短編集 色々詰め込み

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きっと彼から逃げられません 幼馴染み 腹黒攻

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きっと彼からは逃げられません




こえぇぇ。

あいつ、こえぇぇ!!!!


「さ、安心して飛び込んで来ていいんですよ」

爽やかな笑顔を放ちながら、腕を広げる人物。その長年の付き合いだから分かる胡散臭さのせいで、俺は素直に首を横に力いっぱい振れなかった。
あいつに逆らえば俺は今にもにこやかな面をしているあいつに押し倒されるだろう。
あいつ、呉羽(くれは)は俺の幼なじみだ。
メタルフレームの鋭い眼差しに、艶やかな黒髪。
男子校に呉羽に無理矢理一緒に入れられて、呉羽は二年の始めで生徒会の副会長に就任――どうも話し合いという名の強制引退をさせたらしい。
サボりがちな会長の変わりに仕事もこなし、今や学園の権力は呉羽の意のままだ。 

それまでなら、別に俺は関係ない――事実幼なじみというだけで呉羽は俺をこき使ったり、何かと構うが、それいがいは平凡な学園生活を送れていた。

しかし、この学園は閉鎖された全寮制の男子校という、特殊な所で、恋愛対象も同性に目が向きやすかったのか、生徒会を筆頭に美形はもてて、特出した美形は親衛隊などというふざけた物まで結成された。
生徒会を筆頭にと言うくらいだから、勿論副会長である呉羽の人気は絶大なるもので、たかだか幼なじみというだけで構われる俺は、嫉みを買い、かっこうの虐めの餌食となってしまった。
小さい嫌がらせを始め、殴る蹴る等の呼び出しを受けながらも、友人達の励ましや協力により何とか堪えていた。
勿論その間、呉羽の行き過ぎたスキンシップというかセクハラは絶え間無く行われていた。

すでに俺は無事に卒業出来ればいいと感じ始めていた矢先の出来事だった。
今日は友人は部活の集まりだとかで、一人で食堂で昼飯を食っていたら、いきなり上から牛乳がふってきた。
最悪以上の何物でもなかったが、かけた奴が仲間とくすくすと笑いながら俺をけなす言葉を吐いていた。
こーゆーのは黙って聞いていた方がいいと知っていた。

「何、すまして無駄にむかつくね」

しかし今回の奴らはそれが更にカンに障ったらしく、パシンと叩かれた。
ぐーではなく平手打ちだったのであまり痛くはなかったが、確実に赤くなっていることだろう。
俺は軽く溜息をついた時だった。

「どうかしたんですか?何やら騒がしいようですが」

「呉羽様!」

「おや、ミユ一人で食べてるなんて、珍しいですね。いつもの(ゴミ)方達はどうしたんですか?」

自身の名前を呼ばれても、俺意外無視という形で、目敏く友人がいないかをチェックして、言葉とは裏腹に嬉しそうな笑みを浮かべた。
ミユなんていう女みたいな名前ではなく御幸何だけどと、大差ない違いにむくれつつ、俺は肩をすくめて、ナプキンをとって牛乳をふきはじめた。

「……ミユ、頬が赤いようだけど。しかも何故か濡れていますね」

頬をすべるように撫でて、心配そうによせられた眉の真実は、自分のものだといっている俺を誰かが傷付けたのが面白くないという事はすぐに分かった。
敬語で丁寧に話しているが、呉羽は本当は乱暴な言葉使いだ。
何故敬語を誰彼構わず使うのか聞いた所、「は?普段から下手に出てれば、誰だって騙されんだろうが」と返って来た時はちょっと怖くて引いてしまった。

「牛乳かけられて、平手打ち」

俺が簡潔にあったことだけを述べると、呉羽はへぇ、ミルクをねと変な笑みを浮かべた後で、何を思ったか自分のカレーライスを俺に牛乳をかけた奴にぶちまけた。
牛乳よりカレーライスの方が何だか酷いと感じるのは俺だけなのだろうかと思いつつ、笑顔でそれをやってのけた呉羽に新たな恐怖を覚えた。

「ミユを傷付けるなんて、いい度胸なさってますね。俺の大切な大切なミユを傷付けた罪が、こんなもので償えるなんて思わないで下さいね、麻矢先輩」

「そんな僕は……」

「事実以外の私的理由は結構ですので、俺達の前から消えて貰えますか」

目は消えろと優しさのかけらもない。
麻矢先輩は呉羽に耳元で囁かれた途端に顔を青ざめて、食堂を後にした。
残されたのは静かなままのギャラリーと、どこか晴れ晴れしい表情の呉羽とただ傍観していた俺。
そして呉羽は俺に手を差し出して嬉しそうに首を傾げて言ってきた。

「怖かったでしょう、ミユ。これからは俺がちゃんと邪魔者は始末して守ってあげすからね」

周りは呉羽の言葉にお優しいとか顔を赤らめて好き放題言っているが、いいのか、始末とかスルーなのか。
俺は飛び込んでおいでの台詞でしぶしぶながら呉羽に自ら飛び込んだ。

冷たくて怖い性格だが、抱きしめられると、呉羽はとても温かくて落ち着く。思わず胸に頬を擦り寄せて、少し顔を上げて呉羽を見ると、いつもの作った胡散臭いものではなく、俺の大好きな笑顔を浮かべていた。

「ミユ、逃がさないからな」

それが何の意味なのか理解したくもなくて、俺はやけくそ気分で呉羽の胸に再び顔をうずめたのだった。






END



20080503

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