32 / 32
遠回りな告白 テイクツー
しおりを挟むテイクツー
寮で一緒に行動する事が増え、周囲はタイプの違う二人が仲良くする姿に驚いていたようだが、それも最初だけで、次第に渉=奏という図式まで出来上がる程になっていた。
いつも一緒にいるのが当たり前のように感じ始めた頃、渉は奏に淡い気持ちを持ち始めた。
同性に恋を抱く事は何度かあったため、戸惑いはなかったが、同室者で何より友人である奏を好きになるのは今までにないことだった。
一緒にいるたびにドキドキと胸を高鳴らせ、相手に悟られないように必至にごまかしてきた。
好きだとばれたらきっと奏は迷惑に感じてしまうに違いない。
溢れ出してしまいそうな程育ちきった恋心を無理矢理押さえ込んで、ギリギリのラインに立ちながら渉は日々を過ごしていた。
しかし、押し殺してきた感情はある事で意味がなくなる。
たまたまテストが近く、数学を勉強しようと、らしくなく優等生的な考えを起こし、教科書を部屋に持ち帰った渉は、次の日見事に部屋に数学の教科書を忘れてしまい、取りに行くのも面倒だと奏に借りることにした。
仲良くなったと言っても学校ではクラスが違い、昼休みにご飯を一緒に食べる時くらいだ。
短い休み時間に渉は変な緊張をしながら奏の教室を訪れた。
奏から教科書を借りる事が出来た渉は、ご機嫌で授業を受けていた。自分と違い真面目に受けているだろう奏の教科書には書き込みがいくつかしてあり、彼の授業風景を想像しては渉の口元はにやける。
殆ど教師の言葉等入って来ない状態ながら、渉は奏の姿を思い浮かべて、無意識に教科書に書き込みをしてしまっていた。
所詮落書きだ。
しかしはっと渉が自分の行動に気が付いた時には後の祭である。 シャーペンならまだ消しゴムで消せた物を、答え合わせのため赤ペンを握っていたせいで、赤で書かれたそれに、赤面してしまう。 改めて自覚する自分の気持ちをそこ書いてしまっていた。
「やば……」
小さく呟いて必至にどうしようか、どうごまかそうかと考えた。落書きを塗り潰してしまえば、後で奏に何を書いたのかと糾弾されるかもしれない。そんな浅はかな考えでうめつくされ、渉は結局失くしたと、当時奏に嘘をついたのだった。
それから一年が過ぎ、いつまでもその教科書を持っていたら同室である以上見つかってしまうかもしれないと考え、そしてゴミとして捨てれば出す時にばれてしまうと思い、ならば埋めてしまおうと思いついたのだった。
結果的には奏に見つかり、ばれてしまったのだから意味のないものとなってしまったが。
□□□
「それで、いったい何を書いたんだ」
やけくそ気味な渉に呆れながら、奏は止めていた手を動かして頁をめくりだした。何を落書きごときで必死になる必要になるのか理解しがたい。
奏は他愛もない落書きに、何を神経質になる必要があるのかと思いながら、一つの頁にたどり着いた。 目を見開いて、驚きと共にそこに書いてある事が真実なのかと渉を見れば、顔を赤く染めて視線に堪えられないというように俯いた。
「……マジか?」
渉につられて顔が赤くなっているだろう奏は、にやける口元を思わず手で隠した。
「……マジ」
「なんだ、俺達両想いか。我慢してた自分が馬鹿みたいだ」
「へ……っ?」
ぽつりと呟かれた言葉に渉はこくりと頷くと、予想もしなかった台詞が奏から吐き出された。
渉が顔を思いきって見上げれば、頬を少しだけ赤くして笑う奏と目があう。
「俺もお前と同じだと言ってるんだ」
「マジ……?」
「こんな可愛い落書きなら、変な嘘をつかなくても良かったのに、お前という奴は……」
「だって、普通はこんな事書いたら引かれるって思うだろ!」
「まぁな。だが、俺は引かない」
信じられないという目で見つめてくる渉に、奏は微笑した。
渉の視線に合わせて奏はしゃがみ込み、額をくっつけた。
教科書に書いてある言葉を渉の口から聞いてみたい。
「奏がスキって、お前の口から聞きたいんだが?」
「そんな事言えるか!」
「可愛くないな。まぁ、そんなお前も好きだけどな」
「おまっ、さらりと……!」
「さて、寮に帰るぞ」
「はぁっ……?!」
からかうように言われた渉は奏を睨みつけるが、まったく効果はないようだった。さらに何事もなかったように立ち上がった。
唐突な行動ばかりの奏に戸惑いながら、渉は歩き出した奏の後を追った。
いったい何なんだと混乱しつつぶつぶつ文句を言う渉に、首を後ろに振り向かせ、口元を吊り上げた。
「そのうち、こんな教科書の落書きからじゃなくてちゃんとお前の口から聞き出してやるからな」
覚悟しろ。と笑う奏に、耳まで赤く染めた渉は何も言えなくなった。
奏と両想いだと分かった渉であったが、素直に言葉にするのは遠いようだった。
「最初から素直に口で言えば俺だってお前に好きだって言えたんだ」
傲慢な台詞を吐かれたのを、幸いな事に渉は知らなかった。
END
0
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…
彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜??
ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。
みんなから嫌われるはずの悪役。
そ・れ・な・の・に…
どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?!
もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣)
そんなオレの物語が今始まる___。
ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️
虚ろな檻と翡翠の魔石
篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」
不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。
待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。
しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。
「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」
記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。
-----------------------------------------
0時,6時,12時,18時に2話ずつ更新
メインキャラ達の様子がおかしい件について
白鳩 唯斗
BL
前世で遊んでいた乙女ゲームの世界に転生した。
サポートキャラとして、攻略対象キャラたちと過ごしていたフィンレーだが・・・・・・。
どうも攻略対象キャラ達の様子がおかしい。
ヒロインが登場しても、興味を示されないのだ。
世界を救うためにも、僕としては皆さん仲良くされて欲しいのですが・・・。
どうして僕の周りにメインキャラ達が集まるんですかっ!!
主人公が老若男女問わず好かれる話です。
登場キャラは全員闇を抱えています。
精神的に重めの描写、残酷な描写などがあります。
BL作品ですが、舞台が乙女ゲームなので、女性キャラも登場します。
恋愛というよりも、執着や依存といった重めの感情を主人公が向けられる作品となっております。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
愛されることを諦めた途端に愛されるのは何のバグですか!
雨霧れいん
BL
期待をしていた”ボク”はもう壊れてしまっていたんだ。
共依存でだっていいじゃない、僕たちはいらないもの同士なんだから。愛されないどうしなんだから。
《キャラ紹介》
メウィル・ディアス
・アルトの婚約者であり、リィルの弟。公爵家の産まれで家族仲は最底辺。エルが好き
リィル・ディアス
・ディアス公爵家の跡取り。メウィルの兄で、剣や魔法など運動が大好き。過去にメウィルを誘ったことも
レイエル・ネジクト
・アルトの弟で第二王子。下にあと1人いて家族は嫌い、特に兄。メウィルが好き
アルト・ネジクト
・メウィルの婚約者で第一王子。次期国王と名高い男で今一番期待されている。
ーーーーー
閲覧ありがとうございます!
この物語には"性的なことをされた"という表現を含みますが、実際のシーンは書かないつもりです。ですが、そういう表現があることを把握しておいてください!
是非、コメント・ハート・お気に入り・エールなどをお願いします!
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる