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後日譚
香蕉の木
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趙高を誅殺した子嬰は、ほどなく秦王に即位した。
このとき、趙成や閻楽をはじめ、趙高の親族は、皆捕らえられて処刑されている。
秦王と王位に留めたのは、秦にはもはや皇帝を号せるほどの国土と国力がなかったためであるが、中華全土を支配せんとする野心はないとの意思を示すためでもあった。
しかし叛乱軍、もとい楚軍の侵攻がこれで止むことはなかった。劉邦は計略によって欺き、武関を開かせ、関中へと侵入すると、そのまま秦の首都咸陽手前の嶢関を攻め落とした。
秦王子嬰はやむなく降伏を決意し、玉璽を持参して、劉邦に拝謁した。白装束を纏い、首には縄を括って、死を覚悟した出で立ちでの面会であったが、劉邦は子嬰を赦し、子嬰とその一族の命を保証した。かくして、秦は滅亡した。
劉邦に遅れて咸陽へと入った項籍は、しかし子嬰らを赦さず、かつて秦が六国を滅ぼしたことは罪であると称して、王族にあった者を皆処刑した。項籍は、始皇帝の墳墓である驪山陵を暴き、また咸陽の宮殿からも財貨、宝物を持ち出した。その後、火を放たれた咸陽は、三ヶ月もの間、燃え続けたと言われている。
趙高の邸宅にあった香蕉の木はおそらく、それ以前に寒さにやられて朽ちていたものと思われる。
このとき、趙成や閻楽をはじめ、趙高の親族は、皆捕らえられて処刑されている。
秦王と王位に留めたのは、秦にはもはや皇帝を号せるほどの国土と国力がなかったためであるが、中華全土を支配せんとする野心はないとの意思を示すためでもあった。
しかし叛乱軍、もとい楚軍の侵攻がこれで止むことはなかった。劉邦は計略によって欺き、武関を開かせ、関中へと侵入すると、そのまま秦の首都咸陽手前の嶢関を攻め落とした。
秦王子嬰はやむなく降伏を決意し、玉璽を持参して、劉邦に拝謁した。白装束を纏い、首には縄を括って、死を覚悟した出で立ちでの面会であったが、劉邦は子嬰を赦し、子嬰とその一族の命を保証した。かくして、秦は滅亡した。
劉邦に遅れて咸陽へと入った項籍は、しかし子嬰らを赦さず、かつて秦が六国を滅ぼしたことは罪であると称して、王族にあった者を皆処刑した。項籍は、始皇帝の墳墓である驪山陵を暴き、また咸陽の宮殿からも財貨、宝物を持ち出した。その後、火を放たれた咸陽は、三ヶ月もの間、燃え続けたと言われている。
趙高の邸宅にあった香蕉の木はおそらく、それ以前に寒さにやられて朽ちていたものと思われる。
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人を呪わばなんとやらが体現された史実を的確に落とし込んだ、立身出世と欺瞞にあふれた欲望ドラマの秀作だと思います。
今は亡き陳舜臣先生が、『小説 十八史略(講談社)』にて『憎まれ者ナンバーワンを殺したのがナンバーツーとあっては、そうは問屋が卸さない』と語った愚かしさ、そろそろ実現ですね。
マスケッターさん、ありがとうございます!
物語は終盤ですが、趙高という人物を見失って苦しんでます……。
『小説 十八史略』にはそんな記述があるんですね。今度読んでみようと思います。