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きっと彼から逃げられません 2
しおりを挟む昔の俺は周りを疑うという事を知らず、純粋な子供だった。
幼なじみの後ろをついてまわり、無邪気に笑うようないたいけな子だったのに、その幼なじみが俺の純情を踏みにじったのだ。
「どうしました?ミユ」
「何でもねー」
今、俺の隣でにこにこと豆腐ハンバーグ定食を食べる幼なじみに適当に返しながらも、自分の豚肉の生姜焼きを箸でつついた。
そもそも小さい頃は俺はこいつ、呉羽の事を舌足らずにくーはと呼んでいた。
あいつもミユと俺を呼んで四六時中幼稚園の時は一緒にいたものである。
深い友情に結ばれていた俺達だが、それももろく崩れさった。
幼稚園でいつものように遊んでいた俺は、仲良しである呉羽にだけ秘密を教えようとしていた。
仲の良い友達は何でも共有するのが当たり前だと思っていたからだ。
「ねぇ、くーは。内緒だよ?」
「何を?」
俺はもじもじとしながら、ひそひそ話をするように呉羽の耳元に手をあてて話した。
「あのね、俺ももくみのきっかちゃんが好きなんだ」
内緒だからねと頬を染めた俺は当時好きだった女の子の名前を呉羽に告げたのだった。
しかし、興味なさそうにふぅんと答えただけで、すぐににこりと呉羽は笑うと俺はてへと照れながらもその日は上機嫌で遊んだ。
翌日
「きっか、くれは君のお嫁さんになるー」
いつの間に仲良くなったのか、俺の想い人であるきっかちゃんは呉羽の腕に抱き着いて嬉しそうにしていた。
失恋した俺はショックで茫然と二人を見つめていたが、しだいに悲しくなって目に涙を浮かべて、泣き出した。
だってさ、友達だと思っていた呉羽に大好きなきっかちゃんを取られちゃったんだぞ?!
興味なさそうにしてたくせに。
悔しくて悲しくて泣き出した俺を先生がどうしたの?とあやしてくれたんだけど、それじゃ泣き止まない。
そこへ呉羽がきっかちやんの腕を振り払って俺の所まで来て、ぎゅっと抱きしめて来た。
それからいーこいーこと頭を撫でて来て、小さく話しかけて来た。
「ごめんね?ミユの好きなこのきっかちゃんと仲良くなりたかったんだけど……僕はきっかちゃんをお嫁さんにする気はまったくないからね?」
今思い出すと呉羽は幼稚園児のくせに何処か小賢しい喋り方をしていた。
まぁ、そんな呉羽を俺は凄いとキラキラした瞳で見ていたわけなんだけど。
「本当?くーは」
「本当だよ」
ひくひくと泣くのがおさまり出した俺は呉羽をじっと見つめた。
「ねえ、ミユ。こうしようか?ミユがきっかちゃんをお嫁さんにもらって、僕がミユをお嫁さんにもらうんだ。そうしたらばんじ解決だよ」
「ミユ、くーはのお嫁さんになるの?」
「いや?」
「ううん」
「本当?良かった」
完全に泣き止んだ俺に、呉羽は綺麗な笑みをうかべて、それじゃ約束だよと指切りをした。
その時には俺はきっかちゃんの事をすっかり忘れていた。のだが、きっかちゃん自身が割り込んで来た。
「きっかは呉羽くんのお嫁さんになるの!だからみゆきくんのお嫁さんにならないもん」
「……じゃあ、仕方がないね。僕はきっかちゃんみたいなブスをお嫁さんに欲しくないから」
きっかちゃんが頬を膨らませて再び呉羽の腕をとった。齢四歳で修羅場を体験する俺だったが、無垢な時期でもあったので、そんな事は理解出来なかった。
そんなきっかちゃんを一瞥して、にこりと呉羽は微笑んだ。
その内容は笑顔には似つかわしくなく、きっかちゃんは可愛い顔を歪ませて泣き出した。
それからきっと俺をきっかちゃんが睨んできた。
「みゆきくんなんて大嫌い!」
大好きなきっかちゃんに大嫌い。
いたいけな俺には衝撃的以外のなにものでもなく、きっかちゃんが立ち去ったあとで再び泣き出した俺を甘い言葉で慰めたのは、元々の元凶である呉羽だった。
そしてこんな事が小中学校と何度も続き、俺はすっかり呉羽にコンプレックスを抱き、更には奴のなんとも言い切れない腹黒さに怯える事になったのだった。
今思えば、
「俺って可哀相……」
「何がですか?」
「お前にはかんけーねーことだよ」
「なんだ、ミユの事で俺が関係ないことなんてあるはずないだろ…………ここは人目があるからな、後でじっくり聞いてやる」
ごまかそうとした俺だったが、そう簡単に呉羽がごまされるはずがなかった。
ぼそりとつぶやかれた呉羽の言葉に俺は人知れず青ざめたのだった。
END
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