悪女と言うのは自由ですけど、双子のどちらか見分けられるようになってから悲劇のヒロインごっこをしてもらってもいいですか!?

Ray

文字の大きさ
4 / 31

第四話

しおりを挟む
 煌びやかなシャンデリアの光が照らすパーティー会場。既に多くの生徒が居て、お兄様の挨拶を合図に歓迎会が始まります。パーティー会場を見渡すと、大人数の集まりが四つほど。そのうち二つはこの国の公爵家のご令嬢のグループ。お兄様の婚約者争いと言ったところでしょうか。片方はお兄様と同い年で、確か生徒会の方ですね。もう片方の方はシグニと同い年のご令嬢のはずです。残りの二つは留学生である王子殿下のグループと、もう一つは見えませんが、ご令息が多くいるので、友人関係で集まっているのですかね。

「……お兄様」
「どうした」
「五時の方から、殺気です」

 ルーチェと私に向けられたもの。その中でも割合はルーチェの方が圧倒的に多いです。殺気のしてくる方向にいるのはご令息たちのグループ。どうやら、仲良しで集まっているワケではないようですね。

「こちらに来たら言ってくれ」
「分かり、ました」

 お母様が、場合によっては敵が多いと言っていましたが、これは多すぎますね。心休まる時間が少なそうです。警戒しながらも、お兄様のご友人や公爵令嬢方のところへ挨拶回りをします。今のところ、動きはありませんね。ジロジロと値踏みするように見られるのは大変不愉快ですが。おそらく、こちらを注視して欠点を見つけようとでもしているのでしょう。それを突いてこちらが崩れれば御の字。欠点を見つけられなくとも、こちらの出方を窺えます。交友関係なども把握できますし、敵として取る行動は正しいです。

「……お兄様がいるからかしら。来ないわね」
「一人になるのを待っているんだろうね。あそこ、ヴェルメリオ子息の派閥だ」

 クリム様の派閥。となれば、この視線も納得ですね。ルーチェの悪い噂を流しているのでしょう。私に視線が来ている理由は、ルーチェと私の区別が付かないのでしょうね。敵のことを知るのは常識だと言うのに。事前調べもないのはあまりオススメできません。そもそも、敵情視察をするのならばせめて殺気を隠さなければ。こんな見え見えの殺気では誰も殺せずにバレて現行犯です。

「……わざと、誘き寄せますか?」
「わざわざリスクを冒す必要はない。相手は爵位だけが上なだけの小物だ」

 そういうことでしたら、わざわざ引っ張り出す必要はありませんね。あちらの出方を窺って対処しましょう。後手に回ったところでこちらが負ける可能性はゼロに等しいですから。皇族に喧嘩を売ると言うのならば、買ってあげましょう。あちらの望む形で、華々しいエンディング最高のラストを迎えさせてあげましょうか。

 とは言え、あちらもただのバカではないようですね。歓迎会の間は特に何もしてこないです。今日は何事もなく終わりましたが、油断はできませんね。シグニと別れ、お兄様は仕事があるようで学院に残るようで、私とルーチェを送るようオルコス卿たちに申し付けますが、

「お兄様の護衛なのだからアイト卿は残りなさいな」
「二人で送り届けろ」

 護衛不要と言うお兄様と、お兄様の護衛をお借りしている立場であり帰るだけだからお兄様と返すと言うルーチェ。どちらかが折れなければ話は永遠と平行線になるのですが、どちらも譲る気配はありません。お兄様としては、学院で襲撃など起こるはずがないとのお考えなのでしょう。それに、もし何かあってもお兄様ならば確実に撃退することが可能です。

「お兄様の御身が最優先です」
「私よりもお前たちを優先するのは当然だろう」

 こんな話が続き、もういっそのことお兄様の仕事が終わるまで待っていれば良いのではないかと思いましたが、お兄様は待たせたくないと言いますし、ルーチェも邪魔はしたくないと言います。なんなんですかね、この二人は。最終的に、魔法を使えば良いのではないのかと言う、何故今まで出てこなかったのか分からない結論に至り、転移魔法を使って戻ります。
 転移魔法。使える人がかなり少ない魔法です。理屈としては空間ごと指定した場所と交換する魔法なため、範囲を間違えれば転移する側に被害が及び、転移する場所に人がいたりすればその人はこちらに来てしまう。言ってしまえば、範囲に人の一部が入っていたらその範囲に入っている一部のみが転移してしまう。そうなればその人は身体が損傷した状態となり、最悪の場合死に至る。使えば便利になる分、リスクが非常に高いものです。

「相変わらず、乱れがないわね」
「慣れてる、から」

 魔力も多く、魔法に特化しているため私の日常ほ常に魔法と隣り合わせです。転移魔法は物を運ぶのに便利なため、魔法の先生に教えてもらいました。生活に使える基礎魔法から自身の属性である【星魔法】について。自分の属性ではなくとも扱える方もいるらしく、私もその一人だからと他属性の魔法も教えてもらいました。あの方には感謝しかないです。

 翌日、学院へ行くのにまたシグニが迎えに来てくれて、ルーチェと三人で学院に向かいます。それで待っているのは分かっていましたがオルコス卿とアイト卿で、これから三年間、私たちの護衛に回りそうですね。

「またね」
「えぇ。気をつけて」

 ルーチェと一緒に教室へ行くと、こちらを見て何やらコソコソと話しています。どうやら、手を打ってきたようですね。魔法で集音して聞いてみれば「昨日の歓迎会で男爵令嬢を睨んでいたらしい」「嫉妬で婚約者へ罵声を浴びせた」などと意味の分からないことばかり。どうやら、こちらが皇族であることを忘れているようですね。もしくは、皇族であるけれどもいずれ降家するからなのか、舐めているようです。
 モノを隠したりするなどはさすがにせず、コソコソとこちらの陰口を吐くだけ。これなら害はありませんし、問題はないですかね。ルーチェも気にしていないみたいです。

 そうして数日が過ぎ、友人はできないものの有意義な学院生活を送れています。ルーチェは想像していた通り部活動に入りました。確か剣舞をする部活だったはずです。私は部活動には入らずにルーチェを待つ間に中庭で本を読んだり、植物を観察したりしています。オルコス卿には趣味まで把握されるのは恥ずかしいからと、放課後はお兄様のところに居てもらうようにしています。これで一人の時間確保です。

「ちょっと!」

 中庭で本を読んでいたら突然声をかけられ、本を閉じて前を見てみると、珊瑚色の髪を後ろでまとめ、撫子色の瞳にこちらへの敵意を宿すご令嬢がいました。この方、何方でしょうか。記憶にいないので、初対面のはず。私が皇女であると知らない? そんなはずはありません。歓迎会に参加していれば分かりますし、そうでなくても自国の皇女を知らないのはおかしいです。

「あんた、悪女の仕事しないでどういうつもりなのよ!」

 ……………………はい?


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

一途に愛した1周目は殺されて終わったので、2周目は王子様を嫌いたいのに、なぜか婚約者がヤンデレ化して離してくれません!

夢咲 アメ
恋愛
「君の愛が煩わしいんだ」 婚約者である王太子の冷たい言葉に、私の心は砕け散った。 それから間もなく、私は謎の襲撃者に命を奪われ死んだ――はずだった。 死の間際に見えたのは、絶望に顔を歪ませ、私の名を叫びながら駆け寄る彼の姿。 ​……けれど、次に目を覚ました時、私は18歳の自分に戻っていた。 ​「今世こそ、彼を愛するのを辞めよう」 そう決意して距離を置く私。しかし、1周目であれほど冷酷だった彼は、なぜか焦ったように私を追いかけ、甘い言葉で縛り付けようとしてきて……? ​「どこへ行くつもり? 君が愛してくれるまで、僕は君を離さないよ」 ​不器用すぎて愛を間違えたヤンデレ王子×今世こそ静かに暮らしたい令嬢。 死から始まる、執着愛の二周目が幕を開ける!

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。

倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。 でも、ヒロイン(転生者)がひどい!   彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉ シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり! 私は私の望むままに生きます!! 本編+番外編3作で、40000文字くらいです。 ⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。

悪役令嬢に転生したけど、知らぬ間にバッドエンド回避してました

神村結美
恋愛
クローデット・アルトー公爵令嬢は、お菓子が大好きで、他の令嬢達のように宝石やドレスに興味はない。 5歳の第一王子の婚約者選定のお茶会に参加した時も目的は王子ではなく、お菓子だった。そんな彼女は肌荒れや体型から人々に醜いと思われていた。 お茶会後に、第一王子の婚約者が侯爵令嬢が決まり、クローデットは幼馴染のエルネスト・ジュリオ公爵子息との婚約が決まる。 その後、クローデットは体調を崩して寝込み、目覚めた時には前世の記憶を思い出し、前世でハマった乙女ゲームの世界の悪役令嬢に転生している事に気づく。 でも、クローデットは第一王子の婚約者ではない。 すでにゲームの設定とは違う状況である。それならゲームの事は気にしなくても大丈夫……? 悪役令嬢が気付かない内にバッドエンドを回避していたお話しです。 ※溺れるような描写がありますので、苦手な方はご注意ください。 ※少し設定が緩いところがあるかもしれません。

ナイスミドルな国王に生まれ変わったことを利用してヒロインを成敗する

ぴぴみ
恋愛
少し前まで普通のアラサーOLだった莉乃。ある時目を覚ますとなんだか身体が重いことに気がついて…。声は低いバリトン。鏡に写るはナイスミドルなおじ様。 皆畏れるような眼差しで私を陛下と呼ぶ。 ヒロインが悪役令嬢からの被害を訴える。元女として前世の記憶持ちとしてこの状況違和感しかないのですが…。 なんとか成敗してみたい。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

……モブ令嬢なのでお気になさらず

monaca
恋愛
……。 ……えっ、わたくし? ただのモブ令嬢です。

逆ハーレムエンド? 現実を見て下さいませ

朝霞 花純@電子書籍発売中
恋愛
エリザベート・ラガルド公爵令嬢は溜息を吐く。 理由はとある男爵令嬢による逆ハーレム。 逆ハーレムのメンバーは彼女の婚約者のアレックス王太子殿下とその側近一同だ。 エリザベートは男爵令嬢に注意する為に逆ハーレムの元へ向かう。

処理中です...