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主人公・花坂(はなさか)は、現役合格に伴い、進学のために地方から都内へと引っ越してきた男子大学生である。趣味はボディビルで、熱心に打ちこんでいる。
彼は、生活手段として、塚森生活相談所で住み込みの助手アルバイトをしていた。そこは、都内某所のさる私設霊園に併設されている事務所だ。業務として、害虫駆除から悪霊退治まで、幅広く仕事を引きうける何でも屋だった。
所長の塚森は、鬼火を使う美女だが生活能力はゼロであり、書類の処理から日々の食事まで一般人の花坂に頼り切っている。
花坂に会うまで、塚森は鬼火が使えず、漠然とした霊能しか持っていなかった。花坂は、自分自身としては一般人だが、相手の霊能を高める力があるのを塚森を通じて知った。
そんなある日、一人の美少女・小角(おづの)が仕事の依頼で相談所にやってきた。彼女はドローンを使ったストーカー被害に会っていた。具体的なタイミングとしては、友人の女性とその両親が死んでからだという。
友人の死因は急性心不全だった。発症する直前まで、彼女はTWC(タイトワールドコーポレーション)という国際企業の主力商品で、HMB(ハッピーマッスルベルト)なる筋力強化器具を使っていた。彼女の両親は、HMBになんらかの原因があると見てTWCを提訴したところ、不慮の事故で急死した。
花坂がそこまで話を聞いた直後、唐突に現れた全身プロペラ男が事務所を襲った。彼は全身から生えているプロペラで自由自在に風を操り、塚森の鬼火が効かなかった。しかし、花坂はとっさの機転で塚森の力をより有効に活かし、プロペラ男を撃退した。
その直後、小角が、花坂の影響で、自らの力……因縁を目に見える紐にして物理的に縛りつけたり、任意の人々を簡単な異世界に引きこむ……を覚醒させた。
塚森は、本人の同意を得て、小角を依頼人ではなく仲間とした。そして、小角の力でプロペラ男の居場所をつきとめ、三人でそこへおもむいた。
花坂達は、プロペラ男の慢心をついて撃破へと至った。だが、その勝利こそが、花坂達をTWCとの全面対決へと導くのであった。
文字数 122,706
最終更新日 2026.01.11
登録日 2025.12.30
主人公・龍左衛門は、品川の茶家見川(さけみがわ)に面した船宿・『鯉志(こいし)』で船頭を勤める粋な若者だ。
彼の両親は、十年前(1774年)に茶家見川の洪水に巻きこまれ、そろって行方不明になっていた。
かつて『茶家見川、二十五町(約2725メートル)に店百軒』とうたわれたこの川は、武州金沢藩(神奈川県横浜市)の申し立て……洪水ばかり起こしている……で一度埋めたてられた。それが、明和の大火(1772年)を境に防火帯としての価値が再認識され、ちょうど十年前に復活したという経緯を持っている。
龍左衛門の両親が犠牲となったのは、皮肉にも、川を掘りかえす工事の終盤に起きた事故であった。
そんな時に、龍左衛門は一人の河童と知りあった。両親の遺体が中々見つからなかった彼に、河童は船頭としての手ほどきを行い、新たな人生のきっかけをもたらした。
両親の行方不明から、十年後(1784年)。
初秋の黄昏時に、その日の仕事を終えた龍左衛門は、河童から相撲に誘われた。
相撲の誘いを断った龍左衛門だが、土俵代わりに使っている廃神社に、若く美しい女性が住みついていると聞かされた。
河童と別れて『鯉志』に戻った彼は、いつものように女将のおふみに労われ、店の看板をしまおうとした。
その時、一人の客が舟を出してほしいと頼んで来た。武家の女性とすぐ分かる彼女は、河童が語っていた神社のそれで、かつて茶家見川の川舟改役を勤めていた櫛田家の娘であった。
渋るおふみに対し、櫛田は、自分の生死を賭けた仇討ちが目的だと語った。というのも、彼女には恋人がいたのに、櫛田を置いて婿養子に出されてしまった。納得出来ない二人は駆け落ちを計画していたが、婿養子先にばれてしまい、手討ちにされてしまったのである。
恋人の仇……桐塚 重斎(きりづか じゅうさい)は、武州金沢藩の末席家老。幕閣に働きかけ、茶家見川を埋めたて、そして掘り返させた張本人であった。
文字数 116,192
最終更新日 2025.10.28
登録日 2025.10.17
主人公・銅吉(どうきち)は、品川に住む若き戯作者である。彼は、幼いころのお百度参りがきっかけで銭霊(ぜにだま)に取りつかれていた。銭霊は、彼に危機が迫ると、前触れなく程度に応じた銭を与える。
折しも田沼時代の絶頂期。銅吉は売れっ子戯作者として名を馳せているが、ここ数ヶ月は思うように筆が進まない。そこへ、銭霊が十両もの大金を部屋の天井からもたらした。
近年にない大きな危機を悟った銅吉は、少しでも功徳があればと願い、十両をそっくり寄進するべく近所にある寺……松森寺(しょうしんじ)に向かう。そこは、まだ幼かった彼が、流行り病にかかった両親のためにお百度参りをした寺である。しかし、善行虚しく両親は死んだ。松森寺とは、孤児となった彼が、大人になるまで世話になった場所でもあった。
銅吉が、こっそりと十両を寺の裏庭に投げいれようとした時。突然現れた一匹の三毛猫が、小判を一枚くわえた。そして、彼に対して『銭霊に見こまれただけあって、うまそうだねぇ。せいぜい頑張りな』と語り、すぐに消えた。
その日の晩、隣の部屋に住む魚の行商人・太助(たすけ)が部屋まで飲みにきた。銅吉は、彼から幽霊が出ると噂になっている墓場について聞かされる。すなわち新たな作品の題材を予期させられた。
これこそ、銭霊が警告する危機の発端であった。
第11回歴史・時代小説大賞にて『お江戸あやかし賞』を受賞しました! ありがとうございます!
文字数 116,402
最終更新日 2025.06.12
登録日 2025.05.30
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