モブキャラ男子の恋愛事情

大吉祭り

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モブキャラ男子の変わった日常

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 「わ~お、本田さん勉強までできるのか。これはもうこの学校一凄い人って言えるんじゃね?」


 いつもと同じ、見慣れた光景が僕の隣の席で繰り広げられる。
 学級委員の副会長。
 それが今の僕の肩書きと言える。

 まぁ当然、会長は隣に座る本田さんなのだが。


 「俺なんてみてくださいよ、本田さんの半分しか取れなくて」


 この日、学力を調べるための簡単なテストが行われた。
 その結果が先ほど配られたのだが。

 どうやら本田さんは勉強もできるようだ。
 直接は見ていないけど、周りの反応で大体わかる。

 ちなみに僕の結果はまぁ、微妙と。
 平均前後で、勉強もパッとしない。


 「う~ん、確かに私の半分くらいだね。でも、杉田くんは良い声を持っていて、放送部で頑張ってるよね?私には出来ないよ」


 本田さんが笑顔で返す。


 「ほ、本田さん……好きだぁ~」

 「あはは、ありがとう」


 本田さんの対応に本気で感動したのか、叫び出す男子。
 気持ちはまぁ、わかるけど。

 学年一の人気者か~。
 本田さんみたいに少しでもなりたいと思ったけど、目標高くしすぎたな。



 放課後、大地といつものように話しながら帰る。
 話題はもちろん、昼休憩の時のことで。


 「……って感じで、さすがに目標高くしすぎたなと」

 「お前今さらそう感じたのか?本田さんなんて頂点の頂点だろ。学級委員になったくらいで追いつけると思うか?」


 全くその通りだ。
 少し変われた気がしたけど、それでもモブキャラ男子を卒業できたとは言えない。


 「そうだよね、これからだ。少しずつでも頑張っていかないと」

 「まぁ勢いも大事だろうからな。桜さんの次の指示とかもあるだろうし、一個ずつやるしかない」


 大地の言葉で思い出すが、桜さんからの次の指示はあるのだろうか。


 「明日桜さんに聞いてみようかなぁ」

 「ま、困ってからでいいんじゃないか」


 それもそうか。
 たまには自分の力で、だな。



 その日から数週間が経ち、高校二年の生活も落ち着く頃。
 僕は五月病になりかけていた。

 意外にと言えばいいのか、学級委員って思ったほど仕事がなかった。
 ホームルームでの司会はあるけど、それは本田さんが基本こなしてしまう。

 それ以外での活動もないため、最早何かが変わったと言う印象すらない。
 これで良かったのだろうか。


 「今日もこれで終わりだもんなぁ~」


 この日も特に何もなく、淡々とホームルームを終え終了。
 あとは帰るだけ。

 大地は用があるからと、一人で帰るらしい。
 前は変わらない方が嬉しかったんだけどな。


 「ねぇ佐藤君、ちょっと時間あるかな?」

 「……あっ、僕です……か」


 声のする方を見ると、そこには笑顔の本田さんが。
 いつも笑顔ではあるんだけど。

 そんな事より、なぜ僕に話を?
 気が動転して何も言えないでいると。


 「あのね、少し相談があるの」

 「相談を僕に? ……できる事ならまぁ」


 そう言うと本田さんは嬉しそうに手を叩くと。


 「実はね、佐藤君にはもう少し話しかけてきてほしいって思ってるの」


 何これ一体どう言う事!?
 ドキドキが止まらんし、このまま死ぬのか?

 落ち着け、落ち着いてもう一度考えろ僕。
 もっと話しかけて欲しい。
 そう言ったんだよね?


 「えっと、その、あの、それは一体どうして」

 「う~んとね」


 本田さんは少し考えたあと。


 「私たち学級委員だよね? それに席も隣同士だし。もう少し仲良くしたいなって思っただけ。嫌かな?」


 ここで嫌だなんて言える訳がない!
 本心でもそう思うし、話したいのはやまやま。
 怖いのは周りの目だけだし。


 「わ、わかりました! 本田さんがそう言うなら喜んでお話ししますよ」


 うわ~、もう言いたい事がグッチャグチャに。
 それでも本田さんは笑ってくれて。


 「ありがとう、これからよろしくね」


 僕の日常は大きく変わったのかもしれない。
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