モブキャラ男子の恋愛事情

プロローグ

　モブキャラ。
　それは決して目立つことなく、その他の群衆と呼ばれる。

　僕自身もそうだった。
　中学卒業までの間に、何かを成し遂げたこともない。
　勉強もまぁまぁ、運動も普通。

　そんな僕に、何か起こるわけもなく。
　そして、そんな現状に不満もなかった。
　誰かと誰かが付き合ったって、別に関係もなかった。

　唯一の趣味は、ラノベや漫画、アニメを見ること。
　この生活ができれば、多くは望まない。

　そんな僕でも、高校デビューには緊張した。
　もしかしたら、大きな何かが起こるかもしれない！
　そんな感じだった。

　だが、終わってみると何でもない。
　根っからのモブキャラ振りに、自分でも妙に納得してしまう。

　高校最初の一年間、友人はできたが、周りには恋人ができたりなんだりで、キラキラした生活をしていた。

　この三年間も同じなんだろう。
　そう思いながら過ごしていた。

　そして高校二年。
　一年間過ごしたクラスメイトとも別れを告げ、新たなメンバーにチェンジ。

　だけど僕には、ワクワク感なんてなかった。
　どうせなにも変わらない。
　そう思っていたが……


　「あっ、お隣さんだね。今年一年間よろしく」


　黒板に書かれていた席に座ると、隣の子が話しかけてくる。
　表情を見なくても、明るいというのが伝わってくる声。


　「えっと、こちらこそよろし……く」


　隣を見るとそこには。
　モブキャラの俺でも知る、学年一の人気といわれる本田あすか。
　その子が座っていた。