私と私の妹弟について

よん

　いじめられていたわけではない。

　学校という閉鎖的な空間に耐えられなくなったのか、中学生のころよりも成績が伸びないことに悩んだのか、友人ができない孤独を感じてしまったからか。未だに理由は自分でもよくわかっていない。ひとつ確かなのは、退学を決めた理由は、生徒たちの笑い声だった。
　心の内を晒せる友人はおらず、その頃家庭はわたし一人の些細な悩みなんて軽く口にだせるような状況ではなかった。周囲の繋がりの輪に自分が入られないことに孤独を感じ、やがて自分は必要ない存在だと思い込むようになった。悲劇のヒロインではなく、孤独に埋まる主人公だった。

　リスカはとても手軽に自分を痛めつけることができる。カッターとカミソリのどちらかを常に身につけていた。自室にはカッターが文房具のフリをして置かれ、外出の際に持ち歩くポーチの中にはカミソリがむだ毛処理をするためといわんばかりに潜んでいた。一年が経つころには外出先で切ることを躊躇わず、安定剤かのように腕や脚を傷つけた。

　大半の日本人は高校を卒業することを当たり前のように思っている。いや、当たり前だからこそ、それを特別に感じてはいない。いじめがあったわけでもないし、経済的に通えないと言われたわけでもなかった私が退学したことを驚かない人はいなかった。なにをしてもどこにいても優秀と言われ、問題児とは決して言われない私が、自主退学をした。母親は頭を抱え、教師は辞めないように話をしにきて、妹弟は四六時中家にいる私を不思議そうにしていた。
　学校という空間から背を向け、気ままに生きる楽さを知った私は、以前の「優秀」さがカケラもなくなった。