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第二話
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制服に着替え、髪は面倒なためそのままにして、荷物を必要最低限持って、いざ学院。……と、行きたいのですが、
「髪結うから、待ちなさい」
当たり前と言えば当たり前。お母様に止められ、髪を結われました。私がうなじが見える髪型が嫌なのをよく知っているからか、今回は三つ編みのハーフアップです。
お母様に見送られてルーチェとシグニと同じ馬車に乗り、魔法学院に行きますが……。
「お、大きぃ……」
分かってはいました。いましたけども、それにしても大きいです。
学院内は生徒が行き来していて、入学式の後に行われる歓迎会の準備に追われてそうです。そう言えば、シグニは今年で二年生だけれど、私たちと居てもいいんですかね。
「いいのよ。婚約者なのだし」
確かに、そうだけども。それなら、ルーチェの婚約者のクリム様だって、来ていいのに……。
クリム・ストム・ヴェルメリオ様。ヴェルメリオ侯爵家の子息で、ルーチェの婚約者。けれど、仲は良くないです。なので、ルーチェは婚約破棄を望んでいるみたいです。
「新入生はあっちだよ」
シグニに案内され、会場に向かうと既に多くの方がいました。制服は無償配布なため、平民の方や貴族の方問わず同じもの。身分差別をしていないとよく分かります。多少のぎこちなさだったり言葉遣いで分かる方もいるけれど、気にならないですね。
「私は学年のところに行ってくるから、いい子でね」
「あら、何かするとでも思っているの?」
「ルーチェなら、やらかしそう……」
こうして軽口を叩けるのも、相手がルーチェとシグニだから。他の人だと、そうは行きません。まず顔を見せるところからになりますし、慣れるまでは喋れませんし。
しばらくルーチェと今後の魔法学院生活のことを話していると全員が会場に来たのか、司会進行である先生が話し始めます。中には学院長のお言葉だったり、生徒会長であるお兄様のお言葉もありました。お兄様……。元々顔に感情が出ない方なのか分からないけれど、ずっと無表情な方です。ルーチェもお兄様とあまり話したことがなく、どう接すればいいか分かりません。
程なくして式が終わり、それぞれ割り当てられた教室へと行きます。私とルーチェは同じクラスだから安心です。教室に行くと担任の先生も入ってきて、魔法学院での生活についての説明がされます。中には部活動、と言うものもあってルーチェが目を輝かせていました。ルーチェ、身体を動かすのが好きですもんね。私は部活動、どうしましょうか。魔法研究はしたいですが、学生が部活動でやるほどのものでもないですし。
「第一皇女殿下、第二皇女殿下」
呼ばれた気がしてそちらを見てみると、お兄様の護衛として魔法学院に来ているはずのオルコス卿とアイト卿が居ました。オルコス卿とアイト卿はご兄弟で、シュバリエ伯爵家のご令息です。オルコス卿は二十二歳、アイト卿は十九歳でどちらも生徒としてではなく、皇太子であるお兄様の護衛として来ています。騎士団に所属している方で魔法学院に通っている方もいらっしゃるので、その方々に頼めば良いのではと思うのですが、お兄様のこだわりなのでしょう。
「ご機嫌よう。どうかしたのかしら」
「皇太子殿下より、お二方の護衛を任されました」
……お兄様の護衛で来ているのに、私たち二人の護衛を? そんなことをしたら、誰がお兄様の護衛を務めるのでしょうか。お兄様は護衛としてお二人しか連れてきていないはずですが。
「二人もいらないわよ。アイト卿はお兄様のところに戻っていいわ」
「サイアクなことに、第一皇女殿下には俺、第二皇女殿下には兄貴が付く事になりましたよ」
ルーチェは騎士団に所属しているため、オルコス卿たちと仲が良いです。アイト卿とはよく喧嘩しているようにも見えますが、喧嘩するほど仲が良いと言いますからね。お兄様がオルコス卿を私に付けたのは、アイト卿とは少し合わないからかもしれません。
アイト卿はきちんと仕事はしているけれど、どこか軽いように見えて苦手です。女性関係が広い、と言うのですかね。前に何度か女性といるのを見かけましたが、全員違う女性でした。オルコス卿は逆に女性の噂を聞かないのである意味心配です。伯爵家長男であるのに未だに婚約者も居らず、女性の影も見えません。噂の一つには、男性が好きなのではと言うものまである程です。
「私が護衛は嫌でしょうか」
「嫌とかでは、なくて。その、お兄様の、護衛は……」
そ、そんなにしょんぼりとしないでください。存在しないはずの犬耳が垂れているように見えます。私が悪いみたいじゃないですかぁ……。オルコス卿は動物に例えたら大型犬だと思うんです。だって今も大きくてがっしりとした身体で格好良いと言うのがとても似合うと言うのに、しょんぼりと犬耳を垂らして尻尾を振って……。な、撫でたい。オルコス卿の頭撫でてみたい。ペットは飼ったことないから興味あります。……いや、オルコス卿をペット扱いしているのではないですよ? ただ、あまりにも可愛いからつい撫で回してみたくなっただけです。
「とにかく、決定事項ですので」
「そんなに心配しなくてもいいのに」
私たちよりも、国を背負うお兄様の護衛を優先するべきです。私は魔法がありますし、ルーチェは剣があります。シグニもいますし、そんなに心配なくても……。
「今学院で噂の【真実の愛に目覚めた恋人】のこともありますので」
真実の愛? 恋人? いったい誰のことでしょうか。一部婚約者のいない方はいますが、その中で愛し合える方を見つけるのはとても大変です。けれど、その方々が何故私たちに護衛を付ける理由になるのでしょうか。特段問題はないはずですが……。
「そのうちの一人がクリム・ストム・ヴェルメリオ侯爵子息。第一皇女殿下の婚約者なのです」
「髪結うから、待ちなさい」
当たり前と言えば当たり前。お母様に止められ、髪を結われました。私がうなじが見える髪型が嫌なのをよく知っているからか、今回は三つ編みのハーフアップです。
お母様に見送られてルーチェとシグニと同じ馬車に乗り、魔法学院に行きますが……。
「お、大きぃ……」
分かってはいました。いましたけども、それにしても大きいです。
学院内は生徒が行き来していて、入学式の後に行われる歓迎会の準備に追われてそうです。そう言えば、シグニは今年で二年生だけれど、私たちと居てもいいんですかね。
「いいのよ。婚約者なのだし」
確かに、そうだけども。それなら、ルーチェの婚約者のクリム様だって、来ていいのに……。
クリム・ストム・ヴェルメリオ様。ヴェルメリオ侯爵家の子息で、ルーチェの婚約者。けれど、仲は良くないです。なので、ルーチェは婚約破棄を望んでいるみたいです。
「新入生はあっちだよ」
シグニに案内され、会場に向かうと既に多くの方がいました。制服は無償配布なため、平民の方や貴族の方問わず同じもの。身分差別をしていないとよく分かります。多少のぎこちなさだったり言葉遣いで分かる方もいるけれど、気にならないですね。
「私は学年のところに行ってくるから、いい子でね」
「あら、何かするとでも思っているの?」
「ルーチェなら、やらかしそう……」
こうして軽口を叩けるのも、相手がルーチェとシグニだから。他の人だと、そうは行きません。まず顔を見せるところからになりますし、慣れるまでは喋れませんし。
しばらくルーチェと今後の魔法学院生活のことを話していると全員が会場に来たのか、司会進行である先生が話し始めます。中には学院長のお言葉だったり、生徒会長であるお兄様のお言葉もありました。お兄様……。元々顔に感情が出ない方なのか分からないけれど、ずっと無表情な方です。ルーチェもお兄様とあまり話したことがなく、どう接すればいいか分かりません。
程なくして式が終わり、それぞれ割り当てられた教室へと行きます。私とルーチェは同じクラスだから安心です。教室に行くと担任の先生も入ってきて、魔法学院での生活についての説明がされます。中には部活動、と言うものもあってルーチェが目を輝かせていました。ルーチェ、身体を動かすのが好きですもんね。私は部活動、どうしましょうか。魔法研究はしたいですが、学生が部活動でやるほどのものでもないですし。
「第一皇女殿下、第二皇女殿下」
呼ばれた気がしてそちらを見てみると、お兄様の護衛として魔法学院に来ているはずのオルコス卿とアイト卿が居ました。オルコス卿とアイト卿はご兄弟で、シュバリエ伯爵家のご令息です。オルコス卿は二十二歳、アイト卿は十九歳でどちらも生徒としてではなく、皇太子であるお兄様の護衛として来ています。騎士団に所属している方で魔法学院に通っている方もいらっしゃるので、その方々に頼めば良いのではと思うのですが、お兄様のこだわりなのでしょう。
「ご機嫌よう。どうかしたのかしら」
「皇太子殿下より、お二方の護衛を任されました」
……お兄様の護衛で来ているのに、私たち二人の護衛を? そんなことをしたら、誰がお兄様の護衛を務めるのでしょうか。お兄様は護衛としてお二人しか連れてきていないはずですが。
「二人もいらないわよ。アイト卿はお兄様のところに戻っていいわ」
「サイアクなことに、第一皇女殿下には俺、第二皇女殿下には兄貴が付く事になりましたよ」
ルーチェは騎士団に所属しているため、オルコス卿たちと仲が良いです。アイト卿とはよく喧嘩しているようにも見えますが、喧嘩するほど仲が良いと言いますからね。お兄様がオルコス卿を私に付けたのは、アイト卿とは少し合わないからかもしれません。
アイト卿はきちんと仕事はしているけれど、どこか軽いように見えて苦手です。女性関係が広い、と言うのですかね。前に何度か女性といるのを見かけましたが、全員違う女性でした。オルコス卿は逆に女性の噂を聞かないのである意味心配です。伯爵家長男であるのに未だに婚約者も居らず、女性の影も見えません。噂の一つには、男性が好きなのではと言うものまである程です。
「私が護衛は嫌でしょうか」
「嫌とかでは、なくて。その、お兄様の、護衛は……」
そ、そんなにしょんぼりとしないでください。存在しないはずの犬耳が垂れているように見えます。私が悪いみたいじゃないですかぁ……。オルコス卿は動物に例えたら大型犬だと思うんです。だって今も大きくてがっしりとした身体で格好良いと言うのがとても似合うと言うのに、しょんぼりと犬耳を垂らして尻尾を振って……。な、撫でたい。オルコス卿の頭撫でてみたい。ペットは飼ったことないから興味あります。……いや、オルコス卿をペット扱いしているのではないですよ? ただ、あまりにも可愛いからつい撫で回してみたくなっただけです。
「とにかく、決定事項ですので」
「そんなに心配しなくてもいいのに」
私たちよりも、国を背負うお兄様の護衛を優先するべきです。私は魔法がありますし、ルーチェは剣があります。シグニもいますし、そんなに心配なくても……。
「今学院で噂の【真実の愛に目覚めた恋人】のこともありますので」
真実の愛? 恋人? いったい誰のことでしょうか。一部婚約者のいない方はいますが、その中で愛し合える方を見つけるのはとても大変です。けれど、その方々が何故私たちに護衛を付ける理由になるのでしょうか。特段問題はないはずですが……。
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