短編集 色々詰め込み

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遠回りな告白 テイクツー

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テイクツー






 寮で一緒に行動する事が増え、周囲はタイプの違う二人が仲良くする姿に驚いていたようだが、それも最初だけで、次第に渉=奏という図式まで出来上がる程になっていた。
  いつも一緒にいるのが当たり前のように感じ始めた頃、渉は奏に淡い気持ちを持ち始めた。
 同性に恋を抱く事は何度かあったため、戸惑いはなかったが、同室者で何より友人である奏を好きになるのは今までにないことだった。
  一緒にいるたびにドキドキと胸を高鳴らせ、相手に悟られないように必至にごまかしてきた。
 好きだとばれたらきっと奏は迷惑に感じてしまうに違いない。
 溢れ出してしまいそうな程育ちきった恋心を無理矢理押さえ込んで、ギリギリのラインに立ちながら渉は日々を過ごしていた。
 しかし、押し殺してきた感情はある事で意味がなくなる。
 たまたまテストが近く、数学を勉強しようと、らしくなく優等生的な考えを起こし、教科書を部屋に持ち帰った渉は、次の日見事に部屋に数学の教科書を忘れてしまい、取りに行くのも面倒だと奏に借りることにした。
  仲良くなったと言っても学校ではクラスが違い、昼休みにご飯を一緒に食べる時くらいだ。
  短い休み時間に渉は変な緊張をしながら奏の教室を訪れた。
  奏から教科書を借りる事が出来た渉は、ご機嫌で授業を受けていた。自分と違い真面目に受けているだろう奏の教科書には書き込みがいくつかしてあり、彼の授業風景を想像しては渉の口元はにやける。
  殆ど教師の言葉等入って来ない状態ながら、渉は奏の姿を思い浮かべて、無意識に教科書に書き込みをしてしまっていた。
  所詮落書きだ。
 しかしはっと渉が自分の行動に気が付いた時には後の祭である。  シャーペンならまだ消しゴムで消せた物を、答え合わせのため赤ペンを握っていたせいで、赤で書かれたそれに、赤面してしまう。 改めて自覚する自分の気持ちをそこ書いてしまっていた。

「やば……」

 小さく呟いて必至にどうしようか、どうごまかそうかと考えた。落書きを塗り潰してしまえば、後で奏に何を書いたのかと糾弾されるかもしれない。そんな浅はかな考えでうめつくされ、渉は結局失くしたと、当時奏に嘘をついたのだった。
  それから一年が過ぎ、いつまでもその教科書を持っていたら同室である以上見つかってしまうかもしれないと考え、そしてゴミとして捨てれば出す時にばれてしまうと思い、ならば埋めてしまおうと思いついたのだった。
  結果的には奏に見つかり、ばれてしまったのだから意味のないものとなってしまったが。




□□□




「それで、いったい何を書いたんだ」

 やけくそ気味な渉に呆れながら、奏は止めていた手を動かして頁をめくりだした。何を落書きごときで必死になる必要になるのか理解しがたい。
  奏は他愛もない落書きに、何を神経質になる必要があるのかと思いながら、一つの頁にたどり着いた。  目を見開いて、驚きと共にそこに書いてある事が真実なのかと渉を見れば、顔を赤く染めて視線に堪えられないというように俯いた。

「……マジか?」

  渉につられて顔が赤くなっているだろう奏は、にやける口元を思わず手で隠した。

「……マジ」
「なんだ、俺達両想いか。我慢してた自分が馬鹿みたいだ」
「へ……っ?」

 ぽつりと呟かれた言葉に渉はこくりと頷くと、予想もしなかった台詞が奏から吐き出された。
  渉が顔を思いきって見上げれば、頬を少しだけ赤くして笑う奏と目があう。

「俺もお前と同じだと言ってるんだ」
「マジ……?」
「こんな可愛い落書きなら、変な嘘をつかなくても良かったのに、お前という奴は……」
「だって、普通はこんな事書いたら引かれるって思うだろ!」
「まぁな。だが、俺は引かない」
 信じられないという目で見つめてくる渉に、奏は微笑した。
  渉の視線に合わせて奏はしゃがみ込み、額をくっつけた。
 教科書に書いてある言葉を渉の口から聞いてみたい。

「奏がスキって、お前の口から聞きたいんだが?」
「そんな事言えるか!」
「可愛くないな。まぁ、そんなお前も好きだけどな」
「おまっ、さらりと……!」
「さて、寮に帰るぞ」
「はぁっ……?!」

  からかうように言われた渉は奏を睨みつけるが、まったく効果はないようだった。さらに何事もなかったように立ち上がった。
  唐突な行動ばかりの奏に戸惑いながら、渉は歩き出した奏の後を追った。
 いったい何なんだと混乱しつつぶつぶつ文句を言う渉に、首を後ろに振り向かせ、口元を吊り上げた。

「そのうち、こんな教科書の落書きからじゃなくてちゃんとお前の口から聞き出してやるからな」

  覚悟しろ。と笑う奏に、耳まで赤く染めた渉は何も言えなくなった。
  奏と両想いだと分かった渉であったが、素直に言葉にするのは遠いようだった。





「最初から素直に口で言えば俺だってお前に好きだって言えたんだ」

 傲慢な台詞を吐かれたのを、幸いな事に渉は知らなかった。








END





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