即死チートは、いりません!〜チート能力を持った少女はVTuber系ダンジョン配信者を始めました!〜

風鳴ホロン

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死神の配信

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 アマネの、配信を受けダンジョン協会――現存しているダンジョンの管理、探索者(プロのダンジョン攻略者)の雇用を行っている企業のようなもの――が、結愛の顔写真を撮ることを禁止した。

 前の配信は、アマネのファンの中では"死神の配信"と呼ばれ、一つの伝説になっている。もう、あの動画は非公開にしてしまったから、確かに伝説なのかもしれない。

 彼らのこの行動は、国民の安全のためでもあり、魔神ドグマのSkillを持った結愛ゆめに対して、恩を売りたいという狙いがあったのだろう。

 これにより、SNS上では規制が行われ、炎上案件は、思ったよりも早く落ち着いていった。

「良かったですね。先輩。」

 大きな段ボールをもち、笑顔で話しかけてくれるのは、結愛の後輩。藍宮あいみや 花恋カレンとして活動しているメリサさんだ。

「うん。ダンジョン協会が動いてくれたのもあったからね。」

 炎上案件から、数カ月。中学校を卒業して、高校生になった。高校は、結局、通信制のものに通うことになり、前よりもVTuberという職業に熱をいれるようになっていた。

「よし、次の荷物を運べ!まだ荷物はたくさんあるぞ。」

 社長が綺麗な細腕を見せながら、私達に声をかけた。今、株式会社Leliveは、事務所の引っ越しの真っ最中なのだ。

 前の事務所は、前面ガラス張りなど、VTuberを雇うにしては、プライバシーに問題があったので、今は他のちゃんとしたビルの5階に移動になった。

 しかし、なぜ5階にしてしまったのか? エレベーターがない、このビルに5階にある事務所まで大きな段ボールを持ち、階段を登るのは地獄。

 なにせ、気候変動の影響で夏になるのが早いっていうのに。

 その結果。ほとんど社長と、メリサさん以外、事務所のクーラーで涼んでいる。(もちろん、その中にわたしも入っている。)それを見て、ついに社長の切れては行けない、何かが切れたのか……。

「お前ら!働け!」

 と、人生で二回目の社長の怒号を聞いたのだった。

 ***

「アマネ。これを見てほしいだが、良いか?」

 社長に呼ばれ、ちゃんとした応接室に向かう。6畳ほどのその部屋は、大きな窓が設置されていて、暖かい太陽の光が差し込んでいた。

 社長に渡された紙には、夢風 アマネ様へと、書かれている。送り主を見ると、ダンジョン協会会長と、書かれている。生唾を飲み込んだ。

 前の配信騒ぎの消化を早めたのは、ダンジョン協会の協力があったからだ。こちらの一個人の逗鞠とどまり 結愛ゆめとして、断るのにはハードルが高すぎる。

 紙には、要約するとこう書かれていた。

▼△▼△▼△

 Lelive アマネ様へ

 あなたのお力をお借りしたいダンジョンがあります。場所は、ご協力していただいた際にお教えします。どうか、前向きに検討していただけると幸いです。

 ダンジョン協会会長 天野あまの 雪彦ゆきひこ

 ▼△▼△▼

「結愛。お前はどうしたい?」

 社長が問いかける。その顔には、『結愛の好きにすればいいよ』という信頼が現れていた。

「今はまだ決められないですけど…。前向きに考えていきたいと思っています。」

「そうか。Leliveは、結愛の決断を尊重するから、契約上の問題は何もないからな。心配しなくても大丈夫だ。」

 彼女は、結愛の肩に手を置くと少し笑いかけた。

「くれぐれも、ケガだけはしないようにな。配信活動については、少しぐらいなら休暇をやる。詳しい内容が分かったら、連絡してね。」

「はい!では、行ってきます。ダンジョン協会に。」

 ***

 ダンジョン協会から、ダンジョン攻略であろう誘いを受けて、3日後。

 わたしは、ダンジョン協会本部を訪れている。やはり、ビジネス街にあるからか、すごい高い建物だ。

 協会内に入ると、受付のお姉さんが丁寧に応対してくれたおかげでスムーズに進むことができた。

 しかし、どれだけ丁寧でも広い場所なら迷ってしまうものである。よって、今現在、彼女は絶賛迷子中である。

 誰かに道を尋ねたいが、なぜか誰も通りからない。

「どうしよう?高校生にもなって、迷子とか恥ずかしすぎる。」

 近くに案内板がないか探すが、そんなものは見当たらない。

「どうしたの?こんなところで。」

 後ろからいきなり声がする。心臓が飛び出るくらい驚いた。恐る恐る後ろを振り向くと、そこには二十代くらいの男性が立っている。

「あの……。第四多目的室って、どこですか?」

「第四?それなら、4階だよ。ここは六階。そこの階段を2つ降りたらすぐ右の部屋が、第四多目的室だから……。よかったら、案内しようか?」

「ありがとうございます。広い建物には不慣れで。」

「いいよ。いいよ。」

 そう言って彼はわたしを第四多目的室まで案内してくれた。そのおかげで今度こそ、迷わずに到着することができた。

「すいません。遅れました。」

 担当の人に直ぐに頭を下げた。相手も大丈夫ですよ。という対応をしてくれる。

「どうぞ、お座りください…って、会長!どうしてこんなところにいるんですか?」

 担当の人の目が見開かれる。その目は、確かに後ろの男に向いていた。

 急いで後ろへ振り向く。

「会長…?この人がですか?」

 担当の人に尋ねると、無言で頷いた。

「そうだよ。夢風 天心さん。いや、逗鞠 結愛さん。僕が、このダンジョン委員会の会長、天野 雪彦だよ。」

 こんなに若いとは思っては、いなかった。もう少し、名前からしてお爺さんぐらいの人だと思ってた。やはり、あの噂は本当なのだろうか。

 今のダンジョン協会、会長は…

 という、噂は。

「これからよろしくね。結愛ちゃん。」

 そう言って、差し出された手は冷たいような、温かいようなものだった。確かにそこには、優しさ以外の暗い感情が混ざっていたことを結愛は、見逃さなかった。



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