一夜の恋は千夜を超える 〜敏腕社長は逃げてばかりなカフェ店員を離さない〜

夜見星来

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第五章

22.幸せの囲い※

 今日、宿泊する予定の部屋はホテルの中でもグレードの高い部屋らしい。
 キッチンやダイニングテーブルまで用意されており、このまま生活できそうなくらい広く、設備も充実していた。窓の外に広がる夜景も美しいはずで、だけどその美しさを堪能できたのも一瞬だった。

「んっ……ぅ、」

 部屋に入るなり、キスをしながら彼がスーツを脱いでいく。私が着ていたワンピースの後ろにあるファスナーも、いつの間にか腰まで下ろされていた。指先を飾る大きな指輪もテーブルの上に置かれ、寝室のベッドに沈んだときにはお互いほとんどなにも身につけていなかった。

「明さん、待って……」
「無理だ、待てない」
「でも……」

 せめて電気ぐらいは消して欲しい。ベッドの傍にある調光用のつまみを捻れば、彼が少しだけ惜しそうに唇を尖らせる。
 もう散々明るいところでも見たのに、と言いたげな顔だ。私は彼の体を引き寄せると、自ら唇を押しつけた。

「シャワーを浴びてないからダメです」
「別に俺は気にしないが」

 いつだって綺麗だ、と吐息だけで囁いて、もう既に期待で膨れ上がった乳首を食む。温かな咥内で転がされながらもう片方もカリカリと先端を引っ掻かれた。
 ムズムズとした刺激に、かろうじて履いていたショーツの中がぬかるんでいく。私の羞恥を覆い隠してくれるはずの布も、すぐにお役御免となってしまった。
 中でとろとろと愛液が溢れて、べったりとショーツを濡らす。
 彼は胸の柔らかさを確かめるように手で揉むと、そっと下着のあわいから指を滑らせた。

「もう濡れてるな」
「んっ……明さんが、触るから……」
「まだ少ししか触ってない」

 キスと乳首への愛撫だけで、こんなにぐずぐずになっている自分が恥ずかしい。
 彼は閉ざされた肉をかき分けると、入り口のあたりを撫でさすった。

「ぁ……ん……」
「もうすぐにでも指が入りそうだ……ほら」

 愛液のぬるぬるとした感覚を楽しむように動かされて指が蜜壺の中に入ってくる。浅いところをくちゅくちゅとかき回されて、緩やかな刺激にぴくりと内腿が震えた。

「ゃ……おと、……やだ……っ」

 わざと卑猥な音を響かせるように指を動かされて、耳から犯されている気分になる。
 くぽくぽと中を虐めながら、ときおりクリトリスに愛液を塗りたくられて、ひくりと中が収縮した。

「んっ……あッ、そこ……あッ」
「腰が揺れてるな。物足りない?」
「ちがっ……」
「でも、こっちの方が好きだろう?」

 ベタベタになったショーツを足から抜かれ、奥まで指を入れられて気持ちいいところを容赦なく押し上げられる。そこだけを何度も狙って擦られたらたまらない。
 媚びるようにきゅうきゅうと彼の指に肉襞が吸い付いた。

「……ぁ、……も、きょうは、そんなにしなくても……ッ」

 挿入前に何度もイかされたら、くたくたになってしまう。
 ただでさえ、此処は彼の部屋やラブホテルと違って防音用の壁になっていない。一般的なホテルよりもグレードが高く、フロアの広さに対して部屋数も多くはないため、そこまで響かないかもしれないけれど、万が一ということもある。
 快楽に染まりきった自分の声が外へ漏れてしまうかもしれないと思うと、気が気じゃなかった。

「……それは聞けない願いだな」
「ああッ……!」

 さっきまでのゆったりとした刺激とは違い、絶頂へ追いやるための激しい動きに、あッ、あっ、と乱れた声が漏れる。
 必死に手で口を塞ごうとするも、声を聞かせろと言わんばかり両手をまとめてシーツに押さえつけられた。

「楓奈のイくとこ、見せて」
「……やっ、ぅ、あッ、見ないでっ……」

 おでこがぶつかる至近距離でじっと見つめられる。その、熱っぽい視線だけでどうにかなりそうだった。
 普段から恥ずかしいところを見られているけれど、今日はいつもよりじっくりと観察されている気がする。
 じわじわと頬が熱くなり、絶頂を迎えようとだらしなく開いた唇にちゅうっと吸い付かれた。

 ダメ、イっちゃう……!

「~~~~~っ、ん゛~~~~ッ」

 甘い絶頂に追いやられて、かくかくと腰が震える。中が何度も蠕動して、きゅうきゅうと彼の指を締め付けた。嬌声ごとキスで飲み込まれ、達して緩慢になった舌をゆっくりと弄ぶように食まれる。
 それだけで気持ちよくて、ぼんやりと意識が遠のいた。

「んっ、んッ、……ふっ、ぅ……」
「……可愛いな。ほら、キスに集中して」
「ぁ、ぅ゛……」

 わけもわからず彼のキスに応えながら広い背中にしがみつく。何度もひくつく中を指で押し拡げられて、とろりと奥から愛液が溢れた。

「そろそろいいか……」

 いつもより早く彼の指が抜けて、休む間もなくペニスを充てがわれる。
 そのままぐぐっと内壁を押し広げられて、ひっ、と喉が引き攣った。

「ぁ、……らめっ、ぁ、……きもち……」

 達したばかりで敏感になっているのか、ペニスを挿入されて肉が拡がるだけでも気持ちがいい。
 早く奥までペニスを迎え入れようと、自然と腰が揺れた。

「今日は随分積極的だ」
「だって……ぁ、だめ、そこは、またすぐ……っ、」
「今日はこっち、あんまり可愛がってなかったから」
「ふっ……ぁ、やめっ、きもちぃ、イ゛っちゃぅ……」

 容赦なくクリトリスを指で撫でられて、へこへこと腰が前後する。ほとんど、私が腰を振っているようなものだ。
 クリトリスを撫でられながら腰を振る私を見て、彼が悪い顔で笑った。

「このままイっていいぞ。むしろ、イってみせて」
「や……そんなっ、ぅ゛……あっ、」
「嫌がっているわりには止まらないな」
「だって……っ、ぁ、あッ、も……イく……あっ、ぁ~~~~……!」

 最後は彼の手伝いもありながら二度目の絶頂を迎えて体が弛緩する。
 もう、境目がわからないほど中が蕩けて気持ちよかった。

「こら、まだ終わりじゃないぞ」
「あッ、ん……!」

 思い切り腰を掴まれて、今度は彼が好き勝手に腰を振る。奥を抉るように突かれて、ピンと足先が跳ねた。

「あっあッ、はげし……っ、ぁ、や……!」
「俺も、イきそうだ……っ」

 トントンと一定のリズムだったピストンが次第に乱れてくる。
 彼は私の体をぎゅっと抱くと、最奥に熱を放った。

「……っ」

 彼のものが中で震え、何回かに分けて精液を注ぎ込まれる。奥に放精したあとも彼はしばらく動かずに私の体を抱いてくれた。

「……楓奈」
「んっ……」

 名前を呼ばれたのと同時に唇を奪われ、舌の感触を確かめるように咥内を舐られる。
 彼はペニスを抜かないまま、またゆっくりと奥を突きはじめた。

「……まって、明さん……っ、ちょっと、休憩……」
「休憩? そんなものはない」
「ゃ、ぁ……!」

 ばっさりと彼に切り捨てられ、また中をいじめ尽くされる。
 彼は汗ばんだ私の頬を恍惚とした表情で撫でると、美しい瞳をきゅうっと細めた。

「ここに命が宿るまで、たくさん注がないとな」

 優しく下腹部を撫でられ、その意味を理解した私は息を呑む。

 これから先の未来まで想ってくれていること、それを強く望んでくれていることに、いいようのない気持ちがこみ上げてくる。私も彼の手に自分の手を重ねると、精一杯の笑顔で返した。

「……優しく、お願いしますね」

 そう言って彼の体を抱きしめる。

 その日、私たちはお互いに意識を飛ばすまで快楽の海に沈んだのだった。





 ◇

 彼と正式に籍を入れたのは、お義父様に挨拶をしてすぐのことだった。
 それから結婚式の準備や住まいのこと、仕事のこと……と追われているうちに二ヶ月が経ってしまった。
 私としては慎ましやかな結婚式でもいいと思ってたけれど、彼としてはそうもいかないらしい。
 いまだに事情を知らない者たちからうちの娘はどうだと見合いを迫られることもあるそうで、結婚式を期に牽制したいとのことだった。

 ――まぁ、明さんのかっこよさを思えば、私がいてもアタックしたくなるか……。

 一番でなくても二番なら……と思う人もいなくもないようで、さすがの私もそうしたアプローチが続くのであればと、彼のプランを受け入れた。
 彼が周りに私を見せつけたいのと同じように、私だって明さんは自分のものなのだと知らしめたい。
 そうした理由もあって、結婚式はまだまだ先だ。

 そんな私たちは今日、二人で病院に来ている。
 先月末から生理が止まっていることに気付き、検査薬でも反応があったため、期待と不安が入り交じった気持ちで産婦人科に来たのだけれど――

「おめでとうございます。二ヶ月ですね」

 先生から笑顔でそう言われ、私たちは視線を合わせる。
 なんとなく体調不良の日が続くなと思っていたし、これは……と思って妊娠検査薬で調べてはみたものの、こうしてはっきりと先生に言われるまで実感を持てなかった。
 だけどいま、こうして先生におめでとうと言われたことで、やっと喜びが生まれる。
 私はまだ薄っぺらいお腹を撫でると、明さんに抱き着いた。

「明さん……! 私……!」

 よかった、嬉しい、大好き!

 いろんな気持ちがぐるぐると渦巻いてうまく言葉にならない。自然と涙が零れて、彼があやすように私の頭を撫でてくれた。

「……ありがとう、楓奈」

 このままキスでもされそうな雰囲気に、んん、と先生がわざとらしく咳払いをする。
 私も明さんも顔を見合わせると、くすくす笑った。

「定期的に検診には来てくださいね」
「わかりました。ありがとうございます」

 診断してくれた先生に頭を下げ、二人で待合室に戻る。待合にいるまでは静かだったけれど、受付を済ませて病院を出た瞬間、彼が私の肩を抱いた。

「ちょ、明さん……!」
「大丈夫、誰も見てない」
「そういう問題じゃ……」

 ちゅっ、と髪にキスをされて、じわりと頬が熱くなる。
 いまだに彼からの愛情表現に照れてしまうのは、仕方がないことだろう。それだけ彼のことが好きで、幸せいっぱいだから。

「これでもう、本当に逃げられなくなるな」
「もう、まだ疑われてるの、私……」
「それだけショックだったんだ。俺の前からいなくなったのが」

 彼が冗談めかして言う。
 笑い飛ばすような口ぶりではあったけれど、まだ彼の中では忘れられない傷として残っているのだろう。
 私は彼に向き合うと、両手をぎゅっと握りしめた。

「もう逃げないよ。明さんの前からいなくなることもしない。この先もずっと一緒にいるから」

 だから、信じて。と、彼の胸に頬を寄せる。

 きっとこの先も、いろんな壁にぶつかることがあるだろう。だけど簡単には諦めないし、楽をしたいから、で適当に選択することもしない。
 それだけ真剣に彼のことを想っている。彼と、自分の未来を。

「生まれてくるのが待ち遠しいね」
「あぁ……」

 彼が優しく私の体を抱く。

 ぽかぽかとした温かさに、また少しだけ涙が零れた。


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