即死チートは、いりません!〜チート能力を持った少女はVTuber系ダンジョン配信者を始めました!〜

風鳴ホロン

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活動再開

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「それでさ、結愛ゆめ。まずは、ダンジョン系配信者としてではなく、普通のVTuberとして活動を再開してみないか?今は大事な時だし……。」

 社長のサラさんに言われ、私はそれに同意した。残念ながら、私のSkillは未だに使えないままである。

 それでも、いつ使えるようになるか分からないので、チセさんが作ってくれたメガネは手放せない。

「分かりました。そろそろ、わたしも活動を再開したいところでした。ところで、大事な時って、なんですか?」

「えぇ~。結愛、忘れちゃったの?」

 社長が、すこし拗ねたように話す。それに、便上して、リンさんと、チセさんも聞いてくる。

「結愛ちゃん……。忘れちゃったのだ?」

「結愛ちゃん。これは、忘れちゃいけないことだと思うよ。もう一度、考えてみな。」

 2人に言われて、考えてみるが全く思いつかない。

 そこに、大きな袋を抱えて帰ってきたメリサさんと、ユーゥさん。彼らは、私が事務所を見ると

「先輩、お疲れ様です。」

「結愛ちゃんも、Lelive1周年プラス夢風 アマネの1周年をお祝いしましょう!たくさんパーティーグッズ買ってきましたよ。」

「そうか!うちの事務所、1周年だ。それと、わたしもついに1周年!?」

「そうですよ。先輩~~。忘れてたんですか?」

「完全に忘れてた。」

 急いで、カレンダーにも目を通すと、2週間後の水曜日に大きな赤い印と、小さなミニキャラアマネが笑顔でクラッカーを鳴らしている絵が描かれていた。

「じゃあ、Lelive1周年記念の配信と、夢風 アマネの1周年LIVEの打ち合わせを始めようか。」

 ***

「そこで、リナ姉さんも、わたしの1周年LIVEに来てくれないかな~。って、思って。」

 今は、もう完全にタメ口になってしまったリナ姉さんこと、草花クサハ ミント。attenTGが運営するVTuber集団アマリスの大人気VTuberである。

 前に、ホラーコラボをした時から交流があり、うちのLeliveの中で、外部のVTuberの人なら一番仲が良い人である。

「良いの!? それなら、参加したいな。そっか、結愛ちゃんは、デビューした時から3Dモデルがあるもんね。ところで、1周年の記念配信の内容は決まったの?」

「それが、全然。誘ってるのに、ゴメンね。前からは、ダンジョン配信する予定だったけど、今の状態じゃ、出来ないからね。」

「そっか、そっか。それで、結愛はやりたいこととかないの?たとえば、ゲーム実況したいとか、私ならいつでも、またホラーコラボ付き合うよ。」

「それは、遠慮しとく。」

 そして、2人で笑い合った。そして、その後久しぶりに2人で、オシャレなカフェに行って香りの良いコーヒーを飲んだ。

 間違えて、ブラックのまま飲んで、苦さに耐えられず眉間にシワを寄せた私を、彼女は笑った。それが、また可笑しくてずっと2人で笑っていた。

(私は、こんな1周年配信にしたいな~。)

 結愛は、思った。誰もが笑えるような記念配信にしたい。その時、彼女の中で一つのアイデアが浮かんだ。

 事務所に帰ると、すぐにその案を社長に伝える。

「それは、だいぶハードな企画を考えたね。」

 と、はじめは戸惑ったものの、

「すぐに面白そうだし、やろっか。」

 と、返事は、良い回答だった。

「それで、リナの方はどうだった?参加してくれるって?まだ、なんにも決まってないけどね。」

「大丈夫でした。参加してくれるって、久しぶりに、会ってすごくたのしかったです。」

「そっか、そっか、それで一つだけお願いなんだけど。アマネとして、歌を歌う3DLIVEをしてくれない?結愛。」

「なんでですか? 私、歌なんて、歌ったことないですよ……。いきなりすぎますよ、社長。」

「いや~~、それがね。うちのLeliveの創立メンバーの一人が、音楽関係の人だって言ったでしょ、ソイツがいきなり、アマネへの書き下ろしオリジナルソング作曲してきて、それをお披露目しないとなんだよね。

 彼も、最近有名になってきて忙しい中、書いてくれたんだから。はじめは、Leliveを創設するときにも、名前だけなら貸す、っていう約束だったのにね。じゃあ、結愛これから、忙しくなるから、体調管理だけは気をつけてね。」

「分かってますよ。Skill以外は、絶好調ですから。安心してくださいね。」

 私が、社長の問いかけに笑顔で応じた。社長は、豪快に笑うと、「そうか、そうか。」と、私の肩をバシバシ叩いた。そして、去り際

「じゃあ、頑張ろうな。」

 と、言い残し外へ出かけて言った。その時ぼそっと何かを呟いて。なぜか、社長が一生Leliveに帰ってこないような不安に突如さらされたが、彼女を呼び止めることも、追いかけることもその時はしなかった。杞憂きゆうだと、思っていたのだ。

 この予感が後で当たるなんてことは、想像もしていなかったのである。彼女が、炎上騒ぎを起こした昔の教え子に会いに行くなんて、私は当時、知らなかったのだ。

 ただ、Leliveの入り口に着けていた鈴が、寂しそうに鳴る。その音だけを残して、事務所の中には結愛しかいない空間が広がっていた。
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