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プロローグ

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 ジジ、と灯芯の燃える音がした。甘い香りが一際強くなる。
 限りなく甘く、どこかに鋭さを秘めた蠱惑的な香り。
 それが何か熟知している彼ですら、身も心も委ねたくなるような。

 知らず、女の腰を掴む手に力が籠った。
 また力強さを取り戻したそれで容赦なく抉りたてると女はのけぞって激しく喘いだ。
 男はうるさそうに顔をしかめ、動きを止める。打ち捨てられていた枕を女の口元にあてがった。

 「これでも噛んでろ」

 抽送が止んで、恨めし気に振り向こうとする女に枕を抱かせ、有無を言わせずうつ伏せを強要する。
 
 ……これでいい。

 男は満足して再び柔襞を蹂躙し始めた。
 女の尻に勢いよく腰を叩きつけると、乾いた音とぬかるんだ水音が交錯する。
 女は呻き声すらこらえながら必死に快感を逃がそうとしているらしい。枕を噛み、しがみつきながら全身を震わせている。

 極限まで明度を落とした室内でも、女の肌は生々しく青白く浮かび上がっている。
 その裸の背に散らばる長い髪は乱れ、もつれて、情事の激しさを物語っているようだ。
 暗い室内では、女の髪は殆ど黒髪に見える。

 もともと彼は女の好みなどは特段なかったが、ある時から、黒っぽい長い髪の女しか抱かなくなった。
 できるだけ肌の綺麗な、長身の女。
 声は我慢しろと命じる。
 余計な嬌声はいらない。顔も見たくない位だが、せっかく女を買って後背位しかしないのもナンだ。
 だから彼はいつも行為の時だけ、ほんの少しだけ「それ」を焚く。
 極上の品質のそれは彼の生国の特産品だ。
 量を加減して的確に扱えば、得も言われぬ快楽と陶酔を味わうことができる。
 彼の分身を通してもたらされる感覚に目を閉じると、そこにはいない女を抱いているような錯覚に陥る。
 
 「!?、ぐ、ぅ……!」

 後ろから伸ばした手で胸を鷲掴みにされ、女が呻いた。 
 尖ってかちかちになった乳首を摘まんでひねり上げ、潰しながら男は想像する。

 ……真珠色に輝く肌。吸いつくような手触り。
 華奢な骨格からは想像もできないほどにゆたかな胸。
 白い鎧を取り去り、零れ落ちるだろう白い胸をこうしたかった。
 さんざん揉みしだいて舐め回して。
 清廉な美貌を快楽に歪ませ。
 そして彼の名を呼ばせて……

 剛直を包み込む膣壁がせわしなくうねり、男も快感に口元をゆがめる。
 限界に向かって腰の動きが速くなる。

 ……いい旅を、と言った彼女の屈託のない笑顔を思い出す。
 ようやく戻ってきた。彼女の住む都へ。
 そして今度は、必ず。

 「……う、うあ……っ!!」
 
 愛しい名を口にすることはなく大きく呻くと、彼は同時に絶頂した女の最奥に思い切り白濁をぶちまけた。
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