【完結】元爽やかイケメンバリタチ男優はカメラの外だとドSらしい

夜見星来

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第四章

16.わからせセックス待ったなし

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 部署の飲み会が終わって二週間。
 俺は相変わらず、仕事とジムの往復で忙しい日々を送っていた。

 その合間で俺は颯真さんとおうちデートを重ねていて、今日は彼の家へ行く日である。
 金曜日の夜のみならず、明日の土曜日も颯真さんが休みなことは珍しくて、俺は久しぶりに浮かれていた。

 そんな颯真さんの家は、俺の家よりもさらに奥にあって、思った以上に時間がかかるところにある。
 駅から遠くて不便じゃないのかと尋ねたこともあるけれど、そもそも俺と違って出勤先がジムなため、家賃が低くて広い部屋が借りられるマンションを選んだそうだ。
 それに、歩くのもいい運動になるからと笑って言うところも颯真さんらしい。

 今日も早く仕事を終えて、颯真さんに会いに行こうと意気込んでいると、給湯室に誰かが入ってきた。

「あっ、来栖くん。お疲れ」

 穏やかな笑みを浮かべて、コーヒーを淹れる俺の隣にやってきたのは向井さんだ。
 この二週間、彼女と話すきっかけがなかった俺は、久しぶりに声を掛けられてびくっと肩が跳ね上がった。

「来栖くんも休憩?」
「う、うん……」
「それ、なに飲んでるの?」

 横から手元を覗き込まれた拍子に、互いの腕がくっつく。
 少し近すぎでは……? と思った俺は、さりげなく身を引いた。

「青色のポーションのやつ」
「へぇ、私いつも赤色で淹れてるんだよね。今日は青にしようかな」

 会社にはコーヒーマシーンがあり、一日二杯を目安に自由に飲んでいいことになっている。
 向井さんは青色のポーションを掴むと、コーヒーマシーンにセットした。

「それじゃあ、俺はこれで……」
「待って!」

 ちょこんと袖を掴まれて、やっぱり逃がしてはくれないかと苦笑いを零す。
 向井さんは、ごめん! と言うと、俺の袖から手を離した。
 どうやら俺の袖を掴んだのは、無意識かつ咄嗟の行動だったらしい。

「あのさ、合コンのことなんだけど……」
「あー……うん」
「担当の人に聞いてくれたかな、って……」

 上目遣いで尋ねられて、きゅるきゅるとした可愛らしい目に、普通の男だったら落ちるだろうなぁ、と他人事のように思う。
 俺はなんとも思わないけれど、颯真さんはどうだろうか。

 そもそも、彼が男のみを恋愛対象にしているのかすらわからない。

 思えば、彼の過去について何も知らなかった。
 今まで、どんな人と付き合ってきたのか、どういう人が本当は好みなのか、どうして俺のことを気にかけてくれたのか……など、知らないことばかりだ。

 今までは気にしていなかったけれど、これからも長く颯真さんと付き合っていくのであれば当然気になるわけで。
 俺は口から出そうになったため息を慌てて飲み込むと、彼女と話していたことを思い出し、ごめん、と頭を下げた。

「その、まだ聞けてなくて……」
「ううん! こっちこそ、ごめんね。急かしちゃって……。でさ、来栖くんにはどうであれ、合コンには来てほしいなって思ってて……」

 目当ては颯真さんだろうに、俺に声を掛けた手前、彼女なりに立てようとしてくれているのだろう。
 正直、いらないお節介なのだが、それをストレートに伝えるのも彼女を傷つけてしまいそうで返答に悩んだ。

「……とりあえず、彼には聞いてみるね」
「うん……! ありがとう。それじゃあ、引きとめてごめんね」

 彼女の表情が、こちらを不安そうに窺うものから笑顔に変わって、ホッと胸を撫でおろす。

 そうして給湯室を出たものの、また悩みの種が頭をもたげてしまった。

 ――とりあえず、颯真さんには聞くだけ聞いてみるか……。

 今から気は進まない。
 だけど、このまま先延ばしにしても辛くなるだけだ。それに、彼女からの追求も逃れそうにない。

 俺は重たいため息をつくと、今夜颯真さんに尋ねてみることにした。





 ◇

 颯真さんの部屋を訪ねて数時間。

 颯真さんに合コンのことをどうやって切り出そうか考えていた俺だけど、いつまで経っても上手い言葉が見つからなかった。

 ずっと隣でソワソワと落ち着きなくソファーに座る俺に、颯真さんが具合でも悪いのかと声をかけてくれる。

 颯真さんの部屋は俺の部屋よりも少しだけ広くて、ソファーも大きい。二人で腰掛けても十分に広いソファーだけど、ぴったりとくっついて座ってしまうのは、もはや癖みたいなもので、今日も彼は俺の横にぴったりとくっついていた。

 いつもはそんな彼と、テレビを見ながら手を握ったり、ぎゅっと抱き締められたりして過ごすけれど、今日は何をされても合コンのことが頭にちらついてしまう。

 だんまりになって俯く俺の顔を覗き込むように、颯真さんが首を傾げた。

「どうした? やっぱり具合悪い?」

 優しい声音で問いかけられて、俺はふるふると首を振る。

 ――あぁ、やっぱり嫌だ。

 颯真さんが俺以外の人といるのを許したくないし、そういう機会すら自ら与えたくないと思う。
 だけど、このままかわしきれないことも理解していた俺は、ゆっくりと口を開いた。

「あの、嫌だったら断ってくれてもいいんですけど……」
「ん……?」
「その、この前の会社の飲み会で、ジムに通っている話になりまして……。そのときに颯真さんが宣伝で映ってるショート動画をみんなで見まして……」
「あぁ、アレか……。映りたくないって言ったんだけど、断りきれなくて仕方なく出たやつ……」
「それで、それを見た子が、颯真さんを紹介してほしい、って言ってて……」

 最後の方は声が尻すぼみになっていく。
 ちらりと颯真さんを見れば、彼は険しい顔つきでこちらを見ていた。

「それで?」
「その、合コンに来ないかと、誘われ……まして……」
「ふーん……」

 みるみるうちに、彼のまとう空気が重たくなっていく。
 彼の、感情を押し殺したような冷たい目と声に気圧されて、反射的に身を引きそうになった。

「俺を誰かに紹介したいってことは、俺と別れてもいいってことだよな……?」
「へ……?」
「そういうことになるだろ」
「ち、ちがっ……! その、断りきれなくて……。一旦、聞いてみようかと……」
「断りきれない、ね……。そもそも、本当に俺目当てか? 俺に会ってみたい、って言ってたのは最初だけで、そのあと合コンの話になったのなら、お前目当てで声をかけたんじゃないのか?」

 そう矢継ぎ早に言われて、両肩を強く手で掴まれる。
 誤魔化すのは禁止だと言わんばかりに鋭い眼光で睨みつけられて、俺はひッと息を呑んだ。

「そもそも、唯斗は危機感がなさすぎる」
「そんなことないです!」
「だってそうだろ? だから、俺みたいなのに簡単に捕まっちゃうんだよ」
「そ、れは、颯真さんだけですもん……」
「だとしてもだ。大体、その場ですぐ断ればよかっただろ。すぐに断らなかったってことは、実は合コンに行くの、迷ってたのか?」

 まさかの疑いを掛けられて、怒りで頭に血が上る。
 俺は颯真さんの手を振り払うと、キッと睨み返した。

「迷ってません! 断るつもりでした! というか、俺に危機感ないって言いますけど、颯真さんだって……ジムでは人気者なんでしょ? 受付の女の子と話しているところを見ますし、噂によれば指名もいっぱいで、連絡先もよくもらってるって聞きましたよ」

 実際に、俺の前後のレッスンに入っていた女性からアプローチを受けているところを見たことがある。
 颯真さんは適当にあしらっていたようだけれど、それでも見ていて気持ちのいいものではなかった。

「いま、俺の話じゃないだろ」
「でも……!」
「とにかく、合コンは断れ。絶対に行くことは許さない。俺は、唯斗のことが好きだし、手放すつもりはないよ」
「……っ」

 ぐっと体を引き寄せられて、彼の顔が近づいてくる。

 手放すつもりはない、とまで言われたら、嬉しくないわけがない。

 元々、颯真さんとは体の関係から始まった。
 お互いに好きだと伝えあったとはいえ、それでも不安はあったのだ。心の何処かでは彼のことを信じきれない気持ちもあったのは否定できない。

 だけど、ここまで怒ってくれて、強く求められたら、疑いようもない。

 颯真さんも、俺のことを大事に思ってくれている……。

 そう思うと、自然と頬が緩んだ。

「ごめんなさい……。すぐに断ります。俺も、颯真さんだけ……です」
「ん、わかればいいよ」

 こつん、と額同士がぶつかって、視線が絡み合う。
 そのままゆっくりと唇が重なって、ソファーの上に押し倒された。
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