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平凡ヒエラルキー3 ナルシー編
しおりを挟む*ナルシー編と風紀委員長編では人間関係の設定が違いますので、ご注意下さい。
平凡ヒエラルキー・ナルシー編!
「おや、君は最中くん。どうしたんだい?そんな所でうずくまって」
「せ、生徒会長・・・・・・なんでこんな所に」
俺は恐ろしい偶然に涙した。いや、遭遇か。
最近風紀委員長である柏先輩に振り回され気味で、更にやたらと接近してくる黒光あん。
何をとちくるったのか、俺に"あーちゃん"と呼ぶように強要してくる。
しかもよく鼻血をふいては、周りのおとりまきからティッシュを強奪して近づいてくる。
正直怖い。
そんな俺のそれた思考に気がつかないまま、会長は眉を寄せて、扉からこちらへと近づいてくる。
その姿はさすが学園一と言われる美貌。非常に優雅で美しい。
ナルシストだけど。
「こんな誰も来ない場所で、不法侵入した暴漢にでも襲われたらどうするの?助けを呼んでも誰も来ないから危険過ぎる。たまたま僕が来たから今回は良かったものの・・・・・・」
ふぅとため息をついて困ったちゃんだねとこぼす会長の姿はものうげな表情が艶めかしく、確かに美しい。
が、誰も来ないと言ったが、ここは美術室。たまに美術部員が来たりしているし、ここで昼食を食べている奴だっている。まぁ、今日は誰も来ない日ではあるけれど。
しかし危険過ぎるなんて考えすぎだ。
いや、自分大好きなナルシー会長は貞操というか、ファンに襲われかもしれないから危険だろうけど。
「聞いているのかい?最中君」
「は、はい聞いてます」
「そう。ならばこんな人気のない所ではなく、食堂か君の教室に行こう」
「いえ。俺はいつもここで食べてるんで」
「それは知っている。しかしだよ?最中君、君は今一人になったら本当に危ない状況にいるんだ。全く、彼等も困ったものだけどね」
・・・・・・会長がまともな事を話している。
あの、会長が・・・・・・。
ナルシストという印象しかなかった俺にはかなりの衝撃を受けた。
俺の今の学園での立場は非常に危うい。
それは食物連鎖が突如崩れた時のようにこの学園を震撼させていた。
この学園は容貌と家柄が全て。
平凡で、平民な俺はヒエラルキーでも最下層の位置にいて、目立たず地味にそれこそ周りに溶け込むようにして学園で生活し、卒業。大学に進学していってそこそこの企業に就職して・・・・・・"普通"な一生を過ごすはずが、ふとしたきっかけで猛獣達に気付かれて、檻もない状態に草食動物を放り込まれた状態。
要はそこそこ家柄も容姿も良い、柏先輩や黒光あんのシンパにとって俺は獲物。辛うじて強い猛獣が――柏先輩を筆頭に――俺の周りをうろついているので、遠くから眺めているだけなのだが、内心は八つ裂きにしたいはずだ。
・・・・・・俺を。
それ以外の俺と同じ最下層の奴らは俺に大層同情的でさりげなくはげましの言葉やフォローをしてくれる。
草食動物同士助け合っていこうが元々の精神だから、感謝している。
だからといって、この現状が打開されるわけでもないから彼等にまで被害が及ばないように近づかないようになった。
その変わりに最上層の人間達が集まってきて、俺は精神疲労がハンパない。
仕方がない。彼等とは何もかもが違い過ぎるのだ。
「あんも栗中も、最中君に惹かれるのは分かるけど、もう少し自分の周囲への影響力を考慮すべきなのに、自分の事ばかりを優先して、最中君の意思を無視している」
「会長・・・・・・」
「最中君、私が彼等の変わりに君を守る。ずっとそうやって見てきたんだ。最中君が」
「・・・・・・?ずっとってどういう」
「覚えてない?昔一緒に遊んでた事があるんだよ」
「え?」
「その時、君は私の事をりぃちゃんと呼んでいたんだけど・・・・・・」
覚えていないかな?
首を傾げて少し淋しそうに微笑む会長を見ながら、俺は頭が真っ白になった。
りぃちゃん。
その名は俺のトラウマを呼び起こす。
昔、たまたま遊びにいったばあちゃんの家で出会った不思議な少年達。
他に同じ年の子供がいなかったので、毎日毎日俺の所に遊びに来ては俺を虐めていた。
何かにつけては俺に女の子の恰好をさせてはニヤニヤと笑みを浮かべて二人で笑っていた。
美味しいお菓子とか、珍しい綺麗な石とか見せてくれるけど、女の子の恰好をさせられて『誰よりも可愛い』とか『僕のお嫁さんになるんだ。ならなければ君の家族は路頭に迷うことになるよ』と侮辱されたり、脅迫されていた。
りぃちゃんと一緒にいた幼なじみだという子も俺に悪戯をしてきては、俺はよく泣かされたものだ。
「・・・・・・りぃちゃん?」
「そうだよ?思い出してくれたかい?モナカ」
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「おや?」
ガタガタと周りの机や椅子にぶつかりながら後ずさり、俺は会長からなるべく遠くに離れた。
しかし、その行動を不思議そうにして首を傾げる会長は俺に優雅な足どりで距離をすぐに縮めてくる。
「普通ここは、『嘘、りぃちゃん!!会いたかった』とかいって感動の再会をする場面ではないのかい?せっかく子羊ちゃんに背景用の花を用意してもらったのに」
「い、いつの間に・・・・・・」
いつの間にかあっという間に俺と会長の周りに親衛隊の人達が花を持って囲んでいた。
会長の隣には親衛隊副隊長が穏やかに微笑んでいる。
いいのか、親衛隊。大切な会長に虫(俺)がつくんだぞ。
睨まれても嫌だけど、全面的に祝福しますムードも嫌だ。
「そんな我が儘を言ったらいけませんよ?せっかく会えたのですから。それと、会長親衛隊である我々は、ブリュレ様の美しさを尊び、そしてその変わらぬ美を保護していく使命と共に、純粋にブリュレ様を慕っているのです」
「っ・・・・・・!!」
俺の心を呼んで横から肩を叩いて話しかけてきたのは親衛隊隊長の綿飴和(わたあめ なごみ)先輩。
この人自身も白雪姫というあだ名があるくらい美人で人気のある生徒だ。
その外見と比例してたおやかで優しい性格は同級生からも下級生からも慕われ、俺達の間でもあの葛湯花梨先輩を人気を二分するほどである。
「ふふ、可愛らしい反応」
「和、僕のモナカにあまり触らないでくれたまえ」
「ああ、すみません。つい初々しくて。他の生徒ではこんな悲愴な表情して下さらないですからね」
にこにこと笑う姿は女神様のようにうつくし・・・・・・ではなくて、俺は人気者に囲まれてしまった事に血の気がさがる。
いや、なんか親衛隊のいじめとかはなさそうだから良かった。
しかし、会長があのりぃちゃんだとすると一緒にいたあの子は誰なんだろう?
「そういえば、あんとはもう会っているんだよね。彼は昔からモナカを独り占めしようとするんだから」
全く心の狭い奴だ。と軽やかに笑う会長に、具合が悪くなってきた。
あんとは、黒光あんの事か。
というか、学園であんなんて個性的な名前一人しかいない。
しかし、黒光あんが俺にあーちゃん呼びを強制してきた意味がようやく分かった。
あぁ、何かにつけて俺を押し潰してきて、彼の部屋に俺を閉じ込めようとしたあーちゃんか。
完全に思いだした。
「また、一緒にいようね。モナカ?次は絶対に離さないから」
「あの、あの、平凡な俺よりも周りにいる美人な綿飴様とかと一緒にいられた方が画的にも美しいし、黒光あんなら更に天井に与えられた至宝のごとき眼福になるかと」
「君は昔から謙虚で、包ましやかで愛しいね。ねぇ、モナカ。私は美しいものが好きだ。君は私の知っている中で一番美しい。その輝き違わぬ瞳に、顔のラインをくっきりさせた漆黒の髪は、指に掠め取ろうとしてもするりとすり抜けて、まるで不純物のない水のようだ。・・・・・・その全てが愛すべきもので、綺麗だと私は思っているよ」
「かっ!びっ??・・・・・・うぇ!!?」
俺は言葉につまった。
ナルシスト。ナルシストだと思っていた会長は実は美的感覚が歪んでいたらしい。
目が悪いんじゃない。脳がおかしいんだ。
何うっとり見てるんだろう、この人。
いやいや、鑑賞出来るような容姿じゃないから俺。
「本当に・・・・・・綺麗、綺麗だよ。モナカ」
「ぴゃ、ぴゃあぁぁ!」
「ここかあぁぁぁ!!!」
両頬にするりと会長の長い指がつつんで、額と額がこっつんこ、という体制を取られた俺は脳内崩壊を起こした。
変な鳴き声が出てきて美術室に響く。
そこにばっしいいぃん!と、物凄い勢いで美術室の扉を開け、俺達を囲む会長親衛隊員達を薙ぎ払って、季節はずれの転入生、黒光あんが乱入してきた。
「りぃ!いっつもいっつもモナカを独占してずりぃ!お前はそこにいるお綺麗な親衛隊員達相手にしてろよ」
「あんこそ、羊達がいるじゃないか。モナカは安心して僕に任せなよ」
「安心出来るか!!モナカ、探したんだぜ?全く、お前は昔からふらふらと・・・・・・お前の絹を裂くような悲鳴が聞こえなかったら今頃りぃの餌食だぞ?」
がばりと会長から引き離されて、今度は黒光あんに後ろから抱きしめられる。
つんと頭を突かれてるが、俺の脳と精神はすでにオーバーワーク。
というか、絹を裂くような悲鳴って、どこかにご婦人なんかいらっしゃりましたか?
あぁ、綿飴先輩ですね。と俺は意識が混沌とする最中、そう思うのだった。
END
風紀委員長編とは全く関係ありませんので、お気をつけ下さい。
委員長編では会長はただのナルシストです(笑)
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