モブキャラ男子の恋愛事情

大吉祭り

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モブキャラ男子の変わらぬ日々

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 欲がないと言うんだろうか。
 僕の人生はそんな感じだった。

 モテたいとか、カッコつけたいとか、頭良く見られたいとか。
 そう言った感情は一切なかった。

 目立つことが嫌いってわけでもないけど、進んでやるつもりもない。
 ずっとこのまま、何もなければいいと思っていた。

 中学生時代に、漫画やアニメにハマった。
 三年の頃にはラノベなんかも見始める。

 キラキラした主人公たち、凄いなとは思ったが、進んでなる気もない。

 そんな僕にも、気になる子はいた。
 理由もなく、ただ何となく可愛いなぁって思ってた。

 そんな彼女がある時、急に僕に話しかけてきた。
 当然すごく緊張した。
 それでもその日から、何回か話をするようになる。

 ああ、やっぱりこんな僕にもイベントは来るんだなぁと。
 その時の楽しさは、今でも忘れない。

 そして同時に、その後の悲しさも。
 僕は、彼女に告白しようかと考えていた。
 浮かれまくっていた。

 そして中学最後のクリスマス数日前、彼女に呼び出される。
 思いきって誘おうと考えていた僕に、彼女が。


 「この手紙を雄介君に渡してくれる?」


 そんな事を、顔を赤くしながら頼んできた。
 僕もそこまで鈍感じゃない。
 表情と時期で、何の手紙かはすぐに分かった。

 結局僕は、彼女にとって手紙の渡し役でしかなかった。
 それを一瞬で理解した僕は、上手くできてたかわからないけど笑顔で。


 「わかったよ……上手くいくといいね」


 そう言って手紙を預かり、小走りで帰った。

 それからは彼女と会っていない。
 やっぱり僕はモブキャラだ。
 キラキラした人たちの陰に隠れる人でしかない。

 むしろ、彼女の手伝いができてよかった。
 そう思う事で納得させた。



 中学を卒業し、高校生活が始まる。
 何かが変わるかも。
 でも終わってみたら何も変わらない。

 そんな日々にも不満はない。
 一生モブキャラでもいいや。

 そして高校二年。
 クラス替えで新たなメンバーとの出会い。

 だけど僕にとっては大したイベントではない。
 仲良くしてくれる友達もいる。
 それでいいから。

 新たな教室で、黒板に書かれた席に着く。
 周りは騒がしい。


 「あっ、お隣さんだね。今年一年間よろしく」


 隣の席の子が話しかけてきた。
 可愛らしい、明るい声。
 僕とは違う世界の人だな。


 「こちらこそよろし……く」


 顔を上げると、そこにいたのは学年一の人気者と言われる、本田あすか。
 僕の思考はそこで止まった。
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