モブキャラ男子の恋愛事情

大吉祭り

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モブキャラ男子の挑戦

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 変わったと思えば、そうでもない。
 それが僕の基本的な人生で。


 「もう少し話してほしい」


 本田さんがそう言ってから数日が経つが、そこまで話せていないのが現実。
 なぜかと言えば。


 「本田さんマジありがとう!そこの問題わからなかったわー」


 昼休憩の時間、変わらぬ日常が隣で繰り広げられる。
 僕からすれば、よくもまぁそれだけ話すことがあるなと。

 いや、正確には話を作れるなって思う。
 内容なんかどうでもよくて、本田さんと話したいんだろう。

 こんな状況で僕が話すことなんて不可能だ。
 最近はようやく、挨拶をできるようになった。
 ただそれだけだ。


 「博、今日もあんまり話せてないな」


 考えているところに、大地が声をかけてくる。


 「まぁ、ね。大地もこんな状況で声なんてかけられないでしょ?」

 「……そうだな」


 結局僕たちは似た者同士である。
 だからこそ、気軽に話ができるのだ。


 「でも博は変わりたいんだろ? そろそろ行動しなきゃな」

 「そうだね」


 そもそも話したいって言われたんだ。
 何もしないのは、失礼かもしれない。



 「……と言うことなんだけど、どうしようかと」


 悩んだ末、僕は再び桜さんへ相談することを決めた。
 情けない話だけど、僕だけではどう行動すればいいか決められなかった。


 「佐藤君は本田さんとどうなりたいか、決めてるの?」

 「え?」


 どうって別に……


 「ただ話をして、本田さんみたいに少しでもなれたらって」

 「そう。佐藤君は前にキチンと行動できたよね? やることさえ決まれば出来ると思う」


 そう、なのかな。
 自分では緊張でよくわかってなかったけど。


 「だから今回もアドバイスだけ。佐藤君は本田さんに対して考えすぎてると思う。もっと普通に接してみて」

 「普通に……普通って何だろう?」


 考えてみるとわからなくなる。
 もしかして、大地と話すときみたいな?

 でもそしたら荒々しすぎるような。
 それに女子とは話せないようなことも。


 「佐藤君。今おかしなこと考えてるでしょ。」

 「ん? あ、いや」


 顔に出ていたのか、桜さんに読まれてしまう。


 「私が言ってるのは、無理に他の人みたいに話さない方がいいってこと。佐藤君と話したいって言ったんだよね? それは素のあなたって意味だと思う。だから、他の人のマネではダメじゃないかな」


 なるほど。
 僕は言葉の表面上の意味しか考えていなかった。
 だけどそう言われると、そうかもしれないって思える。


 「つまり僕は、特別何かをしなくていいってこと?」

 「そうだけど、このままってわけにもいかないよね? それが気になるから相談してきたんでしょ」


 ごもっともで。


 「なら、少しでも話せそうな時間を探すようにすればいいと思う。佐藤君らしくね」

 「僕らしく」

 「そう。大人数で集まったりとかじゃなくて、佐藤君が自分のペースで話せるようなタイミングを探すようにするの。そうするだけで、自然と行動できるようになると思う」


 そうか、とにかく思ったら行動ってわけだ。


 「桜さん、いつもそうだけどありがとうね。おかげで変われそうな気がするよ」


 そう言うと桜さんはほんの少しだけ笑い。


 「良かった。上手くいくといいね」


 そう言ってくれるのだ。
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