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執事物語 お馬鹿受
しおりを挟む執事物語
「執事?」
その学園に入学した途端に普段は聞き慣れない言葉に眉を潜めた。
俺が白椿学園に親に無理矢理通わされ、寮にぶち込まれて怨んでいる中で、この学園の変な決まり事により、俺は執事が着くことになった。
システムを簡単に説明すると、社長子息の息子達が通うこの学園では、紳士的な振る舞いが求められ、何でも入学と同時に将来、金持ちの執事や、秘書になる事を目指している学科、Steward。
彼らが学年、組と出席番号の同じ人間に実地訓練と称して仕えるらしいのだ。
地味に一人ひっそりと暮らして行こうと思っていた俺には迷惑な話だ。
表向き、俺は成り金ながら特別クラスにいて(しかしクラスの中で地位は最低級)も浮いている存在になっているから、ひっそりは無理かも知れない。
成り金でも成績が優秀であれば特別クラスにいられるのだけど、俺の成績は後ろから数えたほうが残念ながら早い。
ぶっちゃけていえば、この学園の理事と知り合いだから、コネクションで特別クラスにいるわけだけど…………、今日は入学式から二日目。
教室をあけたら知らない奴が沢山いて、クラスメイトに何やら奉仕しているから取り巻きかと思えば、俺に近付いてきた奴が頭を下げて挨拶をしてきた。
「お早うございます。雪楯松葉(ゆきたてまつば)様。私は貴方の執事となります百合宮憂玄(ゆりみやゆうげん)です。」
「は?執事?」
と冒頭に戻り、百合宮君が説明してくれたおかげで執事システムの存在を知ったわけなんだけど、正直堅苦しいしきたりやら、紳士の振る舞いなんて俺には無理だ。
俺はどうしたものかと、目の前で笑っている百合宮君を眺めた。
「…………なぁ百合宮君、俺って執事を従えるなんて性格じゃないし、堅苦しいの嫌い何だよね。君もこんな成り金に仕えるなんて嫌だろ?建前だけで構わないからさ……」
「何を言っている!貴方は俺に恥をかかせる気か!!」
「…………は?」
ひそひそ声で話していたら、いきなり百合宮君が激昂して怒鳴った。
顔を上げたら百合宮君はとても清閑な顔立ちをした、体格もしっかりとした男前だった。
腰を折っていたせいか、俺より身長が低く見えていたのだが、彼は俺よりも身長が高かった。
俺がいろんな意味で呆気にとられていると、百合宮君は感情のままに俺に詰め寄って来た。
「俺は将来有能な執事になるためにこの学園に来たんだ!たとえ仕える主が成り金だろうと、関係ない。俺は設楽学園の草壁夏芽さんのようになるんだ!」
「だったら、その設楽?学園に行けば良かっただろう!」
「あの学園は、誰もが主に仕えられるわけじゃないんだ。幼少の頃から執事の教育をうけた者じゃないと、執事として使って貰えない!!」
と、散々言い争った後で、俺が根負けした。
百合宮君はいつの間にかまた敬語に戻っていて、またにこりと笑みを浮かべていた。
…………もしや先ほどのぞんざいな口調は演技、わざとなのだろうか。
俺ははぁと朝礼の時にこれからの学園生活に支障をだしかねないシステムを怨んだのだった。
***
「百合宮君、どうしたの」
「あの輩はいささか松葉様に馴れ馴れしいのではないかと思いまして」
「また?いい加減にしてくれよ。百合宮君はちょっと過剰反応しすぎだよ」
あれから数カ月。
百合宮君はどうも俺の交友関係が気に食わないらしい。
顔のいい、モテている美形が俺に肩を組んでいただけで、鋭い目付きでそいつを睨む。
……自分だって顔がよくて親衛隊だって出来てるし、よく俺の身体になんだかんだいって触れてくるのにと、ため息が零れた。
恋人でもないのに、いちいち交友関係にまで口だしをされたのではたまったものではない。
「ですが、貝沢は確実に松葉様を不埒な視線で狙ってます!」
「まさか、お前好きなのか…………?」
「な、俺が仕える方に、好きなんて感情を持つなんて……」
「貝沢がっっっ!!」
「どうしてそうなるんだ!!貴方はやはり箱入り息子だ!ただの成り金じゃない!」
「どうしてそこで箱入り息子が出てくるんだよ」
「事実だろう。この前だって貴方は切符の買い方すらしらなかった。いや、切符の存在自体知らなかった!」
「う、うるさい!忘れていただけだ」
中学の時は切符なんて使わないで、定期を使ってたんだよ!しかもうちのものが用意してくれてたから、そんなもんあるなんて思わないだろうが。
遊ぶ場所も門限とかあって定期圏内に限られてたし。
とは内心思っていても、俺はいっさいその事を口にはしなかった。
言ってもきっとまた何か反論される。
結果頬を膨らませるしかない俺は、ふいと顔をそらした。
正直平凡顔な俺には可愛い仕草なんて似合わないが、たまにはしたくなるんだ、平凡だって。
「松葉様!聞いていらっしゃいますか?」
やや先ほどより落ち着いた口調で、百合宮君は敬語に戻っていた。
彼は元々この特別クラスにいるような人物なのに、以前どこかのパーティーで主に仕えている草壁夏芽の姿に憧れてこのStewardの教育を受けれる白椿学園に入ったんだそうだ。
だから、彼自身仕えられる立場であって、仕える立場ではないから、敬語でなくなる時があるのだ。
俺としては敬語じゃない方が自然で好きなのだが、執事を目指している人間にそれを言うのも酷な話だと思い黙っている。
「もう分かったから、チャイム鳴るから教室戻ったら?」
「そうやってごまかさないで下さい」
しつこい執事に、俺は再度深いため息をついたのだった。
END
後書き
たいてい執事はバトラーなんですが、今回はStewardで。深くは追求しないでください。
さて、ちょっと別の世界から名前を拝借してきてしまいましたが、彼ら二人を完全に本編にリンクさせてしまうと、総受けの理念から外れてしまいそうだったので、違う学校、時間軸と致しました。
本当は居眠り王子の執事持ち、三組いるうちの一組にしようと考えていました(笑)
結構松葉君には謎が残っているけど、分かりやすくしたからいいかぁと考えてます。
20080828
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