで婚約すれば、まず間違いなくもともとの婚約者キャラクターの席が埋まる。つまり、何回やっても倒れない死亡フラグ乱立ルートが発生しないことになる。
今からルシウスと良好な関係を築き直せば、復讐ルートにもならないだろうし、主人公との恋を応援して円満に婚約解消。幸せな行かず後家生活を送りましためでたしめでたしできるのではないか?
「わたしも、るしうすがいいと、」
思います、に被せる様に「おてあらい!まにあわないよーーーーっ!」と元気な声が弾けた。
上げた声の主をすぐ様手を引いて立たせ、飛ぶ様に御手洗を目指した。
下僕の家で遊ぶことも少なくなかったため、御手洗の位置は完璧に覚えている。
大きく広い御手洗の扉を開けた時、正面にある鏡になにかが反射したのが見えて後ろを振り返るとアレクシスに刃が迫っていた。
すぐ様体制を入れ替えて守るように包み込み、何事かと顔を上げた先には、数ヶ月会わずにいる間に、多少精巧になったルシウスがいた。
「なにをしているのですか」
「でていきなさい」
ギュッと抱きしめたアレクシスは細かに震えている。私に復讐するにしても、家族に害を及ぼすなんて。
復讐のために自分以外にもそんな手段をとる男とは結婚することは出来ない。最低でも自分以外が危険にさらされるなんてあってはならないのだ。
震えるアレクシスに目を落としている間にルシウスは御手洗から消えていた。
「もうだいじょうぶよ、わたしのせいね。ごめんなさい。」
ふるふると震えながら顔を上げたアレクシスは
「ありしあたん、るしうすとけっこんすゆの?」
と涙をいっぱいに貯めて聞いてきたが、今回は直ぐに断言出来るから泣かないで欲しい。
「ぜったいしないわ。」
家族は私が守ると決めたのだから。
と息巻いていたが、朝起きて、ドレスを着るために色々なところを縛り上げられたり、結ばれたり、飾られたり、巻かれたり…淑女、というよりお人形さんに仕立てあげられる頃にはグロッキーになっていた。顔には出さなかったが。お陰で大層褒められてしまった。
まだ私と身長が揃わないアレクシスは、同じ仕立て屋のお揃いのデザインの男児服を着せてもらって、仕切りに私の周りで笑い声を漏らして上機嫌になっていた。最近こんを詰めてレッスンやら勉強やらで邸宅に2人で引き篭っていたから、余程外に出るのが嬉しいらしい。
「ありしあたん、いこう!」
馬車の階段ではまだ乗れないから、抱き上げて先に乗せてもらったアレクシスがエスコートするように中から手を伸ばしてきたのに応え、手を取るとタイミングを合わせたように私も抱き上げられそのまま馬車の座席に座らされた。
母もアレクシスも、カーティ家に着いて茶会が始まっても絶好調で、私はいろいろされる質問に「はぁ」とか「さぁ」とか冴えない返事をしながら熱い紅茶を冷ましながら啜っているだけである。その間も母は意見交流に余念なく未来の婿を求めてConversationを続けていたが、アレクシスはアレクシスで、あのたどたどしい口調でなぜというほどのcommunicationスキルを見せて私に話しかけてくる幼児やお子様たちプラス大人を見事に捌ききっていた。
しかし、人見知りを完全にしない訳では無いのか、私のドレスの端をずっと掴んで話さないところが可愛らしい。無理な事だが、いつまでもそのままでいてほしい。
場も馴染んできたところで、はて、下僕がいないなーといなければいないままで構わないのだけどーという気持ちは隠して夫人にルシウスがいない旨を問うと、大変申し訳なさそうな顔をして、今日は剣術の試験があるのでここにはいないのだと応えがあった。
本当に興味がなかったが攻略対象であるので一応近況をと聞いただけなのではあるが、なるほど、大変ですねと神妙に頷いておくと、不意に母が、
「ルシウスくんはどうかしら?」
と声を上げ、場が一気に動いた。
「あら、なんの話し?」
「実はうちのお婿さんを探していて…」
「まぁその話聞きましてよ!」
「ローラン家と釣り合うには相応の身分でなくてはなりませんし、」
「ローランの家を回していくには手腕も必要ですわ」
「それでルシウスくんはどうかしらって思ったんですの!娘とも仲良くさせていただいていますし!」
「それは素敵!」
「美男美女ですわ」
やんややんやと姦しく盛り上がっていき、気付けばほぼルシウスが婚約者になる話で結論づいてしまいそうだった。本人たちを抜きにして。
「こちらこそ、こんな愚息で良ければぜひ!家ではずっとアリシアちゃんのおはなしをしていますのよ。貰っていただけると喜ぶと思うわ。」
相手方からもGOが出てしまった。
詰んだ。下僕と結婚か。復讐ルート待ったナシなのでは。
スっと意識が飛びかけた時に待てよ?と気が付いた。
同じ攻略対象だが、ルシウスは婚約者キャラクターではもともとなかった。ここで婚約すれば、まず間違いなくもともとの婚約者キャラクターの席が埋まる。つまり、何回やっても倒れない死亡フラグ乱立ルートが発生しないことになる。
今からルシウスと良好な関係を築き直せば、復讐ルートにもならないだろうし、主人公との恋を応援して円満に婚約解消。幸せな行かず後家生活を送りましためでたしめでたしできるのではないか?
「わたしも、るしうすがいいと、」
思います、に被せる様に「おてあらい!まにあわないよーーーーっ!」と元気な声が弾けた。
上げた声の主をすぐ様手を引いて立たせ、飛ぶ様に御手洗を目指した。
下僕の家で遊ぶことも少なくなかったため、御手洗の位置は完璧に覚えている。
大きく広い御手洗の扉を開けた時、正面にある鏡になにかが反射したのが見えて後ろを振り返るとアレクシスに刃が迫っていた。
すぐ様体制を入れ替えて守るように包み込み、何事かと顔を上げた先には、数ヶ月会わずにいる間に、多少精巧になったルシウスがいた。
「なにをしているのですか」
「でていきなさい」
ギュッと抱きしめたアレクシスは細かに震えている。私に復讐するにしても、家族に害を及ぼすなんて。
復讐のために自分以外にもそんな手段をとる男とは結婚することは出来ない。最低でも自分以外が危険にさらされるなんてあってはならないのだ。
震えるアレクシスに目を落としている間にルシウスは御手洗から消えていた。
「もうだいじょうぶよ、わたしのせいね。ごめんなさい。」
ふるふると震えながら顔を上げたアレクシスは
「ありしあたん、るしうすとけっこんすゆの?」
と涙をいっぱいに貯めて聞いてきたが、今回は直ぐに断言出来るから泣かないで欲しい。
「ぜったいしないわ。」
家族は私が守ると決めたのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
兄様達の愛が止まりません!
桜
恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。
そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。
屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。
やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。
無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。
叔父の家には二人の兄がいた。
そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだが────。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族は、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのね────」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
────えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?
【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!
くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。
ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。
マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ!
悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。
少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!!
ほんの少しシリアスもある!かもです。
気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。
月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)
乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが
侑子
恋愛
十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。
しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。
「どうして!? 一体どうしてなの~!?」
いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる