短編集 色々詰め込み

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男受難の相あり コメディ

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男受難の相あり



「おはよう、美祢(みね)」

ぽんと肩を叩かれた瞬間に広がる泡立つ感覚。
全身に鳥肌が立ち、すぐさま症状が出る前に俺は数センチ身体を離した。
挨拶をしてきた人物は首を傾げて申し訳なさそうな表情をして謝って来た。
その綺麗な色素の薄い髪の毛がさらさらと流れ、涼しげな目元を悲しそうに細めるのは俺のクラスメイトである時雨坂 竜彦といい、女子に羨ましくもモテる上に勉強まで出来て、性格もいいという出来た奴だ。くしくも小さい頃に病弱だったために運動は苦手らしい。
ついたあだ名が薄幸の王子様……普段はシビアな女子も竜彦にかかればメルヘンだ。

「ごめんね、分かってはいるんだけど……どうしても自然に触れちゃうんだ」

俺の体質を知っている竜彦は再度謝ってから、学校に行こうかと促して歩き出した。
そんな悲しそうな顔をされてしまったら、多分誰も反論できないに違いない。俺は肩をすくめて横を歩き始めた。

「美祢っ!はよーッス」

「どわっ!」

しかしいきなりタックルを腰にかまされ、地面へと痛いダイブをする事になってしまった。
嬉しそうにしながら抱き着いてくる男を強く叩いた。
グレイのアッシュに、たれ目がちな目元が女心を擽るらしい。
奴、大河 政之(たいがまさゆき)も竜彦と同じくモテる人種であった。

「馬鹿!早く俺から離れろ!……うぅ」

じたばた暴れてもどかない政之に、俺はとうとうあの症状が出始めた。
ぷつぷつと顔や腕に赤い斑点が出て来て、しまいには痒くなり、無性にぼりぼりとかきたくなっていく。
そんな俺の様子に気が付いた政之は、急いで離れて慌て出した。
今更遅いわ!

「あ、ごめん……つい」

「お前が近づくからだ。消えろ、政之。……美祢、大丈夫?」

辛辣な言葉を政之にはき、竜彦は俺に心配そうな目で見つめてきた。
実は、何を隠そう……俺は男アレルギーなのである。何故こうなったかは、小さい頃のトラウマが原因なのであるが、それ以降男に触れられると湿疹が出てきて大変な事になるのだった。
友人である二人はそれを知っており、極力触れないようにはしてくれているのだが、政之等はたまに行き過ぎて、今みたいになってしまうことが多々あった。
それ以外は俺に男を近づけないようにしてくれるいい奴なんだけど…………まぁそのおかげで友達と呼べる奴はこいつらしかいないんだけど。

「んー……まぁ今回はまだ大丈夫だな」

俺はそう言いながら起き上がり、首元をかいた。もっと酷い症状だと熱まで出てくる。そうしたら一日中寝込んでいないといけないのだ。
すまなそうになる政之に次からは気をつけてくれよと何度目か分からない台詞をいいながら、俺達は学校に向かった。

クラスにつけば、竜彦と政之のファンだという少年達が色めきたち、俺を睨み付けてくる。
男子校だからと、危ない風習にはついていけない俺は無視をして席についた。
突き刺さる視線はやまないが、いつも通りにしていれば何の問題もない。

「やだな、俺の美祢を見てる奴らしばきたいや」

「いつから政之のモノになったわけ?美祢がお前のモノなわけないだろうが」

「竜彦のモノではない事は確かだよね」

「つうか、俺を見てる奴らはお前らが原因だよ。だってお前らのファンなんだからさ」

険悪な雰囲気を垂れ流す二人に俺はため息をつきながら頬杖をついた。何てったって美形な二人はまるでどこかの物語のように絵になってるんだもん。それを俺が間にいることによってぶち壊しちまってるんだから、ファンには目障りこの上ないだろう。

「……気付いてなくって良いのかどうか迷うね」

「本当、美祢ちゃんが自分にたいしての熱視線に疎くて助かったよ」

やれやれといった感じで呟く友人達に、俺は首を傾げたのだった。



     □□□



俺には小さい頃にトラウマと呼べる出来事がある。それは俺が男アレルギーになった要因でもあった。
小さい頃の俺は今の平凡な容姿とは違って非常に愛らしいものだったらしい。周りから聞かされ、俺には自覚なかったが何でもご近所でアイドルだったようだ。
今じゃそんな面影一切ないが…………。
とにかく、そんな俺はたまに変な趣味の男から連れ去られそうになっていたりしたそうだが記憶にはない。前置きが長すぎたが、アレルギーの原因になったのは俺の叔父が起因している。

「美祢~、弦夜(つるや)お兄さんだよ」

「つうか、おじさんじゃん」

家から帰ってベッドに寝そべっていた俺に、ニコニコとノックもなしに叔父である弦夜は俺の部屋に侵入してきた。
その姿は普段パリっとしたスーツを着こなし、No.1ホストをしているとは思えないほど顔が綻んでいる。
俺のベッドのはしに座り、毛布をかけて布ごしから覆いかぶさった。

「う~ん、美祢を充電中」

ハートマークが尽きそうな程ご機嫌な声で弦夜さんは俺に擦り寄って来た。布ごしならば俺のアレルギーも何とか発生しない。
小さい頃、ホストをしている弦夜さんに夜のホストクラブに連れていかれた。当時の俺は弦夜さんのホスト仲間さん達にも人気ものだったそうだ。
散々いじられた俺は、知らない大人達ばかりで泣いてしまったようだ。その姿も可愛かったと暢気に宣う弦夜さんに酷く殺意がわいたが、殴りたくてもアレルギーの俺には出来なかった。
その後さらに弦夜さん馴染みのオカマバーに行き、洗礼を受けた。
そして俺は男というイキモノの恐ろしさを知った。
いや、女の子も美形な奴と平凡な俺とじゃ180度も違う態度を見せてたまに怖いなって思うけど、その時に体験した幼い頃のトラウマはそれ以上の恐怖だった。

「離れろよ。重いじゃん」

「……最近ちょっと美祢冷たくなったよね……あ、そういえば帝都達がまた美祢に会いたいって言ってたぜ」

「……………………帝都さん達が?」

俺は弦夜さんの言葉に青ざめた。帝都さん達は弦夜さんの友人で、今はホストオーナーをしているが、昔俺のトラウマを作ってくれた人物でもある。
彼らは昔も今も俺のアレルギー関係なしにほお擦りをしたり、キスをしたりしてくるので命掛けだ。

「…………やだ」

「俺も、俺の美祢を帝都達に会わせるなんてしたくないんだけどね」

本音が思わず零れた。無意識の言葉であったが、それを弦夜さんが勝手にひろいあげ、勝手に何やら憤慨している。

「でもどうしてもっていうから、今度の日曜連れていく約束しちまったんだよ」

だからけってーとか言う弦夜さんに、俺は怒りの向くままに頭を殴りつけた。いてぇと非難してくるが、そんなの無視だ。
俺は次の日曜の受難に歎かずにはいられなかった。





END


20081030







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